HOME > 全文掲載 >

「障害者等に係る欠格事由の適正化等を図るための医師法等の関係法令改正試案」に対する意見


last update: 20160125


■目次

◇障害者欠格条項をなくす会「障害者等に係る欠格事由の適正化等を図るための医師法等の関係法令改正試案」に対する意見(↓)
◇DPI日本会議「「障害者等に係る欠格事由の適正化等を図るための医師法等の関係法令改正試案」に対する意見」(↓)
◇日本障害者協議会「「障害者等に係る欠格事由の適正化等を図るための医師法等の一部を改正する法律試案」に対する意見」(↓)
◇聴覚障害者を差別する法令の改正を目指す中央対策本部 20010302 (「障害者等に係る欠格事由の適正化等を図るための医師法等の一部を改正する法律試案」に関する意見)(↓)
◇厚生労働省 医政局・健康局 医薬局・同食品保健部 労働基準局安全衛生部 20010316 「「障害者等に係る欠格事由の適正化等を図るための医師法等の関係法令改正試案」に寄せられた意見について」(↓)


 

◆障害者欠格条項をなくす会「障害者等に係る欠格事由の適正化等を図るための医師法等の関係法令改正試案」に対する意見

2001年3月2日

「障害者等に係る欠格事由の適正化等を図るための
医師法等の関係法令改正試案」に対する意見

障害者欠格条項をなくす会
(代表 牧口一二・大熊由紀子)
事務局
〒101-0062 東京都千代田区神田駿河台3-2-11総評会館内
DPI障害者権利擁護センター気付
TEL 03-5297-4675  FAX 03-5256-0414

はじめに

 「障害者等に係る欠格事由の適正化等を図るための医師法等の関係法令改
正試案(以下『試案』と略)は、ひとことで言うなら、「障害を特定した絶
対的欠格」の条文を、「障害を特定しない相対的欠格」へと改めて、障害者
に係る欠格条項は残すものです。そして、政省令では「視覚、聴覚、音声若
しくは言語又は精神の機能の障害」など、実質的に障害・病名を列記する内
容です。いわば、まだ中途半端な見直し段階にあることが『試案』に示され
ており、このままでは、今後もなお、障害や病気を理由とした拒否の可能性
が大いにあります。

 医師法の障害者欠格条項をさかのぼれば、1906(明治39)年。以来今日ま
で百年間、言葉の言い換えを除けば、見直されたことがありませんでした。
「目が見えない者、耳が聞こえない者…」「精神病者」などとして、障害や
病気があるというだけで門前払いをしてきた法律を、ようやく変えようとす
るに至ったこと、そして、「障害を特定した欠格条項」を削除することは、
前進です。受験に際しての欠格条項廃止(医師国家試験等)、一部の法律
(栄養士法、調理師法、製菓衛生師法)に関して障害者欠格条項全廃とする
内容は評価します。

 全面的な見直しのために、下記、提案を述べます。



各項目

a 「資格免許ごとに必要な身体又は精神の機能を規定しなければならない」
という発想自体の転換が必要です。

b.その業務等の本質的部分を担えることと、障害や病気の有無や程度は別の
問題です。『試案』の条文にある「心身の障害により」「☆☆(各機能の名
称)の障害により」を削除し、政省令においても障害や病気を特定しないこ
とを強く求めます。

c.意見聴取だけでなく、異議申し立て-再審査の仕組みを確立しなければな
りません。

d.支援技術の開発・普及・活用と、そのための制度的条件づくりを急ぐ必
要があります。

e.政省令の内容を検討する委員会等を設置し、その委員として障害や病気
のある人の参画を確保し、障害や病気のある人々の意見を決定に反映するこ
とを強く要求します。

f.諸外国の蓄積に学び、個人の可能性を活かす法制を整備すべきです。

g.見直し作業はまだ中途であり、省庁・政府として継続した取り組みが必
要です。



本文

a.「資格免許ごとに必要な身体又は精神の機能を規定しなければならない」
という発想自体の転換が必要です。

 資格等に応じて、その業務の本質的部分の遂行に必要不可欠な身体又は精
神の機能を明記する、という考え方が『試案』には書かれています。しかし、
「必要な身体又は精神の機能」は、同じ資格・免許所持者であっても、それ
ぞれの人が具体的にたずさわる仕事内容や、環境や、補助的手段によって非
常に大きく変わるものです。それを資格ごとに当てはめようとする発想自体
に、根本的な誤りがあります。

なぜ、まず身体や精神の機能と資格免許の関係に着目するのか?そこには、
障害や病気があると無理・困難という偏見と予断が、横たわっているのでは
ないでしょうか。

 障害や病気に着目して、あくまで「必要な身体又は精神の機能」を細かく
規定しようという発想に立つかぎり、結局は、「目が見えないもの…には免
許を与えない」としてきた障害者欠格条項の発想の延長上です。発想の転換
こそが、今、必要なのです。


b.その業務等の本質的部分を担えることと、障害や病気の有無や程度は別の
問題です。『試案』の条文にある「心身の障害により」「☆☆(各機能の名
称)の障害により」を削除し、政省令においても障害や病気を特定しないこ
とを強く求めます。

