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「DPI日本会議・公営住宅法施行令について」


last update: 20151224


DPI日本会議・公営住宅法施行令について
 ◆20000711 DPI日本会議
  「公営住宅法施行令の一部を改正する政令案」についての見解(案)
 ◆2000705 DPI日本会議
  「重度障害者の公営住宅単身入居に関する除外規定の撤廃を求める要望書」


 

◆20000711 DPI日本会議  「公営住宅法施行令の一部を改正する政令案」についての見解(案)
DPI日本会議

2000年7月11日
「公営住宅法施行令の一部を改正する政令案」についての見解(案)
DPI日本会議

 この度、公営住宅法施行令6条1項で定められていた「常時の介護を必要とする」重度
障害者の公営住宅入居に関する除外規定の見直しが政令改正として行われ、本政令改正案
は、本年7月11日に閣議決定されることになった。
 本政令改正案(以下,新施行令)に対して、重度障害者の地域における自立生活の保障
に向けて、同「除外規定」の撤廃を求めて取り組んできたDPI日本会議として、以下の
見解を明らかにする。

1 新施行令第6条1項では、「[略]ただし、身体上又は精神上著しい障害があるため
に常時の介護を必要とし、かつ、居宅においてこれを受けることができず、又は受けるこ
とが困難であると認められる者を除く」となっている。
   同除外規定は、障害者の公的施設の利用制限に係わる欠格条項の見直しの対象とし
て取り上げられていた。本年6月1日、総理府障害者施策推進本部によって「障害者に係
る欠格条項の見直しの進捗状況について」が公表され、「公的施設の利用制限に係る欠格
条項の問題として見直しの対象になっていた同除外規定についての現時点における検討結
果が明らかにされた。その結果は、「見直しの方向」として「障害者を表わす規定から障
害者を特定しない規定への改正」が所轄省庁(建設省)から示されていた。
   これまで私たちは、ある資格を取得する場合に、「障害者を表わす規定」又は「障
害者を特定する規定」を設けることによって差別的に障害者を門前払いすることにつなが
る欠格条項の撤廃を求めてきた。その観点からすると、第1に「身体上又は精神上著しい
障害がある」という「障害を表わす規定」を意味する文言が引き継がれていることは、私
たちの基本的主張と相いれないと言わなければならない。
   第2に「介護を必要」とするかしないかが入居を認める判断規準のもっとも大きな
ハードルになっているという点では、これまでの除外規定と本質的に一致しているとみる
ことができる。「介護を必要」とすることが、入り口部分の規定に明記されている限り、
当事者は基本的に単身入居できない対象としてみなされている状況に変わりはない。私た
ちは改めて、「介護を必要」とする規定を削除することが、障害者に係る欠格条項の撤廃
に真につながるものであることを主張する。

2  新施行令の同規定では「常時の介護を必要とし、かつ、居宅においてこれを受ける
ことができず、又は受けることが困難であると認められる者を除く」となっている。旧施
行令の「その者の実情に照らし適切でないと認められるものを除く」とされている記述を
「居宅においてこれを受けることができず、又は受けることが困難であると認められる者
を除く」に変更しており、旧施行令の曖昧な規定を具体的に表すことによって、自治体の
窓口で申し込み者(障害者)に対する門前払いがなくなることが期待できるというのが担
当部局の考え方になっている。
   確かに政令改正の「趣旨」で述べられている「居宅において介護を受けることによ
り単身入居が可能な者について、できる限り公営住宅への単身での入居者資格が認められ
るよう規定の明確化を図る」ことが、全国の自治体に周知されれば、これまで申し込み案
内書に「常時介護が必要な重度障害者は除く」と明記(都道府県では4分の1、市町村を
入れた全自治体でも1割近く−[建設省の全国調査結果] 7月11日付朝日新聞朝刊)
するなどの門前払いは減っていくと考えられる。しかし、申し込みは受け付けられても、
事業主体による事前調査の方法と内容が抜本的に改められなければ、これまでと同じよう
に単身入居できない状況が繰り返されてしまうという危惧を強くもたざるを得ない。

