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「災害時のインターネット利用について──阪神・淡路大震災から今日のインターNPOネットワーキングの展開」

干川 剛史 19971127 第1回SCOPE・SCS研究会 報告

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last update: 20151222


災害時のインターネット利用について
──阪神・淡路大震災から今日のインターNPOネットワーキングの展開──

                     干川剛史(徳島大学総合科学部)

第1回SCOPE・SCS研究会 1997年11月27日
(総合研究大学院大学・大阪大学・徳島大学・広島大学)

◎本報告の目的

1.今日の社会問題に対する人々の自発的な問題解決活動が、インターネットが作り
出すバーチャルコミュニティを通じてどのように組織化され、公共圏を形成しうるの
かを理論的に考察する。

2.このような理論枠組に基づいて、阪神・淡路大震災における情報ボランティアの
活動が、組織化され、「バーチャルNPO」というべき組織体ができ上がる過程を分
析する。

3.日本海重油流出災害における災害救援NPOのインターネットを利用したコーデ
ィネート活動の実態をとらえながら、それを可能した要因を明らかにする。

4.まとめ
1.公共圏とインターNPOネットワーキング

(1)バーチャルコミュニティに媒介された自発的社会活動領域としての公共圏

◎「公共圏」(Oeffentlichkeit、public sphere): 営利を目的にしたり、行政サ
ービスに依存したりせずに、社会問題に対して人々の自発的な取り組みと、そのため
の情報交換・共有が行われる社会的領域(Habermas 1962;Habermas 1981)

・ボランティア活動(:特定の社会問題を自分の問題として受け止めて、その問題の
解決に向けて自発的に取り組んで行く活動)が行われる社会的領域


○コーディネートが不可欠−問題の所在や実情を知らせ、問題に直面し助けを必要と
する人々や地域のニーズを把握しながら、ボランティアとして活動することや物資や
資金の提供を望む人に情報を提供し、関連する行政機関や企業や団体に協力の要請や
交渉を行いながら、ニーズとヒト・モノ・カネをマッチングさせる調整活動が必要

○コーディネート活動主体としてのNPO(Non Profit Organization:非営利組織
)−−−問題解決活動のための地ならしを行い必要なところにヒト・モノ・カネ・情
報が行き渡るような一連の調整活動を行う

・公共圏の組織的担い手としてのNPO−社会問題の解決を目指す人々の自発的な取
り組みをコーディネートし、ネットワークをつくりあげ公共圏を構築する
○コーディネートのツールとしてのインターネット:人々の自発的な活動をコーディ
ネートする際に、それに必要な(文字、画像、音声、動画といった)多様な形の情報
を、全国的・世界的規模で安価に大量、迅速に収集・交換・発信できるメディア

○インターネットによるバーチャルコミュニティの形成:「いつでも、どこでも、誰
とでも」地域や組織の壁を超えたコミュニケーションを可能にし、共通の目標や関心
事をもつ様々な立場の人々を広域的・世界規模でつなぎ、「バーチャルコミュニティ
(virtual community)」(:情報通信メディアを通じたコミュニケーションによって
構成される仮想的共有空間)を構成する



◎「 インターNPOネットワーキング」:NPOが、インターネットを利用して、
その活動に必要な情報収集・交換・発信を行いながら、居住地域や所属組織を異にす
る様々な立場の人たちやNPO相互の間でネットワークを作り上げコーディネートし
ていく活動

・自発的な問題解決活動を行う人々やグループの間で情報の交換と共有を行うことを
通じて、その活動をコーディネートし、組織化することで、公共圏の基盤を作り出す

・公共圏とバーチャルコミュニティの関係(図1)


