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「××××氏の××××さんに対する暴力事件に関する報告書」


last update: 20151221


    ××××氏の××××さんに対する暴力事件に関する報告書


      平成一一年三月二二日
                 愛成学園いずみ寮職員  多田羅初子

東京地方裁判所 御中


一、私は××××氏の園生・××××さんに対する暴力事件に関して、二月三日の暴力事
 件を知りながら見て見ぬふりをしてしまった者として、あらためて責任を感じておりま
 す。私がこの事件についてかかわり知っていることについて、正直に報告させていただ
 きます。
 
二、平成一一年二月三日の午前一〇時三〇分、ベランダで。
  私は担当するいずみ寮に二月三日の一〇時三〇分に出勤しました。いずみ寮の同僚の
 嶋田さんと引継ぎ、寮の仕事にとりかかりました。午前一一時頃、ベランダにでて洗濯
 物の取りこみをやっていると、ちょうどベランダと真向かいになる園庭に作業班で××
 氏のヘルプをしている鈴木さんがいましたので、あいさつをしました。鈴木さんは私が
 あいさつをしたあと、私が××××さんの寮の職員であるため、突然、「例によって×
 ×ちゃんが体育館でずっと泣いているのよ。変よね」と心配そうに声をかけてきまし 
 た。××さんの作業班の担当は××氏ですので、「例によって」という言葉で「また×
 ×さんが・・・」という考えが浮かびましたが、特別とは考えませんした。その後私が
 ××さんと同じ創作班に所属している園生の××さんと会ったところ、××さんが私に
 「×ちゃん、また××先生とけんかしているよ」という話をしました。私はちょっと驚
 き心配しましたが、自分ですぐに××さんの様子を確認しにはいきませんでした。
 
三、同日午後一二時四〇分、食堂。
  私は、食堂へ昼の一二時四〇分頃、風邪などで作業を休んだ園生の病人食をとりにい
 きました。その食堂で××××さんに会いました。午前中パートの鈴木さんや園生の×
 ×さんから××氏といざこざのようなことがあったことを聞いて心配していましたの 
 で、××さんの姿をみつけてそばに行き、様子をみました。二月三日の節分の「のり巻
 き」を食べているところでした。顔を見るとほおにバンドエイドをはっており、泣き 
 じゃくった顔で目をはらしていました。口もとも「はれ」があり、近づいてよく見ると
 食べていた「のり巻き」に血がついて、口の中が切れているようでした。私はその痛々
 しい××さんの姿に驚いて「どうしたの」と聞きました。すると××さんは顔をうつぶ
 せにして「いいの、いいの」といいながら泣きだしました。私はそれから「どうした 
 の」と繰り返しましたが、××さんは泣くばかりでなにも答えませんでした。
  私は××さんの真後ろのテーブルで昼食をとっている看護婦さん(二名)をみつけ 
 て、二人に「××さん、様子おかしい。××さんのこと何か聞いていますか」と質問し
 ました。すると二人の看護婦は同時に「いいえ」と首を横にふって、何も聞いていませ
 んと答えました。そして小声で私に「自傷でしょう?」といっていたのを聞いていま 
 す。

四、同日、午後。
  私は午後一時頃、同僚の嶋田さんより「×ちゃんの顔の傷あと残るかもしれないので
 みておいてね」といわれました。私は午後二時三〇分頃、××さんが寮にもどってきた
 ので、「その顔の傷どうしたの?」「園長先生に見せに行きましょうよ」と声をかけま
 した。××氏から何か暴力を受けたのかという心配もありましたので勧めました。とこ
 ろが××さんは私の「園長先生のところに行きましょうよ」という言葉に緊張して「絶
 対行かない!」と言い、拒絶しました。
  その後、××さんも寮の中で落ちつき、夕食の時などに風邪等にかかっている園生の
 病人食を食堂から運んでくれたりして手伝ってくれましたので、安心してしまい、××
 さんの事件についてきちんと報告はしませんでした。
 
五、他の職員によると、その二月三日の午後、××さんはおかしい様子がいろいろあった
 ということをその後に聞きました。職員からたびたび顔の傷のことを「どうしたの」と
 聞かれ、そのたびに泣いたり大声をだしたりして精神的に不安定で、大変に様子がおか
 しかったといいます。夜のティータイム後、他の職員は××さんが自室にて泣いていた
 姿を見ています。私がその日の午前中にヘルプの鈴木さんや園生の××さんから聞いた
 ことを園長や職員に報告しておれば、××さんが精神的に不安定となって荒れている原
 因がわかり、きちんとそのケアをすることもできました。××さんは××氏より「口止
 め」を脅迫されていたことをあとで知りました。
 
