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『ヒトに関するクローン技術等の規制に関する法律案』への意見書

フィンレージの会(有志) 2000/11/13

last update: 20160122


                               2000年11月13日
衆議院科学技術委員会
     委員の皆様

                        フィンレージの会(有志)
                  〒101-0041 千代田区神田須田町1-4 3F5号
                              FAX 03-5207-5848

   『ヒトに関するクローン技術等の規制に関する法律案』への意見書

 私たちフィンレージの会は、子どもを望みながら子どもができない不妊という状態
にある人どうしのセルフ・ヘルプ(自助)を目的として、およそ10年間活動している
グループです。個人の会員は600名以上(2000年度)おり、連携して活動している地
域自助グループも全国にあります。会の活動としては、ニューズレターの発行、地域
の自助グループ活動や講座等への支援、不妊や不妊治療に関する実態調査等を行なっ
ています。個人代表は置かず、10名以上のスタッフが中心となって手弁当で運営して
います。
 2000年度には「加藤シズエ賞」を受賞いたしました。また、東京都女性財団からの
援助を受け、1993年度に「レポート不妊ーフィンレージの会活動報告書」を、1999年
度に「新・レポート不妊-不妊治療の実態と生殖技術についての意識調査報告」を発
行しております。
 この「新レポート不妊」では、昨年1月に、現会員と旧会員857名からのアンケート
調査結果をまとめたものです。そこから、生殖補助医療の大変な実態を数値と会員の
生の声から描き出しました。会員の多くは不妊治療、とりわけ体外受精や顕微授精な
どの先端的医療を体験しています。もちろん、胚を凍結保存している人も少なくあり
ません。
 そこで、私たちは今、審議されている『ヒトに関するクローン技術等の規制に関す
る法律案』に意見を述べさせていただきたいと思い、FAX差し上げる次第です。よろ
しくお取り計らいくださるよう、お願い申し上げます。

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   『ヒトに関するクローン技術等の規制に関する法律案』への
          フィンレージの会からの意見書

       実験に使われようとしているヒトの胚や卵は
      どのようにして体外に採りだすのか御存知ですか?

l 私たちは、私たちの卵や受精卵・胚が、人間のクローン研究やES細胞研究に用いら
れることに、強い恐れを抱いています。なぜなら、いままでに、自分たちの不妊治療
のために冷凍保存していた胚が、保存期限が切れた時にどのように処理されたのか、
医師から知らされていた人はほとんどいないからです。この法律ができた際に、『ヒ
トに関するクローン技術等の規制に関する法律案』では、クローンによって人間を生
み出すことは禁止していますが、研究は「指針」にしたがって行なえることになって
います。保存していた胚だけではなく、体外受精や顕微授精のために採卵した卵を、
これらの研究に用いられる際に、黙って用いることは、密室では簡単なことなのです。

l 私たちの会員の多くは不妊治療のための排卵誘発剤による副作用を経験します。人
間のクローン研究やES細胞研究に用いられる「胚」や「卵」は、実験材料としてシャ
ーレの中にある前に、何日も(長いときには2週間も)毎日排卵誘発の注射のために通
院し、注射痕が腫れ上り、吐き気やめまいがしても我慢し、卵巣に何度も針を指して
採卵する痛み(麻酔をするので痛みはないという医師もいますが、実際に強い痛みを
感じる人は少なくありません)に耐えて、やっと「卵」が体外に採りだせるのです。
そのために卵巣が腫れ、腹水が溜まるという経験をした人は多くいます。中には、生
命に危険のある状態に陥った人も、後遺症に苦しむ人もいます。採卵による死亡事故
や脳血栓といった重大事故が報道されたことを御存知ですか?

l 今回の法案はクローンやキメラの研究だけについて規制しようとしていますが、体
外にある「胚」や「卵」は不妊治療においては、他人に提供できる「資源」として注
目されています。また「不妊治療の進展のため」という理由で自由に研究に用いられ
ている可能性があります。私たちの「胚」や「卵」は、ES細胞を作成するための材料
としても注目されています。でも、それらの議論の中に、私たちの苦労や苦痛、リス
ク、時間や金銭的負担(体外受精や顕微授精には年間百万円を超える医療費を費やす
人も少なくありません)は、まったくといっていいほど考慮されていません。

l 法案には、「特定胚の作成に必要な胚または細胞の提供者の同意が得られているこ
と」とだけ記述されています。たとえ、これを厳密に実行するような「指針」が作成
されたとしても、これまでもその受精卵が子どもとなることを願っている人たちの同
意もとられておらず、それに対して不満があっても医師との関係を懸念して、主治医
に尋ねることさえもできないという状況なのです。現状を改善する方策が何もとられ
ずに「指針」が遵守されるとは思えません。

そこで私たちは、次のことを要望します。

1. 今回の法案成立を急ぐのではなく、人間の「胚」や「受精卵」「未受精卵」また
は「精子」を用いる研究および生殖医療の実施を包括的に規制する法律を新たに準備
・制定すること。
2. その際には、広く国民、とりわけ「材料」を提供することになる当事者の意見を
十分に聴き、議論を尽くすこと。
3. 生殖細胞を用いるいかなる研究も、密室で実施できないようなシステムを考え、
「材料」提供者のプライバシーには十分に配慮しつつも、研究の情報開示を原則とす
ること。
4. もし万が一、諸条件が整備されて生殖細胞および配偶子を用いた研究が許可され
る場合には、「材料」を提供することになる当事者には、どのような研究や臨床に用
いるのか(クローン研究か、ES細胞研究か、不妊治療等の研究か、それとも他の不妊
の人への提供なのか)の内容を十分に理解できるように説明した上で、その研究に
「協力」するか否かについて、拒否した場合にも治療等で不利を被らないことを保証
し、(主治医等との関係から拒否できないような状況を避け)、いったん同意した後で
も、その同意を撤回できるようなシステムを作ること。
5. これらの規制に違反した場合には罰金だけではなく禁固刑など重い刑を課すこと。
なぜなら、クローン研究やES細胞研究は商業的に利用できる可能性が大きく、罰金を
払う危険を侵してでも研究をする者が現れる可能性が高く、また生殖医療においては
罰金以上の金銭を支払っても研究および臨床応用を実施する者が現れるのは、海外の
状況を見ると十分に可能性があると思われるからです。

以上、十分に御検討くださるよう要望いたします。

 

●報道

『毎日新聞』2000年11月13日
クローン法:不妊に悩む人のグループが情報公開求める意見書

 不妊に悩む人のグループ「フィンレージの会」(会員800人)の有志は13日、クローン法案を審議している衆院科学技術委員会に対し、クローンの基礎研究やES細胞(万能細胞)の研究が密室で行われることがないよう、情報公開の原則を求める意見書を提出した。
 クローン研究やES細胞の材料となる卵子、受精卵を提供する不妊患者の側から初めて出された抗議の声として注目される。
 政府のクローン法案では、クローン人間を作ることは禁止されるが、不妊治療で作られるヒトの受精卵や卵子を使ってクローン細胞やES細胞を作成することについての規制はなく、基礎研究として容認される可能性がある。
 同会のアンケートによると、不妊治療を受けた会員の8割が医療機関に受精卵を凍結保存した経験があるが、保存期間の終了後に医師が受精卵をどう処理したかの連絡を受けた人はほとんどいない。
 意見書は、クローンだけでなく生殖医療を広く包括的に規制する法律の制定や、卵子や受精卵を提供する不妊患者を含む国民の意見を広く集めて議論を尽くすことなどを求めている。 【松村由利子】

REV: 20160122
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