◎社会の4領域と公共圏

・「市場経済」:様々な種類の企業が、財の生産・流通を通じて、商品を消費者に供
給しながら利潤の追及を行なう社会的領域

・「行政」:企業や個人の納税者から徴収した税をもとに行政機関が社会基盤の整備
や公的サービスを行う社会的領域

・「プロフェッショナル圏」:専門職が、高度な専門的知識・技術に基づいて職業活
動を行い、研究成果や専門的サービスを提供する社会的領域

・「親密圏」:家族・親族組織、友人・知人などの身内や仲間内の者の間だけで相互
扶助や娯楽を行うことを通じて、生計を維持したり、やすらぎを得たりする社会的領域
○公共圏−−−個々の社会的領域だけでは対処しきれない、(大災害や環境問題のよ
うな)社会全体に関わる大きな社会問題に対して、各社会的領域で職業活動や日常生
活を営む人々が、共通の問題関心を持って、自発的に、それぞれの社会的領域からヒ
ト・モノ・カネ・情報を調達しながら(緊張関係を保ちつつ)互いに連携し合って取
り組んで行くことで、実践活動基盤が形成される


(2)インターNPOネットワーキングの展開

・アメリカで1970年代からパソコン通信を利用して始められ、90年代に入って
からインターネットを利用して本格的に行われるようになった(岡部1986;岡部 1996)

・日本では、1980年代後半から市民運動やボランティア活動に関わる少数の人た
ちの間でパソコン通信が利用され始めた

・阪神・淡路大震災における「情報ボランティア」の活動がきっかけとなって、災害
救援活動におけるコンピューター通信の有効性が注目され、コーディネートのための
情報交換・共有の通信手段としてNPOによるインターネット利用が行われるなってきた
・日本海重油流出災害において現地で活動にあたったNPOやそれを後方で支援した
NPOによって、WWWのホームページが活用されるようになるまでの展開を見せて
いる

・淡路島の洲本市では、「ボランティア情報団」という情報ボランティアグループの
参加を想定した「災害対応総合情報ネットワークシステム」の整備・運用が行われ、
行政と地元の情報ボランティアとバーチャルNPOとの間の連携が試みられている(
干川 1998)


2. 阪神・淡路大震災におけるバーチャルNPOの出現

(1) ネットワーキングのツールとしてのインターネット

◎「情報ボランティア」:阪神・淡路大震災で、(地域・組織の壁を超えた人々の間
のコミュニケーションを可能にする)インターネットの特徴を活かしながら、被災者
の救援活動支援のためにコンピューター通信を利用して活動を行った


[主な情報ボランティアのグループ]

・神戸大学情報ボランティア

・情報ボランティアグループ[情報VG]

・「ニュース!」編集部

・WNN(World NGO Network):現在、活動継続中

・IVN:インターボランティア・ネットワーク

・IVN神戸大学チーム:「震災記録室」として発展的解消し、現在、活動継続中

・IVNパソコン通信サポートチーム(川村班)

・VAG(Volunteer Assist Group):現在、活動継続中

・インターVネット:VCOMとして発展的解消し、現在、活動継続中

・淡路プロジェクトチーム(インターVネット現地班):「淡路島インターネット協
会」として発展的解消し、現在、活動継続中


※阪神・淡路大震災の時点では、被災地で活動したボランティア団体でパソコン通信
を利用していた団体は、ごくわずかに過ぎず、ましてやインターネットを利用してい
た団体は皆無に近かった。

◎黒衣(くろこ)としての情報ボランティアの役割:現地のボランティア活動をバー
チャルな情報空間での情報流通によって結んで行くを果たした

◎「バーチャルNPO」としての情報ボランティア諸グループ−−−インターネット
を通じたコミュニケーションから構成されるバーチャルコミュニティを基盤として活
動を行う



(2)「バーチャルNPO」としてのVAG 
◎実態調査から見えるバーチャルNPOとしてのVAGの特徴

・VAGの主要メンバー(15人)の性別・年齢−−−男性が4分の3、6割が30
代から40代と、男性の比較的若い世代のメンバーが大半を占める

・インターネットユーザー一般的の基本的属性の構成に近い特徴(電通総研 1997:144)
・メンバーの職業と居住地−−−多様、各地に散在(表1)