六、この××氏の暴力事件は二月六日(土)に発覚しました。××さんはずっと顔の傷の
 ことを誰にも話してくれませんでした。主任の職員木暮さんが××さんに何度か「話し
 てくれない?」と尋ねても話してくれませんでした。××さんにすれば、××氏からの
 「やめさせる」「許さない」という脅迫が本当にこわかったのだと思います。
  二月六日(土)午後三時すぎ、主任の木暮さんが××さんに「園長先生のところへ 
 行って話してみよう。相談してみたら」と勧めたところ、××さんは園長室に行って園
 長先生に自分から二月三日、そして五日の暴力事件のことをやっと話してくれました。
 そして園長先生からいずみ寮の方に「顔の傷だけではありません。体中にひどいアザが
 できています」「××さんは××さんと××さんの二人から暴力を受けたといっていま
 す」という報告を受け、その真相を知った次第です。
 
七、私はその後いずみ寮の主任木暮さんたちとすぐにその被害の実態の把握をはじめまし
 た。看護婦を呼び、その被害状況を確認しました。腕・足・ひざなど体中の七・八ケ所
 に大小の黒ずんだアザが残っていました。そこで作業班の西川さん、そしてのぞみ寮の
 近内さんも呼び、写真をとりました。またその日の入浴の時、××さんの裸の状態を確
 認したところ、背の右肩の後ろのところに大小の二つのアザを新たに発見しました。そ
 して二月六日の夜、××××さんの家にいずみ寮職員嶋田さんらが電話をして、このよ
 うな被害状態のことを報告し、おわびしております。
 
八、二月七日(日)の午後一時四五分頃、××××さんのお母さんとお兄さんの奥さんの
 二人が大変に心配されて園にこられました。××さんはお母さんと義姉さんの二人がこ
 られたことを知り、驚いたのか私に「会いたくない」「お母さんたち帰ってもらって 
 よ」といっていました。私は××さんに「お母さんとお義姉さんにきちんと話した方が
 いいよ」と勧めて、静かに話せる部屋(管理棟二階三号室)に案内しました。その部屋
 でのお母さん・お義姉さんと××さんとの話し合いの場に私も同席させていただきまし
 た。××さんは最初黙ってうつむいていました。私が××さんに「本当のことをお母さ
 んに話してね。どの先生がやったの」と声をかけたりしました。××さんはしばらくし
 て話してくれました。
  顔の傷について××さんは「げんこつ」といって、手で顔の傷を指しながら「××先
 生がげんこつで殴った」といいました。口の中の傷については「口は」といって自分の
 右手をひろげて平手をつくり、口元を殴られるジェスチャーをしました。体にあるアザ
 については、足のひざのアザは「作業棟の階段のところで足をけられた」といいまし 
 た。そして「××先生と××先生に二人から殴られた。けられた」ということを繰り返
 しました。私が××さんに「どうして園長先生にすぐにいわなかったの」と聞いたとこ
 ろ、××さんは「いうと創作班をやめさせる、いうなといわれた」「××先生・××先
 生にいうな、園長先生にいうなといわれた」「いったら作業場をやめさせるというから
 いわなかった」と答えました。お母さんとお義姉さんは××さんの話を聞きながら「ひ
 どい!」「ひどすぎる」「かわいそう」と繰り返されていました。そして「今日で五日
 目です。どうしてそれまでわからなかったんですか」といわれました。その話というか
 事情聴取は約三、四〇分程でしたが、私はその時直接に××さんより生々しい具体的な
 被害を受けた状況を聞かされて、あらためて驚きました。それまで私自身、少し軽く考
 えていたようなところがあり、本当に反省しました。
  お母さんたちは××さんの受けたひどい暴力の被害を知り唖然とされているような状
 態で、××さんのお兄さん(すでにお父さんは亡くなられていて、お兄さんが世帯主と
 なっておられる)に何も話してこなかった、帰って今日の××さんの話をお兄さんに報
 告しなければならない、そして明日その××先生・××先生のお二人も入れて話し合い
 をしたい、兄が来ます、といわれて帰られました。私は自分がこの話し合いの場で××
 さんから聞いた話を寮に帰って主任や職員らに話し、園長先生に報告されています。
 
九、私はこの事件について右に報告していること以外にも関与しておりますが、一応私が
 中心にかかわった事実について報告させていただきました。××氏及び××氏のことに
 ついて、私自身どちらかといえばいつもおかしい、間違っていると思っていましたが、
 直接表にでることがこわくて見て見ぬふりをしてきたといえます。あらためて自分の責
 任を感じております。
                            以上。



愛成学園事件  ◇全文掲載
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