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「日本産科婦人科学会診療・研究に関する倫理委員会への質問書」


last update: 20151221


             質問書

                           1997年12月8日

日本産科婦人科学会
診療・研究に関する倫理委員会
委員長 青野敏博様

                       富山県富山市鵯島2区1741
                       「女の管理と優生思想を問う会」
                          代表 山附 悦子
                       富山県富山市□島2区1741
                       「あほう鳥」社
                          久保 ゆかり

 私たちは,優生思想や生命操作の問題を女・障害者・市民の側から問い,私たち
の地域・社会のありようの問題として共に考えていくための活動をしている「女の
管理と優生思想を問う会」と「あほう鳥」社のものです。私たちは「優生思想を問
うネットワーク」の賛同団体として前回(第2回)の話し合いに出席しましたが,
その際旧優生保護法の問題,体外受精の問題について口頭で質問したことを整理・
補足し,文書で質問します。私たちにとっては長年取り組んできている重い問題だ
からです。前回の質問については今回,回答や説明をしていただけると思いますが,
貴委員会からの文書での回答もよろしくお願いします。
1,「旧優生保護法」について
 @去年,「優生学上の見地から,不良な子孫の出生防止」という目的条文,その
目的に呼応する「遺伝病」の人・「障害者」を不妊手術・中絶手術の対象とするこ
とを認める条文は「優生思想」に基づく障害者差別であると公式に認められ削除さ
れましたが,これについて産婦人科学会としての見解を聞かせて下さい。旧優生保
護法が障害者差別の法であることは20年以上前から指摘されてきたことであり,
その法が撤廃されることなく長年放置されてきたことについて,産科婦人科学会と
して,どのように認識しておられますか。旧優生保護法の下,どのようなことが行
なわれてきたか,倫理委員会として調査などをする考えはありますか。
 A「別表」は,どのような人達によって作成されたのですか。「遺伝病」につい
ての概念や範囲はどのように考えられていたのですか。現在とは違うのですか。違
うとすれば,ほぼ50年間専門家による見直しすらなされなかったのはなぜですか。
「顕著な」とか「強度な」といった場合の判断基準は何で,誰が判断していたので
すか。それは,今回の答申の「重篤な」という表現とは同じですか違うのですか。
 B本人同意を要件とする条文が削除されたということは,たとえ同意があったて
も,優生手術(不妊手術であれ中絶手術であれ)そのものが否定されたことだと言
えます。私たちは出生前診断による胎児の障害を理由とした中絶は最も効率的な優
生手術(不良な子孫の直接的な出生防止手術)だと考えるし,だからこそ国が19
72・3年に胎児条項を優生保護法に新設しようとした時西の反対運動により廃案
になったのだと考えますが,胎児条項を新設しようという動きが医療の側から出て
きている今,出生前診断による発生予防について倫理委員会の見解を示して下さい。
優生手術が社会的に否定された今こそ,これまでの出生前診断のあり方を検討し技
術を規制する方向・方法を打出すべきだと考えますがどうですか。
2,体外受精・胚移植について
 @体外受精・胚移植という技術は不妊の人たちへの福音であるとして臨床応用さ
れました。しかし,私たちはこの技術が不妊の人たちへの社会的抑圧をかえって強
めるのではないか,成功率・副作用を考えると実験段階の技術であり,女の体を実
験台として卵・胚を研究材料として扱う技術ではないか,「不妊治療」に収まる技
術ではなく生命操作につながる技術ではないかなど,この技術の臨床応用には大き
な疑問と危惧を抱いてきました。そしてその危惧は強まりこそすれ払拭されること
はありませんでした。プラス面ばかり強調されるこの技術について,その技術のマ
イナス面の検討と情報公開,様々な社会的問題,人権の問題についての幅広い論議
の場を設ける時期ではないかと考えますが,倫理委員会の見解を示して下さい。
 A体外受精・胚移植は「不妊治療に限る」という限定付きで臨床応用された技術
です。今回の答申は,その規制を外し不妊治療以外の臨床応用へと範囲を拡大する
答申ですが,その理由として生殖技術の進歩しか挙げられていません。しかし私た
ちが体外受精・胚移植の臨床応用を危惧したのは,技術が進歩すればするほど外し
てもらっては困る規定なのです。体外受精・胚移植の技術について,倫理問題をど
のように認識しておられるか,見解を示して下さい。

 以上,貴委員会の答申に含まれる内容については,社会的・倫理的に広い視点か
らの検討が不可欠との共通の理解に基づき,貴委員会報告に関して,私たちの立場
からの基本的な質問をしました。お互いの理解と充実した意見交換のために,率直
で誠意のある回答をお願いします。

 ※以上『あほうどり通信』47号より転載(入力:立岩)



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