表1
________________________________________ 1.基本的属性─年齢、性別、職業、居
住地について(回答者15名)
      
[Q1]あなたの性別を教えて下さい。

 (1)男[12] (2)女[ 3]
                           
 [Q2]あなたの年齢を教えて下さい。

     20代前半[ 1]
20代後半[ 1]
30代前半[ 5]
30代後半[ 3]
     40代前半[ 4]
     40代後半[ 1]
    

[Q3]あなたの職業を教えて下さい。
(1)コンピュータ関連の技術系勤め人 [ 4]
(2)コンピュータ関連以外の技術系勤め人 [ 0]
(3)事務系勤め人 [ 2]
(4)販売系勤め人 [ 0]
(5)商工自営業 [ 2]
(6)幼・商・中・高の教員 [ 1]
(7)高専・専門学校・短大・大学の教員
[ 1]
(8)学生(小・中・高・高専・専門学校・短大・大学・大学院等)
[ 0]
(9)無職
[ 0]
(10)その他           [ 5]
(NGO専従スタッフ、 財団職員、コンピュータ関連以外の研究職、フリーランス
の在宅翻訳者、会社役員)


[Q4]あなたの居住地を教えて下さい。 
兵庫[5]、大阪[ 2]、東京 [2]、岡山[ 1]、
広島[ 1]、香川[ 1]、愛知[ 1]、新潟[ 1]、
千葉 [ 1]
________________________________________


◎VAGメンバーの活動への関わり方

・VAGの存在の認知−−−8割のメンバーが震災の救援活動が行われている199
5年2〜3月の間に「ネットワーク上で知った」

・VAGの活動への参加動機−−−8割のメンバーが「阪神・淡路大震災の被災者の
ために何か役に立ちたかったから」、6割のメンバーが「パソコンやネットワークを
使うので自分にもできると思ったから」と回答

・VAGメンバーの主な活動内容−−−ボランティア団体のミニコミ誌、新聞、行政
情報のコンピューター・ネットワークへの入力・発信作業というオンラインでの活動
(表2)

表2

________________________________________
2.VAGへの参加の時期や動機について

[Q5]あなたは、VAGのことをどのような方法で知りましたか。

(1)ネットワーク上で知った
(Internet,Niftyserveなど)[12]
(2)知人の紹介
(3)新聞・テレビ・ラジオなどの既存 のメディア
(4)VAGを知ったというよりは、V AGの設立
に関わった [ 4]
(5)その他
[Q6]あなたが、最初にVAGのことを 知ったのはい
つですか。

(1)わかる
(西暦)1995 年 2月ごろ[ 6]
1995 年 3月ごろ[ 6]
1995 年10月ごろ[ 1]

(2)わからない [ 2]

[Q7]あなたが、初めて実際にVAGの活動に参加したのはいつですか。
  (1)わかる
  (西暦)1995 年 2月ごろ[ 4]
1995 年 3月ごろ[ 6]
1995 年 4月ごろ[ 1]
1995 年 7月ごろ[ 1]
1995 年10月ごろ[ 1]
1996 年 4月ごろ[ 1]

  (2)わからない [ 1]
[Q8]あなたは、なぜVAGの活動に参加するようになったのですか。(複数回答)
(1)阪神・淡路大震災の被災者のために    何か役に立ちたかったから [12]
(2)VAGの活動理念に共感したから
[ 6]
(3)VAGに参加している人が魅力的だっ たから
[ 0]
(4)知人に誘われたから
[ 3]
  (5)パソコンやネットワークを使う
ので自分にもできると思ったから[ 9]
  (6)その他 [ 3]
(「兵庫県震災ネット」が終了したが、さらに続けて「情報 ボラ活動」をしたかっ
た )
(コンピュータ・ネットワークがどうすれば、災害時に役立つか確かめたかった)
(神戸の出身だから)



