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「支援者は私たちの生命線」

デスモンド・コリガン

last update: 20151221


■デスモンド・コリガン「支援者は私たちの生命線」

Desmond Corrigan "Support Workers Are Our Life-Line",
Inclusion, January1999, No. 21
(長瀬訳)

   *長瀬です。知的障害者の支援者に関する文章です。
    デスモンド・コリガンは世界の育成会の
    本人活動委員長であるロバート・マーティンの
    支援者です。
    1998年8月1〜2日全日本育成会「本人活動支援者セミナー」
    来日されます。

 ハーグで開かれた準備会議「共に強く」は本人活動(セルフ・アドボカシー=本人
による権利主張)運動の進展にとって間違いなく重要な一里塚となりました。私が参
加してきた活動の中でも、最もエキサイティングで、心動かされるものでした。しか
し、(会議が終わるまでは気づきませんでしたが)疲労困憊するものでもありまし
た。三九カ国から二五〇人の本人が参加した会議は成功裏に終わり、大きな前進とな
りました。
 しかし、会議では緊急に世界中で行われなければならないことが明らかにもなりま
した。それは、@支援者の役割の大切さを認めること、A支援者の役割を厳密に定義
すること、B支援者の数を増やすために大がかりなキャンペーンを展開すること、で
す。最後の点ですが、むやみやたらに数を増やせばいいということではありません。
質の良いものにする必要があります。
 支援者に対するニーズを全く持たない本人はごく限られています。ニーズは何なの
か、ニーズからどんな支援者の役割が生じるか、どんな人が望ましい支援者となるの
か、少し考えてみましょう。 
 本人はそれぞれ好きなこと、嫌いなことを持った独自の個人です。そして支援者と
本人の関係には土台として、お互いへの信頼・敬意が必要です。本人が自分の考えを
伸ばすため、私たち全員が暮らしているこの社会の制限、基準を理解するために、支
援が必要とされます。
 本人と支援者はお互いの関係を深めるには時間がかかるということを理解する必要
があります。どちらもが「ここまでしかできない」という線を引くべきです。同時
に、柔軟性を持って、何が可能か考えなければなりません。
 関係がうまくいけば、友情、共感、専門性(プロフェッショナリズム)を組み合わ
せたものが持てるでしょう。最後の「専門性」という言葉を使うのには躊躇します。
なぜなら、支援者という分野で特別の資格が要件となることはないからです。最高の
支援者は、望ましい考え方、価値観を持った人だからです。本人と支援者の関係には
客観的なアプローチが求められる面もあります。自分の意見・考え方を表現するため
に支援がいる場合もあれば、あることに関して自分の考えを深めるために支援がいる
場合もあります。
 人づきあいや、他の自分にとって大切な場面で、上手に対応できる力を身につける
ために支援が必要な人もいます。
 本人活動への支援で最も危険なのは、善意によって表面上だけ、名目だけ本人をア
リバイ的に使ってしまうことです。
 私たちは誰もがこういったミスを犯しています。だからこそ、自分自身、他人に対
して、そういったミスを犯していないかどうか常に気をつけていなければなりませ
ん。
 また、実際には失敗しているのに、「うまくできている」と言われることを本人は
望みません。間違っている時は本当のことを前向きな形で伝えてほしいのです。
 本人は、自分で何かを決める際に、その決定がもたらしうる危険性について知らさ
れる権利を持っています。それは他の人と同じなのです。
 どういった人が支援者となるべきでしょうか。この質問は間違っていると思いま
す。まず大切なのは、望ましい理由を持って支援者となる人です。相性、関係づくり
です。本人と支援者、その二人がうまくやっていけるかなのです。
 支援者は、支援を求めている人に支援を提供したいと思う人でなければならないの
は明らかです。そして、求められていない時に助言をしてしまいたくなる気持ちを抑
えられる人でなければなりません。本人が下す決定に、支援者は影響を与えてはなら
ない。支援者は本人が何かを自分で決めるのを手助けするのでなければなりません。
 今述べたことが完璧という訳ではありません。ただ、ほとんど全ての支援者は自分
が何をしているのか、こういった観点から折に触れて反省してみるべきです。なぜな
ら、関係がうまくいっているならば、二人には多くの共通の価値観、そして合意があ
るからです。
 支援者抜きで本人活動はその可能性を十分に発揮できません。国際的に認められた
原則・ガイドラインが早急に必要です。それは本人との協議のもとに作られたもので
あるべきです。そして、その原則・ガイドラインを大々的に宣伝・普及させ、望まし
いボランティアを募ることができます。今よりもっと多くの支援者が必要です。それ
も理想的には、今まさに必要です。しかし、求められている役割の本質とは何か、誰
もが従うよう求められるべきガイドラインとは何か、をまずはっきりとさせなければ
なりません。その後で、支援者を募ることができます。必要な数は集まらないかもし
れません。しかし、質が肝心なのです。質を保つことで、過去に起こったような問題
を避けることができるのです。



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