他の多くの国と同じように、イギリスでも遺伝子検査の結果と保険加入希望者のリスク評価の関係について、長く議論が続いてきた。民間の医療保険に頼るアメリカと違って、イギリスでは基本的な医療サービスは税金で賄われ、社会保障として提供される(NHS, National Health Service)。そのため、民間の医療保険はあくまで補足的な扱いとなるため、生命保険を対象にした議論が中心であった。これは住宅ローンの設定などにおいて、生命保険が適格担保として認められていることが大きく原因している。
民間の生命倫理学研究機関であるNuffield Council on Bioethicsは、1993年の『遺伝子スクリーニング:倫理的な問題』という報告書のなかで、遺伝子検査と保険の問題について取り上げ、「保険会社には医学的なデータに基づくリスク評価の結果を過大に受け止め、慎重になりすぎる傾向がある」と指摘している。また、保険会社に対して、検査結果を利用しない現行の方針を堅持するように求めるとともに、少なくとも政府との交渉期間中はモラトリアムにすべきだと勧告していた。ただ、そのモラトリアム期間にあっても、「遺伝性疾患の明らかな家族歴がある場合に、検査を受けたかどうかを尋ねること」は例外として認められるとしている21)。
この議論の公的なスタート地点は、1995年に下院の科学技術委員会から出された報告書であり、遺伝子検査の結果によって保険加入や雇用における差別を生みうることが明示されている22)。この指摘を受け、1996年12月には、遺伝子技術の進展が社会にどのような影響を与えるのかを検討する独立機関として、保健省がHGAC(Human Genetics Advisory Commission)を設置している。HGACに託された課題は広いものだったが、優先課題は遺伝子検査が保険に与える影響について検討し、報告書をまとめることであった。
1997年2月、イギリスの保険業職能団体であるABI(Association of British Insurers)が声明を発表し、「保険会社に遺伝子検査の結果へのアクセスを禁じることによって、既に検査を受けて最も発病リスクの高い人々がより高額の保険商品を購入する可能性がある。そうなると、全ての人々により高い保険料を求めなければならない」と「逆選択」を恐れる保険会社が、遺伝子検査の結果を利用できるようにしたいと訴えた。そして、12月17日には『遺伝子検査に関する実施要綱』を発表している23)。保険金が10万ポンド(約1700万円)以下の、住宅ローンの担保となる生命保険に関しては、検査結果を利用しないモラトリアム期間を持つとの条件をつけながらも、「保険加入希望者に検査受診を強制することはない。だが、加入申込書のなかで検査受診の経験を尋ねられた場合には、加入希望者は結果を伝えるべきだ」と主張していた。
一方、全く同じ日に、HGACも『保険をめぐる遺伝子検査の問題点』という報告書を出している24)。こちらの骨子は、「遺伝子検査の結果開示には、少なくとも2年間のモラトリアムが必要。そのモラトリアムは、特定の遺伝子検査について、保険数理上明らかに有意な関連がみられるとの学術的な判断ができた場合に限り、一部の保険商品に限って解除されるべきだ」としており、検査結果のほぼ全面適用を目指すABIとは異なる見解に立っていた。
1998年には政府からHGACの報告書に対するコメントが発表されている25)。HGACによる勧告はおおむね受け入れられるとしたものの、「保険商品の開発にとって、遺伝子検査の結果は重要な意味を持つことが認められる。メンデル型遺伝の稀少な病気についての遺伝子検査の科学的妥当性と、保険数理への影響に関して、厳密な評価を続けていくことが大切である。そのため、保険会社による検査結果の利用を監視するためのシステムを構築する必要がある」と結論付けていた。
監視システムに関する提案は、Nuffield Council on Bioethicsによる1998年の『精神障害と遺伝学:倫理的な文脈から』という報告書のなかでも指摘されている26)。「保険会社による検査結果の利用は、簡単に不当な差別につながりうる。特に精神障害の場合には、そのスティグマ(烙印)の大きさに留意しなければならない」と指摘し、「検査結果によって、どの程度の保険料の変更や加入者の増減があったのか、逐一政府に報告されるような監視システムを設けるべきである」と提案している。こうして保健省は「2年間のモラトリアム」の後に、続々と確立されつつある遺伝子検査を保険数理に活用できるかどうかを検討するために、また保険会社からの申請に備えるために、審査システムを構築し始めた。
