「関わりの在処」
瀬山 紀子 1998/03/26 『MONTHLY BEGIN』53(1998-3):6
last update: 20151221
■瀬山紀子「関わりの在処」(読んでみましたこの1冊)
19980326
『MONTHLY BEGIN』53(1998-3):6(障害者総合情報ネットワーク)
偶然に出会ってしまった一人のCPの女性との関わりが,私が障害を持つ人の介
助や生活に関わるきっかけになった。それまで,私は「関わらない」という関わり
をしてきたことに気づかされたのも彼女からだった。
彼女は,彼女の子どもがまだ保育園に通っていた頃,当の保育園で園児を前に
「おばちゃん怪獣に見えるでしょう。怪獣でいいんよ,私みたいにぐにゃぐにゃし
て変な声を出すのは,怪獣だと思うでしょう」というような演説(?)をしたと言
う。違いがあることをないがごとく「同じだから尊重すべき」であるという思想が
ある。彼女は,「怪獣」であることを明らかにすることで,同じではないことを強
調する。それが彼女の抵抗の姿勢だ。
彼女たちが1970年代に発したいくつかの問いと,その後の障害を持つ当事者の運
動とのつながりを付けること。これらの問いへの具体的な応答を試みたのが立岩氏
の『私的所有論』である。
労働の場における雇用機会均等を求める障害当事者の運動がある一方で,それは
健全者並平等,健全者と同じであることをよしとする制度に与することになるので
はないかという危惧が提出される。現状を見据え,現実に即して,問題に批判的に
関与していく方向の一つの道筋を本書は提出している。