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第四次医療法改正に関する日本精神神経学会の見解  2000(平成)年9月21日




「*<第四次医療法改正に関する日本精神神経学会の見解>
 この第四次医療法改正に伴い、精神医療のあり方については、「精神保健・医療・福祉システム検討会」を中心に検討がなされ、理事会での承認を経て、2000(平成)年9月21日に厚生省に意見書が提出された。
 厚生省 大臣官房
 生涯保健福祉部長 今田寛睦 殿
        社会福祉法人日本精神神経学会
              理事長 佐藤光源
<精神病床のあり方に関する要望書>
 拝啓 貴殿におかれましては、時下ますますご清祥のことと拝察申し上げます。
 また、貴省におきまして、今般「医療法等の一部を改正する法律」案を国会に提出され、一般科医療における良質かつ適切な医
療を効率的に提供する体制整備を図るため病床の種別の見直し等を進められているいることに、深く敬意を表します。
 さて, 日本精神学会は、我が国の精神医学・医療の向上に努力してきたところでありますが、今後の精神医療の提供体制のあり方について今までも検討を加え、平成11年1月には要望書を提出させていただきました。
 今般、公衆衛生審議会・精神保健福祉部会では、専門委員会を設置し「精神病床の設備構造に基準について」の検討をすすめ、委員長より「報告書のたたき台」が提案されたところでありますが、その内容は以下に述べるような問題点があり、ぜひ検討されますことを緊急に、要望いたします。
 いわゆる「精神科特例」を廃止し、一般医療と同じ方向を実現すべきということは言うまでもありませんが、精神医療の専門職、特に精神科医の不足は著しく、すべての精神病床に一般科と同じ医師配置を求めていくことは現時点では困難です。
 そのため今回の医療法改正に伴う厚生省令の検討の際には、一般病床で実施される<一般病床>と<療養病床>の区分に伴うマンパワー配置基準(医師・看護職)および設備構造基準と同等のものを精神科病床にも摘応出来るものとし、5年程度の経過措置を
設けることが適当と考えます。
 つまり精神病床においても、主として急性期医療や合併症治療等を行う<精神一般病床>と長期療養を必要とする患者の入院医療を行う<精神療養病棟>に分ける必要があると考えます。
 そして、<精神一般病床>の医師及び看護婦及び准看護師の人員配置基準及び施設基準は<一般病床>の基準と同等にし、<精神療養病床>については、<療養病床>と同等の人員配置基準と施設基準とするよう要望いたします。
<精神一般病床>については、当分の間、以下にあげた機能を有する病棟とすることが適当と考えます。
(1)急性期治療病棟の入院料を算定いている病棟など、主として急性期治療を行う病棟。
(2)児童・思春期専門病棟。
(3)覚せい剤等の薬物依存専門病棟。
(4)身体合併症の治療等を行う必要性のある旧総合病院の精神科病棟。
 なお、措置入院・応急入院・精神保健福祉法34条の移送による医療保護入院の患者が入院する病棟についても一定の基準が必要であるが、別途検討することとする。
 また、医療計画の策定についても、将来的には2次医療権単位で行われるべきであるが、当面は、「精神科救急ブロック」などを圏域ちすることを提言します。
 さらに、現行の医療法施行規則第10条第3号および第16条第1項第6号についても検討が必要であることを指摘します。
 日本の精神医療の将来を決める重大事項であり、十分な議論を尽くされることを希望いたします。」

 (金子晃一(2001)「第四次医療法科医政と今後の課題」『精神経誌』〔103(11)pp911−912 より引用)



*「<健康保険法等の一を改正する法律案及び医療法等の一部を改正する法律案に対する付帯決議>
 2000(平成12)年11月30日:参議院国民福祉委員会における付帯決議15項目のうち精神病床に関する項目を抜粋。
 政府は、次の事項について適切な措置を講ずるべきである。
○新たな病床区分に当たっては、その具体的な目的や効果を明確にするとともに、看護婦等の配置基準及び構造設備基準につい
ては、今回の措置の実施状況を踏まえ、今後更なる改善を検討し、医療の質の確保・向上に努めること。同時に、平均在院日数の
短縮を実現するなど、社会的入院の解消に努めること。
○精神病院の職員配置基準及び構造設備基準を可能な限り一般病床並みに引き上げるとともに、国際人権条約及び国連原則等の
規定に従い、当事者の意見を聞いて処遇を改善すること。その際、診療報酬においても必要な措置を講ずること。
○精神保健福祉施設を充実するために、障害保健福祉圏域や2次医療圏を視野に入れて医療計画を策定するとともに、新たな障
害者プランの策定に取り組むなどの必要な措置を講ずること。その際、社会的入院に関する実態把握に努めつつ、適正な病床数へ
の是正に取り組むとともに、各医療機関の情報公開や政策決定プロセスにおける当事者の参画の下、ノーマライゼーションの理念
に基づき、今後の精神保健福祉施策を推進すること。
○カルテの開示については、環境整備の状況を見て法制化を検討するとともに、十分な医療情報の開示を行い、インフォームド
コンセントの実が上がるように努めること。なお、カルテについては、遺族の申請による開示も検討すること。
○医療の質を確保し、患者の立場を尊重するために、各医療機関の情報公開を更に進めていくとともに、医療機関等の第三者評
価の内容等及び苦情解決機関の設置等についても充実を図ること。
○医師及び歯科医師の研修については、インフォームドコンセントなどの取り組みや人権教育を通じて医療倫理の確立を図ると
ともに、精神障害や感染症への理解を深めることなど全人的、総合的な制度へと充実すること。その際、臨床研修を効果的に進め
るために指導体制の充実、研修医の身分の安定及び労働条件の向上に努めること。  右決議する。」



 (金子晃一(2001)「第四次医療法科医政と今後の課題」『精神経誌』〔103(11)pp917−918〕より引用)


*作成:仲 アサヨ
UP:20090612 REV:1213, 20100114
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