その中心となる監視機関として、1999年春にGAIC(Genetics and Insurance Committee)が設立されている。GAICは計8回の会合を通じて、保険会社が使用する申請用紙のフォーマットを作成し、審査システムの設計を行った。検討のプロセスには、ハンチントン病の当事者団体であるHuntington Disease Associationや遺伝性疾患の当事者団体135団体の連合体であるGenetics Interest Groupなどもメンバーに入っており、申請プロセスの原案に対するコメントも行っている27)。そして、最初の具体的な事例として、ハンチントン病の遺伝子検査結果に関して検討を行い、先日の承認に至っている。GAICでは、今後も単一遺伝子疾患に限り、審査の対象として個別に認めていく方針をとっている。
また、GAICとは別に、HGACの提案に沿ってUK Forum for Genetics and Insurance が設立された。関係する諸団体が参集して定期的に情報交換と対話の機会を持つことを目的としたもので、ABI, Nuffield Council on Bioethics, Genetic Interest Group, British Society of Human Geneticsなどがメンバーとして名を連ねている28)。
保険会社が遺伝子検査に抱く懸念は、自分の発病可能性を知っている人が逆に高額の保険商品に加入しようとする「逆選択(adverse selection)」である37)。リスクに差のある人々に同一の保険料率を課すことによって、よりリスクの高い人は相対的に安く保険を買える一方で、リスクの低い人は相対的に高い保険を買わされることになってしまう。すると、リスクの高い人が保険に過剰投資するようになり、採算を確保するため保険料率は引き上げられ、結果的にリスクの低い人が保険市場から締め出されてしまうこともある。保険というシステムである以上、リスクの低い人には少ない負担を、危険率の高い人にはより多くの負担を求めるのが公正な保険料率決定の原則である。しかし、この原則が実現できるのは、「情報の非対称性(asymmetry of information)」が存在しない場合に限られる。保険会社が保険加入者のリスク情報を持ち合わせていれば、リスクに応じた保険料率の設定が可能となるが、情報が保険加入者にしか知らされていなければ、逆選択は容易に生じてしまう。保険会社が恐れるところは、発症前遺伝子検査による個人の遺伝子情報が逆選択の問題をより深刻にすると考えている点であろう。
そこで、逆選択の問題をどのように考えるべきか。逆選択によるデメリットは何も保険会社に限ったことではなく、相対的に割高な保険料を課せられる(あるいはそのために保険商品を購入できなくなる)リスクの低い人にも及ぶことになる。このような社会的非効率性を重視するのであれば、逆選択を防ぐことによってそのデメリットを取り除く方向性が考えられよう。そして、今回のイギリス保健省の決定はまさにこうした考え方を反映したものである。保険会社に遺伝子検査の結果を利用できる権利を与え、情報の非対称性を是正することによって、保険料率を個々人のリスクに応じたものにし、リスクの低い人に生じうるデメリットを解消しようという意図が窺える。とはいえ、この方向性においては以下の点に留意しなければならない。
一つは、既に議論したように、保険加入の道を閉ざされてしまうリスクの高い人々に対しては、何らかの救済措置が必要とされるということである。今回のイギリス保健省の決定における最大の問題点は、保険加入の道を閉ざされる人々に対して、救済措置が用意されないまま、保険会社にだけ権利が認められた点にある。イギリスのハンチントン病協会では、保健省に対して、発症リスクのある人々が、遺伝子検査を受けなくても入ることのできる生命保険(ハイ・リスク・プール)を社会保障の枠組みで準備してもらいたいと陳情してきたが、それは実現されていない。それは、生命保険が医療保険と違い、「基本的な人権にあたるとはいえない」(WHO)ことから、議論の狭間に陥ってしまったまま積極的な考慮がされにくい結果になっていると考えられる。情報の対称性を確保し、保険というマーケットの機能を重視した場合でも、そのマーケット機能ではカバーしきれない部分(保険から排除されたリスクの高い人々)については、政府による社会保障政策等によって救済されるべきであろう。
