「当事者主体の介助サービスシステム──自薦登録ヘルパー制度の実態調査を中心に」
鄭 鍾和
last update: 20151221
当事者主体の介助サービスシステム──自薦登録ヘルパー制度の実態調査を中心に
日本社会事業大学大学院博士課程
鄭 鍾 和(チョン ヂョン ハ)
1999年10月10日 於:岡山県川崎医療福祉大学
日本社会福祉学会全国大会
◆学会の発表内容
@日本における障害者介助サービスの略史
全身性介護人制度や自薦登録ヘルパー制度を中心に
A介護保険と障害者の介助問題の整合性について
B障害者の介助問題の本質とは何か
時間や場所に限らず、当事者に介助ニーズが確保できる。(柔軟性)
介助者を自分で選び、自分のニーズに合わせて介助してもらえるニーズに応
じた多様性のメリット
自分で介助者を選び、訓練し、活用することによって社会参加が拡大され、
本人のエンパワメントされることへの重要性の説明
C日本における障害者介助サービスの実態
「自薦登録ヘルパー制度の実態調査報告」
この報告についてはOHPを使って説明を行い、調査報告書はA-4、8枚にまと
めたものを印刷して事前に配りました。
内容は日本財団での講演会資料に載せている内容で表は改めて作成して小さ
くつくりました。基本的には講演会資料集に載せている内容そのものです。
D5分程度時間があり、自薦登録ヘルパー制度と公的ヘルパー制度を利用して
いるSさんの事例を報告
この事例は学会発表のために独自にヒアリングを行ったものを発表しまし
た。自薦登録ヘルパーが公的ヘルパーと比較してどのような点でメリットが
あり、障害者にとって有効であるかを比較しながら説明しました。
EOHPを使って今後の障害者介助サービスシステムを図で示し、
発表終了しました。
ここまでが発表です。20分間
**********************************************************
発表後の質問など
◆質問:全身性介護人制度や自薦登録ヘルパー制度を活用するためには介助者
確保が大きな課題であるが、地方ではかなり難しく市役所派遣ヘルパーに頼る
しかないのですが、地方などのマンパワー確保が困難な地域ではこの制度をど
のように進めればいいのか教えて下さい。
◆回答:今の問題は大きな課題でもあります。東京等では学生等がマンパワー
として使われていますが地方ではかなり難しい。
当面は介護保険制度下での派遣団体と交渉して自薦介護人派遣を誘導する
しかないと思います。また、自分で介助者見つけることも努力しなければ
ならないと思います。介助者をどのように募集し、確保するかについては
自立生活プログラムや今後開発されるセルフマネジャーマュアルを参考に
していただきたいと思います。
◆質問:地方ではマンパワーが不足しているので公的ホームヘルパーを自薦
ヘルパーとして育成・訓練するしかないのですが、どのような方法が
可能でしょうか。
◆回答:介助者トレーニング方法についてはJILが発行している介助サービス
利用者マュアルが役に立つと思います。今後のセルフマネジャー
マュアルにもその方法について書かれています。
基本的には自立生活プログラムを実践して体験を通してエンパワ
メントていくのが最もいい方法だと思います。
ピアカウンセリングプログラムを受講した障害者は介助者
トレーニングが上手になっていると聞いています。
公的ヘルパーを自薦登録ヘルパーとして変更することは交渉によって
可能ですのでそんなに難しいことではないと思います。
◆質問:今回の調査は全身性介護人制度や自薦登録ヘルパー制度を使っている
障害者を対象にはじめて行われた調査だと思いますが、その対象者の
選びについてどのような手順が必要だったかを教えて下さい。
◆回答:資料に書かれているとおり、自立生活センターや介護保障協議会など
の団体の協力が得られた。行政から名簿などの協力は皆無でありす。
**********************************************************************
◆意見やコメントなど
@今回の調査は日本で初めて行われた調査だけにそのオリジナリティーがみと
められる。揺れ動く制度改革の中で障害者の介助保障のための運動が必要でこ
れは障害の種別を越えてやるべきである。
A今後の障害者ケアマネジメントシステム導入において障害者のエンパワメン
ト支援をどのように確保していくのかが大きな課題である。
専門家主導のモデルに偏っては障害者のエンパワメントはされないと思う。
B今回のデータをベースに事例分析も多くなされるとより実証的になると思
う。
C報告者が言ったように全身性介護人制度や自薦登録ヘルパー制度は自己選択
自己決定の自立生活理念に照らしてふさわしいので今後ともこの制度は拡大
されるべきである。
Dこのような研究に多くの感心を注ぐべきである。これまでの研究は提供者中
心の研究アプローチが多かった。この研究は基礎構造改革でうたっている利用
者主体を基本ベースにした当事者主体のシステムを今後どのように作っていく
のかを提言するものである。
今後も継続して研究を続けて欲しい。頑張ってください。