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「障害者欠格条項をなくす会と警察庁との交渉議事録」


last update: 20151221


■障害者欠格条項をなくす会と警察庁との交渉議事録

佐々木正さんより

全文は
http://homepage2.nifty.com/ganesh/keisatu.html

そのうち、道路交通法関係の部分を転載します。
※なお、この交渉議事録の日時は、'99 5/31です。
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障害者欠格条項をなくす会の基本的考え方(概略)

提言
1 従来の医学的判定最重視から、個人と環境との関係に、基準を移すべきです。

2 制度的なバリアフリーを進めるため、これまでの「禁治産・準禁治産者」への
行為制限も再検討すべきです。

3 「資格」「免許」の制限にとどまらず、行動の制限・施設利用等の制限等のよ
うに、障害を理由とした不利益・不平等な扱いを定めている規定を幅広く見直し、
制度的バリアをなくしていくことが求められます。
(※詳しくはHPをお読みになってください)

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交渉にあたっての要望
1.当会の「基本的考え方」について、貴職の見解を明らかにしていただきたい。

2.総理府の調査結果における警察庁所管の案件について理由を示されたい。

「自動車等の運転免許」については、精神障害、精神薄弱、てんかん、視力、聴覚
等が絶対的欠格事由になっているが、その理由を明らかにしていただきたい。

3.今後の欠格条項の見直しに対する警察庁としての基本姿勢と方針を示された
い。

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○要望書の説明をしたいと思う。前文は厚生省交渉と共通にしている。基本的考え
方の2枚目に1.2.3とあるが、運転免許課としての考え方を説明して欲しい。

■道路交通法は88条1項で、精神病者・知的障害者・てんかん病者・目が見えない
者・耳が聞こえない者に第1種・第2種運転免許を与えないという規定をおいてい
る。これについては、要望書にもあるように、新長期計画・障害者プランなどにお
いて決定されており、警察庁においても見直しを検討しているところだ。

○特に私たちが示している1.2.3についての見解をもうすこし。

■総論的な話だが、運転に支障を及ぼすか否かというところで、道路交通の安全と
円滑を確保するという観点から、どのような状態の方に運転の支障があるのかとい
うことを考えていきたいと思う。

○総務庁の方でも見直すということになっているので、従来のように一律に除外を
することではなく、本人の事情に応じたものにしていくということで理解してもよ
いか。

■具体的にはこれから。道路交通の安全を確保するという観点から、変えていく点
は変えてゆくが変えない点は変えないだろう。

○基本的な考え方1.2.3の3点については、基本的には了解頂けているか?

■おっしゃる趣旨については理解したが、私たちがやろうとしているのはさっき申
し上げたこと。見直しの中でいろいろ研究を行い、その結果に基づいて必要・可能
なものについては変えていく。道路交通の安全を確保する観点から制度として必要
なものは残していくということ。

○具体的な各論に入るが、精神障害、精神薄弱、知的障害、てんかんなどの欠格条
項の理由を明らかに。

■精神障害者ではなく、道路交通法の上では精神病者。この方々については道路交
通の安全に支障を及ぼすであろうということで免許を与えない。それから、法上は
精神薄弱ではなく知的障害であるが、これについては具体的な道路交通の場面にお
いて対応が難しいということで、規定をあたえている。てんかんであるが、発作が
起こった場合に意識がなくなるということで道路交通の安全に支障がある。目が見
えない方であるが、運転はできないであろうということで、免許をあたえない。耳
の聞こえない方はクラクションや踏切の信号機など、自動車を運転するうえで必要
な信号が区別できないということでである。口が利けない者は、道路交通法上、事
故が発生した方には、事故が生じた際の救護義務が達成できない。けがをした人が
いれば消防なり、警察なりに通報する、ものが落ちていたら連絡する、人が倒れて
いたら連絡する、ということができないだろうということで、口が利けない人はで
きないだろうということで。

○救護義務をみたせないということで。

■そうです。

○それ以外のことは、言語に障害ある方は別に問題ないですね。

■あるいは第2種免許の場合は事故の発生時に、乗客を円滑に避難誘導することに
支障があると考える。

○言語も絶対的欠格条項?

■道路交通法では与えないということになっている。つまり、絶対的欠格条項。

○知的障害の場合、運転免許のペーパー試験は厳しい。あれを通過できれば運転実
技に問題はない。法律で知的障害はだめだと書く必要はない。かつてはできるだけ
免許を与えないようにして事故を防ぐということだったが、現在では地方では公共
交通機関が不便だったりして、そこで免許を与えないということは移動権という人
権の侵害である。人を頼らないと移動できないということも見直しのときの考慮に
入れて欲しい。

■意見は承った。障害者についてであるが、試験に合格した人で知的障害に当たる
方がいるとしたら、安全に運転ができるかどうかについて考えていきたい。生活の
ために必要不可欠であるという意見は分かったが、本人がけがなどをするなどの安
全性のところを考慮したい。

