HOME > 全文掲載 > 反保安処分闘争 >

11・16厚生省交渉報告

「処遇困難者専門病棟」新設阻止共闘会議 1998/11/16


◆11月16日(月)午後4時〜7時 厚生省共用第5会議室にて
◆出席者 厚生省精神保健福祉課側
      中村課長補佐 阿部課長補佐 杉中課長補佐 吉田医療第1係長
  「処遇困難者専門病棟」新設阻止共闘会議側 30数名    
                    以下  そ=阻止共闘 厚=厚生省

そ「あらかじめ送ってある要求書にそって進める。第1、道下研究について病者の治療関係を破壊する形で、あなたの病院に処遇困難者はいますかというアンケートをとったこと。その過程で具合が悪くなる病者を出したこと。それに基づいて進められた研究が問題のあるものであったことについてまず謝罪してほしい。その1点目について」
厚・中村「治療関係を破壊したという点について、謝罪することは考えていない」
そ「アンケートをとったことについてどう思うのか? 医者が一方的に処遇困難者と決めつけた患者のことをアンケートに回答することはおかしいと思わないのか?」
厚・中村「道下研究についてはその経緯で、趣旨が十分理解されなかったことや、やり方に問題があったことは引き継いでいるが、人権侵害があったとか治療関係が破壊されたとは認識していない」
そ「道下本人がアンケートを焼くことになったということは、それほどひどいものだったということだ。そういう研究がされていることを知って自分も不安に思った。全国で2千人の処遇困難者がいるなどと言われて恐怖を感じた病者はたくさんいる」
厚・中村「調査によって自分が処遇困難者という見方をされていると知ればそうとうのショックだと思う。調査手法についても誤解を招く点があったことは問題だと思う」
そ「問題があったことは認めるが、謝罪はしないということか」「自分の主治医が処遇困難者のレッテルをはってるかもしれないと思ったら、それでも治療関係の破壊にはならないと言うのか」
厚・中村「医者と患者の信頼関係の上に調査は行われたと思う」
そ「自分の知らないところで主治医がアンケートに答えているかも知れないんですよ」
 「信頼関係が壊れたら、治療関係は破壊される」
厚・中村「患者さんがそういう不安をもつことは理解できる。その原因がこの調査にあることも理解できる。しかしこの調査は趣旨としてはそういうことを目的にしたわけではない」
そ「やり方が間違っていたが趣旨は正しいなどという問題ではない。治療関係を破壊したことについて謝罪を求めているのだ」
厚・中村「披調査者の協力を得られるような調査を・・」
そ「協力が得られるわけない。承諾を得られないような調査は問題でしょ?」
厚・中村「うーん」
そ「まず悪かったということを認め、謝罪すべきだ。謝罪できない理由はなにか」
厚・中村「反省すべき点はある。うーん」「謝罪するということは具体的に人権侵害があったことを認めることになる」「研究班に確認しなければならない」
そ「道下研究に予算を出し、研究の権限を与えたのも厚生省の責任だし、研究の結果を厚生省は今でも使っているではないか。厚生省の責任だ」
厚・中村「処遇困難者という考え方については今はとってない」
そ「道下研究のやり方に問題があることは認めた。それの上で、今道下研究は使っていないと言ったが、実際に精神保健福祉法改正の専門委員会で資料として配布しているではないか」
厚・中村「この研究については問題があった。そういう考え方についての反省を含めて、なかったかのように白紙にしてしまうことはよくない」
そ「専門委員会の議事録のどこにもこの研究は問題のあるものだなどと書いてないではないか」「第8回の議事録をみれば道下研究を参考資料として使っているではないか」
厚・中村「どうご理解いただければいいか」
厚・杉中「議題としては各関係団体からの提案に基づいて話し合う。この日は日精協の言う特別措置の問題、犯罪を犯した病者の問題が議題だった。ここで道下研究は過去にこういう研究をしたこともなかったかのように消滅させてしまっていいのか、ここではこういう議論があったということを委員の皆さんに説明した。最終的には我々は処遇困難という考え方はありえないと説明している。日精協の言う特別措置という考えもありえないのではないかと説明している。」
そ「第8回の議事録だけ発言者の名前を伏せているのはなぜか」
厚・杉中「各委員に迷惑がかかってはいけない」
そ「我々がこうして意見を言うことが迷惑ということなのか」「道下研究を今後使わないと約束していながらこうして使われていることが問題」
厚・杉中「過去のことを取り上げないほうがよかったということか?」
そ「間違った研究だったとはっきり認めたのだから、きちんとそう説明すべきだ」
厚・杉中「不適切だったと説明した」
そ「議事録ではっきりと座長の発言として『道下研究は捨てられたわけではない』と書いているではないか」「専門委員会自体を解散すべきではないか」
厚・杉中「専門委員会はもう終わりました」
厚・中村「処遇困難の研究に問題があったことは厚生省では共有している」
そ「議事録の中で匿名の委員は『我々の仲間では焚書事件と言っているんですが』とまで発言している。この委員はだれか?」「そういう発言があったとき、厚生省としてはあの研究は問題があったから調査表を焼いたんだと説明すべきではないか」
厚・杉中「処遇困難という考え方は問題があり、特別措置にも問題があるというのが結論だ」「議事録の読み方の問題だ」
そ「道下氏が身の危険を感じたから焼いたとまで発言している、この委員はだれか」
 「差別扇動ではないか」
厚・中村「こういう認識の人もいるということで」「皆さんの不安がないようにするのが我々の責任」
そ「きちんと反省して、謝罪すべきだ」
厚・中村「検討させてください」「反省して次の議論を進めることが大切だと考える」
そ「座長の発言で『道下班の研究が捨てられたわけではありません』『議論が十分だった訳ではない』などとあるのは、積極的に認めているともとれる」「反省しているとは思えない」「まず道下研究を撤回して、謝罪せよ」
厚・中村「この座長のまとめは、この場の今までの議論からみて問題があると思う。でも犯罪を犯した人に医療は必要だと思う」
そ「精神医療を犯罪防止の目的で使うことは問題ですね」「医療を必要とするかどうかは我々の問題」。「「道下研究が間違いであったことを認めて、謝罪すべき」「あの議事録を読んだ全国の病者はショックを受けている、きちんと厚生省として処遇困難政策は行わないと態度を示すべき」「インターネットで議事録を公開するといっても、配布資料は公表しないということは問題ではないか」
厚・中村「調査によって不安を感じたということを聞いて、私も理解できた」「皆さんの了解を得られる調査をすべきだった」
そ「調査の方法だけが問題だったのではない。そういう研究自体が誤りだった。ともかく謝罪すべき。謝罪しないのは今後もあの研究を使うからではないか?」
厚・中村「道下研究は今後使いません。誤解のないようにきちんと反省する」
そ「専門委員会での道下研究の使われ方には問題がありますね」
厚・杉中「政策として今後使うことはない。専門委員会に資料として出したのは説明不足だった」
そ「説明不足ではすまない。座長のまとめは違いますと言うべきではないか」「なぜ間違いだったのかをきちんと念書で書け」

