HOME > 全文掲載 >

「愛成学園事件」


last update: 20151222


■愛成学園事件

◆甲第11号証 連絡書 99.4.5(略)
◆甲第12号証 平成11年4月7日(略)
◆甲第13号証
◆甲第14号証 陳述書
◆甲第15号証 陳述書(略)
◆乙第2号証 A氏の解雇理由(全文)
◆乙第3号証 地域保全等仮処分申立書に対する見解 (略)
◆乙第4号証
◆乙第5号証 (中野共立病院附属中野共立診療所によるJ子さんの)診断書
◆乙第7号証 園生・J子さんの被害写真報告書
◆乙第8号証 作業班職員・西川登子さんの「平成11年2月3日の暴力事件に関する報告書」についての写真報告書と現場見取図
◆乙第10号証 意見書
◆乙第11号証 報告書(全文)
◆乙第12号証 報告書(抄訳)
◆乙第14号証 2月3日(月)の話し合いについて 記録担当者の報告(略)
◆乙第15号証 要求書
◆乙第16号証 団体交渉申し入れ書
◆乙第17号証 通告書(略)
◆乙第18号証 (略)


◆甲第11号証

甲第11号証
                 連 絡 書
                              99.4.5
 ・・・・・・・・・・御中             弁護士 副 島 洋 明
                                        


         愛成学園(女性知的障害者施設)事件について

                 (以下 略)                 


◆甲第12号証

甲第12号証
                             平成11年4月7日

全国福祉保育労働組合東京地方本部
執行委員長 茂木 初子 殿
                           社会福祉法人 愛成会
                           理事長 掛川 勝

                         社会福祉法人愛成会 愛成学園
                           園長  岩田 節子

              団体交渉延期のお知らせ               


                 (以下 略)                 


◆甲第13号証

甲第13号証

(東京都福祉局障害福祉部 知的障害者福祉課長 田中藤太郎氏から
   全国福祉保育労働組合東京地方本部 執行委員長 茂木氏宛の ファクス。 

  内容は、弁護士副島洋明と田中課長との文書のやりとり。)

                 (以下 略)                 

◆甲第14号証

甲第14号証

                 陳 述 書                  



                             ○○区○○
                             ○○○○

 今回の事件の直後、7日の日曜日に学園の職員の方から電話がありました。A氏がつかまらないので、3日の件について話してほしいということでした。私は、もう一つの陳述書に述べたとおりのことをその職員に説明しています。ところが、その後A氏が退職されたと聞かされました。私は、最初A氏が辞めたという話だけで、解雇されたということは後から知りました。
 学園を辞めようと思ったのは、3月23日に学園で事務をしている職員の〇〇さんに呼ばれて、話をしたことがきっかけです。〇〇さんは「〇〇さんは学園の味方ですね」「この学園を守りたい。〇〇さんや〇〇さん(私と同じパートタイムで働いている人です。)が、A氏の方へついてしまえば学園は存続しない」「学園の弁護士に会ってほしい」「弁護士さんには『J子ちゃんはこういう子だから』という言い方は絶対にしないでほしい」というようなことを私に言われました。
 前記に述べたようなことがきっかけとなり私は、3月25日に愛成学園を退職しました。
                                  以上。   


◆乙第2号証

乙第2号証                                   


           A 氏 の 解 雇 理 由 (全文)           

                                    
                                    
1.今回の暴力事件(2月3日と2月5日)J子さんの顔をなぐり、口から血を出させ、足蹴りにし、階段を引きずりおろした等、福祉職員として、あるまじき行為に許しがたき行為をし、たくさんの証言があること。