 『試案』で、「その業務の本質的部分」を補助手段も使って遂行できるか、
という考え方を打ち出したことは、重要なこととして評価していますが、上
記aにも述べたように、「その業務の本質的部分」を担えるかどうかという
ことと、障害や病気の有無と結びつけていることに、この『試案』の根本的
な誤りがあります。これでは『試案』で「業務の本質的部分」という言葉を
使う意味がありません。

 その業務の本質的部分というのは、第一に、障害や病気の有無とは分けて
理解すべきでであり、その職種等に求められる基本的な役割に関する大まか
な定義で十分です。

 上記の理由で、『試案』の条文にある「心身の障害により」「☆☆(各機
能の名称)の障害により」を削除すること、および、法律の運用基準となる
政省令においても、「視覚、聴覚、音声若しくは言語又は精神の機能の障
害」のような障害名や病名の列記をおこなわないことを強く求めます。

 補助手段を活用し、環境の工夫をしても、ある人の障害や病気のその時の
状態において、その具体的な業務の本質的部分を遂行することがどうしても
困難な場合は、個別的にありえます。そうした場合に対する一定の判断基準
は、政省令で規定することになるでしょうが、その政省令の制定運用につい
ては、eに後述するように、必ず障害当事者を検討段階から参画させるべき
です。


c.意見聴取だけでなく、異議申し立て-再審査の仕組みを確立しなければな
りません。

 障害や病気を理由とした排除の可能性が少しでもある限りは、「異議申し
立て・再審査」などの仕組みを確立して法律に定めることが、非常に重要で
す。
 『試案』では、「免許を与えないこととするときは、申請者から意見陳述
の求めがあった場合には、意見の聴取を行わなければならない」(『試案』
より引用)旨の、「意見聴取」手続きを設けるとしています。

 「意見聴取」は当然必要なことですが、「求められれば審査結果に対する
意見は聞く。だが、再審査は行わない。専門家のおこなった決定をくつがえ
すことはない。」というものなら、その先は「それでも不服があれば裁判
で。」となります。

 審査を行うにあたり、決定前の段階から、必ず本人の意見をよく聞くこと
が肝心です。「実際どんな工夫があればできるのか」など、本人の意見が第
一に尊重されなければなりません。

 そして、審査結果に対する「意見聴取」だけでは全く不十分です。本人の
判断と、厚生労働省や専門家の判断とが、異なる場合は、「異議申し立て−
再審査請求」ができる、という規定を加える必要があります。


d.支援技術の開発・普及・活用と、そのための制度的条件づくりを急ぐ必
要があります。

 「機能補完技術、機器の活用及び補助者の配置の可能性を考慮する」と、
政府方針(「障害者に係る欠格条項の見直しについて」1999年8月9日 障害
者施策推進本部決定)にも明記されていますが、『試案』では、補助手段を
使う事例として、オシロスコープをあげているだけで、イメージが乏しいこ
とがうかがわれます。補助的手段を使って業務等をおこなうイメージを、実
際に活用している人などに聞いて、もっと具体的にふくらませる必要があり
ます。同時に、補助機器の開発・普及は大きな課題です。

 そして、機器の開発・活用はもちろんのこととして、必要な場合に手話通
訳者、要約筆記者、朗読者や、個人ニーズに対応したアテンダントを得るこ
とができれば、その人がその仕事などについて力を発揮できる可能性は非常
に広がります。人的な支援の技術・事例の蓄積も、年々進んでいます。補助
者についても法制度として位置づけることが必要です。

 また、本人の費用負担が当然のこととされたり、費用が必要ということが
拒否の理由とされないように、補助的手段の費用負担の規定も整える必要が
あります。


e.政省令の内容を検討する委員会等を設置し、その委員として障害や病気
のある人の参画を確保し、障害や病気のある人々の意見を決定に反映するこ
とを強く要求します。

 障害や病気がある人々は、当事者ならではの経験にもとづく解決方法やア
イディアを豊富に持っており、巾広く情報や知恵を集めることができる立場
です。法律はもちろん、省令や規則についても、検討し決定していく段階で、
障害や病気がある人々の意見を反映することが、きわめて重要になっていま
す。

 政省令においては、具体的にどのような要件とするのか、あるいはどうい
う場合に制限するのか、それは合理的で公正なものなのかという観点から検
討を重ねた一定の判断基準(ガイドライン)は必要とされます。ガイドライ
ン作成について、調査と議論を進めるため、ガイドライン策定委員会、ある
いは常設の検討委員会などの設置が必要です。委員会等には、障害や病気の
ある当事者が必ず委員として加わって判断決定できるようにしなければなり
ません。


f.諸外国の蓄積に学び、個人の可能性を活かす法制を整備すべきです。

 2000年秋に来日した、聴覚障害をもつ医師、キャロリン・スターンさんは、
米国での教育や医療活動について、自身の体験を話されました。

 そのお話からは、障害者欠格条項がない米国においても、医療従事者とし
て教育を受け仕事につくことは決して平坦な道のりではないことがうかがわ
れました。

 しかし、障害や病気ゆえの排除は差別であり、必要な支援や配慮をおこな
わないことも差別であると法制度に明記して、支援のための関連法制を整備
しいること、希望をもち努力する人には道が開かれ、公正な評価を獲得でき
るとのこと。日本との違いは明瞭でした。