○法律で禁止すると知的障害者は隠れて取ることになるが、こちらの方が危険。法
律で禁止しなければ、知的障害をふまえた支援ということが警察官にもできるが、
法律で一律に禁止すると、障害がないということになると、手助けもできない。

■交通の安全にどのような影響を与えるかということを考えていく。「隠れて取
る」という前提には立ちにくいのでその点は了承して欲しい。

○精神障害を持っている人たちも、斉藤さんが言ったことが当てはまる。厚生省の
発表では217万人の精神障害者がいる。日本の人口の50人に1人の発生率ということ
になる。東京はともかく地方に行くと車がないと移動が困難であるという状況。職
業に就くときの条件にもなっている。そうすると精神障害を持っていても、免許を
持っている人がかなりになる。しかし事実上は誰も持っていないことになってい
る。隠さないと仕事に就けないし、不安を抱えながら生活している。こうした現状
はどのように考えているか?

■生活に支障を生じるという指摘だが、立場はよくわかった。しかし警察の交通安
全を確保するという責任がある。どのようにマッチさせることができるのかという
点から見直しを、障害者プラン・新長期計画の中で考えていきたい。

○2点あるが、1点は安全確保という点で、具体的に運転をしたことによって、安全
を妨げるという例があったのかという点。もう1点は、試験をする際にいろんな障
害を持った人にどのような配慮があるのか。

■配慮とは?

○ペーパーの試験の時に、点字があるとか。身体障害の人には何かしているのか、
とか。

■交通事故の関係だが、基本的に免許を与えないという制度になっているので、運
転をされて事故を起こしたということにはなじまないという観点で、数字は持ち合
わせていない。与えないという制度になっているので、したということで、事故が
起こったという数字は持っていない。

○そうすると、安全確保のための具体的な何かがあったわけではないということで
すね。

■事故があったという具体的なことはない。

○欠格条項の理由は法的には道交法の関係だということだが、友人に、そのとき重
度の障害者が免許を取るという現実は殆どなかったのだが、無免許運転で逮捕され
て裁判までやったことがある。法律をやぶって逮捕されたのは別にして、社会の仕
組みの中で、障害者に運転させない、試験も受けさせないということがだんだん変
わってきて、重度の障害者であっても、教習所でならったりして取れるようになっ
てきている。これは法律に基づいているのか?

■バリアフリーを進めるという観点から教習所では、適性試験について相談員を置
くなどの施策を進めている。身体の障害の関係で、道交法をふまえて、施行令とい
う下位法令では、従前は「肘関節以上、・・・」の方には免許を与えないというこ
とがあったのだが、技術改善が進んで車を運転できることになっている。足とか活
用されて運転できるという方には運転できるということになっている。

○そうであるならば、今の欠格条項の中で、視力の全くない人については無理だと
は思う。しかしそれ以外については何らかの方法、もう少し考えればてんかんと
か、聴覚障害とか、精神障害とかの人たちの運転をさせるということは可能なので
は?

■我々が障害者プラン・新長期計画をふまえて検討しているのは、現状の技術はど
こまで進んでいるのか、治療の仕方はどうなのかというところまでふまえて考えて
いきたい。現状を調べているところだ。

○ぜひそれをやって欲しい。道交法が施行されたのは昭和35年。それから30年、40
年近くになり、障害者をとりまく環境は変わっている。精神病者についても当時は
殆どが病院にいたが、今はそれなりに地域に出てきて生活している人もたくさんい
る。地方に行けば交通網が悪いところでも作業所に通うなどもしなくてはならない
ので、時代に見合った法律にして頂きたい。
法律の条文に欠格条項が入っているのであれば、欠格条項が正当であるという見直
しのデータをとるべきだと思う。建前論では与えないことになっているが、現実的
には実際はみんな取っている。あくまで建前論を貫いていけば、道路の安全にも支
障が出てくる。建前論を少し崩して現実を見据えた法律にしてほしい。ぜひデータ
をとってほしい。こんなに事故を起こしているというデータがあれば私たちも考え
る。

■要望の趣旨は分かったが、しかし制度の趣旨があるので、そこと相反する制度を
警察として認めるという形になるということはできない。

○聴覚障害については、それなりの経過がある。1967年から74年ぐらいの間に裁判
などもあって、その中で運用上は10m離れてクラクションが聞こえればいいという
ことになったという。それに至るまでにも警察庁との交渉が数回あった。最近その
ように改善されてきて、あらためて聴覚障害の団体が交渉して、何か問題があった
かと聞いたところ、事故発生率は健常者と同じ程度であるという回答があったこと
を聞いている。

■それはちょっと知らない。

○知っているかどうかはともかくとして、そういうように調査をしようと思えばで
きるはず。

■運用といったが、補聴器については道路交通法施行規則で補聴器をつけて音が聞
こえるかという試験でやっていて、法令に基づいて技術の発展をふまえた措置をし
ている。

○精神障害だって同じこと。医者と相談をしながら、数年間症状が出なかったり、
自分をコントロールしながらやっていくということもできるように少しずつなって
いる。そういった個別の事情に合わせて運転免許が発行できるかどうかを考えるべ
き。精神障害だから絶対欠格ということになるというのは、従来の差別的な偏見の
ままで見ているからではないですかということになる。変わってきているというこ
とはわかりますか?病院から出て地域でふつうに生活する人が出てきている。その
中で状況をふまえた改善が可能なわけですよね。

