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「遺伝情報のプライバシーに関する文献のリストとコメント」


last update: 20151221


遺伝情報のプライバシーに関する文献のリストとコメント
作成:蔵田伸雄

◎遺伝情報のプライバシーに関する文献のリスト
((*)をつけたものは蔵田によるコメントあり)

●英語文献
・ Andrews, Lori B.& Jaeger, Ami S.‘Confidentiality of Genetic Information in the Workplace’ American Journal of Law & Medicine Vol.]Z Nos.1&2 pp.75-108(*)
・ Andrews, Lori B., Fullarton, Jane E, Holtzman, Neil A.& Motulsky, Arno  G.(eds.)Institute of Medicine“Assessing Genetic Risks: Implications for Health and Social Policy”National Academy Press 1994(*)
・Annas,G.J.&Elias S.(ed)“Gene Mapping: Using Law and Ethics as Guides” Oxford University Press 1992(*)
・Brandt,J‘Ethical considerations in genetic testing: an empirical study of presymptomatic diagnosis of Huntington's disease’in Fulford, Gillett Soskice(ed.)“Medicine and Moral Reasoning”Cambridge University Press 1994 pp.41-59(*)
・ Elias,S.,Annas,G.J. & Simpson,J.L.‘Carrier Screening for Cystic Fibrosis: A Case Study in Setting Standards of Medical Practice’in Annas, G.J.&Elias S.(ed)“Gene Mapping:Using Law and Ethics as Guides”pp.186 -202
・Gevers,S.‘Use of Genetic Data, Employment and Insurance: An International Perspective’Bioethics, vol.7(2/3) 1993 pp.126-134(*)
・Haker,H.,Hearn,R.,Steigleder,K.(eds.)“Ethics of Human Genome Analysis ;European Perspectives”Attempto Verlag, Tuebingen 1993
・ D.Heyd,“Genethics−Moral Issues in the Creation of People”University of California Press 1992
・ Macklin,R.‘Privacy and Control of Genetic Information’in G.J.Annas, S.Elias(ed.) “Gene Mapping” Oxford University Press 1992 pp.157-172(*)
・Pokorski,R.J.‘Genetic Information and Life Insurance’Nature vol.3766 July 1995 pp.13-4
・Procter,R.N.‘Genomics and Eugenics: How Fair is the Comparison?' in G.J.Annas,S.Elias(ed.) “Gene Mapping”pp.57-93
・ P.R.Reilly, Article: Genethics and the Law( in W.T.Reich(ed)“The Encyclopedia of Bioethics (Revised Edition)”Macmillan 1994)(*)
・Walters,L.& Palmer,J.G.“The Ethics of Human Gene Therapy”Oxford U. Press 1997
・ Wertz,D.C.& Fletcher,J.C.‘Privacy and Disclosure in Medical Genetics Examined in an Ethics of Care’Bioehics vol.5, No.3,1991 pp.212-232(*)

●邦語文献
○論文
・蔵田伸雄1995「成人に対する遺伝子スクリーニングと遺伝情報のプライバシー−自分の遺伝情報を知る権利、知らない権利、知らせない権利−」(下記『ヒトゲノム解析と社会との接点 研究報告集』pp.138-150)
・−1996a「wrongful life とは何か」
 (上記『ヒトゲノム解析研究と社会との接点 研究報告集 第2集』pp.29〜34)
・−1996b「遺伝情報のプライバシー−特に遺伝的雇用差別の問題について−」
 生命倫理 第7号(日本生命倫理学会)1996 pp.35〜39
・−1997「出生前診断と選択的人工妊娠中絶に関する試論−問題点の整理と文献リスト−」千葉大学編『生命・環境・科学技術倫理研究T』1997 pp.109〜127
・茂木毅「ヒト遺伝子をめぐる科学技術とその倫理的・法的諸問題」
 『ジュリスト 1017』有斐閣 1993.2.15 pp.125-134
・−「遺伝子プライバシー−第三者による遺伝子診断の利用とその制限−」(*)
 『ジュリスト増刊 May,1994 情報公開・個人情報保護』有斐閣pp.249-253
・安冨潔「DNAデータベースとプライバシーの保護−アメリカ合衆国における動向」p.25 刑政105巻6号 1994.6 p.16-25
・渡邊亮一「医療情報とプライバシー」
 『ジュリスト増刊 1994 May 情報公開・個人情報保護』有斐閣 pp.244-248