2.たび重なる業務命令を無視し、上司(岩田園長・〇〇〇〇主任)に対し、常に反抗的な態度である。
 @ 平成10年6月17日午後1時52分頃おきたJ子さんのケガの報告書を再々提出を要求しても未だ提出していない。
 A 「〇〇〇〇主任をやめさせろ」と言い出し、その理由を書いて提出するよう要求しても、提出はなく、何度も「やめさせろ」と言ってきたこと。
 B 平成10年9月より、資源回収してきたダンボールや新聞を大きな車で業者に持っていくようにとの再々の命令も聞かず、回収したものは倉庫にあふれ、園長の指示・注意に耳をかたむけず、自分のペースで(小さな車でしか納品しない)しか動かなかったこと。
 C平成10年4月より、中野区内の公園(創作班担当−天神公園)を作業時間、利用者と共に行っているが、A氏は1回も参加せず、利用者の疑問、不満が沸き上がっていること。

3.飲酒の匂いをさせ、出勤し、利用者さんより「酒くさいよ」と報告あり、注意すること再々であったこと。

4.学園祭の平成10年10月31日午前9時頃、テーブルやいすを出す仕事を「これは自分の仕事じゃない」と言い、職員〇〇〇〇の胸ぐらをにぎる暴力行為があったこと。
5.自分の意にそわない職員(〇〇〇〇一主任)を「やめさせろ」と再々言ってき、業務命令にしたがわない理由にし、話し合いを何度と持つが、園長の指示にはまったくしたがわない。

6.学園の職員の親睦会(みちる会)に年会費を支払わず、行事にまったく参加しようとしない。

7.全職員に買入参加を呼びかけた福祉チャリティ券の代金を支払わない。又買入したくない職員は券を返却すべきであるが、返却していない。

8.気に合わない職員に対し、あいさつ等まったくなく、反抗的で協調性にいちじるしくかける。

9.行事時、学園祭(平成10年10月31日〜11月1日)やクリスマス(平成10年12月19日)の後片づけなどまったくせず、協力体制はみられない。

10.平成10年4月より作業指導員B氏と行動を共にし、園長との話し合いも1人でくるよう命令しても常に2人で行動し、特に  班の室においてたびたび会談をし、業務終了までの2時間をつぶしていることが見られた。また園内組一泊旅行(平成10年11月17〜18日)時、他職員が、利用者の付添いで奮闘している中、午後9時頃から1時間2人一緒に入浴しており、利用者の付添いの旅行の自覚がまるでみられないこと。

11.職員会議において、会議がのび、利用者の昼食時間となり、他職員が昼食介助に移動しても立ち上がらず、他職員の声にまったく耳をかたむけず、また会議中の態度がいちじるしく悪いこと。

12.福祉職員として、援助技術にかけ、特に興奮しやすい利用者に対しては、暴力、暴言をもって対応していること。

13.利用者の保護者より「もう家の子はあずけられない」という要望が強く、その声は保護者全体に広がっていること。

14.職員側より、一緒に仕事をしていくには限界との声が高いこと。

以上、今回の暴力事件以前からA氏に対する問題は山積みにあり、ましてJ子さんの暴力事件は許しがたく、解雇にいたりました。


     平成11年3月20日

                         園長 岩田節子        


◆乙第3号証
乙第3号証


           地域保全等仮処分申立書に対する見解


                 (以下 略)                 

◆乙第4号証

乙第4号証


 平成11年2月3日(水)に作業中にJ子さんに対し手を上げ口の傷を負わせました。 今後このような事が二度とないよう気をつけます。誠に申し訳ありませんでした。
 園長先生に報告もせずすいませんでした。
 どんなばつをもうけます。

                     ○○区○○
                     愛成学園   A           

◆乙第5号証

乙第5号証


(中野共立病院附属中野共立診療所によるJ子さんの)               

                 診断書                    

                                        

「両側上腕及び両側膝間接の打撲症(皮下出血を伴う)を認めます。
                             医師 澤田玲」


◆乙第7号証

乙第7号証

園生・J子さんの被害写真報告書

日時     平成11年2月6日(土曜)
       午後5時20分頃
場所     愛成学園・いずみ寮
       (被害者はいずみ寮に所属している)
撮影者    〇〇〇〇(作業班職員)
立会人    〇〇〇〇(いずみ寮職員・主任)
       〇〇〇〇(いずみ寮職員)
       〇〇〇〇(いずみ寮職員)
       〇〇〇〇(のぞみ寮職員)