 諸外国では、障害や病気のある人々が、日本では欠格条項でそれらの人を
排除している分野で活動していることが、国内の諸団体が連携しておこなっ
た海外調査でも示されました。

 日本のように、欠格条項のもとで、かつ、個人と周囲の努力以外に何ら支
援法制がない状況では、スターンさんのような人は登場しようもありません。
 これは、障害がある人にとってだけでなく社会にとっても大きな損失です。

 長年の損失をこれから取り戻すにあたり、差別を禁止し支援法制を整備し
てきた諸外国の蓄積に学び、日本の法制度を個人の可能性を活かすものに改
める必要があります。


g.見直し作業はまだ中途であり、省庁・政府として継続した取り組みが必
要です。

 今回の法案の成立や、政府方針が設定した期限=2002年度末をもって、
「これにて障害者欠格条項の見直し作業は終了」と片づけられるような問題
ではありません。解決必要な課題を改めて確認し、省庁・政府として引き続
き取り組む必要があります。

 

◆DPI日本会議「「障害者等に係る欠格事由の適正化等を図るための医師法等の関係法令改正試案」に対する意見」

2001年3月2日
厚生労働省 障害保健福祉部 御中
厚生労働省 医政局医事課 御中

「障害者等に係る欠格事由の適正化等を図るための
医師法等の関係法令改正試案」に対する意見

                     DPI(障害者インターナショナル)
                      日本会議 議長 山田 昭義

DPI(障害者インターナショナル)は、障害者の完全参加と平等、人権確立を目指
して活動している国際組織(158カ国の加盟障害者団体で構成)で、国連経済社会理
事会、WHO、ILOなどの国連諸機関においては諮問団体として位置づけられてお
り、国連総会のオブザーバー資格を有している障害当事者団体としてさまざまな活動
を展開しています。
 DPI日本会議では、公共交通機関のアクセスの改善、「福祉のまちづくり条例」
の全国的推進、障害者の自立を支援する介助保障、障害者に係る欠格条項の撤廃等、
障害者の人権確立に向けた諸課題に取り組んでいます。

1999年年8月に総理府から提出された欠格条項の見直しに関する指針には、「障
害を特定する規定から、特定しない規定への改正」という方向が示されています。し
かしながら、今回の貴省の改正試案の運用(省令事項)については、相変わらず障害
を特定する方向が示されています。私たちは、あくまでも、総理府から出された見直
しに関する対処方針から後退する方向ではない見直しがなされるべきであると考えま
す。
そこで、以下、具体的な提案も含めた私たちの意見を提出します。

1 障害当事者を含めたガイドライン策定委員会の設置を
 今回、厚生労働省において示された改正試案では、依然として省令で定めた運用事
項として、障害を特定する表現を用い、相対的欠格事由を残しています。これは、総
理府が出した対処方針にも逆行する方向であり、これまでの欠格条項と同じように特
定の障害を持つ個々人の可能性を重視しない方向であり、納得することはできませ
ん。私たちは、具体的に障害を特定しないために必要なのは、個別の法律に対応した
それぞれのガイドラインを策定する委員会の設置であると考えます。
省令等の規定において、本人が資格等の取得に必要な業務上の遂行能力、又は、本質
的要件に支障があるか否かを判断する基準の策定にあたっては、本人の個別具体的状
態を踏まえ、社会的医学的観点から、本人が必要としている補助具・機器、筆記者・
通訳者等の補助者の適切な配置を講じた上で、業務上の遂行能力又は本質的要件に該
当しているかどうかを判断する基準を策定する必要があります。そして、このような
判断基準の策定にあたっては、弁護士・専門医師・障害当事者・行政担当者等で構成
される「基準策定に関する検討委員会(仮名称)」を設置し、個別具体的な状態に着
目した判断がなされることが重要だと考えます。こうした検討委員会を通じて、「本
人が資格等の取得に必要な業務上の遂行能力」とは、どのようなものかを判断する基
準が、画一的なものとしてではなく、個別具体的な本人の可能性を最大限引き出して
いくものとして検討されることが可能となるのです。

2 意見聴取だけでなく、異議申し立て-再審査の仕組みの確立を
私たちは、意見聴取だけでなく、障害や病気を理由とした欠格の可能性が残されるの
であれば、「異議申し立て・再審査」などの仕組みを確立して法律に定めることが必
要であると考えます。
 改正試案では、「免許を与えないこととするときは、申請者から意見陳述の求めが
あった場合には、意見の聴取を行わなければならない」としています。このことは、
重要なことだと考えます。しかし、本人の意見聴取が、本人に下された決定に何ら影
響を与えないとすれば、そもそも意見聴取を行う目的が不明になってしまいます。本
人の意見を聴取するのは、本人が、実際どんな補助的手段があればできるのか、と
いった本人の意見を聞く場として設定されるべきです。そして本人の判断と、厚生労
働省や専門家の判断とが、異なる場合は、「異議申し立て−再審査請求」ができる、
という規定を加える必要があります。

