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「21世紀の特殊教育の在り方に関する調査研究協力者会議(第2回議事要旨)」


last update: 20151224


21世紀の特殊教育の在り方に関する調査研究協力者会議(第2回議事要旨)

◆井上さんより

以下のサイトで、下記議事要旨が公開されました。
なお、この内容は「政府公報」に準ずるものなので出所明記
してあり、原文に改変を加えなければ、転載自由。

http://www.monbu.go.jp/singi/chosa/00000411/

調査研究協力者会議等

21世紀の特殊教育の在り方に関する調査研究協力者会議 (第2回議事要旨)

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21世紀の特殊教育の在り方に関する調査研究協力者会議(第2回)議事要旨

1.日 時 平成12年7月4日(火)10:00〜13:00

2.場 所 虎ノ門パストラル松の間

3.出席者
(協力者)安彦(ひ)、飯田、岩上、上野、江草、大南、河合、瀬尾、、西嶋、野崎、細村、三浦、宮崎、村田の各氏

(文部省)御手洗初等中等教育局長、玉井審議官、池原特殊教育課長、徳久中学校課長、月岡小学校課長、今井特殊教育企画官、鈴木視学官、宮川視学官、吉富特殊教育課課長補佐ほか関係官

4.議事内容
(1)事務局より前回欠席の江草委員を紹介
(2)事務局より配付資料の確認
(3)高委員より資料に基づき「世界の特殊教育について」、事務局より
   「特殊教育と特別支援教育の関係」についてそれぞれ説明の後、フ
   リートーキングが行われた。主な意見は以下のとおり。

○現在の通級による指導は自立活動を中心とした指導であり、特殊教育とい
う範疇に含まれている。一方、LDやADHDの場合は、教科の補充指導に重点を
おく新しい形態と考えられ、特殊教育と特別支援教育の中間に位置づけられ
るのではないか。

○特別支援教育に名称を変更するということは、特殊教育そのものが特別な
ニーズに対応する教育へ更に拡充するものであり、学校教育法上の「特殊教
育」の用語について変更しないと整理がつかないのではないか。

通級による指導については最近次第に自閉の子どもが増えている。また、知
的障害養護学校の中で自閉の子どもを教育することでいいのかという不安も
ある。自閉の子どもが増えてきていることも含め、特別なニーズに対応する
教育が形態とか場ではなく、実態を追認する形で拡充する方向で進めていく
必要があるのではないか。

○学校教育法上の「特殊教育」は、盲・聾・養護学校と特殊学級における教
育とされているが、通常の学級にも障害児や、特別な教育的支援が必要な子
どもがいるという実態を踏まえ、特殊教育課では、特殊教育のノウハウを活
用できる教育を積極的に推進していくこととして特別支援教育課に名称変更
する予定である。あくまで組織上整理をしたものである。

○「特殊教育」という言葉には抵抗はないが、「特殊」という言葉に特別な
ニュアンスを感じている方は多い。特別支援教育課に変わるということが、
教育的ニーズにまで対象を拡げるということは、大変望ましい変更だと思う。
しかし、「特殊教育」という言葉そのものをそろそろ考え直した方がいいの
ではないかと思う。

○校長会でも「特殊教育」という用語の検討についての意見は出ている。現
状の中でも養護学校の院内分教室でADHDの子を指導している現状がある。特
別支援教育の対象には、通常の学級に在籍する様々な障害を抱えた子どもた
ちへの対応と理解をしている。学校教育法施行規則に、通級による指導が平
成5年に付加されたわけであるが、現状を考えると、学校教育法の考え方も
少し拡げて考える必要性が出てくると考える。

○現行法を整理すると事務局で整理したとおりであるが、現状は現行法にそ
ぐわなくなっている。盲・聾・養護学校は組織として残す必要があるが、
小・中学校の特殊学級の概念については検討していく必要があるのではない
か。

○事務局で整理した「特殊教育」と「特別支援教育」の関係については、現
行の制度を踏まえたものと思う。しかしこのような体制が長期間続くことは
疑問がある。

例えば、通級指導教室が盲・聾・養護学校の中にある場合があるが、通級に
よる指導が「特殊教育」に入らないと現場は混乱すると思う。

○外国人なども特別な支援を必要とする子どもであるが、あくまで特別支援
教育とは心身上の障害があるものが対象と考えるのか。

○特別支援教育課の対象とするものは、心身上の何らかの理由により特別な
教育的支援を必要とするものである。これは、特殊教育のこれまでのノウハ
ウを生かせる範囲に限定した。外国人子女や帰国子女への教育については、
今後、国際教育課が対応していくこととなっている。

(4)事務局から「就学指導の仕組みと実態について」、瀬尾委員から「今
後の就学指導の在り方について」それぞれ説明の後、フリートーキングが
あった。主な意見は以下のとおり。