                (以下 写真略)                

◆乙第8号証

乙第8号証

作業班職員・〇〇〇〇さんの「平成11年2月3日の暴力事件に関する報告書」についての写真報告書と現場見取図

日時     平成11年3月20日
       午後7時頃
場所     平成11年2月3日、A氏が園生・J子さんに暴力を加えた愛成学園・作業棟2階、紙すき室等
撮影者    弁護士 副島洋明
立会人・説明者   愛成学園職員(作業班職員)
          〇〇〇〇氏



                (以下 写真略)                

◆乙第10号証

乙第10号証

                 意 見 書                  



 資料T(写真報告書)、資料U(診断書)、資料V(〇〇さん報告書)等を拝見し、医師としての意見を申し述べます。

 資料Tを見た範囲では、普通、集団的な暴力行為がふるわれた場合の受傷状況を思わせます。
 わたし自身、このような外傷が集団による殴打によって起こった例を見たことがあり、また、親による子どもの虐待でもこのような外傷形態をとります。
 資料Uにもある通り、右上腕、左上腕、左下腿等に見られるのは打撲症の後遺症であり、これは相当大きな外力で打ちすえられないと生じないものであります。

 A氏は、手を上げ口の傷を負わせたことを認めていますが、この説明では右頬部の外傷も、四肢の外傷でも説明できません。また陳述書で馬乗りになって両手首を押さえつけたといいますが、手首には傷痕はありません。またJ子さんの頭を平手で叩いたとありますが、この行為も資料Tに見られる外傷を生じるものではありません。
 即ち、資料Tに見られる外傷が生じた理由は一切説明されていないわけです。
 写真に見る外傷は、普通自傷行為で生じるものとは異質に見えます。わたしはこれまで障害児、障害者とつきあってきましたが、自傷はかむとか器物で刺すとかつねるとかいったものが多く、このような打撲症の形になることは珍しいのです。
 いかなる形の自傷行為でこのような外傷を生じたのか、A氏から説明されるべきであろうと考えます。

 更にもう一つ、A氏は平手で叩くことによってJ子さんが「収まった」と陳述していますが、J子さんのような知的障害者が暴れ出した時、それを“収めることのできる”ほどの叩きかたというのは相当強い殴打であったのではないかと懸念されることを申し添えます。
                          1999年3月21日
                          八王子中央診療所所長
                          医師 山田真        

◆乙第11号証

乙第11号証

               報 告 書 (全文)               

                     社会福祉法人 愛成会
                     愛成学園 作業部主任   〇〇〇〇



                     住所 ○○市○○

1.私は、1982年3月淑徳大学社会福祉学部社会福祉学科を卒業して、千葉県船橋市
立の小学校にある特殊学級、養護学校の非常勤講師を経て、1984年4月、愛成学園に
作業担当職員として入りました。以来15年間主にマット班、粘土班の担当をしてきまし
た。
2.今回、A氏によるJ子さんへの暴力事件についての陳述書を読ませていただき、感じ
たことを以下に述べさせていただきます。
 この陳述書、申立書によりますと、さも今回の暴力事件が「正当防衛」ないし「緊急避
難」でしかたがなかったとされていますが、とんでもないことだと思います。相手のJ子
さんは、なんといっても知的な障害があるがゆえに施設に保護されている方です。情緒的
に不安定になることがあるのは当然ありうることで、又自分を主張する手段としてパニッ
クになることも職員としては理解して対応すべきことであります。ところが、陳述書、申
立書によりますと、J子さんがとんでもない暴れ者で、だれの手にもおえないがごとき人
物として書かれています。それこそ、J子さんの人権を無視した、施設の職員としてはあ
ってはならない見解ではないでしょうか。陳述書に対する反論は後で細かく述べさせてい
ただきますが、2月3日、2月5日ともにしめくくりはA氏の暴力によって収まったとあ
ります。暴力で人が納得し、収まるわけはありません。A氏は更正指導であるとしていま
すが、これではまるで喧嘩です。ことばが不適切であるかもしれませんが、飼育です。
 近年、福祉の現場において利用者への対応の仕方についていろいろと論じられており、
とりわけ暴力については何があっても、どんなことがあってもしてはならない。又、許し
てはならない。と声を大にして叫ばれています。愛成学園としても、おくればせながら倫
理綱領の勉強をしたり、体罰をテーマにした会議を開いたりして、職員に徹底してきまし
た。しかし今回、このような暴力事件がおこなわれたことは全く残念なことであり、申し
訳なく思っています。
 私も含め、完全な人間などはなく過ちをおかしてしまうことはありますが、そのことを
正直に報告し、謝るべきであると思います。しかし、A氏による暴力事件は、不審に思っ
た園長はじめ担当寮職員がJ子さんから話を聞き、身体を調べてはじめて発見されたもの
であり、とても残念です。                            
 さらに、保護者の方へは、学園でおこった事は基本的に報告すべきであると思います。
まして身体にアザがはっきりあり、それも1カ所ではなく数カ所もあり、J子さん本人の
証言もあり、現場にいた非常勤の方やかいま見た職員の証言もあります。この事実を隠し
ておくことは、一種のもみ消しであり、そんなことは絶対にできません。又、家族の一員
が傷つけられたら怒る保護者が当たり前で、暴力の事実に対しどんな弁解もできないのが
私たち福祉現場職員の立場であると思います。事実関係の調査がされていないと申立書に
ありますが、園長、担当寮としては、いろいろと調査した上でのことです。ですから学園
によるA氏の解雇は妥当なことであると思います。