3 補助的手段は、公的施策として導入を
改正試案においては、補助的手段の導入は、現実に障害を持つ本人の社会参加を促す
ためのもっとも重要な事項の一つであると考えます。そのときに、なにを「補助的手
段」とするのかは、あくまでも、その業務を行う本人が判断することが重要です。
そのためには、補助的手段の範囲を、通訳者などの補助人にも広く適用することが必
要です。また、改正試案の中では、補助的手段の活用に関する責任主体が明確に示さ
れていません。私たちは、資格等の取得後、本人が職場において補助的手段を活用し
て業務を遂行するにあたって、当該機関の事業者は、国及び地方公共団体と連携して
本人が必要とする補助的手段等の導入に関する必要な措置を講ずるべきだと考えま
す。
そうした連携において、特に国及び地方公共団体は、補助的手段の整備に係る人件費
を含む経費等について、当該事業者を適切に支援するための必要な措置を講じる義務
があること明記するべきです。
例えば、薬局等構造設備規則や省令という特定の規定で定めるのではなく、法律とし
て責任主体を明確化すべきです。

4 今回の改正試案に基づく法案の成立や、政府方針が設定した期限(2002年度末)
をもって、「これにて障害者欠格条項の見直し作業は終了」と片づけられるような問
題では絶対にありません。解決が必要な課題を改めて確認し、貴省をはじめとする政
府全体で引き続き取り組むこと決定的に重要です。
私たちは、この改正試案を具体的に運用していくためには、今後の取り組みこそが重
要だと考えます。これまで、特定の障害を持つ人々を絶対的に排除・門前払いしてき
た多くの法律は、障害者の職業選択の自由を奪い、その意味で人権を侵害する法律で
あるといえます。
今後、改正された法律が施行され、運用されていく過程で、障害当事者を含んだ検討
委員会の設置と活動が、障害者の人権を尊重し社会参加を進めていく立場から、より
よい基準を策定していくことになり、現時点ではもっとも具体的な可能性を示してい
ると言うことできます。

以上

 

◆「障害者等に係る欠格事由の適正化等を図るための医師法等の一部を改正する法律試案」に対する意見

日 付 2001年2月27日
発 番 JD発第00−83号
発信者 日本障害者協議会 代表 調一興
宛 先 厚生労働省 社会・援護局 障害保健福祉部長 今田寛睦

 貴職におかれましては、日頃より障害者の「完全参加と平等」の実現、とりわけ障害者
プランの推進にご尽力されていることに心より敬意を表します。
 本協議会は、あらゆる障害者の人権の確立ならびに自立と社会参加という視点に立ち、
障害を理由とする欠格条項を全て廃止することを要求してまいりました。そのような立場
からすると、今回の試案は相対的欠格を残しており、残念な思いを隠せないというのが正
直なところです。
 しかし、可能性や能力を問答無用のごとく否定する絶対的欠格の廃止が明言されており、
障害者の就労や様々な資格取得の機会を大きく広げていくことが予想され、未来に期待を
つなげていく内容となっています。そのような観点からいえば「歴史的な一歩」を、今踏
み出そうとしているといえるのかもしれません。
 ところで、本協議会は、この試案には多くの改善点が含まれていると認識するものです。
 たとえば、栄養士免許、調理師免許などいくつかの制度については障害を理由とする欠
格条項をすべて廃止すること、視覚・聴覚・音声言語に係る絶対欠格をやめること、法律
上の表現に各障害の種類を含めないこと、各医薬関係職について統一的な制度とすること、
欠格の判断に各「業務を適正に行うに当たって必要な認知、判断及び意志疎通を適切に行
うこと」ができるかどうかと、(障害ではなく)能力を明確に位置づけていること、その
個別具体的な判断では障害を補う手段や治療などを考慮すること、などです。また、「業
務」と「業務の本質的部分」という表現を使い分けることによって、従来一部でいわれて
きた、「すべての業務ができなければ免許は与えられない」という考え方を修正する道が
開かれた点も重要だと考えます。
しかしながら、なお改善すべき部分も多く残されており、下記に具体的な意見を提出い
たします。



1.法律の目的の明確化と見直し規定を設けること
 病気・障害の有無にかかわらずすべての国民は平等な社会参加の権利を持つこと、そし
てこの改正が障害者基本法の「自立と社会参加」の理念に基づくものであることを明記す
る必要がある。
 また、今後とも障害者施策をめぐる理念の発展、医療・補助機器をはじめとする科学技
術や社会資源の進展、諸外国等での経験などをふまえて、必要に応じて見直すものである
ことを明記するべきである。

2.法律には「心身の障害により」という表現を含めないこと
 医師等の業務を適正に行うことができない者については欠格とする必要性はあるが、こ
こに「心身の障害により」という修飾句をつける必要はない。その理由は、問題とされる
のが「業務遂行能力の有無」であり、「心身の障害の有無」ではないからである。「心身
の障害により」という表現の導入により、機械的な運用が生まれるおそれがあり、かつ、
障害者に対する無理解・偏見を広げるおそれがある。
 なお、「身体的又は精神的障害」にともない、「障害を補う手段」によってもなお、
「業務の本質的部分」の遂行が困難である場合が
考えられるので、その場合にのみその人を欠格とする旨の規定を省令等に設けるべきであ
る。(障害に関連した「心身」という表現についても、誤解を招く恐れがあり、不適切で
あると考える。)
 試案の法律の規定から「心身の障害により」という部分を削除し「業務を適正に行うこ
とができない者」のみとすると対象があまりにも漠然としてしまうという懸念を持たれて
いるらしいが、「業務を適正に行う上で必要となる能力の発揮が長期にわたって制限を受
けている者」と置き換えた方が良いと考える。