精神科救急について
そ「精神科救急については、即撤回していただきたい」
 「私たちは、24時間まじめに対応してくれる病院こそほしいのに、今問題になっているのは、『処遇困難者専門病棟』建設の流れの中で、密室の中でやられようとしている。そういうのは、われわれは、不安だ」「全国の国公立病院でどのようなことが行われているのか、知っているのか」「専門委員会が行われていたそのさなかに、犀潟病院事件があったでしょう」
厚「意見が違うのは、わかりました。うけたまわります。しかし、賛成意見もありますし、反対意見もある。」
そ「『救急です。』といって、つれこまれて、三日で死んじゃった、って言うことになるのがいやだって言うことですよ。あなた方の報告書を読むと、余計悪くなるとしか思えない」
厚「人権侵害のこともありますし・・・」
そ「人権侵害のことを考えるのは、ただしいけども、それが密室で行われている。ガードマンの搬送も問題になっている。だからといって、合法化されたらいいかと言ったら、それも違う。中身の問題だ。つれてこられて、何かわからないうちにやられてしまうのが、合法的に行われるというのが、よくない。」
厚「精神病院をよくしなきゃいけない」
そ「あたりまえだ」「知らない私立病院のはなしではなくて、貴方達の相当の国立の犀潟病院で人が死んでいるんだ。『よくしたい』というのは信用できない」「ここでわたしたちが、貴方達の話を信用してこのまま帰ったら、自分達もあなた方と同罪になってしまう」「市立病院では人が足らないから、国立で人を増やすというのが、貴方達の言い方だったでしょう。」
厚「私立についてもやってます」
そ「うけたまわって・・というだけじゃ話は進まない。そうじゃなくて、具体的に、われわれが、当事者含めて、反対していると、認識したわけですよね。だったら、専門委員会にその旨を報告しなくちゃいけないですよね」
厚「報告します。ベストを尽くします。」
そ「個室に中からかぎがかからないのはなぜだ。一斉に外からかぎがかかるのを知っているのか。外壁センサーとかあるのは、知らないわけは無いだろう。」
厚「しらない。事実だったらもっと調査します。」
そ「もんだいがあるとあなた方が思うから、調査するんでしょう?そんな形のままで、精神科救急の話を進めるのはおかしいとあなたも思うでしょう。」
厚「なぜわたしたちが、精神科救急の話を進めるのかというのは、休日夜間の体制が、手薄じゃないかと・・それをある意味では行政サービスとしてととのえていくのは必要なんじゃないかと・・」
そ「そのとおり、東京は精神科救急を整えましたよね、夜間のそれについてはどうか・・
厚「東京都とわれわれの考え方は違うので・・東京都の考え方と、われわれの考え方は違うということについて、御理解いただきたい。」
厚「精神科救急については、マンパワーを充実するという形でやっていかなきゃならないだろうと・・」
そ「そんなら医療法の特例を廃止したらいいやないか」
厚「そのことについても、意見がでていまして・・」
そ「意見がでてるというのもわかった。太宰府や、国立武蔵も問題があるというのがわかった。だったら、精神科救急の専門委員会を中止するしか無いでしょう。これから調べるというんだったら、調べてから開くのが筋でしょう。」「精神科救急の話を中断して、なぜそういうのが起きたのかということを、調べるのがさきだ。
厚「そういうのはわかったけども、一部の病院でしかできないから・・」
そ「多くの病院では手薄だから、財源不足だからできないから、だから精神科救急を押し進めると言うんじゃなくて!」「どこか知らない病院につれこまれて『ここじゃ精神科救急はやっておりませんから』といわれてポーンとほおり出されてしまうんですよ。
厚「そういうことも良く検討して話を進めたい。」
そ「貴方達が進めている話の中には、当事者は入るんですか」
厚「考えてない」
そ「なぜ!」「問題があるのもわかった。反対意見があるのもわかった。でも話はゴーサインを出すというんじゃ話にならないでしょう」「問題があるのなら、ちゃんと予算措置なんかを講じて、ちゃんとするのが貴方達の仕事でしょう。」
厚「気持ちは分かります。気持ちは一緒です。あなた方と同じです」
そ「そんな簡単に、気持ちわかると言うな」「お前ええ加減にせーよ!どこが一緒や!」