3  新施行令第6条2項では、調査に係る手続き規定として、(公営住宅の供給を行う
地方公共団体としての)「事業主体は、[略]当該職員をして、当該入居の申し込みをし
た者に面接させ、その心身の状況、受けることができる介護の内容その他必要な事項につ
いて調査させることができる」とあり、また同条3項では「事業主体は、入居の申し込み
をした者が第1項ただし書に規定する者に該当するかどうかを判断しようとする場合にお
いて必要があると認めるときは、市町村に意見を求めることができる」となっている。
   しかし、申し込み後、実際に入居拒否の決定を受けた当事者からの事例報告(19
96年群馬県桐生市)によると、第1に「自活状況申立書」の提出を求められ、同書面で
は、炊事・買い物・食事・排泄・入浴・掃除・洗濯等について「自分でできますか」という
設問立てになっていること。この設問では、「自分で何ができるか」が調査方法の基本に
なっており、介護によるサポートを前提とするものではまったくない。
   第2に当該自治体建設部長名で福祉事務所長の意見を求めた結果、「施設入所対象
者又は施設収容対象者に相当すると判断される。理由として本人の障害程度が身体障害者
障害程度等級表の1級に相当するため。」とあり、その上で、本人の単身入居の希望に応
じられないという決定(行政処分)を行っている。「障害程度等級1級」であれば、一律
に施設入所が相当であるという「判断」は、明らかに障害者があたりまえに地域で生活す
る権利を認めないことを行政が公言するものであり、ノーマライゼーション理念を真っ向
から否定するものである。

4  新施行令第6条2項の手続き規定に係る調査事項として、「その心身の状況」とい
う文言があるが、これは必要のないものである。基本的に介護を受けて生活できるのであ
れば、「心身の状況」にかかわらず、入居を認める判断をするべきである。

5  以上の問題点から、今後、私たちは、自治体レベルでの公営住宅の単身入居を具体
的に実現していくために、第1に国(建設省)は率先して、「介助者を使っての自立も自
立生活である」とするあたりまえの判断を、公営住宅の入居判定をしている全国の地方自
治体に明確に示し、周知徹底させる取り組みを積極的に進めることを求める。
  第2に事業主体(公営住宅の供給を行う地方公共団体)に対して、募      集
案内において、「常時の介護を必要とし、かつ、居宅においてこれを受けることができ
ず、又は受けることが困難であると認められる者を除く」という規定を記載しないことを
求める。
   第3に運用面での手続き規定に係る「調査の方法と内容」が、「常時の介護が必要
とする」当事者の立場に立って、どのように大きく改められていくのかを厳しく監視し、
検証していくことがいっそう重要になっていることを強く主張する。

以上

 

◆重度障害者の公営住宅単身入居に関する除外規定の撤廃を求める要望書

2000年7月5日
建設大臣
中山  正暉 様

障害者欠格条項をなくす会
共同代表  牧口 一二・大熊 由紀子
DPI(障害者インターナショナル)日本会議
議長 山田 昭義
全国自立生活センター協議会(JIL)
代表 樋口 恵子

重度障害者の公営住宅単身入居に関する
除外規定の撤廃を求める要望書

 障害者欠格条項をなくす会は、障害種別・立場をこえて、障害を理由とした欠
格条項(資格制限)撤廃を目的に、昨年5月に結成した全国組織です。現在進行
中の「欠格条項見直し−法改正」に、障害者自身の体験・智恵、海外の先例など
を反映させるよう、取り組んでいます。
 DPI(障害者インターナショナル)は、障害者の完全参加と平等、人権確立
を目指して活動している国際組織で、国連経済社会理事会、WHO、ILOなど
の国連諸機関での諮問団体として位置づけられており、国連総会のオブザーバー
資格を有してる団体としてさまざまな活動を展開しております。
 DPI日本会議では、「誰もが利用できる交通機関を求める全国交通行動」を
呼びかけ、毎年全国30ヶ所のべ3000人を超える、文字どおりの大行動を作り出し
てきました。この行動は、鉄道駅舎のエレベーター整備指針策定やノンステップ
バスの運行、路線バス付き添い乗車通達の見直しなど、交通機関のアクセス改善
の気運を高め、このたびの「交通バリアフリー法」制定に際し大きな影響をもた
らしました。また、まちづくりの分野でも、全国各地で「福祉のまちづくり条例」
制定運動に取り組んでいます。
 全国自立生活センター協議会は、介助を必要とする人たちも、親元という庇護
の場でなく、施設という管理された場でもなく、自分の選んだ地域で生活できる
よう支援している自立生活センターが集まってつくっている組織です。全国で90
ヶ所が加盟しています。自立生活プログラム、介助者派遣サービス、ピア・カウ
ンセリング、移送介助などのサービス提供と権利擁護などの活動を、障害当事者
の立場から行っています。