[Q8−1[Q8]で(5)と答えた方     のみにお尋ねします(複数回答)   「 なぜそのように思われたのですか」

(1)パソコンやネットワークを使えば活動に要する時間が少なくてすみそうだから
[ 0]
(2)パソコンやネットワークを使えば場所が離れていても活動できそうだから
[ 8]
(3)自分がもっているパソコンやネットワークの知識を活かせると思ったから
[ 2]
(4)パソコンやネットワークを使えば活動費用がかからないと思ったから
[ 0]
(5)その他 [ 5]
(震災後、何かしたかったが 仕事も忙しく現地へ行くことが難しかった。時間や場
所を選ばずできるので、私にもできると思った。)
(職業柄、生活が不規則なため、曜日や時間が特定された活動はできそうもないため)
(情報が必要とされていたと感じた。)

3.これまでのVAGにおける活動につい
  て    
[Q9]これまでに、あなたは、VAGの活動に参加したことがありますか(。 
                 
     
        (1)ある[15]
        (2)ない[ 0]


******(1)に◯をつけた方だけにお聞きします*********
 [SQ1]これまでに、あなたは、どのような活動に参加しましたか。
       
(1)ミニコミ誌の情報UP[ 6]
(1995)年( 3)月〜(現在まで) 場所(自宅)
(1995)年( 5)月〜(?)月 場所(自宅)
(1995)年( 8)月〜(1996)年( 1)月 場所(自宅)
(1996)年(11)月〜(現在まで)月 場所(自宅)
(1996)年(11)月〜(現在まで)月 場所(FACTIVE.INTERVNET)

(不明)年(  )月〜(  )月 場所(自宅,職場)

(2)助成財団資料センターの資料のUP [ 1]
(1996)年( 8)月〜(   )年(  )月 場所(自宅)
(3)KISS−FM KOBE特別番組の放送 [ 0]
(4)防災訓練メール [ 0]

(5)神戸元気村のホームページ開設[ 1]
(1995)年(11)月〜(12)月 場所(神戸元気村)

(6)各種支援活動 [ 0]

(7)その他(具体的に記入して下さい) [ 5]
○ 新聞・広報の入力とアップ
(1995)年( 4)月〜(現在も一応継続)月 場所(自宅,職場)
○灘区の常盤さん
(1996)年( 3)月〜( 8)月 場所(灘中央地区ボランティア本部)
○自治体情報UPのOCR処理
(1995)年( 3)月〜(12)月 場所(自宅)
○新聞広報の入力とアップ
(1996)年(  )月〜(  )月 場所(自宅)
○ポートアイランド第6仮設住宅でのパソコン教室
(1996)年( 5)月〜( 7)月 場所(ポートアイランド第6仮設住宅)

[Q10]現在、あなたは、どのような活動に参加していますか(該当するものに〇を
記入してください。複数ありましたら、すべてに〇を記入してください)

  (1)ミニコミ誌の情報UP [ 4]
  (2)助成財団資料センタ−の資料の  UP
[ 0]
  (3)各種支援活動 [ 6]
  (4)その他 [ 6]
________________________________________


◎バーチャルNPOとしてのVAGの形成:「被災者のために何か役立ちたい」とい
う共通の関心事をもった、普段からコンピューター通信に慣れ親しんでいる人々の間
で、情報のやり取りや議論をしながら、被災者に役立つ情報の入力・発信作業という
オンラインでの活動を通じて、バーチャルコミュニティが形成された(図2)


○震災から今日までのバーチャルNPOとNPOの展開(図3)


(3)Inter C Netの「災害に強い社会づくり」のためのバーチャルコミュニティづくり

・情報ボランティアたちが、震災後、地域情報化、災害支援活動、情報団支援活動、
研究活動、イベント参加などを通し、全国各地の様々な立場の人たちをつないだ市民
主体の「災害に強い社会づくり」をめざしたバーチャルコミュニティづくりに取り組
んでいる


