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「支援要請書・呼びかけ文」

副島 洋明 1999/03/26

last update: 20151222


         支 援 要 請 書     ・・呼びかけ文
                              99.3.26
                          弁護士  副島洋明

 愛成学園事件(利用者に対する暴力事件を契機とする解雇事件)について

 前略。突然に連絡いたします。私は現在、知的障害者施設(愛成学園)における〈利
用者(女性障害者)に対する男性職員の暴力事件を契機とする職員解雇事件(裁判)〉
の施設側代理人を担当しております。この解雇事件の背景をなす問題は、知的障害者施
設のもつ病理ともいうべき〈暴力の問題〉です。
                                       
施設の〈暴力の構造〉
                                       
 この愛成学園事件に限らず、知的障害者施設での職員による利用者に対する暴力事件
には、共通する〈暴力を生む構造〉があるように思えます。施設での生活や作業におい
ら、利用者が職員のいうことを聞かない、従わないということがあるとき、職員はさら
に強い注意の指示や叱責となり、それでも従わないとしばしば「力による制止」となっ
ています。利用者が抵抗したりイヤがったりすると〈反抗的に暴れた〉ということとな
って厳しいマイナス評価がなされ、〈反省させる・教育指導する〉という認識となって
います。そしてそんな「悪い・手のかかる利用者」に対する反省と教育として、他の人
たちの目につかないところへつれていかれて、〈力づくでの反省〉という暴力的状況が
つくられたりもします。また強い叱責や利用者へのマイナス評価による言動が、しばし
ば利用者自身の「自傷行為」のひきがねとなって、それを制止し反省させるためにさら
なる暴力的状況がつくられたりしています。そんな状況をつくりだした職員によれば、
どうしようもなく〈やむにやまれぬ事情から〉頭や顔を平手で叩くこととなったり、押
し倒して馬乗りになって力づくで制圧したりすることとなったが、しかし“やむをえな
いことだ”といったりします。
 そのような暴力(力による制圧)を正当化する職員の弁解はきまって〈利用者が悪 
い〉ということであり、自分の暴力はやむにやまれぬ事情に基づいているから暴力では
ない、むしろ正当防衛であり緊急避難というべき〈正当な行為〉だ、などという反論が
でてきます。しかしそんな職員に限って、利用者を脅迫して暴力(正当防衛だといいな
がら)の口止め工作をしたりしています。そしてそんな「暴力職員」は、自分だけがそ
んな「問題利用者」を見捨てずその更正のために熱心に取り組んでいるのだとか、他の
職員は「さわらぬ神にたたりなし」として避けて真剣に取り組んでいない、本人のため
にやっているのは自分だけだなどという「思いあがり」にとらわれた「弁解」をしたり
します。福祉の現場ではそんな〈ひとりよがりの勘違い職員〉をよくみかけます。
 利用者本人は、当然そんな職員をこわがりおびえることになり、そして多くの場合、
「強い指導(暴力事件を現場ではそう表現したりします)」のあとは利用者が「荒れる
」ということになったりしています。そんな「やり方」に他の職員も反発し、文句をい
ったりしますが、自分の非(誤り・責任)を認めたくないので聞き入れません。またそ
んな職員を施設長らがかばったり見逃し(利用?)てきたりする経過があります。その
結果「見て見ぬふりという状態」が施設の中につくりだされていきます。
 そんな問題職員がひとりふたりと増え、そこにその施設の構造上・運営上のいろんな
問題が加わってきて不満・反発をもつ職員のグループがつくられてきますと、ひとつの
勢力にもなります。ひとつの職員の利用者に対する暴力事件の背景には、単にひとりふ
たりの職員の処遇技術の未熟さ・貧困さだけではない、施設としての基本的な姿勢が問
われてくるような構造上の問題があったりするものです。確かに利用者(知的障害者)
のさまざまな「問題や困難」に対する“支援(関係と技術)”がもっと深められること
が強く求められてはいますが、その前に利用者を支援することで給料をもらっている職
員の資質の問題、施設としてのあり方の問題がまず問われ、「教育・指導」され〈改 
革〉されるすべきではないのでしょうか。
                                       