3.次に解雇の理由として右の暴力事件だけではないことを述べたいと思います。
 平成10年3月頃より、A氏は私の私的な行動や部会での発言を不快とし、勤務態度が
急に変わってきました。理由は、私が寮の女性職員と関係があるとか、部会での発言が主
任という権力をかさにした横暴なものであるというものでした。態度としては、挨拶をし
ても返事をしない上に、大きな音をたててドアを閉めたり、イスを蹴飛ばすなどです。さ
らに、ことばも他人を威嚇するようなものがみられるようになってきました。会議の際に
話し合いをもとうとしても、「ここでは言わない」と一方的に話を打ち切るのです。その
ような態度を私だけにするのなら我慢もしますが、A氏は同じ作業部職員のB氏とほとん
どの行動を共にするようになり、他の職員に対してもあいさつをしないばかりか、随所に
非協力的な態度をみせたり、相手を威圧する話し方をするようになりました。このような
ことが日常的になり、多くの職員がA氏とあいさつもできず、又A氏と同じ創作班担当の
職員からは、朝お酒くさいことが多く、単なる事務的な会話しかできず、利用生に関する
話などできる雰囲気、状態ではないと苦情も聞かれるようになりました。
 行事などにおける事例として、いくつかを左記に述べておきます。
@中野区より委託されている週1回の公園清掃事業に、園長の業務命令がありながらA氏
は参加せず、A氏の担当班の受けもち公園へは他の職員が、A氏の担当班の利用生に付き
添い出かけていました。何度となく園長、担当寮より一緒にいって欲しいことを申し入れ
ましたが、「園長が行かなくてもいいと言ったから。」と言うだけでした。A氏の担当班
の利用生(J子さんも含まれています)は、理由がわからず不安な様子がみられました。
A平成10年8月25〜27日にかけての「夏まつり」で使用するやぐらの組み立ての際
、行事担当者が他の職員にも協力を願い、多くの職員が組み立てている横を、A氏、B氏
は全く手伝うこともせず帰っていきました。
B平成10年10月31日9時30分頃、「学園祭」の初日の朝、もうすこしではじまる
という皆が忙しく準備をしている時、園生会による園生喫茶用のテーブルの組み立てにつ
いて、行事委員長である〇〇〇〇〇氏と園生会委員のB氏の間で口論となりました。いつ
の間にかその場にA氏も加わり、〇〇氏の胸ぐらをつかむ仕種をし、まわりの保護者もび
っくりするということがありました。
C平成10年12月19日、クリスマス行事の片づけの際、まだ片づけが途中で多くの職
員、ボランティアさんが働いている時に、勤務時間が終わったという理由で、A氏、B氏
は帰ってしまい、お客さまにも呆れられてしまうということもありました。
D月2回ある職員会議時の園生当番が、作業部担当として平成10年度は12回あり、交
代で行うことが通例ではなっていましたが、B氏、A氏の2名は全くせず、その理由も「
私たちは会議にでなくてはならないのです。」というだけのことで、再三申し入れてもや
らず、他の部職員が負担をしました。
E利用生のつくった作品(陶芸品、ハガキマット)を中野区役所内の福祉売店や他のバザ
ーなどで販売する際も、販売担当係として〇〇氏、A氏、B氏と3名いるにもかかわらず
、ほとんどの業務(準備、棚卸し、納品、集金)を〇〇氏ひとりにさせ、作品の準備を早
急にするように話をしてもなかなか用意せず、再度要請をすると直前になりやっともって
くるという状況でした。とにかく非協力的な態度なのです。
F平成10年6月17日午後1時50分ごろ、クラブの時ですが、園庭において利用生の
〇〇さんが車のドアに手の指をはさみケガをしてしまうという事故がおこりました。〇〇
さんは、A氏の担当するレクリエーションクラブの一員で、その日はドライブの予定でし
た。同じ時、B氏の担当する園芸クラブも車で外出するところだったため、〇〇さんが指
をはさんだ時の前後には担当職員としては、A氏、B氏ともにサブとして〇〇氏、〇〇氏
の4名が園庭にいました。この事故に関して、園長がクラブのチーフであるA氏に報告書
の提出を求めましたが、全く書こうともせず、その後も再三にわたり要求しました。しか
しそれでも提出せず、いつの間にか責任を掛川氏に転嫁する始末です。ようやくA氏、B
氏、掛川氏の3名の職員がこの件で11月27日にマット班の作業室で12月15日にし
おん寮で話し合いましたが、その内容は全くひどいもので、A氏、B氏は反省することも
なく、責任を全て他の職員に押しつけるというものでした。
 このように、多くの職員がA氏、B氏と現場においてコミュニケーションもうまくとれ
ず、絶えず威圧的なことばで押さえつけられるという状況があり、中には同じ場所で仕事
をするような時には勤務変更を願い出る職員もでてきました。
 A氏、B氏の勤務態度についての問題は、責任者会議においてもしばしば取り上げられ
、平成10年9月3日の責任者会議においては、口頭ですが、A氏、B氏とはこれ以上チ
ームを君での仕事はできない旨を学園側に申し入れました。

