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第10回先端医療技術評価部会の論議に対する意見書
厚生科学審議会先端医療技術評価部会御中
委員長高久史麿殿
去る6月22日に開かれた,第10回厚生科学審議会先端医療技術評価部会でなされた議論について,私たちの意見をお送りします。
出生前診断に関する議論の中で,松田委員が,『妊娠中絶するかしないかは,母親,女性の決定権によるべき。決定の決め手は重篤であるかであろう。重篤かどうかの判断についてWHOは,母親に任せるべきとしている。』という趣旨の発言をされました(17/25)。さらに,『母親の経済的心理的負担が強い場合に中絶が許されるというふうになれば,胎児条項はいらなくなる』との趣旨でも発言されました(18/25)。
性と生殖にかかわる女性の自己決定権を主張してきた者として,松田委員の発言をふくむ今回の議論を看過することができません。私たちがどのような意味で自己決定権を主張してきたかをここに書きます。
*女性の性と身体が,社会的に尊重することを求める
*国による人口政策,優生政策に女性の生殖機能が利用されることに反対する
*子供をもつかもたないかを,女性本人が決める(性別や障害の有無で選別することを含んでいません)
*産むことも産まないことも,避妊も,不妊手術も,性のあり方も,強制されることや選択圧力がかけられることに反対する
これらの実現のためには,子供を産んでも産まなくても,その女性が障害者でもそうでなくても,産んだ子供が男でも女でも障害児でもそうでなくても,産んだ女性も生まれた子供も差別を受けない社会(人々の考え方,制度面ともに)が必要です。それがないままの「自己決定権」は──3月18日の貴部会で私たちが主張したように──「個人の選択」を隠れ蓑にした,あらたな優生政策に他なりません。女性には,性と生殖の自己決定権がそなわっていると私たちは考えます。しかし,堕胎罪,人口政策・優生政策,女性への差別など,女性をとりまく社会的状況が圧力となって,決定権の行使を困難にしています。そのことに変更を求めているのです。
貴部会の議論は,女性をとりまく社会的圧力の存在を見ていません。とくに松田委員は,女性の自己決定権を”障害児を産まない権利”と置き換えており,女性の運動の主張を曲解されておられる,あるいは社会に曲解させようとしておられるように感じられてなりません。委員は「赤ちゃんが障害でも産むということも決められる」(20/25)とも言われていますが,障害児を産む決定をどう保障するかについては,どなたも言及されていません。ようやく金城委員が「女性の自己決定権を行使するに対して酷なような状況をできるだけなくしていくような制度的仕組みをつくっていくべき〜」(19/25)と言われました。この趣旨を,カウンセラーを養成すればいいとだけ解釈しないでいただきたい。女性が自己決定権を行使するとは,生殖技術の枠中の議論で済むことではなく,広く社会の制度的仕組みを変えるべき問題だからです。現在の社会の仕組みの中で,生殖技術が女性にかけている圧力──酷な状況──を検証し,議論していただきたく思います。
1998年7月22日 SOSHIREN女(わたし)のからだから
新宿区富久町8−27ニューライフ新宿東305ジョキ内
TEL&FAX 03−3353−4474
『女のからだから』157号(19980728)p.10より転載
入力:立岩
◇高久史麿
◇全文掲載
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