「『ヒト細胞を用いた移植組織、製品の開発』新会社設立のお知らせ」
last update: 20151221
1999/ 2/ 5
『ヒト細胞を用いた移植組織、製品の開発』
新会社設立のお知らせ
株式会社ニデック(本社:愛知県蒲郡市、社長:小澤 秀雄)、株式会社
INAX(本社:愛知県常滑市、社長:水谷 千加古)、富山化学工業株
式会社(本社:東京都新宿区、社長:中野 克彦)は、名古屋大学医学部
口腔外科学講座教授上田 実(うえだみのる)先生のご指導のもとにヒト
組織・細胞を用いた移植組織の研究開発を進め、将来の事業化を模索す
ることに致しました。そのため平成11年2月1日に新しいベンチャー企
業を設立いたしましたのでお知らせ致します。
【新会社設立の目的・経緯】
医療の質的向上を目指した、バイオテクノロジーを核とするイノベー
ションに期待が集まっており、特に組織工学(Tissue Engineering)
を応用した医療技術(移植医療、細胞治療)は、遺伝子治療と共にその
中核をなすものと見なされています。欧米においては、既に培養皮膚、
培養軟骨などについてベンチャー企業が主体となって商品化が進められ
ています。
このような中、ここに、医療の質的変化をもたらすであろう Tissue
Engineeringをベースに、従来型医療技術の延長にある維持療法ではな
い組織再生による根本治療を目指す新しいベンチャー企業を設立いたし
ました。
ヒト組織・細胞の企業化計画の発端は、平成9年6月、愛知県の(財)
科学技術交流財団(小坂岑雄、新技術コーディネーター)が主催の、名
古屋大学医学部上田教授を座長とした「臓器工学研究会」での企業化計
画であり、これに愛知県下の企業、さらに製薬企業、ベンチャーキャピ
タルの参加が決まった次第です。
また、培養皮膚の研究開発計画をもとに、医薬品副作用被害救済・研
究振興調査機構(医薬品機構)に対し、研究開発資金の融資申請を行っ
ており(培養皮膚・軟骨・骨の研究開発について5年間、融資希望額
9.8億円)、採用された場合は本年度(平成11年3月)から融資が開始
されます。
さらに、出資会社である株式会社ニデックは愛知県蒲郡市から「ベン
チャーファクトリー支援事業」の認定を受け、同市内に用地を取得、新
会社社屋および研究所の建設(本年2月着工、8月竣工)を予定しています。
【新会社の概要】
商 号 株式会社ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング
英文:Japan Tissue Engineering Co., Ltd.
通称: J−TEC(ジェイテック)
代表者 小澤 秀雄(おざわ ひでお)
設 立 平成11年2月1日
資本金 1億円
事業内容 ヒト細胞・組織の培養又は加工による、又は人工素材との組合せによる、
培養皮膚・培養軟骨・培養骨の研究開発、その成果に基づく製造・供給。
関連の医療用具・医薬品の設計・開発・製造・輸出入及び販売
株 主 株式会社 ニデック 出資割合 63.4%
株式会社 INAX 出資割合 13.3%
富山化学工業株式会社 出資割合 13.3%
東海銀行グループ 出資割合 10.0%
(株式会社セントラル・キャピタル)
(CCニューフロンティア2号投資事業組合)
役 員 代表取締役 小澤秀雄、取締役 大須賀俊裕、高村健太郎、
藤沢寿郎、高倉勇、石川雅晟、監査役 小林一三武
従業員 9人
本 社 愛知県蒲郡市三谷北通6丁目209番地の1 TEL 0533-66-2020
決算月 3月
【社会倫理、安全性の確保について】
ヒト組織・細胞を用いた製品の開発は、倫理面、安全面について充分留意
するべきものであり、今回の計画はヒト組織採取医療機関として名古屋大学
医学部を予定していることから、同学部倫理委員会で、倫理面、安全面の是
非について協議しています(平成11年1月26日、口腔粘膜片の研究目的に限
定した医学部外へ提供を承認)。今後、臨床応用についても同倫理委員会へ
申請し、安全性の確保等について審議を受ける予定です。
培養皮膚・軟骨・骨の研究開発資金の融資を申請している医薬品機構に対
しては、安全性の確保に加えて、組織・細胞を採取する際の説明と同意、無
償提供、倫理委員会の設置、情報の保護と公開など倫理面に関する留意事項
をまとめたジェイテックの基本方針等を提出し、審査を受けています。
また、社内においても倫理委員会を設置し、委員の半数以上を社外の弁護
士、報道関係者、学識者、専門家として、倫理面、安全性面での審査、監督
を行う予定であり、組織・細胞の収集・提供の実施状況の情報公開に努めます。
さらに、国内で学会、専門家などから広く安全性についての情報を収集する
とともに、アメリカおよびヨーロッパにおける当該学術情報、安全性情報につ
いても、出資会社である株式会社 ニデックの海外法人 Nidek Technology
Inc.(California, USA)、Nidek Societe Anonyme(Paris, France)な
どから収集する予定です。
【事業計画の概要】
1. 予定している事業化の時期
自家培養皮膚:平成14年頃
自家培養軟骨:平成16年頃
他家培養皮膚:平成17年頃
自家培養骨:平成23年頃
1. 予定している事業化の時期
販売目標は平成16年(5年目)で3億円、平成21年(10年目)40億円を
目指します。
【参加企業のメリット】
●(株)ニデックのメリット
ニデックは創業以来27年間、事業領域を「眼」という分野に絞って展開
してきましたが、21世紀突入に際し、新しい事業ドメインを「眼と身体」
として、大きく成長する事業領域での展開を考えています。既に、ニデッ
クの新規事業として皮膚科分野や、富山化学工業株式会社との提携により
眼科医薬品分野に進出をしています。
このTissue Engineeringの事業領域は、世界的に見ても大きな潜在市場
であり、高齢化社会への推移とともに、大きく成長する領域であることは
疑いのないところです。ニデックはベンチャー企業としてそこにいち早く
参入し、新規事業の大きな柱として育てたいと考えています。
さらにこの事業は、社会的貢献度も大きいものがあると考えており、新市
場を黎明期から立ち上げる企業の誇りは社員へのいい意味での刺激剤にな
ると考えています。
●(株)INAXのメリット
INAX1社ではこのような事業に参画することは不可能ですが、今回、
出資各社や名古屋大学などの力を借りて、「新分野へ踏み出せる可能性」
を見出せることは、大きなメリットだと考えています。また、共同研究によ
る技術力の強化も考えられます。そして、日本で初めてのTissue
Engineeringの会社に参画できるという誇りを持ち、今までのINAXにな
い形のインパクトが与えられることも大きなメリットだと考えています。
●富山化学工業(株)のメリット
ヒト細胞を培養する技術および、これを事業化するノウハウを得ることができ
ます。
このように、本事業に参加することにより、社会的要請の高い領域(新しい治
療手段)への事業展開が望め、医薬品会社としての使命を果たすことができま
す。また、この事業を通じ、各界の多くの研究者との人的交流が得られるのも
、得難い資産です。
さらに、事業化が成功したあかつきには、皮膚科領域、整形外科領域などにお
いて、新しい商品を取り扱える可能性があります。