 今回暴力事件がおこってしまい、これまでにも勤務態度の悪いA氏、B氏に対し、何ら
処分ができなかったことについて、私自身責任を痛感し、深く反省するとおもにJ子さん
はじめ利用生の方々、保護者の皆様には本当に申し訳なく思っております。

4.終りにあたり、くり返しになるとも思いますが、知的に障害がある方と接する上で、
まがりなりにも支援させていただく職員としての気持ちを述べさせていただきます。
 当たり前のことですが、ことばや文字で自分の意思をきちんと表現することがむずかし
い利用生ですので、方法としては限られてしまうことも仕方がありません。
 身体を使う、いつもと違う様子、声の出し方、食欲、睡眠などです。これらの変化をキ
ャッチして適切な支援をすることが私たちに課せられたものですが、この変化をキャッチ
することは大変むずかしいことですもあり絶えず心のアンテナをはりめぐらせていること
が必要になるわけです。しかし、今回のJ子さんのようにあばれるという表現の方法は一
番キャッチしやすく、対応の方法としても反応がすぐに帰ってきますので、支援の方法が
悪ければ、私たちとしても反省がしやすいと思います。その都度支援の方法を変えていけ
ば良いのです。そうすることによって利用生が何を求めているのかがわかってきます。日
常的に対応しているのであれば、あばれる前に対応することができるようになると思いま
す。
 ことばでいうほど簡単ではありませんが、対応の方法を変える努力はすべきであり、日
常的に支援している担当寮の職員に相談することも必要であると思います。
 しかし、今回A氏は同じような対応しかしておらず、まして相談するなどの努力のあと
もみられません。このようなやり方が何度もくり返されているというのなら大変失礼かと
も思いますが、支援者としての資質を問われてもいたしかたないとも思います。
 このようなことからも、A氏の陳述書を読み返すたびに「なぜ」「どうして」と感じる
部分がたくさんでてきます。それをひとつひとつ以下に記しておきます。