 昨年8月、「障害者に係る欠格条項の見直しについて」(以下、対処方針)が
総理府障害者施策推進本部決定として打ち出されて以降、各関係省庁では対処方
針にそっての見直しが行われることになっています。
 昨年7月に障害者欠格条項をなくす会、DPI日本会議連名で貴省に対して要
望書を提出し、重度障害者の公営住宅単身入居に関する除外規定(公営住宅法施
行令6条「身体又は精神上著しい障害があるために常時の介護を必要とする者で、
その公営住宅への入居がその者の実情に照らして適当でないと認められる者は、
単身で公営住宅に入居することができない」)についての話し合いを持ちました
が、その後、具体的な検討状況が明らかになっていませんでした。

 本年6月1日、総理府から「障害者に係る欠格条項の見直しの進捗状況につい
て」が公表され、「公的施設の利用制限」に係る欠格条項の問題として見直しの
対象になっている同「除外規定」の現時点での検討結果が明らかにされました。
その結果は、「見直しの方向」として「障害者を表す規定から障害者を特定しな
い規定への改正」と「その他の対処方向」が挙げられていますが、見直し終了の
目途が「平成12年度前半」となっています。
 この度、この「要望書」を共同で提出する私たち3団体としては、同「除外規
定」に関する検討内容が充分明らかにされないまま、非常に短期の「見直し終了」
とされていることについて、到底納得することができません。

 多くの重度障害者が「地域で暮らす」という人間として当たり前の権利を奪わ
れたままであることは人権上も看過し難く、改めて同「除外規定」について、私
たちの見解を表明し、同「除外規定」の撤廃を再度強く要望する次第です。

【撤廃すべき理由】

1.同「除外規定」及びその運用が現状に適合していません。

 同「除外規定」の存在と運用は、民家で介助者をつけ単身生活を送っていたに
もかかわらず手帳の等級が一級であることを理由に公営住宅入居を拒否された事
例からも明らかなように、結局は手帳の等級、介護必要度をもって除外している
ことを示しています。本人の「必要な介助を受け環境の工夫をおこなうことで自
立生活が可能」という申請は無視されており、明白な法制度による差別です。同
時に、24時間介護のサービスを実施してきている自治体の取り組みを否定するこ
とでもあります。「障害者プラン」の理念をふまえ、官庁間のくいちがいを早急
に解決すべきであると考えます。
 この「除外規定」が設けられた1980年頃には、介護が必要な障害者が地域で生
活するのに必要な制度は皆無でした。しかし現在は24時間介護を制度化している
自治体、市町村もあり、常時介護が必要であっても単身で居住することが明確に
可能な状況が作られつつあります。にもかかわらず、貴省があくまで全国一律に
適用される同「除外規定」の存続に固執し、最終的な判定の責任を厚生省及び各
自治体の福祉事務所にゆだねていることは、先進的な地方自治体・市町村が施行
している介護制度を不十分なものとされてのことでしょうか。
 貴省が介護を必要としている障害者の地域での生活を保障している自治体・市
町村の制度を認めておられるならば、公営住宅入居にあたっては、本人に対して
必要な介護制度を利用しているかどうかを確認すれば十分であり、同「除外規定」
によって全国一律に排除することにつながる状況は、早急になくしていくべきで
あると考えます。また、24時間介護を制度化していない自治体・市町村に対して
は、その導入こそを働きかけるべきであり、同「除外規定」が後進の自治体・市
町村によって介護制度の不備を隠蔽する道具として利用されていることは嘆かわ
しいと言わざるを得ません。
 現状における同「除外規定」の運用の仕方は、自立生活概念の変化を考慮しな
い旧態依然たるもので、障害者の自立生活を阻害していることは明らかです。
 自立した生活が可能かどうかの判定に使われている『自活状況申立書』は、本
人の身辺自立しか考慮しておらず、介護者を使っての自立を判定に含めていませ
ん。しかしながら現在、国際的には「自立生活とは、自分の生活を自分でコント
ロールすること」との解釈が一般的となりつつあり、身体機能のみに着目した自
立の判定はむしろ退けらる方向にあります。本人の身辺自立にのみ着目した「自
立」解釈は、高齢者を含め他者による介護を必要としながら「自立生活」をして
いこうとする人々を押さえつけ、結果として福祉制度改革の精神を裏切る施策と
なってしまうことにつながります。
 貴省が率先して、介助者を使っての自立も「自立生活である」との判断を、公
営住宅の入居判定をしている自治体・市町村に対して示されるよう、切望すると
ころです。

