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大学点検ツアー


last update: 20151221


亀井伸孝さんより

「大学点検ツアー」について紹介します。
きっかけは、去年の11月の大学祭で企画した
「障害者ドキュメンタリー映画祭」でのできごとでした。

3/31、4/1の2日間に分けて、京都大学構内の
総合人間学部/文学部/経済学部/法学部/理学部
の主な講義棟と、附属図書館について、
その使いやすさ/使いにくさをチェックして回ります。
大学の現状が一体どういうものなのか、
車いす使用者や視覚障害者と共に、つぶさに見て回る機会を持とうという企画です。

関西近辺に在住で、関心とお暇のおありの方、
飛び入りも歓迎です。

以下、計画の概要です。ご参考まで。
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「大学点検ツアー」計画概要

            「大学点検ツアー」を実行する学生有志
                       1999年3月23日


★趣旨

【これまでのいきさつ】
 「大学にバリアがある」──このことを身をもって痛感したのは、去年の京都大学
11月祭のときでした。学生が「障害者ドキュメンタリー映画祭」という企画を立て、
理学部2号館の第1講義室を使って上映会を行いました。映画を見ながら障害者差別
というものについて考え、討論するという趣旨の企画です。当然、地域の障害者の方
々自身が参加できる場でなければなりません。

 理学部2号館には、いちおうスロープ、エレベーター、車いすで使えるトイレなど
が備わっています。そして第1講義室は、その中でもっとも広く、また玄関やトイレ
にも近い部屋であり、最適な会場であると考えられました。
 しかし、重大な問題が存在することが明らかになりました。つまり、大学の中では
車いすでもっともアクセスしやすい「はず」のこの講義室では、すべての座席が床に
固定されており、車いすで入ることのできるスペースが、たった2人分しか用意され
ていないのです。

 主催者は、床に固定されている講義室の座席の一部を大学祭の期間中に限って取り
外すよう、大学当局に対して求めましたが、それは拒まれました。結果的に、車いす
に乗って来場した一部の方に、車いすをおりて座席へ移動していただくようお願いす
ることとなりました。

 大学はしばしば「障害者にちゃんと配慮をしている」という姿勢を取ります。しか
しその実、地域の障害者が実際に大学の施設を利用しようとすると、てきめんにこう
した問題点があらわになります。健常者の側で勝手に配慮したつもりになっていて、
「使う側の発想」で考えようとしていないことの結果であることは明らかです。

 大学祭の準備の中で、私たち学生もそうしたことに気づいていなかったわけです。
その責任も感じながら、この際「当事者の視点から」大学を徹底的に点検してみよう
ではないかというふうに話が進みました。


【「バリア・フリーな大学」とは??】
 では、大学の設備をいくらか改良したら、大学のバリア(障壁)はなくなるのでし
ょうか? そんなことはありません。

 例えば、いくらエレベーターがあっても、必要なときに止まっていたら意味があり
ません(これも大学祭の時に実際に起こった問題です)。
 実際に大学で学生生活をしたり働いたりすることを考えたら、交通機関、道路、商
店、住居を含めた、大学周辺の町自体も同時に変わらなければなりません。
 今の大学の講義は、ほとんど音声語だけでなされています。ですからろう者が講義
を受けるには、手話による講義や、手話⇔音声語通訳が必要です。図書館の建物を改
造し、また点字の本を置いたとしても、学外者の入館や利用を拒むようであれば、ま
さしく閉ざされた場に違いありません。

 いや、そもそも大学は、入学時に学力による選別をしています。それに基づいて特
権的な専門家の集団を作っているわけですから、いかに表面的に工夫をこらしたとこ
ろで「すべての人に開かれた場」にはほど遠いものがあります。本気でこれに取り組
むならば、入試制度や教育システム自体を問い直す必要があるわけです。

 このように、「バリア・フリー」(誰にとっても障壁のない状態)の意味をよく考
えたら、これは容易に実現できる課題ではありません。表面的な問題だけ考えて、簡
単に「バリア・フリーな大学を!」などと言うべきではないでしょう。なぜなら、設
備が多少マシになった時点で安心してしまい、かえって残された多くの問題を隠して
しまう恐れがあるからです。

 本当に目指すべきなのは、どんな人でも対等に使っていくことのできる場を作るこ
とです。もちろん、人や目的に応じて、バリアというものはさまざまです。その一つ
一つを取り払っていくこと。それをたゆまず実行すること。その過程こそが求められ
ています。


【今回の点検の目的】
 残念ながら、私たちには、これら多くの問題に一度に取り組むには力が不足してい
ます。また、あまりに大きすぎる課題を掲げて、手をこまねいていてもしかたありま
せん。限界も多いながら「やらなきゃ始まらない」という面もあるわけです。非常に
目的が限定されてしまうことを承知の上で、今回はテーマをしぼることにしました。