◎情報ボランティアの「インターNPOネットワーキング」:インターネットという
社会的諸領域に広がる情報の地下水脈を通じて、(親密圏、行政、プロフェッショナ
ル圏、市場経済といった)各社会的領域の実践活動平面で行われる「災害に強い地域
づくり」に関連する取り組みを、(震災でその必要性が明らかになった)市民主体の
「災害に強い社会づくり」につなげ、公共圏の自発的実践活動基盤をつくり上げる

※災害時には、インターネットという情報の地下水脈を通して各地の各社会領域のキ
ーパーソンを経由して、被災地の被害状況やニーズの正確な把握が行われ、それに基
づいて、社会的諸領域から救援活動に必要なヒト・モノ・カネ・情報が調達され、必
要なところに適切な形で供給されることを可能にする

3.日本海重油流出災害におけるNPOのインターネット利用の実態

(1)災害救援NPOのWWWホームページによるコーディネート

◎日本海重油流出災害におけるNPOのインターネットを利用したコーディネート

・主な現地NPO−−−「丹後ボランティアネット」、「若狭湾ボランティア本部」
、「重油災害ボランティアセンター」、「三国町ボランティア本部」、「加賀ボラン
ティアセンター」

・阪神地域に拠点を置き全国規模に活動するNPO−−−「神戸元気村・リスポンス
協会」、「NVNAD(日本災害救援ボランティアネットワーク)」
◎インターネットを利用したコーディネートの内容

・ボランティアへの参加や義援金・活動支援金の寄付、救援物資の提供の呼びかけ

・環境科学等の専門家からのアドバイスや技術支援

・地元の市町村・府県との連携

・観光業者や企業からの宿泊場所や交通手段の便宜、物資・機材の提供

・提供されたヒト・モノ・カネ・情報をボランティアによる重油回収作業とマッチング


◎インターネットを利用したコーディネートの効果

・「琴引浜を守る会」のインターネット担当者の話:ホームページで「重油回収作業
に使うしゃもじとタオルが欲しい」という呼びかけをすると、「2、3日後にはそれ
らの救援物資が聞いたこともないような地名の町で活動するボランティア団体から大
量に送られてきて、インターネットの威力に驚いた」

・若狭湾ボランティア本部、加賀ボランティアセンター、三国町ボランティア本部の
ボランティア受け付け票の集計−−→平均して、今回の重油流出事故災害で現地に来
たボランティアの約10%がインターネットを利用

※阪神・淡路大震災当時のボランティアによるパソコン通信の利用率−−−約2.4%(
『朝日新聞』1995年4月17日)

・阪神・淡路大震災と重油流出事故災害との比較−−→現場に来たボランティアのコ
ンピューター通信の利用率が約4倍に増えた



(2)災害救援NPOのインターネット利用を可能にした要因

・災害救援NPOに対するバーチャルNPOによる支援活動の成果

◎「リスポンス協会」に対するWNN、VAGによる技術支援→広報担当専従スタッフが重
油流出事故災害でインターネットによる情報発信を行えるようになる


◎NVNADに対するWNNの支援−NVNADの広報は、WNNのホームページを
利用して行われ、その情報の入力や更新はWNNのメンバーが代行

・その後、愛媛大学附属病院のサーバーを間借りする形で、1997年1月17日に
NVNADのームページを開設→ホームページで独自に重油災害関連の情報発信を行う

・WNNのメーリングリスト、oil ML等を通じた重油流出災害関連情報の受発信


・地元の情報ボランティアによる技術支援・入力代行

◎丹後ボランティアネット−−−「丹後情報倶楽部」による支援

◎若狭湾ボランティアセンター−−−地元の歯科医師が立ち上げ、東京経済大学の教
員・学生ボランティアなどの技術支援を受ける


・地元のコーディネートNPOとしての社会福祉協議会と青年会議所(JC)における
インターネットの普及

◎阪神・淡路地域やその隣接地域の社会福祉協議会−−−兵庫県から新潟県までの広
範囲にわたる被災地域の情報を掲載していた「NHKボランティアネット」などのホ
ームページを見て現地の情報を入手し、現地にボランティアを派遣する

