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「連絡書」

副島 洋明 1999/04/05 

last update: 20151221


            連 絡 書
                               99.4.5
             御中            弁護士 副島洋明

     愛成学園(女性知的障害者施設)事件について         
                                       
 前略。突然ですが、現在、私が担当している知的障害者施設における職員の暴力を契
機とする職員解雇事件の1部資料を送付させていただきます。
 職員解雇事件として裁判となっていますので、ある面では〈主張のくい違い〉という
ところがございますが、ただ解雇された職員自身が2月3日と5日の両日、女性の知的
障害者に対して〈暴力をふるった〉(相手方は平手で顔等を叩いたということは認めて
いますが、それを有形力の行使であって暴力ではないとしています)ということが前提
となっております。問題は、その「暴力正当化論」であり、被害者に対する「知的障害
者観(人間観)」というところにあります。私たちは、知的障害者がいうことを聞かな
いから騒いだからといって、制止し反省させるための〈やむをえない暴力〉というもの
は認めない、という立場にたっております。この事件を通して、福祉の現場でいまだ根
強く存在する〈叩いて治す〉〈力ずくで人を指導する〉という〈暴力の構造〉こそ厳し
く問われなければならない、と考えております。
 私自身、単に施設擁護の立場をとるつもりはありません。このような暴力事件をなく
すということは、あらためて隔離された施設の問題をどうするかという課題でもありま
す。この暴力職員解雇事件は、施設長をはじめ職員らも認めている通り、まさに〈氷山
の一角〉というべき事件だということを踏まえてこの事件に取り組んでおりますし、こ
れまでも他の男性職員による本件暴力以外に残酷な暴力事件がおこっていました。(実
をいうと、施設内には他にも暴力をふるってきた職員らがいて、内部からの支援も受け
ております。)あらためて障害者や高齢者の〈施設〉における暴力・虐待を一掃するた
めに、施設長・職員らに対する新たな法的枠組みづくりの施設改革が強く要請されてい
ます。
 この事件では、職員側に「強い」労働組合や弁護士事務所等がついて〈不当解雇だ〉
という裁判(地位・賃金等保全の仮処分)を訴えてきたことから、はじめて〈社会的事
件〉となりました。私は途中からこの仮処分事件(裁判)を受けることとなり、弁護団
を組み、支援する会を結成して施設改革の取り組みをはじめることになりました。相手
から裁判に訴えられた最初の1ケ月程は、別の弁護士が施設側につき、相手方(労組・
弁護士)と交渉されていましたが、裁判の1週間前に施設側弁護士が突然辞任されて、
急遽私にということになった次第です。
 私自身、これまで施設の暴力・虐待事件をいろいろとやってきておりますが、それは
職員や保護者の内部告発から施設長ら施設側の責任を問うという事件でした。ところが
今回は、施設側の代理人という「珍しい立場」にあります。しかし私としては、私のこ
れまでの立場を譲歩するつもりはないこと、施設擁護ではなく、利用者の利益と人権の
立場から施設改革をなしていくことを前提条件として、施設からこの事件を受任してお
ります。そこで、皆様への〈支援協力〉といっても、施設を守るということではなく、
本人たちの人権を施設改革を通していかに守りつくっていくか、という内容での〈支援
〉であるということをご理解下さい。
                                       
 4月9日(金)には、この事件と暴力を施設から一掃していく施設改革の運動の〈支
援する会〉の発足集会を別紙呼びかけ文の通り開催いたします。続いて多くの人々の支
援を受けて、6月12日(午後1時から5時)には、四谷駅前の主婦会館において、〈
知的障害者施設から暴力を一掃する集会〉を開催する予定です。この6月12日の集会
に向けて支援者を呼びかけたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
 お忙しい時、突然のぶ厚い資料を送りつける失礼をお許し下さい。また資料を読まれ
て、この事件と運動にご理解いただけましたら、是非周囲の方々にも紹介していただけ
れば、と思います。あらためて、よろしくお願いいたします。
 繰り返させていただきます。私たちは、この事件(施設改革運動)の〈支援〉を施設
擁護の支援運動にするつもりはありません。あくまで知的障害者施設における〈職員に
よる利用者に対する暴力・人権侵害〉をなくしていく事件(運動)にしていく、そのた
めには内部(施設側)においても自己改革する“闘い”が求められていると考えていま
す。確かに施設側代理人という立場にあることからくる〈難しさ〉はありますが、その
弱さ(問題)についてはその都度皆さんの疑問の指摘や批判を受けて、初心を貫いてい
きたいと思っています。

 愛成学園事件弁護団  (弁護士・副島洋明、登坂真人、大石剛一郎)
   連絡先  〒102-0084 東京都千代田区二番町11-10 麹町山王マンション307 号
       副島法律事務所  TEL 03-3230-3933 FAX 03-3230-1549



愛成学園事件  ◇全文掲載
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