また別の懸念は、発症前遺伝子検査を受診するか否かを決定する要因の一つとして、「保険」という要素が加わってしまう点である。先に述べたように、発病前遺伝子検査は、本来は第三者からのいかなる強制とも独立し、検査の意義と依頼者の人生設計という観点のみの自己決定が尊重されるものとして位置付けられてきた。しかしながら、今回の決定によって、検査結果が保険会社との関係における「取引材料」としての価値を付与されてしまったことになる。ABIがいかに「強制はしない」と誓ったとしても、「説明」が「説得」になり、「強制」につながるという流れは、様々なインフォームド・コンセントの研究からも明らかになっている。保険会社との交渉の過程で「知らないでいる権利」を侵害される恐れや、本来は検査を受けたいと思っている人が保険会社による差別を恐れて「知る権利」を放棄せざるを得なくなる可能性など、発症前遺伝子検査に対する態度を決める材料が複雑になっていくことが予想される38)。「保険」の要因が極力影響することなく、検査受診の自己決定はどのように保障されるべきだろうか。保険会社との交渉に関する苦情を申し立てられる場所を政府内に設けるなど、別の仕組みも検討しなければならないだろう。
一方、「逆選択」を防ぐことによって社会的非効率性を是正する方向とは全く逆に、保険会社による遺伝子検査情報の利用を禁止する方向性もありうる。例えば、アメリカでは健康保険の例になるが、1996年に団体加入保険の遺伝子情報の請求を禁止する連邦法(The Kassebaum-Kennedy Health Insurance Portability and Accountability Act)39)が通過しており、各州に保険会社に規制する方向で、「過去の病歴や遺伝的条件を加入謝絶の理由にしてはならない」という法律が制定され始めている。さらに連邦法として、医療保険と雇用に関する差別禁止法案(Genetic Nondiscrimination in Health Insurance and Employment Act)も審議中である。
ただし、こうした方向性のもとでは逆選択の問題は避けて通れない。アメリカをみると、加入者の選別が制限されることに反発した保険会社が制度の厳しい州での営業を手控えたり、保険料が高額になるために健康保険に加入できない無保険者の人数が増えていることが問題になっている。Carrasquilloらによれば、1996年には4,170万人の無保険者がいたが、2002年には4,400万人に膨れ上がると試算され、全体の4割近い人々が無保険のままでいることになり40)、保険会社の情報の入手を制限することで逆にアクセスを困難にしてしまうこともあり得る。
逆選択と遺伝子差別を同時に防止するために、立岩(1998)は、保険会社を規制すること、全成員が強制的に加入する制度を導入することによって遺伝子差別を防ぎ、同時に逆選択を予防するために、遺伝子検査を受けずに保険会社も自分も情報を持たないまま加入する、という方策を提案している41)。相互扶助として始まった保険の「将来のことはわからない」という――しかし検査の普及が破壊してしまうだろう――前提条件を、人為的に保持するという方向性である。筆者もこの方策を支持するものであるが、遺伝性疾患に属する人々の現状を考えると、さらにいくつかのことを同時に進めていかなければなるまいと考える。その点を次に述べたい。
イギリス政府は、単一遺伝子疾患に限って、生命保険会社に検査結果を利用する権利を認めた。検査を受けて陽性だった人々をどのように救済するか、検査受診の自己決定が「保険」に影響されないようにするにはどのようなシステムが必要か、という問題は残したままである。しかし、既に潜行する不当な差別の問題を無視することなく、検査結果の利用について逐一審査するシステムを保険業界に認めさせた意義は大きい。この決定は、「遠い外国の、稀少な疾患に対する話」ではなく、日本でも近いうちに必ず検討しなければならない。既に日本でも、既に生命保険と遺伝子検査をめぐる裁判が起こっているほか45)、遺伝的素因を理由とした加入謝絶のケースは報告されてきている46)。だが、いまだに生命保険業界と政府との対話は始まっておらず、流動的な状況が続いているうえに、遺伝医療の基盤そのものにも問題を残した状態にある。
