1998年8月10日
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「障害者の介護保障の確立を求める要望書」


last update: 20151221



厚生大臣
  宮下 創平 殿

2000年障害者介護保障確立全国行動委員会

         呼びかけ団体  DPI(障害者インターナショナル)日本会議
                 全国自立生活センター協議会
                 全国障害者介護保障協議会
         呼びかけ人代表 DPI日本会議
                 議長 山田 昭義

障害者の介護保障の確立を求める要望書

 厚生省におかれては、日頃より障害者福祉の増進にむけてご努力されておられる
ことと拝察申し上げます。
 2000年の介護保険制度の実施を前に、各種の準備作業が行われていることと
存じますが、私たち障害当事者としても介護保険制度の実施に関しては、極めて重
大な関心をもって見守っているところであります。私たちは、基本的に今回の介護
保険制度は、きわめて不完全で不十分な制度であると認識しております。この制度
が検討されてきた初期の段階で語られていた、制度利用者の自立と生活の豊かさを
追求するものという性格はどこにも見あたらず、家族のもとで暮らす寝たきり高齢
者や痴呆性高齢者の家族介護の補完以上のものではないと認識しております。
 現行では2000年の制度の開始時期には、若年の障害者は制度の給付対象外と
なっております。障害者の介助体制整備に関しては、「障害者プランに基づき、高
齢者と遜色のないサービスを行う。」、「介護保険によるサービスと同等のサービ
スを保障する」等という見解がこれまで厚生省より出されておりますが、障害者プ
ランでは、「2002年までに障害者向けのホームヘルパーを4万5千人増加する
」ということしか触れられておらず、具体的に障害者の介助をどこまで保障するこ
とになるのかは明確になり得ておりません。また、現在論議されている介護保険と
同等のサービス内容では、介助を必要とする若年の障害者の自立した生活や社会的
な活動を円滑に行うことは困難であります。

 一方、若年期から継続的に介助等のサービスを利用して生活を作り上げてきた障
害者も、65歳になった時点で介護保険制度の対象に組み入れられ、従来の障害者
施策に基づくサービスから介護保険によるサービスに切り替わるものとされており
ます。しかし、私たちはそのことによってサービスの水準が低下し、従来の生活を
継続することが出来なくなるのではないか、という強い不安を持っております。こ
のことに関して過日行われた参議院における国会質疑において、厚生大臣は「介護
保険を導入することによって障害者のサービスが出来ないと言うようなことはない
ように最大限の配慮をしなければならないし、努力をしなければならない。」との
見解を明らかにされておられます。
 私たちは、最高の介助ニーズを持つ人には毎日24時間の介助が全国的に保障さ
れるべきであると考えるものであります。また、今回の介護保険の実施に当たって
は、若年期からの障害者が65歳になっても従来からの生活を安心して続けること
が出来るようにするため、さらに厚生大臣の国会での答弁を具体的な形として明ら
かにするため、今回の制度に以下の諸点を組み込まれるよう要望するものでありま
す。
                  記

1,2000年実施が予定されている介護保険制度は、活動期にあり、自立生活を
 営む障害者、あるいはそれを目指そうとする障害者に対してはきわめて不適切な
 ものであるので、若年の障害者をこの制度に組み入れるのではなく、利用者の権
 利と主体性が護られる障害者介護保障制度の確立を図ること。

2,障害者の自立と社会参加を目的とした介護施策として、精神障害、知的障害、
 身体障害の全ての障害を対象にして、特別な介護ニーズに対応する自薦登録方式
 の介護制度を創設すること。

3,全国的なレベルで障害者の介助保障を充実させていくため、どこの地域でも介
 護保険の基準額を下回らない介助サービスを保障すること。

4,若年の障害者が65歳になった際には、介護保険のサービスの利用に加えて、
 従来から適用されているサービスの上乗せを認め、ホームヘルプサービスにおい
 て国は2分の1の補助を行うこと。

5,介護保険対象者のうち、訪問介護以外のサービス(ショート・ステイ等)を望
 まないものに対しては、介護保険限度額全てを訪問介護で使えるようにすること。

6.介助サービスの決定にあたっては、本人のニーズに基づき「セルフマネジメント」を基本とすること。

 ※『全国障害者介護制度情報』1998年8月号より転載



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