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「2000年の障害者の介護保障確立のために全国行動を」

中西 正司
『全国障害者介護制度情報』1998年7月号,pp.7-8

last update: 20151221


2000年の障害者の介護保障確立のために全国行動を

         DPI日本会議前議長・JIL常任委員 中西正司

『全国障害者介護制度情報』1998年7月号,pp.7-8


 2000年の障害者の介護保障は今より悪くなるのか、現状維持か、高齢者より悪
くなるのか。今何も行動しなければこの3つの選択肢しかない。
 現状、どのようなことが国レベルでは議論されているのか、そのうちで何が我々の
将来に影響を与えていくのか。何時の時期に何が決められようとしており、どの時点
で何を訴えていけばよいのか。このような視点で問題を整理してみよう。

現状
1 個別援助計画
 2000年の高齢者の介護保険の実施に向け全国でホ−ムヘルパ−制度から介護保
険への移行措置が進んでいる。その一つがホ−ムヘルパ−制度の市町村への国庫補助
の事業費補助方式への変更に伴って必要となる個別援助計画である。個別援助計画と
はトイレ、入浴等の各介助事業に個人別の必要時間を算定し、総事業時間でホ−ムヘ
ルパ−の派遣を行おうとするもので、従来の扶助費方式に比べはるかに厳密な査定が
行われる。
 このため、市町村では本年度末に10年度の国庫補助を申請する際に、個別援助計
画を用意しておく必要がある。これがないと補助申請ができないわけである。ところ
が市町村では高齢福祉課と障害福祉課の区別がないところが多く、結局高齢福祉課が
作った個別援助計画が障害者にも適用されてしまう可能性が高い。介護保険のアセス
メントに近い個別援助計画が障害者に適用されると、外出や社会参加という項目はア
セスメントにもともと含まれていないので(寝たきり老人を主なる対象としたのが介
護保険だから)これまで受けていたサ−ビスが低下することになる。障害者には高齢
者用でない個別援助計画を8月までに作っておかなければならない。

2 社会福祉基礎構造改革と合同企画分科会「中間報告」
 1997年12月に身体、精神、知的の三障害関連審議会の合同企画分科会から
「今後の在り方」に関する中間報告が出されている。また、98年6月には社会福祉
審議会より「社会福祉基礎構造改革」の中間まとめが出された。これらの報告は、戦
後50年、当座の手直しの積み重ねの形で進められてきた福祉構造を根本から見直
し、社会サービスの新たな在り方を追及するという趣旨のもとで検討される筈のもの
であった。さらにこの見直しに沿って障害者関連の福祉法の改正の方向を探ろうとす
るものであった。しかしながら、これらの報告から読みとれるものは、措置制度から
契約に移行する状況の中での社会福祉法人の生き残り策と施設の有効活用の方向付け
である。特に三審議会の「中間報告」では、「施設は地域の宝」と位置づけ、施設の
重要性を強調するものとなっている。地域での自立生活を推進すると言いながら、一
方で、施設を増設し、それを地域サービスの拠点にしていくという方向は、障害当事
者が望む方向とは大きくかけ離れていると言わざるを得ない。地域ケアの充実に向け
た強い働きかけが必要となる。
 9年度までは介護対策本部では介護保険に障害者は組み込まないと言っていた
が、10年度になってからは介護保険に組み込む可能性を否定しなくなっている。高
齢者においてはホ−ムヘルパ−の上乗せ部分での国庫補助をする可能性はほとんどな
いと言われている中では、障害者においても介護保険のレベル以上を期待することは
できない。
 今訴えるべきことは、高齢者が介護保険で抜けた後のホ−ムヘルパ−制度は障害者
専用になるのだから、対象者を精神障害者・知的障害者(軽度含め)・盲ろうにも広
げ、全障害を対象にし、ヘルパ−制度の中で自薦方式をすべての市町村で選択できる
ように、2000年までに体制整備させる必要がある。
 これらのことが議論される場が合同企画分科会であり、10月には最終報告書の策
定に入ると言われている。8月に全国行動を呼びかける理由がここにある。
 21世紀の障害者の介護保障確立のために全国大集会へのご参加をお願いしたい。


REV: 20151221
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