またイギリス政府は、遺伝的要因と環境要因との交絡を考慮する必要のある多因子疾患にかかりやすいかどうかをみる易罹患性検査の結果については、現段階では保険会社に認めるつもりはないと決定している。遺伝的素因の影響をどのように解釈するか、不確定性の問題が大きいからである。だが、今後は多因子疾患のかかりやすさに対しても、遺伝的素因からの具体的な指摘が増えていくことだろう。また、マイクロアレイ技術の進展により、短時間に低コストで多数の遺伝子の発現プロファイルを観察できるようになってきていることも無視できない。こうしたポスト・ヒト・ゲノム時代の流れに伴い、保険会社の逆選択への危機感が煽られる可能性もある。そのため、保険会社だけでなく、当事者に対しても、現段階での遺伝子情報の限界と解釈が十分に伝わるように、科学者との対話の機会を増やしていかねばならないだろう。監督官庁も交え、UK Forum for Genetics and Insuranceのようなつながりを持っておくことが望ましいと考えられる。
そして最も大切なことは、遺伝子検査を受けた結果、「発病する」ことと向き合って生きる人々にとっても、また検査を受けずに「発病の可能性」を抱えながら生きる人々にとっても、個々の自己決定のプロセスができるかぎり独立したものであり、その選択が最大限に尊重されることである。そのうえで、保険という「リスク・ファクター理論」による装置の限界をどのような制度でカバーしていくのかをも考慮し、遺伝子技術とともに歩む社会を構想していくことが必要であろう。
謝辞
本稿の執筆にあたり、お忙しいななか迅速かつ有益なコメントを寄せてくださった、金澤一郎先生(東京大学)、ぬで島次郎先生(三菱化学生命科学研究所)、高田史男先生(Children's Hospital, Boston MA)に心よりお礼を申し上げます。
註
1)Huntington’s Disease Collaborative Research Group (1993) “A novel gene containing a trinucleotide repeat that is expanded and unstable on Huntington’s Disease chromosome”, Cell 72: 971-983.
2) Genetics and Insurance Committee (2000) “Decision of the Genetics and Insurance Committee: Concerning the application for approval to use genetic test results for life insurance risk assessment in Huntington’s Disease (GAIC/01.1)”, Department of Health. [http://www.doh.gov.uk/genetics/gaichuntington.htm]
3)直接的なDNA検査に比べてリンケージ検査の精度は劣るが、CAGリピート数が解釈困難な回数を示した場合には、発症者の出ている家系のリンケージ検査も併用することで精度を高めようとしていると考えられる。
4)World Health Organization (1995) "Guidelines on ethical issues in medical genetics and the provision of genetic services", World Health Organization
5)20万ギルダー以上の保険に対しては、検査結果の開示が必要とされるが、オランダのハンチントン協会は二段階の措置を歓迎している(1999年国際ハンチントン協会会合における報告より)。
6)フランスでは1994年の生命倫理法により、遺伝子検査の実施は医学及び医療目的に限るという制限を民法典に定めている(ぬで島次郎(1994)「フランス『生命倫理法』の全体像」『外国の立法』33巻2号参照)。フランス保険協会は、5年間のモラトリアムを延長して、2004年までは遺伝子検査結果の利用を控える方針とのこと。
7)前出2.