陳述書に対する反論
@2ページ
 職員相互の意思疎通ということに関しては、A氏、B氏の方から離れているのであり、
あいさつがされていなかったり職員の親睦会である「みちる会」主催の忘年会、新年会、
ボーリング大会、旅行などにも全く参加しようとせず、会費を払わないばかりか、親睦会
自体の存在をも否定する発言をしています。
 又、旅行は一方的命令で中止になったのではなく職員、保護者より選出された旅行委員
を中心に話し合い、保護者会役員の意見もとりあげ、延期されたもので、実施の内容を検
討しているところです。
 職員と保護者が接する機会がないわけではなく、来園の際は利用生(お子さん)のこと
を中心に話す間には世間話もしますし、行事の後などには懇親会などで大いに盛り上がり
ます。又、右記のように旅行、新年会、年金などについては委員会制を導入し、その都度
話し合っています。
A3ページ
 A氏とともに創作班を担当するめぐみ寮としては、J子さんがA氏に対し安定した状態
で作業ができないのであれば作業種を変えるなどの適切な処置をするように何度となくア
ドバイスをしてきましたが、A氏はあくまでも自分で見るといい、そのまま創作班に所属
していました。
 又、「触らぬ神に祟りなし」ではなく、寮としてはJ子さんがパニックになるような時
には大丈夫であるのか、対応を変えてみようかなどの声かけもしてきましたが、その度に
「大丈夫」であると言い、同じような対応をしていました。いっしょに接してきためぐみ
寮職員としては、どの様に更正指導にあたってきたのか全く方向性がみられずJ子さんの
あばれ方もひどくなってきました。
 どの職員に対しても、いつでもあばれるように書いてありますが、興奮状態になっても
A氏以外の職員の前では暴力的になることはほとんどなく、その職員の後を追い回し、自
分の言い分を通そうとする程度です。
B4ページ(2月3日の件)
 強く叱ったとありますが、強く叱る意味がどこにあるのでしょうか。又、自傷行為が始
まったともありますが、強く叱ったことに納得しないから自傷という行為になるのである
と思います。
C5〜6ページ
 J子さんを落ちつかせるために体育館に連れていったとありますが、この部分の記述を
読みますと、何度も逃げまわっているなど、J子さんに対しどんどんと不安な気持ちや恐
怖を感じさせるように追いこんでいるとしか思えません。
D6ページ
 J子さんを他の利用生からせっかく離したのに、なぜ又近くへ連れていったのでしょう
か。ましてあばれることがわかっている状態のJ子さんをわざわざ狭く、そして物が多く
ある部屋へ連れていったのでしょうか。認識のまずさがうかがえます。
E7ページ
 1回平手で叩き、収まったとありますが、記述にあるような興奮状態にあるJ子さんが
1回だけ平手で叩いたぐらいで収まるというのはいかにも不自然です。又、暴力で人が収
まるなんてことは絶対ありません。これは、力で押さえつけ、力で静かにさせただけのこ
とで、指導でも更正でも何でもありません。ましてこのあとのJ子さんに対するフォロー
はどうしたのでしょうか。傷ついたと思われる身体については、どういう処置をしたので
しょうか。引き戸が倒れるほどのあばれ方なら身体に傷がついてもおかしくないと思いま
すが、A氏は気にもとめなかったのでしょうか。J子さんが悪いと決めつけそのままにし
ておいたのでしょうか。理解に苦しみます。
F7ページ(2月5日)
 朝から不機嫌そうであったとありますが、様子が変と気づいていたのならなぜ寮に確認
するということをしなかったのでしょうか。ハンカチに関する会話の部分でも、当然エス
カレートしてしまうように思います。又、あばれだした時になぜ一昨日にもより興奮状態
になった部屋に連れていったのでしょうか。
G9〜10ページ
 なぜ一人で置いていったのでしょうか。A氏、B氏は日ごろから不安定な利用生は寮で
すごすことが良いとして寮に残すことをしているのに、なぜJ子さんは寮に帰されなかっ
たのでしょうか。B氏は、J子さんのそれまでの心の動きや残されていく理由を十分に理
解して引き受けたのでしょうか。
 又、「〇〇さんに来てもらえなくなるよ。」とJ子さんをおどすようなことばを使って
います。これではあばれていくのはあたりまえです。そしてこの時も、興奮状態を助長す
る部屋に連れていってます。
H11ページ
 対応としてはほとんど3日と同じように感じます。なぜ対応を変えるとか、違う人にた
のむとかしなかったのでしょうか。
 さらに、この日も1回叩いてわからせたとありますが、そのあとの処置はどうしたので
しょうか。自分で頭を床に打ちつけたり戸をたたいたりしたとありますが、傷はつかなか
ったのでしょうか。
I12ページ
 「やむにやまれぬ事情」とありますが、今後もこのような対応をしていくつもりだった
のでしょうか。そしてさいごはいつの場合でも、1回叩いて収まるようにするのでしょう
か。ということは、以前から同じように叩いていたとも受けとれます。
J12ページ
 事情の説明もないとありますが、ではA氏はこの件を園長や寮に報告したのでしょうか
。あれだけのあばれ方をしたら身体にアザがあるのは当然であり、入浴時に発見したら、
寮の職員がどのようにおどろくかわかると思います。
 このアザについては、あくまでも他人事のようにあの記述からは思えます。
K14ページ
 「辞めるつもりはない」、拒否をしたとありますが、ではどのように責任をとるつもり
でいたのでしょうか。又、辞めることを強要されたとありますが、A氏が解雇された方が
良いと言ったので、「自分から辞めた方が良いのでは」と言ったのです。
L14ページ
 解雇を受け入れてしまうことが、A氏だけの問題ではなく、園生や職員の全てに影響す
る問題だと思っているとありますが、どう影響するのでしょうか。これはおどし文句とも
受けとれます。
 A氏がおこなったJ子さんへの暴力事件こそが利用生や職員、保護者の方々に影響する
問題であると思います。