○市町村教育委員会の就学指導の実態の調査結果は、市の中にいくつ養護学
校等があるかによって、相談がうまくいくか否かの差が出ると思う。群馬県
など市立の養護学校が多い市は、特殊学級と行政的なレベルが同じであると
保護者は感じている。

○就学指導がうまくいくか否かは、市民が障害に対する理解をどの程度持っ
ているか否かによって違ってくるのではないか。明らかに養護学校、福祉施
設がある町とない町で差がある。ある町のほうが理解が深いのではないか。

就学指導委員会委員の経験からいうと、[1]親の意見をどの程度聞くかとい
うこと、[2]指導主事がその子の学区の校長と連絡を取りながら、就学指導
委員会にかかるまでに何回面会していたかということ、[3]診断評価を第三
者が行っているということが必要である。また、早期の教育相談のあり方に
ついて、医療・福祉・教育が集まるだけでなく、非常に微妙な家族の心境と
いうものをどのようにくみ取るのかということを検討すべき。

○保護者の意見表明、気持ちをくみ取る機会も必要であると思う。

○一人の子どもが就学するまでに周りの人による理解と支援があったならば、
いろんな面で就学に迷いが無く、スムーズにいくのではないかと感じる。

また、県の就学指導委員会で一番感じたことは、保護者と相談員の間での信
頼関係の重要性である。普通学級に入って途中で特殊学級又は養護学校とい
うように柔軟に運用するなど、楽しい学校生活を送らせることが親の願いで
ある。

○特殊学級にいくか、普通の学級にいくかについては行政処分なのか。就学
指導委員会を傍聴することを保護者に認めている市が少ないということに驚
いている。児童の権利条約の観点から、保護者だけでなく子どもの意見表明
も保障する必要がある。

○小学校も盲・ろう・養護学校もすべて公立学校に入学するということは行
政処分である。

○親の意見、子どもの意見をくみ上げることは重要なことである。

○親の意見、子どもの意見を聞く時期について、就学指導の段階で始めては
遅い。現実的に幼稚園、保育園に障害のある幼児が就園している実態がある
が、そこに専門家がいない状況がある。本人のデータがどのように集約され
ていくのか、親たちが就学前の療育の中でどれだけ我が子の障害を理解し、
受容し、どう育てるかという子育てへのサポートがとても重要であって、療
育相談の延長線上の就学指導にならなくては、親は抵抗感を持つと思う。

○幼稚園に障害幼児がいる場合に、その指導についての要望は高い。幼稚園、
保育所に対する何らかの障害幼児への手だてを考えていく必要がある。教員
への研修の充実や就学相談を行う担当者の資質の向上が必要である。

○指導の基礎を場に置く考え方から児童生徒の特別な教育的ニーズにシフト
していくということを考えると、障害が重いものは盲・聾・養護学校という
決めつけではなく、通常の学級でも教育をしていくことも検討するといった
発想を就学指導の上でも考えていく必要がある。

○子どものニーズに応えるにはどうしたらいいかということで相談を進めて
いくこと、保護者の意見も十分に受け止めながらゆっくり相談することが必
要である。正しい就学先を言っていても、頭ごなしに就学先を示すだけでは
相談にならない。

○政令で定める就学基準について昭和37年に制定されて以来、社会が大きく
変化する中で何も改正されてこなかったのは問題があるのではないか。

○就学指導では、相談とフォローアップが弱いという状況が一番大きな問題
ではないか。相談で一番大切なのは、子どもの将来の見通しというものをど
れだけ持っているかということである。もう一つは、通級による指導ができ
て特殊教育を受ける児童生徒が増えたという例もあるように選択の多様さも
重要である。

特殊教育のスタッフの養成・研修が不十分ではないかと思う。アメリカでの
通級による指導の担当者は大学院レベルでの指導を受けてきている。特殊教
育というものは誰にでもできるものでなく、教育相談も含めて相当力を入れ
る必要がある。

○区市町村の就学相談スタッフと都道府県のスタッフとの連携等、就学指導
スタッフの充実が重要である。就学相談の基本的な在り方というものは、子
どもの障害の状態に応じた措置をすること、一人一人の状態に応じた適切な
教育を行うこと、障害の状態が変化してきたら、それに応じた措置替えも検
討することである。そういう観点から就学指導のスタッフは面接、相談をし
ていく中で最終的に個別の指導計画を描けるくらいの力量がなくてはならな
い。就学指導の体制をどう作り上げていくかが重要であると思う。

○盲・聾・養護学校の教育を受けることが大事であることを周りの人が理解
し、支援していくといった考え方をもっていけば就学指導はうまくいくと思
う。

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REV: 20151224
障害者と教育  ◇全文掲載
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