8)Harper PS, Lim C, Craufurd D (2000) “Ten years of presymptomatic testing for Huntington's disease: the experience of the UK Huntington's Disease Prediction Consortium”, J Med Genet Aug 37(8): 567-71.
9)Klawans H Jr, Paulson GW, Barbeau A (1970) Predictive test for Huntington’s chorea, Lancet 2: 1185-1186.
10)Klawans H Jr, Paulson GW, Pingel SP, Barbeau A (1972) Use of L-dopa in the detection of presymptomatic huntington’s chorea, New England Journal of Medicine 286(25): 1332-1334.
11)Hemphill M (1973) Pretesting for Huntington’s Disease: an overview, Hastings Center Report 6: 12-13
12)Lappe M, Gustafson JM, Roblin R (1972) Ethical and social issues in screening for genetic disease, New England Journal of Medicine 286(21): 1129-1132
13)Gusella JF, Wexler NS et al. (1983) A polymorphic DNA marker genetically linked to Huntington's disease, Nature 306(5940): 234-8.
14)カナダとイギリスのグループが多数の論文を出しているが、代表的なものに<カナダ>Bloch et al. (1992) Predictive testing for Huntington’s Disease in Canada: the experience of those receiving an increased risk, American Journal of Medical Genetics 42: 499-507. <イギリス>Harper PS, Lim C, Craufurd D (2000) Ten years of presymptomatic testing for Huntington's disease: the experience of the UK Huntington's Disease Prediction Consortium, Journal of Medical Genetics 37(8):567-71.また、自殺に関する統計はAlmqvist EW et al .(1999) A worldwide assessment of the frequency of suicide, suicide attempts, or phychiatric hospitalization after predictive testing for Huntington's disease, American Journal of Human Genetics 64: 1293-1304.
15)Maat-Kievit A, et al.(1999) Predictive testing of 25 percent at-risk individuals for Huntington disease (1987-1997), American Journal of Medical Genetics. 88(6): 662-8.
16)International Huntington Association and World Federation of Neurology (1994) Guidelines for the molecular genetics predictive test in Huntington’s disease, Neurology 1994; 44: 1533-1536.日本語訳は、日本ハンチントン病ネットワークホームページに掲載(訳・武藤香織) [http://homepage1.nifty.com/JHDN/index.html]
17)Evers-Kiebooms G, Decruyenaere M (1998) Predictive testing for Huntington’s disease: A challenge for persons at risk and for professionals, Patient Education and Counselling 35: 15-26.
18)Lapham EV, Kozma C and Weiss JO (1996) Genetic discrimination: perspectives of consumers, Science 274(5287): 621-4.
19)Low L, King S and Wilkie T (1998) Genetic discrimination in life insurance: empirical evidence from a cross sectional survey of genetic support groups in the United Kingdom, BMJ(317): 1632-1635.
20)House of Commons Science and Technology Select Committee "Human genetics: the science and its consequences", HMSO (HC41).
21)Nuffield Council on Bioethics (1993) "Genetic Screening: Ethical Issues", Nuffield Council on Bioethics
[http://www.nuffieldfoundation.org/bioethics/publication/geneticscreening/rep0013139.html]
22)House of Commons Science and Technology Select Committee "Human genetics: the science and its consequences", HMSO (HC41).