◎全国の青年会議所(JC)によるインターネットの利活用の進展


※災害時に地元に密着してコーディネートする社協とJCのインターネット利用の進展
−−→日々変化する現地の状況、ボランティアや救援物資のニーズ、義援金等につい
ての情報を画像や地図・図表によって詳細かつ具体的に伝達し入手することができ、
ボランティアや救援物資・義援金のコーディネートを円滑に行うことができるように
なった


・日本社会全体でのインターネットユーザーの増加

◎日本海重油流出災害の被災地でホームページづくりの作業にあたったボランティア
の多く−−−首都圏や京阪神等の大都市地域から来た20から30代前半の学生や会
社員、被災地各地のホームページの情報を見て現地に来た人が比較的多かった。

※阪神・淡路大震災以降、大都市部の若年層を中心に全国的にインターネットの利用
者が増加していったことを反映している。


4.まとめ

◎バーチャルNPOによる「インターNPOネットワーキング」(阪神・淡路大震災)
  |
  ├・災害NPOに対するバーチャルNP  | Oの支援活動の成果
  ├・地元の情報ボランティアによる技術  | 支援・入力代行
  ├・社会福祉協議会と青年会議所(JC)  | におけるインターネットの普及
  ├・日本全体でのインターネットユーザ  | ーの増加
  ↓
NPOによる「インターNPOネットワーキング」(日本海重油流出災害) 


文献表

岡部一明 1986 『パソコン市民ネットワーク』技術と人間

岡部一明 1996『インターネット市民革命』御茶の水書房

神戸大学情報処理センター編『MAGE』VOL.18,NO.2 神戸大学情報処理センター

電通総研編 1997『情報メディア白書97』電通総研

兵庫ニューメディア推進協議会 1996『情報の空白を埋める:災害時における情報通
信のあり方に関する研究報告書』神戸新聞総合出版センター

干川剛史 1994「自律的公共性の構造転換に向けて−市民社会の基盤としてのメディ
ア・ネットワーキングの可能性−」『社会学評論』Vol.45.No.3 日本社会学会

干川剛史 1995「コンピューターネットワークにおける市民活動の展開」『社会科学
討究』第40巻3号 早稲田大学社会科学研究所

干川剛史 1996a「もう一つのボランティア元年−阪神・淡路大震災と情報ボランテ
ィア−」『徳島大学 社会科学研究』第9号 徳島大学

干川剛史1996b「情報ボランティアの展開−WWWホームページの分析を中心に−」
『兵庫経済』No.52兵庫経済研究所

干川剛史 1996c 「情報ボランティアと公共圏」『現代社会理論研究』第6号 現代
社会理論研究会

干川剛史 1997a 「電子メールが変える社会」『情報の科学と技術』Vol.47.No.6 情
報科学技術協会

干川剛史 1997b「情報ボランティアからボランティア情報ネットワークへ」『現代社
会理論研究』第7号 現代社会理論研究会

干川剛史 1998「情報ボランティアから災害情報NPOへ―淡路島における「情報団
」づくりとその課題―」『徳島大学社会科学研究』第11号 徳島大学総合科学部

本間正明・出口正之 1996『ボランティア革命』東洋経済

J.Habermas,1962,Strukturwandel der Offentlichkeit,Herman Luchterhand Verlag

J.Habermas,1982,Thorie des kummunikativen Handelns,Band 2,Suhrkamp Verlag

================================= 
      干川 剛史(ほしかわ つよし)
      徳島大学総合科学部
      HGF00715@niftyserve.or.jp
   hosikawa@ias.tokushima-u.ac.jp
   http://apollo.m.ehime-u.ac.jp/~hosikawa/
      TEL&FAX:0886-56-7200(研究室)



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