この裁判の意義   ・・何を問うているか   ・・
                                       
 私は3月24日、愛成学園事件の裁判(第1回)が終わったあと学園内で緊急職員会
議を開催していただき、そこでこの裁判の意義を次のように述べました。
                                       
1.この事件は単なる労使問題としての職員の解雇事件ではない。福祉の現場における
 利用者(知的障害者)の人権の問題、利用者(園生)に対して本当に許されない暴力
 を繰り返して反省しないばかりか、その利用者に対して〈しゃべったら作業をやめさ
 せる〉などと脅迫の口止め工作などをしたという、福祉の現場における知的障害者虐
 待の人権侵害事件だということです。
                                       
2.この事件は施設における暴力禁止の新たなルール作り、つまり本当に私たちの知的
 障害者施設から職員による利用者に対する暴力を一掃するための裁判にしなければな
 らないということです。職員の暴力、福祉の現場での〈強者による暴力〉がやむにや
 まれぬもので、正当防衛とか緊急避難とかの弁解で正当化することを許さないという
 こと、暴力をふるう悪質な職員は解雇されるのだという基準(スタンダード)をつく
 りあげていく闘いなのだということ、まさに施設のあり方と職員の働き方の〈改革〉
 のための裁判だということです。
                                       
3.この事件は、根本的に施設のあり方、施設長や職員のあり方を問う事件であり、あ
 らためて施設の主体(主人公)を問う事件だといえます。行動障害・パニック・自傷
 行為という言葉でしばしば職員らの暴力が隠されてきている実体(行動障害とかパニ
 ックという言葉で責任を本人に転嫁するために利用されてるような現状)と、そして
 そのための〈支援のあり方(職員の働き方や専門性)〉をあらためて問い改革してい
 く運動として取り組んでいくべき事件だということです。

 このような私の「思い」を皆さんにお伝えして、この「愛成学園事件」に是非関心と
ご支援をいただき、そしてこの「愛成学園事件」を支援する会の呼びかけ人・支援者に
なっていただけないか、というお願いです。
                                       
・・・・・・・愛成学園事件を支援する会・発足集会      ・・・・・・・・・
・                                     ・
・ 日時       99年4月9日(金曜)      午後5時から    ・
・ 場所       愛成学園・体育館                   ・
・ 内容       ・事件の報告と課題                  ・
・          ・施設から暴力をなくすために、私たちは何をなすべきか ・
・ 呼びかけ人    愛成学園事件弁護団                  ・
・          (弁護士・副島洋明、登坂真人、大石剛一郎)      ・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 また、いつものことですが、運動には〈人とお金〉が不可欠ですので、今後とも支援
をお願いをすることになります。よろしく。
                                   
連絡先  〒102-0084 東京都千代田区二番町11−10 麹町山王マンション307号
      副島法律事務所               
        TEL 03-3230-3933(代)   FAX 03-3230-1549  
     愛成学園    (女性だけの知的障害者60名の入所施設です)    
        TEL 03-3387-0082   FAX 03-3387-0820  

 私たち弁護団としては、この事件を前記したように〈福祉の現場に暴力をふるう職員
は解雇されるという基準、その前提として理事長や施設長の責任基準をつくりだしてい
く施設改革の事件〉ととらえております。これまでマスコミ等で知的障害者虐待事件と
して騒がれた施設で、施設長や人権侵害をなした職員が責任を問われ辞職した、やめさ
せられたということがどれだけあるといえるでしょうか。聞けば、やめさせようとした
ら文句をいわれて撤回したとか、始末書や文書による制裁で終わりにしたとか、自宅待
機10日間とか、どこもかしこも〈口先だけの謝罪ですませる責任回避〉ばかりのよう
です。施設のトップはいまだこの“暴力(人権侵害)をなくす”ことを単に「時代の流
れ」とか「問題をおこすな」といった認識で、自己保身(責任回避)の状況にとどまっ
ているのではないでしょうか。まず、上(理事長や施設長ら指導者)から襟をただし、
姿勢と責任を明らかにしていくことなしに、暴力をなくす施設改革ははじまらないので
はないかと考えています。
                                       
※ 是非、呼びかけ人・支援者になって下さい。当日の集会と支援する会の紹介をお願
 いいたします。                               
                                       
  会場案内  
   JR中野駅北口、徒歩5分                        



愛成学園事件  ◇全文掲載

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