○ 単行本
・井上薫『遺伝子からのメッセージ』丸善ライブラリー 1997(*)
・加藤一郎、高久文麿(編)『遺伝子をめぐる諸問題−倫理的・法的・社会的側面から−』日本評論社 1996(*)
・加藤尚武(責任編集)『ヒトゲノム解析研究と社会との接点 研究報告集』
 京都大学文学部倫理学研究室 1995 (残部なし。ほしい人はどこかで探してコピーして下さい)
・ 加藤尚武(責任編集)『ヒトゲノム解析研究と社会との接点 研究報告集 第2集』
 京都大学文学部倫理学研究室 1996 (ほしい人は京大の倫理学研究室に請求して下さい)
・木田盈四郎『先天異常の医学』中公新書643 1982
・中村祐輔『遺伝子で診断する』PHP新書009 1996(*)
・広井良典『遺伝子の技術、遺伝子の思想』中公新書1306 1996
・藤木典生、メイサー・ダリル(編)『ヒト・ゲノム研究と社会』ユウバイオス倫理研究会 1992
・藤木典生、メイサー ダリル(編)『神経難病,ヒト・ゲノム研究と社会』
 ユウバイオス倫理研究会1994
・保木本一郎『遺伝子操作と法−知りすぎる知の統制−』日本評論社 1994
・柳澤桂子『遺伝子治療への警鐘』岩波書店 1996

○翻訳文献(啓蒙的な本は他にもいろいろあります)
・ クリストファー・ウィルズ著、中村定・山本啓一訳『シャーロック・ホームズ、ヒトゲノムに出会う』ダイヤモンド社 1994
・ロバート・シャピロ著、中原英臣訳『ゲノム=人間の設計図を読む』 講談社 1993 (*)
・イヴ・K・ニコルス著、高木俊治訳『遺伝子治療とは何か』 講談社ブルーバックス 1992
・ドロシー・ネルキン&M・スーザン・リンディー著、工藤政司訳『DNA伝説』紀伊國屋書店 1997(*)
・ロビン・マッキー著、長野敬訳『遺伝子治療最前線』日経サイエンス社 1992