3.「認知、判断及び意志疎通」と機能の障害についての関係の整理を
 業務の本質的部分の遂行が可能かどうかは、「認知、判断及び意志疎通」の能力によっ
て判断するとしたことは理解できる。また、これらの能力と視覚・聴覚・精神等の機能と
は一致しないことから、「障害を補う手段」や「治療等」が考慮されるとするのも当然で
ある。
 しかしながら「業務の本質的部分の遂行に必要不可欠な身体又は精神の機能」として、
医師免許等には「視覚、聴覚、音声若しく
は言語又は精神の機能の障害」、薬剤師免許等には「視覚又は精神の機能の障害」、理学
療法士等には「精神の機能の障害」が提案されている。この背後にあるのは、たとえば、
聴覚は(医師等の場合には)意志疎通に必要不可欠という認識であろう。しかしそれは
「手話、手話通訳その他の手段を用いることができるので、聴覚は意志疎通に必ずしも不
可欠の機能ではない」という我々の理解と食い違う。すでに手話が国語の地位を得ている
国もある。
 医療、リハビリテーション、社会福祉をはじめとする障害者施策は「機能の障害」の治
療とともに、「機能の障害」が残っても各種業務の遂行を可能にし、社会参加を進めてき
たのであって、厚生労働省自身がその中心的役割を果たしてきたことを踏まえて、(聴覚
と意志疎通の関係だけでなくより一般的に)考え方をさらに整理していただきたい。

4.不服審査の規定を設けること
 試案では、免許を与えられなかった場合に、免許権者が求めに応じて意見を聞くことと
しているが、当該申請者が「欠格に相当し免許を与えない」とする決定に対し、第三者機
関に再評価を申し立てられるようにするようにすること。なお、この機関は統合的なもの
でよく、免許制度毎に設ける必要は必ずしもない。

5.障害を補い軽減する手段や治療の効果判定を柔軟に
 試案では、当該申請者が「現に」利用している手段や「現に」受けている治療のみを考
慮するとしている。しかしながら、その手段が非常に高価であるために当該申請者が現に
日常的には利用していないが、使うことができれば確実に認知能力を高めることができる
ような機器もある(高性能の拡大読書機など)ことを考慮すべきである。


---------------------------------------------------------------
医師法等に係る欠格条項の見直し試案対する意見書について、
厚生労働省からの返答。
(原文はFAXで来ました。OCR読み込みで一応校正済です)
---------------------------------------------------------------
日本障害者協議会
代表 調 一興 様

平素より障害保健福祉行政に格別のご協力を賜リ、感謝申し上げます。
去る3月2日、厚生労働省の「障害者等に係る欠格事由の適正化等を
図るための医師法等の一部を改正する法律案」試案に対し、貴重な御意
見をいただき、どうもありがとうございました。
制度所管部局とともに、いただいた御意見を検討しました結果、厚生
労働省としては、以下の通りとしたいと考えております。

1.について
本法案の趣旨は、ご指摘のとおり、障害者の社会経済活動への参加の
促進等を図るためのものであり、この旨は、法律の閣議決定の際の法案
の「理由」において明記いたします。
なお、こうしたことを法律上規定することは、それぞれの法の趣旨、
目的等にかんがみ、困難であることをご理解願います。
また、法律の見直し規定については、今回の見直しは、障害者の社会
参加を進めるためにできる限りの内容としており、見直しについて規定
することは困難でありますが、障害者に係る欠格条項の運用に当たって
は、医学・医療の水準や障害を補完する機器の発達等の科学技術の水準
等に応じて柔軟に対応してまいりたいと考えております。

2.について
試案のような表現としましたのは、対象となる者を明確に規定すべき
という法制上の観点に鑑み、「心身の障害により」という規定を設けな
ければ、どのような人を対象とした欠格事由であるかが不明確な規定と
なり、その結果、省令で定めることができる者の範囲が、現在の範囲に
比べても無限定に広がりすきることから、「心身の障害により」として、
相対的欠格事由に該当しうる者の範囲を明確にする必要があるとの考え
によるものです。ご提案のありました規定案に関しましては、対象が広
がりすぎ、かえって不明確になりかねないと考えており、原案のとおり
とすることにつき、ご理解いただきたいと思います。