 「一般市民対象の行事 (大学祭・講演会・公開講座) の時に使われることの多い施
設のハード面」を今回の点検の対象にします。

 これで終えてはいけないということ、宿題が山積みであることを確かめつつ、第一
弾の試みとして始めたいと考えています。


★具体的な「大学点検ツアー」の計画

【実施日】
 3月31日(水)、4月1日(木)の2日間。


【場所】
 京都大学の主な講義室とその周辺。
 今回点検するのは、以下の学部。
 総合人間学部/文学部/経済学部/法学部/理学部


【概要】
 点検の幅について言えば、今回は目的を限定し、主だった講義室とトイレの点検を
中心にする。
 点検の深さだが、「どういうふうに変えるべきか」というレベルの話ができるかど
うかは分からない。まずは「問題を発見すること」を最低限の目的にしたい。もちろ
ん、実地での点検や最後の報告会のなかで、自由に提言をし討論する中で、さまざま
なアイディアが出ることも期待したい。


【スケジュール】
・集合時間と場所
  3月31日(水)、4月1日(木)ともに、
  午前 10:30 、東山東一条交差点の春琴堂書店前に集合。
              (市バス「京大正門前」下車)

・主な流れ(予定)
  3月31日(水)
   総合人間学部→(昼休み)→文学部→附属図書館→報告会
  4月1日(木)
   経済学部→法学部→(昼休み)→理学部→報告会
 (詳しくは、別表の「スケジュール」をご覧下さい。)


【点検方法】
 車いすを使用する方、ろうの方、盲の方の協力を得て、2日間かけて大学の講義室
を点検する。実際そこを訪れて何か不便を感じるかどうかを自由に語ってもらう。
 ここでは、講義室の中だけではなく、そこへたどり着くまでの道、入り口、廊下や
部屋の扉も含んでいる。大学のキャンパスに入るところから点検するという意味で、
出発点を大学の外にする。
 また、講義室の最寄りのトイレもチェックの対象にする。
 京都府の条例を参考に、簡単な点検項目リストを作っておき、記入する。例えば、
扉や通路の幅、トイレやエレベーターのサイズなどの計測をする。
 ビデオやカメラも活用する予定。


【報告会】
 一日の実地の点検作業が終わったところで、一度部屋に集まり、点検に参加した立
場から見えてきた問題について報告し、お互い討論する時間を設ける。


★点検後の展望

【パンフレットの作成】
 点検結果はすべて、パンフレットにして公表する予定です。


【大学当局への要求】
 一応「『大学点検ツアー』を実行する学生有志」としての作業は、パンフレット作
成までです。ただし、そもそもの出発点は「使いづらい大学を変えること」「そのた
めに、今の大学が抱えている問題をはっきりと知ること」にあったわけです。
 ですから、この点検結果をもとに、大学当局にさらに強く改善を要求し、より開か
れた場を目指していくべきであることは言うまでもありません。


【継続的な取り組み】
 もちろん、趣旨のところに書いたとおり、大学にとっての課題は無限にあります。
ですから、今後も継続的に取り組んでいく必要があります。
 また、この点検結果を単なる「学内の設備問題」として片づけることはできません
。このような事態を生み出してきた大学や社会そのものを批判的にとらえ返すきっか
けとして、この成果を生かしていけたらと考えます。



主催・「大学点検ツアー」を実行する学生有志
参加団体・理学部学生自治会/文学部学友会/経済学部同好会(常)
    /総合人間学部学生有志★

連絡先 電話 753-7531 内線3632(理学部学生自治会)
       753-4085(亀井)
    FAX 753-4115(同)


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「大学点検ツアー」のスケジュール

《3月31日(水)》
 午前 10:30 集合(東山東一条交差点の春琴堂書店前に集合)

 午前
  ●総合人間学部
       新館1号館 1B05視聴覚講義室
       A号館 A222教室
       人間・環境学研究科 地下大講義室
       E号館 E21大教室

 昼休み

 午後
  ●文学部
       新館 第3講義室
       東館 第1講義室

  ●附属図書館 (予定)

  終了後、報告会(文学部学生控室)   午後4時ころ解散


《4月1日(木)》
 午前 10:30 集合(東山東一条交差点の春琴堂書店前に集合)

 午前
  ●経済学部
       時計台 法経第2教室
       法経館 法経第7教室
  ●法学部
       時計台 法経第1教室
       法経館 法経第4教室

 昼休み

 午後
  ●理学部
       1号館 理学部共同大講義室
       2号館 第1講義室

  終了後、報告会(理学部2号館 315号室)  午後4時ころ解散

※すべて、各講義室のなかへ入るまでの入り口や通路と、近くのトイレの状況を含め
て見る。
※10:30ぐらいから点検を始め、15:00には終わり、報告会に入って夕方には解散。
※昼休みは、時間が許せば、生協食堂(中央食堂/ルネ)を訪問してみる。
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亀井伸孝
〒606-8502 京都市左京区北白川追分町
 京都大学理学部人類進化論研究室
tel    075-753-4085
fax    075-753-4115
e-mail zeami@macaca.zool.kyoto-u.ac.jp (KAMEI Nobutaka)


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