◎「遺伝情報のプライバシーに関連する文献のリスト」に対するコメント

このリストは私が論文の執筆や学会発表の準備のために参考にした文献のリストであって網羅的なものではありません。この問題に興味がある方がご自分で文献を集めるためのベースとして使っていただければ幸いです。特に英語文献は1994年頃までのものがほとんどです。それ以降のものはメドラインなどを使えば検索できると思います。誰か改訂版をつくってくださるといいのですが。
この文献リストには出生前診断や遺伝子治療に関する文献は入れていません (ただしいくつか参考になりそうなものだけは入れてあります)。基本的には成人に対する遺伝子検査と、それによって得られた遺伝情報のプライバシー保護に関連するものだけをあげてあります。なお文献中(*)をつけたものについて、以下コメントしていきます。
(英語文献)
私がこのテーマに取り組んだときに最初に参考にしたのは、Andrews, Lori B.& Jaeger, Ami S.の‘Confidentiality of Genetic Information in the Workplace’です。医療情報のプライバシー保護に関するアメリカでの判例や州法を分析して、遺伝情報のプライバシーを保護するための法律のモデルを提示することを試みた論文です。なお『生命・環境・科学技術倫理研究資料集U』(千葉大学普遍科目「科学技術の発達と現代社会U」企画運営委員会1995年)に「論文紹介:L.B.アンドリュース&A.ジェィガー;職場で得られた遺伝情報の守秘義務」という題で、私が書いたこの論文についての紹介文が掲載されています。American Journal of Law & Medicineにはこの論文以外にも関連文献がいくつか掲載されているようです。他に私が特に参考にしたのは、Andrews, Lori B. etc (eds.)の“Assessing Genetic Risks”です。この文献は遺伝情報のプライバシー保護のみならず、遺伝子倫理全般に関する基本文献だと言っていいでしょう。この文献を読めば、遺伝子診断と医療経済との関連や、遺伝教育といった関連するテーマについても大体のことがわかります。
Annas, G.J. &Elias S.(ed)の“Gene Mapping”も遺伝子倫理に関する論文集で、これも基本文献です。特にこの本に収録されている Macklin, R.の‘Privacy and Control of Genetic Information’という論文では遺伝情報のプライバシーに関する問題点について簡潔にまとめられています。
またこのテーマでは遺伝カウンセリングの立場からの考察が不可欠ですが、遺伝カウンセラーによる文献としては、Wertz, D.C.& Fletcher, J.C.の‘Privacy and Disclosure in Medical Genetics Examined in an Ethics of Care’Bioehics vol.5, No.3,1991 が参考になります。
それからプライバシー問題についてのモデルケースとして扱われることが多いのは言うまでもなくハンチントン病ですが、ハンチントン病と遺伝子診断との関連について調べるには、Brandt, Jの‘Ethical considerations in genetic testing: an empirical study of presymptomatic diagnosis of Huntington's disease’( Fulford, Gillett Soskice(ed.)“Medicine and Moral Reasoning”Cambridge University Press 1994所収)がかなり役に立ちます。
また具体的に雇用や保険との関連から国際比較を試みている文献としてはGevers, S.の‘Use of Genetic Data, Employment and Insurance: An International Perspective’Bioethics, vol.7(2/3) 1993 が参考になります。
なおアメリカでこの分野の研究のリーダー的な役目をしているのは上記のAndrewsやWerz とP. R. Reillyのようですが、Reilly 自身による“The Encyclopedia of Bioethics”のGenethics and the Lawという項目では、遺伝子倫理全体と法律との関連について簡潔にまとめられています。
(邦語文献)
この分野での日本での研究には、茂木毅氏の研究があります。茂木氏によるジュリスト増刊の「遺伝子プライバシー−第三者による遺伝子診断の利用とその制限−」は必読文献だと思います。また『遺伝子をめぐる諸問題−倫理的・法的・社会的側面から−』は玉石混交の本ですが、この本に収められている加藤一郎氏の論文と唄孝一氏の論文は、いずれも有益な示唆に富んでいます。それから遺伝子診断についての医師による現状報告としては中村祐輔氏の『遺伝子で診断する』(PHP新書)が好著です。中村氏は日本におけるガン研究のリーダー的存在ですが、遺伝子診断を推進する根拠が説得力のある論調で述べられています。井上薫『遺伝子からのメッセージ』(丸善ライブラリー) は優生政策に関する記述がひどく、一部研究者(私も実はその一人)を激怒させていますが、プライバシー問題に関する記述はまあまあでしょう。
(翻訳文献)
啓蒙的な文献の翻訳はたくさん出ていますが、読み物として特に面白いのはロバート・シャピロ著『ゲノム=人間の設計図を読む』(講談社) とネルキン&リンディーの『DNA伝説』(紀伊國屋書店)です。特に後者は「DNA決定論」のアメリカ社会に対する影響力を分析した本で、いろいろとショッキングな記述が含まれています。

またアメリカでは医療情報のプライバシー保護に関する判例がいくつかありますし、すでにカリフォルニア州には遺伝差別を禁止する州法があります。アメリカ法の専門家の方にその方面の分析をしていただきたいですね。



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