2.同「除外規定」そのものが差別的、人権侵害的であり、同「除外規定」を設
ける理由が明らかでないことは、同「除外規定」が不必要であることを示してい
ます。国民には等しく政府が提供するサービスを享受する権利があり、同「除外
規定」は、「常時介護を必要とする者」から公営住宅に入居する権利を奪ってい
るといえます。

 人権を侵害してまで設けられたということは、他者への危険や迷惑となるよう
な事件が起きる可能性が大でなければならないはずですが、しかしながら、同
「除外規定」のこれまでの運用の仕方によれば当然入居できなかったであろう障
害者が多数、民間の住宅で全く何のトラブルもなく長年にわたって隣り近所と暮
らしています。また同「除外規定」の運用も自治体・市町村によってあきらかに
違いがあり、介護が必要な障害者が公営住宅で暮らしている事例も少なくありま
せん。その場合も重大な問題は何も発生していません。
 むしろ、見直しの対処方針で提起されている「補助的手段の可能性の検討」は、
当事者と支援者の地道な協同の取り組みによって、介助者(補助者)の支援態勢
は実現されているという事実を、見直し作業において積極的に位置づけるべきで
あると考えます。

3.隔離されず単身で居住する権利を介護が必要な人にも認めることが必要です。

 介護が必要な障害者は「施設」へという施策がありますが、社会から隔離され
た場所に集団で居住するという形態は、次の理由で問題があります。

 a 社会参加の観点からみて明らかにマイナス
 仕事、学習、社会参加の機会を制限され、よって地域で自立するための準備
もできず、一生同じ状態を甘受しなければならない(いわゆる飼い殺し状態)。

 b 社会の偏見を助長する
 地域の中で人間対人間のつきあいをする機会がなくなるため、一般の人は出
会えないゆえの障害者への偏見を増幅させることになり、地域で暮らせる制度
が整備されるまでの暫定的、移行的施策としては許容できますが、永久的な施
策としてこれを推進することは人権的、社会的見地から許せないものです。

 親元や施設から出て地域で自立生活を送ろうとする障害者が、自立生活に移行
するにあたってまずぶつかる壁は、居住の場の確保が困難なことです。そのよう
な状況にあって公営住宅の役割はたいへん重要であり、「必要な介助を受け住宅
環境の工夫をして自立生活が可能」等の用件を満たす人を率先して受け入れるこ
とは、住宅困窮者の居住をすすめる趣旨にかなうものです。ところが、単身入居
制限が「肉親が健在なら同居を」「介護が必要な障害者は施設へ行くのが適当」
という見方を背後にもって制定運用されています。これは公営住宅の趣旨に反し、
「居住の自由」を否定する、重大な人権侵害です。

 障害者の多くは明らかに住宅困窮者、低所得者です。要件を満たしている人々
の中から本人に何の落ち度もないのに、明らかでない理由により公的機関が差別
的な扱いを行うことは不当であります。

 貴省の姿勢は、障害者の自立生活、社会参加に理解のある自治体・市町村の意
気にブレーキをかけ、差別的な自治体・市町村の施策を助長する恐れのあるもの
だと言わざるを得ません。

 以上の見解に基づき、改めて同「除外規定」の撤廃について、ご検討下さるよ
う要望致します。

以上


REV: 20151224
DPI日本会議  ◇公営住宅入居の制限  ◇欠格条項  ◇全文掲載
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