3.について
医療・薬事関係等のそれぞれの資格等に必要とされる機能は、業務に
より異なりますが、いずれの業務遂行にも必要な能カは「認知、判断及
び意思疎通」であり、その旨省令に規定することとしたいと考えており
ます。
その場合、そもそも欠格車由の対象とならない人をできるだけ明確に
するため、それぞれの資格等ごとに必要な機能(相対的欠格事由)を省
令で列挙することとしております。
このそれぞれの資格等に必要とされる機能の範囲については、その業
務の本質的部分の遂行に必要不可欠な身体又は精神の機能であるかどう
かという観点から決めているものでありますが、これらの機能の障害が
あっても、それを補う補助手段や治療等による障害の軽減により、業務
が遂行できる場合があるとの考え方に基づき、免許取得の判断において
は、それらを考慮することとしております。
また、免許を取得できるかどうかの判断に当たっては、当該障害につ
いて十分な理解がある医師等の専門家の意見を聞いて判断することとし、
さらに、免許を与えないこととする場合には、求めに応じて本人からの
意見聴取を行い、当該障害について十分な理解のある医師等の専門家を
同席させることにより、本人からの意見及び本人の状況を的確に把握し、
適切な判断ができる仕組みとしたいと考えております。
いずれにしても、判断方法については、判断事例の積み重ねも踏まえ
つつ、できるだけ明確にしてまいりたいと考えております。

4.について
不服申立のための第三者機関を設けるべきとのご意見ですが、欠格を
理由とする免許拒否処分には、行政不服審査法が適用され、免許権者に
対して不服申立できることとなっております。
なお、免許を取得できるかどうかの判断に当たっては,当該障害につ
いて十分な理解がある医師等の専門家の意見を聞いて判断することとし、
さらに、免許を与えないこととする場合には、求めに応じて本人から意
見聴取を行い、当該障害について十分な理解のある医師等の専門家を同
席させることにより、本人からの意見及び本人の状況を的確に把握し、
適切な判断ができる仕組みとしたいと考えております。

5.について
障害を補う手段に関しては、業務の適正性を確保するため、現に用い
ている補助手段を前提として判断する必要があると考えておりますが、
具体的な運用については、実態も踏まえながら、柔軟に運用してまいり
たいと考えております。


いただいた御意見に対する厚生労働省の検討結果は以上の通りであり、
法律条文案に関しましては原案の通りとさせていただきたいと考えてお
ります。
省令その他の運用事項に関しましては、引き続き、皆様の御意見を十
分にお聞きしながら、円滑な運用に努めてまいりたいと思いますので、
今後ともどうぞ宜しくお願い申し上げます。

平成13年3月12日
厚生労働省社会・援護局
障害保健福祉部企画課長 仁木 壮

 

◆聴覚障害者を差別する法令の改正を目指す中央対策本部(「障害者等に係る欠格事由の適正化等を図るための医師法等の一部を改正する法律試案」に関する意見)

2001年3月2日
厚生労働省
社会・援護局障害保健福祉部様

162−0801東京都新宿区山吹町130SKビル8F
財団法人全日本ろうあ連盟内
TEL:03(3268)8847 FAX:03(3267)3445
聴覚障害者を差別する法令の改正を目指す中央対策本部


「障害者等に係る欠格事由の適正化等を図るための医師法等の一部を改正す
る法律試案」に関し、聴覚障害者に限って意見を記します。


第1.法律事項についての意見
1.『業務を適正に行うことのできない者』との部分について
 (1) 業務を『適正に行う』とは極めて抽象的であって、主観的な解釈を認
める結果となりかねないと考える。
 概念範囲として広すぎ、欠格条項廃止の精神からして権利を制限する法律
条文の規定としては、不明確に過ぎるのではないか。
 (2) 単に『業務の遂行ができないことが明らかで、省令で定める者』とす
れば足りるのではないか。


第2.的確な運用(省令事項)についての意見
1.省令の具体的内容について
 (1)『業務を適正に行うに当たって』『適切に行うことができない者』との
部分の『適正に』『適切に』との文言(特に前者)が抽象的・主観的で、賛
成できないこと、上記第1記載の通り。
 試案を前提にすれば、ここでも、省令が定める者とは『業務遂行に必要な
認知、判断及び意思疎通ができないことが明らかである者とする』となろう
か。
 (2) 但し、本来的には、省令である以上、法律をより具体化した条項とす
る必要があると考える。
 この点から言うと、業務遂行上の『認知、判断及び意思疎通』とは何か、
具体的内容も規準も不明確であり、このままでは解釈次第となりかねない
(判断にあたる者の主観的評価を認める結果となりかねない)。
 省令であるから、例示等の方法を用い、より具体的・客観的に明らかにす
べきではないか、と考える。
 (3) また、このような包括的な規定の下で、なおかつ業種を3分類する必
要があるか、どうかは疑問である。
 特に資格等取得にあたって『当該者が現に利用している障害を補う手段・
・・により障害が補われ又は軽減されている状況を考慮する』として、個々
の『当該者』についての状況を具体的に考慮すると言うのであれば、その都
度の具体的考慮に加えて、なおかつ業種区分が必要か、疑問である。
 業種3分類というイメージが一人歩きし、業種の位置付けに社会的誤解が
生じないか懸念する。
 (4)『適正な』という抽象的文言を除けば、労働安全法試案例が『…必要な
〇〇(作業の内容)の操作又は〇〇(作業を行う周囲の状況等)の認知若し
くは判断』としているのは、客観的かつ具体的で、支持できる。