23)Association of British Insurers (1997) “Genetic testing: ABI Code of Practice", Association of British Insurers
[http://www.abi.org.uk/Industry/abikey/genetics/gentest97/gentest97.asp]
24)Human Genetics Advisory Commission (1997) “The implications of genetic testing for insurance”, HGAC [http://www.dti.gov.uk/hgac/]
25)Government response to the Human Genetics Advisory Commission (1998), Department of Trade and Industry, Office of Science and Technology and Department of Health
26)Nuffield Council on Bioethics (1998) "Mental disorders and Genetics: the Ethical Context", Nuffield Council on Bioethics
27)Genetic Interest Group による原案へのレスポンスでは、遺伝子情報が保険加入に利用されることそのものへの反発は認められない。むしろ政府を仲立ちとした個別審査のプロセスに当事者団体が意見陳述できる機会があることを歓迎し、丁寧にコメントしていることがうかがえる。[http://www.gig.org.uk/docs/gig_geneticinsurance.pdf]
28)[http://www.ukfgi.org.uk/]
29)Advisory Committee on Genetic Testing (1997) "Code of practice and guidance on human genetic testing services direct to the public", Department of Health
30)Advisory Committee on Genetic Testing (1998) "Report on genetic testing for late onset disorders", Department of Health
31)[http://www.hgc.gov.uk/]
32)Cook ED (1999) Genetics and the British insurance industry, Journal of Medical Genetics 25: 157-162.
33)ハンチントン病に続いて認可申請の候補となっているのは、家族性腺腫性ポリポーシス(FAP)、筋ジストロフィー、家族性アルツハイマー病、多発性内分泌腺腫症、遺伝性運動・感覚ニューロン障害T型、単一遺伝子が関与する遺伝性乳がんの6疾患である。
34)Guardian紙 (2000.10.13)
35)Quarrell O (1999) Huntington’s Disease: the facts, p. 53. Huntington’s Disease Association.
36)Snell RG et al. (1993) Relationship between trinucleotide repeat expansion and phenotypic variation in Huntington's disease. Nature Genetics 4(4): 393-7.
37)Knoppersによる、医療の文脈における「逆選択」の定義は「平均的な健康指標よりも低く、保険会社が予測しているよりもリスクの高い人々が保険を不当に購入すること」となっている。(Kaufert PA. Health policy and the new genetics, Social Science and Medicine 2000 51: 821-829より引用)
38)蔵田(1996)は、「知る権利」と「知らないでいる権利」を「現代的(積極的)プライバシー権」として解釈可能だとしている。蔵田伸雄「遺伝情報のプライバシー−特に遺伝的雇用差別の問題について−」,『生命倫理』6(1): 35-39.
39)詳しい解説は、[http://www.infosci.coh.org/ccgp/cspp/hipa_act.html]。また州ごとに検索可能な、本法に基づく消費者ガイドがつくられている [http://www.healthinsuranceinfo.net/]。
40)Kaufert PA. Health policy and the new genetics, Social Science and Medicine 2000 51: 821-829.
41)立岩真也「未知ゆへの連帯の限界」,『現代思想』9:184-193. 【『弱くある自由へ』(2000,青土社)所収】
42)武藤香織(1998)「ハンチントン病の発症前遺伝子検査と医療福祉的サポートの現状」,『医療と社会』8(3):67-82.
43)前出42.および、武藤香織、阿久津摂、ぬで島次郎、米本昌平(2000予定)『日本の遺伝病研究と患者・家族にケアに関する調査−家族性アミロイドーシス(FAP)を対象に−』,Studies 生命・人間・社会 No.4.
44)保険会社側の研究報告として、遺伝子研究会編(1996)『遺伝子検査と生命保険−遺伝子研究会報告書』がある。そのなかでは、「単一遺伝子疾患に対しては、その頻度や発症年齢・予後等と現在の遺伝子検査の正確さや簡便さ・コスト等を考慮すると、遺伝子検査を導入する価値は、目下のところ小さいといわざるをえない」と指摘されている。
45)朝日新聞(2000.7.30)「重度障害の保険金支払い請求、遺伝子診断結果で拒否 加入者が生保提訴」
46)前出43.および、熊本日日新聞(2000.8.1)「遺伝子の予言(7)保険加入や就職で差別」