粉糾
そ「安直に『気持ちは一緒』なんてことをいわないように」「道下研究を載せたということについて、念書を書け」「道下研究については、使用しない、これはいいですね、一点目。専門委員会での使われ方、これは問題があったと、そのうえで、「道下研究はいまだ生きている」といった座長の発言についても問題があると、」「前の課長は国立武蔵、前の前の広瀬という課長は、犀潟にいっとったんと違うのか。天下ってるだろう。」「これだけ膿がたまってるんだそれをほおっかむりして、『精神科救急はいい話です』と言って話を進めるって言うのは、そんな話ないと思うよ。」「まえのまえのまえの課長の吉田哲彦は太宰府だろう」
厚「ご意見を承ります」
そ「これだけ問題が指摘されたのに『承ります』じゃこまる」「貴方達の論法はこうだ。『私立では不祥事がでると。任せておけないと、だから国立で引き受けますと。安全です。大丈夫ですと。私は道下さんに直接聞いたら彼は、偉そうにそういってたよ。ところが、国立でこれだけ問題がでてる。なのに貴方たちは、かえようとしない。おかしいでしょう。』
厚「国公立が問題なんですか?」
そ「あなた方が書いた報告書の中に『指定病院は国公立がいい』と書いてある。われわれは精神科救急システム自体反対なんだ。全部一つにすればいいじゃないか」「こうこうだから精神科システムが必要なんだじゃなくて、昼も夜も、私立も国公立もふくめて、自分の主治医に、あるいはそこの病院に勤めているお医者さんや、ケースワーカーに電話ができて、対応してくれる病院を増やしていくことが、あなた方の任務だ」
厚「そういう意見もいただいています」
そ「だったら、なんでいったん撤回して調査するというふうにしないの」
厚「そういう意見を反映させて、議論を進めたい」
そ「いままでわれわれの話を聞いてこなかったからこうなったんでしょう」「とりあえず白紙撤回するのがすじでしょう」「課長補佐の権限では、できないということか」「だれを呼んでくればいいのか」
厚「白紙撤回させるということは、だれにもできない」「審議会でそういう話がでることはあるでしょう」
そ「そうじゃなくて、事務局としてそういう結論がでるようにするのはできないのかそういう方向に誘導するメンバーを出しましょうか」
厚「それは、賛成もあるし、反対もあるし・・」
そ「ここに来ている病者は皆反対なんだよ」「あなたがたが、事務局案をだしてああいう結論を出したんだろう。だったら、今度は病者の声を聞いて、実は間違ってたと、言う結論に導けるだろう。あれは問題だったと言うことを認めて何らかの策を取らないといけないでしょう」
厚「努力します」「こういう意見を頂いて、新議会に諮ると・・」
そ「歴代課長はさんざんうそを言ってきた。信用できない」「こういう意見がでましたのでと、うえにはかればいいじゃない」
厚「検討します」
厚「たいへん申し訳ないんですが、5時45分で予定してましたのでここであのー」
そ「何一つ応えてないだろう!」「承ったわけじゃだめで、具体的にわれわれとの話の中で、これじゃまずいと認識したわけですよね。そのことは、専門委員会の事務局として、上に報告するんですか?」
厚「あなた方とのはなしをうけたまわりまして・・・」
そ「どううけとめたのか念書に書け」

念書作成



*再録:桐原 尚之
UP: 20120527 REV:
精神障害/精神医療  ◇反保安処分闘争  ◇全文掲載 
TOP HOME (http://www.arsvi.com)