第3.省令の資格等の取得についての意見
1.資格取得の規定試案について
 (1) 『当該者が現に利用している障害を補う手段・‥により障害が補われ
又は軽減されている状況を考慮する』としているのは、個々の『当該者』に
ついて具体杓に考慮することであり、賛成する。
 (2) 但し、『現に利用している』と利用を現状の範囲に限定しているかの
ような記載と『障害を補う手段』という文言については賛成しがたい。
 聴覚障害者の場合、通訳者等の『補助者』による場合が多く、これは社会
的には手話通訳者が中心であるが、教育機関のレベルでは筆記通訳により、
社会に出てから手話通訳に移行する例も多い。そして「補助者」を「手段」
という物的イメージのことばで表現することには抵抗がある。
 従って、『当該者が障害を補うために、現に利用し、または今後の利用が
可能な補助者もしくは補助手段』等とするのが正当かと考える。


第4.資格毎の判断方法(省令又は運用(通知)事項)についての意見
1.資格毎の判断方法
 (1) 医師の場合の聴覚機能の障害者についての説明は、具体杓であり、発
想としては賛成できる。
 (2) しかし、臨床実習での補助的手段で、かつ普遍的・実用的と判断され
る範囲と限定することには疑問がある。
 第一に、『補助者もしくは補助的手段』とするべきこと前記の通り。
 第二に、障害者の場合、個々の工夫と努力に頼る面も強く、普遍的なもの
と限定されると実情に合わない場合がでてくると思われる。
 第三に、臨床実習と明言すると、本人の力量と関係なく、実習機関の設備
・配慮の有無で決定されてしまうことを懸念する。
2.判断者は誰か
 (1) 判断者は免許権限者であり、免許権限者が可否を評価・判定するが、
薬剤師等の場合、『厚生労働省の担当者及び医師等の専門家』が立ち会い・
確認して判定する場合があるとしている。
 (2) しかし、法律上の判断権限者はともかく、現実に判断・確認する者は
誰か、ということが重要である.
 現実に判断・確認する者によって、評価・判断が左右されることのない客
観的担保が必要となる。
 この点について、資格分野での専門家のみでなく、『当該』障害の問題に
ついて十分な理解・経験を有している専門家が加わり、客観性を保障する必
要がある。


第5.意見聴取手続きについて(法律事項・省令事項又は運用(通知)事項)
の意見
1.意見聴取者について
 (1) 免許権限者の指定する職員が意見を聴取することがあるが、この職員
は、資格分野についての専門的知識を有する者だけでなく、『当該』障害問
題について十分な理解・経験を有している職員が加わる必要があること、前
述の場合と同様である。
 (2) 二次的聴取機関設置
 意見聴取は一回限りというイメージのようであるが、判断の正当性につい
て不服がある者に対して、この一次評価の可否を審査する機関(中央審査機
関)を設置するのが望まれる(メンバーは、第4.2.(2)のとおり、資格分野
での専門家と障害者問題の分野での専門家とし、第三者委員を加えるのが望
ましい)。
 (3) なお、意見聴取についても補助者・補助手段が認められなければなら
ないこと、前述のとおり。


第6.付言
1.教育保障
 (1) なお、この法令の改正と並行して、教育機関での入学・就学保障が必
要となる。『障害が補われ又は軽減され』る状況を確保しようとする態勢が、
教育機関に必要である。

以上

 

◆厚生労働省 医政局・健康局 医薬局・同食品保健部 労働基準局安全衛生部 20010316 「「障害者等に係る欠格事由の適正化等を図るための医師法等の関係法令改正試案」に寄せられた意見について」

「障害者等に係る欠格事由の適正化等を図るための医師法等の関係法令改正試案」に寄せられた意見について

http://www.mhlw.go.jp/public/kekka/p0316-1.html

平成13年3月16日
厚生労働省
医政局・健康局
医薬局・同食品保健部
労働基準局安全衛生部

 「障害者等に係る欠格事由の適正化等を図るための医師法等の関係法令改
正試案」について、平成13年2月14日から平成13年3月2日までイン
ターネットのホームページ等を通じて御意見を募集したところ、60通の御
意見をいただきました。
 お寄せいただいた御意見等とそれらに対する当省の考え方につきまして以
下のとおりご報告いたします。とりまとめの都合上、いただいた御意見等は
適宜集約しております。
 いただいた御意見については平成13年4月末まで厚生労働省行政相談室
(中央合同庁舎第5号館2F)で閲覧することができます。
 なお、パブリックコメントの対象ではない事項に関する御意見等も寄せら
れましたが、パブリックコメントの対象となる事項に限って考え方を示させ
て頂いております。

【頂いた御意見等と当省の考え方】

1. 絶対的欠格事由から相対的欠格事由への改正について

<御意見>
 心身の障害により」という文言は削除すべきではないか。


<回答>

 試案のような表現としましたのは、対象となる者を明確に規定すべきとい
う法制上の観点に鑑み、「心身の障害により」という規定を設けなければ、
どのような人を対象とした欠格事由であるかが不明確な規定となり、その結
果、省令で定めることができる者の範囲が、現在の範囲に比べても無限定に
広がりすぎてしまいます。このため、「心身の障害により」として、相対的
欠格事由に該当しうる者の範囲を明確にする必要があると考えます。「心身
の障害により」という文言を入れない規定とした場合、心身の障害を原因と
するもの以外まで含まれることになり、対象が広がり、かえって不明確にな
りかねないものと考えております。