                                以上。
                   1999年3月20日           

◆乙第12号証

乙第12号証


               報 告 書 (抄訳)               


                                 〇〇〇〇

 私は1974年4月愛成学園に入職、現在しおん寮に所属して、生活部のまとめ役をしている。
 A氏の陳述書に対しての考えを記す。

1.J子さんの人となりとかかわりについて
 A氏の陳述書では、J子さんのわがままや異常なまでの行動が浮き彫りにされているが、通常のJ子さんは長い間落ち着いて過ごすことのできる手先の器用な方。他の利用者の面倒もよく見る。
 デリケートな感性の持ち主なので、人に言われた事や会話の中で心につまずきを感じると、そのことがとても気になって追求してくるところがある。そうした場面での受け止め方や対応がスムーズにいかないとエスカレートしてしまい、いろいろな言動に発展してしまうことはあるが、創作班の中で小人数で密な関係を3年も続ければ、J子さんとの関係性は自ずと把握できるはずである。
 A氏の陳述書3ページに、「良く面倒を見さえすれば、こういった傾向は必ず改善できる」とあるが、それならばどうして平手で叩いてようやく収まるような終結しかとれないことになるのか。また4ページ以降に「自傷行為」についてあるが、J子さんには以前からちょっとした傷やかゆいところが気になっていつまでもかいたりして悪化させることがあったが、いわゆる自傷行為は見当たらない。A氏への複雑な思いや欲求不満がこうした形であらわれたのだと思う。