■状況をふまえたというか、うちとしては道交法の目的に照らして改善が可能かど
うかを検討したい。

○私が言いたいのは補聴器をつければ聴覚障害者が可能になったと同じように精神
障害も同じであるということ。

■これからよく調べたいと思う。

○精神障害者も薬の服用も含めて、状態が改善されることもある。鬱病も精神病な
んですよ。鬱病が免許更新時に見つかれば、排除ですよ。でも黙っている人がたく
さんいる。警察にもたくさんいると思います。黙っているだけで、免許の更新がで
きるだけで。最近は増えてきているし。そういう時代なんですよ。精神障害者の事
例でいえば、かなりの人が免許をとっている。欠格条項があるために、屈辱的な対
応をされるということがある。一方的に呼び出されて診断書をつけて、持って行く
とコピーを欲しいとか、「なぜか?」と言うと跳ね返されたりとか、そういうこと
もあり、なくして欲しい。
もう一つは根拠を示して欲しい。知的障害があっても、試験にパスすれば問題はな
いわけですよね。それなのにあとから呼び出しをかけてチェックするなどの差別的
な待遇も生まれてくるし、そう感じる人も多い。

■もしそういう不適切な対応があったとしたら、現場での対応を……。

○現場の人は法を遵守するという態度だから正確にやろうとしている。当然取れな
いものだという対応をしてしまう。

■知的障害については、運転免許試験だけでなく具体的な交通の場でどうかという
ことを考えていきたい。

○私たちが言いたいのは、法律や施行令に一律に障害名とかをあげるのをやめま
しょうということ。必要な能力や適正ということを書けばよいのであり、こういう
人はだめだ、とくくってしまうのではなく、精神病者にもいろいろな人がいるのだ
し、除外することは可能性を奪ってしまう。そこをもう一度考え直してほしい。

■趣旨は存じ上げている。

○でも、目が見えない方は……というような答え方しかできないわけですよ。抽象
的な説明にしかならないではないか。

■それは、現行の説明を求められたので。

○やっぱり変えていかなければということだ。障害名や疾患名で一律に規定を設け
続けることはやめようということを、お願いしたい。あと、どのような補助的な手
段があるのか、聴覚障害者の補聴器だけではなく、精神障害、知的障害の補助的な
手段があれば、なんとかなることも多い。現場の当事者の話を聞いていかないとわ
からない。これから私たちもまた来ますので、改善につなげて欲しい。

○精神障害者が、個人的に、なんでいけないと思います?

■最初に言ったように、道交法の交通安全にどう関わることですので。

○免許をとっても下手な人はたくさんいるわけですよね?障害があるから下手でぶ
つけるのか、ということではないでしょう。なぜ障害者だと、交通の安全を妨げる
ようなことになるのか?具体的に?本人だと責任がとれないとか?
具体的にいってもらわないと、私たちも対応ができない。警察がお望みのような交
通安全に協力するために。どうして障害者がだめなのか分からない。薬飲んでいる
からダメなのか?みんな風邪薬ぐらいなら本当はダメでも飲んでいる。障害者でも
状態が悪いと恐くて運転しない。いい時でもだめだと言われるのは耐えられない。
差別だと思う。精神障害者の場合は装具をつければいいという可能性はないんです
よね。何が障害になるのかを聞かせていただきたい。
マニュアルにはなんて書いてあるのですか?そういうものはないのですか?1960年
代当時に精神障害者に持たせないという理由が、もっときちんと文章になっていた
と思うが。

○それが具体的にないから問題なんですよね。何が問題なのかは聞いておきたい。

■道交法、車を危険なく運転できるか否かという観点から、具体的にといっても、
なかなかそれくらいしか思いつかない。

○アメリカでは目の不自由な人でも取らせてくれる。細かい条件が付いている。ア
メリカではより詳しくて、夜運転してはいけないというような条件がある。これを
つければ免許を出せるということもあるのではないか?何が危険か、何が安全かと
いうことで。

■条件を付けて、条件をいかに守るかということもあるが、条件についても合わせ
て検討したい。


○そこもある。自分で自分のことを判断できないんじゃないかという見方が根強く
あるからこういう欠格条項があるという面もあると思う。自分が運転できないと思
うときはやっぱりしない。健全者も同じ。障害者だからというところで考えると一
律の括り方になる、障害者は自己決定できると信頼してもらって見直しの中に活か
して欲しい。

■ご要望は分かった。

○時間もあるが、よろしいか。趣旨はわかっていただけたと思うので、具体的に、
外国の事例も含めて調査をしている最中なので、具体的な案もできたらぜひ相談に
来たいので、積極的に受け止めて欲しい。

■ご要望は分かった。

 ……以上……



欠格条項  ◇全文掲載
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