2.相対的欠格事由の的確な運用について

(1) 「厚生労働省令で定める者」の具体的な内容について
<御意見>
 臨床工学技士及び視能訓練士については、相対的欠格事由として聴
覚、音声又は言語障害を加えるべきではないか。


<回答>

 臨床工学技士及び視能訓練士の相対的欠格事由の範囲に関する原案は、そ
れぞれの業務の本質的部分の遂行に必要不可欠な身体又は精神の機能である
かどうかという観点から決めているものでありますが、それぞれの業務の実
態も踏まえ、その範囲については、省令策定までの間において引き続き検討
してまいりたい。

(2)相対的欠格事由に該当する場合の資格等の取得について

<御意見>
 障害を補う手段等の評価については、柔軟に行っていくべきではな
いか。また、現に利用しているものに限定すべきではない。


<回答>

 障害を補う手段に関しては、業務の適正性を確保するため、現に用いてい
る補助手段を前提として判断する必要があると考えておりますが、具体的な
運用については、社会一般における障害を補う手段に関する実態、技術の進
展状況も踏まえながら、柔軟に運用してまいりたいと考えております。

3. 相対的欠格事由に該当する者に係る具体的な判断方法について

(1)医師の診断書を基に障害の有無等を把握することについて

<御意見>
 医師の診断書の提出は不要なのではないか。


<回答>

 免許申請に当たって提出を求める医師の診断書には、相対的欠格事由に該
当する障害の有無のみならず、治療や投薬等により障害の程度が軽減されて
いる状況についても記載することとしていることから、医師の診断書の提出
は必要であると考えております。

(2)各資格等ごとの判断方法について

<御意見>
 認知、判断及び意志疎通を適切に行うことができるかどうかに関す
る具体的な判断基準を明確化すべきではないか。


<回答>

 身体の機能の障害がある方については、医師等の医療関係の資格免許につ
いては、臨床実習を受けたか否か、また、その際にどのような項目をどのよ
うな補助的手段を活用して受けたかなどを勘案して決定することとしており、
その際、用いた補助的手段が、現在の科学技術水準、一般的な医療水準に鑑
み、普遍的かつ実用的な範囲にあるか否かを基準とすることとしております。
 また、精神の機能の障害がある方についての判断基準については、あらか
じめ具体的に規定することは、現時点での医学的な知見等から困難であると
考えております。
 なお、免許が取得できるかどうかの判断に当たっては、当該障害について
十分な理解がある医師等の専門家の意見を聞いて判断することとし、さらに、
免許を与えないこととする場合には、法律上、求めに応じて本人からの意見
聴取を行い、当該障害について十分な理解のある医師等の専門家を同席させ
ることにより、本人からの意見及び本人の状況を的確に把握し、適切な判断
ができる仕組みとしたいと考えております。
 いずれにしても、判断方法については、判断事例の積み重ねも踏まえつつ、
できるだけ明確にしてまいりたいと考えております。

<御意見>
 資格付与の具体的判断に携わる者の人選に配慮すべきではないか。


<回答>

 具体的判断に当たっては、当該障害について十分な理解がある医師等の専
門家の意見を聞いて判断することとし、また、免許を与えないこととする場
合に、求めに応じて行う意見聴取の際にも、当該障害について十分な理解が
ある医師等の専門家を同席させることといたします。こうした手続を経るこ
とにより、本人からの意見及び本人の状況を的確に把握し、適切な判断がで
きる仕組みといたします。

4. 意見聴取手続の整備について

<御意見>
 免許を与えないとする決定がなされた場合の不服申立制度を法に規
定するとともに、不服申立のための第三者機関を設置すべきではない
か。


<回答>

 欠格を理由とする免許拒否処分には、行政不服審査法が適用され、免許権
者に対して不服申立できることとなっています。
 また、行政機関から独立した第三者機関を設置することについては、免許
を与えないこととする場合の意見聴取において、資格分野についての専門的
知識を持つ者だけでなく、当該障害について十分な理解のある医師等の専門
家を同席させることとしており、こうした手続を経ることにより、第三者機
関による判断と同様の判断の客観性を担保したいと考えております。

5. その他

<御意見>
 教育、就業環境の整備、補助手段等に対する公的補助の拡充等社会
的条件の整備を図るべきではないか。


<回答>

 障害者に係る欠格条項の見直しを実効あるものとするという観点から、障
害を補う機器の開発、事業主への助成など就業環境の整備等に努めるととも
に、関係行政機関等に対して、教育機関での障害者に配慮した修学環境の改
善など、障害者の資格取得支援のための条件整備について働きかけてまいり
ます。

<御意見>
 一定期間後の見直し規定を設けるべきではないか。


<回答>

 今回の見直しは、障害者の社会参加を進めるためにできる限りの内容とし
ており、一定期間経過後の法律の見直しについて規定することは困難ですが、
障害者に係る欠格条項の運用に当たっては、医学・医療の水準や障害の機能
を補完する機器の発達等の科学技術の水準等に応じて柔軟に対応してまいり
たいと考えております。

以上


……以上……

REV: 20160125
欠格条項  ◇全文掲載
TOP HOME (http://www.arsvi.com)