2.J子さんに対する暴力について
 2月3日、5日とも、手をのばせば危険なものがすぐ届くような小さい部屋でA氏と1対1にさせられている。こうした構図では、当然攻撃的な態度に発展するはず。職員が利用者を精神的に追い詰めてぎりぎりの状態に立たせることは、それ自体力の論理であり、暴力に値すると思う。それでいながら「暴力事件だなどと言われるのは、全くの心外です」と言うのは、全く自分の行動を顧みない自己弁護であり、正当化以外の何物でもない。


3.解雇について
 A氏は自分の口で、「2回は平手でJ子さんを叩いた」と認めたのに、12ページで「これを無理矢理認めさせられた」と書いている。だが事務所には他の職員の目もあり、危険な強迫を感ずるような状態はなかった。叩いたことを自ら認め、退職を申し出たのであって、我々が求めたものでも強要したものでもない。
 利用者とのかかわりの中で、決してあってはならない方法でアザや傷をつくってしまいながら、園長はじめ所属寮に直接報告しないのは、隠そうとしたとしか理解できない。
J子さん、そしてご家族の皆様へは、傷や打撲の痛みのみならず、精神的打撃に対して職員として本当に申し訳ないとお詫び申し上げたい。学園としては事件をできる限り調べ、話し合いを持ち、解雇に至った。解雇は妥当なものであると考える。

4.その他の反論
@7ページ「朝からJ子さんは不機嫌そうな様子でした」
 それならば、出寮して来る前の様子を寮にたずね、その日の対応を考えるべきだ。
A12ページ「園長は誰に聞いて事実を確かめたのでしょうか」
 J子さん本人からの訴えと話を聞き、寮の調べによる報告を受けている。事故報告を全くせずに居直っているとしか思えない。
B公園清掃について
 A氏は業務命令にもかかわらず公園清掃に参加していない。
C日ごろの言動について
 いろいろな場面でB氏と常に2人で行動し、少しでも意見の違う職員に対しては拒否的態度をとり、挨拶を全くしない。
D14ページ「自分に対する仕打ちを受け入れてしまうことは、自分だけの問題ではなく、園生や職員の全てに影響する問題だと思っています」
 起こした問題こそが多くの影響を与えたのであって、復職してJ子さんや利用者に与える心の影響は断じて受け入れられるものではない。

                         1999年3月21日     

◆乙第14号証

乙第14号証


      2月3日(月)の話し合いについて
                       記録担当者の報告


                          泉寮  〇〇〇〇



                 (以下 略)                 

◆乙第15号証

乙第15号証


                 要 求 書                  




社会福祉法人愛成会
理事長 掛川 勝 殿

知的発達障害者更正施設 愛成学園
園長 岩田 節子 殿
                       全国福祉保育労働組合東京地方本部
                       執行委員長 茂木 初子

                         同   新中杉支部      


                       執行委員長 堤崎 栄道      



                 (以下 略)                 

◆乙第16号証

乙第16号証

               団体交渉申し入れ書                



社会福祉法人 愛成会
理事長 掛川 勝 殿

知的発達障害者更正施設 愛成学園
園長 岩田 節子 様
                      全国福祉保育労働組合東京地方本部
                      執行委員長 茂木 初子

                        同   新中杉支部
                      執行委員長 堤崎 栄道       



                 (以下 略)                 

◆乙第17号証

乙第17号証


                 通 告 書                  




社会福祉法人愛成会
理事長 掛川 勝 殿

知的発達障害者更正施設 愛成学園
園長 岩田 節子 殿
                       全国福祉保育労働組合東京地方本部
                       執行委員長 茂木 初子

                         同   新中杉支部      


                       執行委員長 堤崎 栄道      


                                        


                                        

                 (以下 略)


◆乙第18号証

乙第18号証

                            平成11年3月12日
全国福祉保育労働組合東京地方本部
執行委員長 茂木 初子 殿

                         社会福祉法人 愛成会
                         理事長 掛川 勝

                         社会福祉法人愛成会 愛成学園
                         園長 岩田 節子       


              団体交渉延期のお知らせ               


                 (以下 略)                 


愛成学園事件  ◇全文掲載

HOME(http://www.arsvi.com)