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「3-4-6 オランダ保健審議会の報告書:人体組織の適切な使用 [人体組織サンプルにかかわる倫理的法的問題]より」

玉井 真理子・中澤 英之・阿部 史子 19970901 『遺伝医療と倫理』(バイオエシックス資料集 第1集)
信州大学医療技術短期大学部心理学研究室

last update: 20131127

◆3-4-6

オランダ保健審議会の報告書:人体組織の適切な使用
[人体組織サンプルにかかわる倫理的法的問題]より

Nuffuild Council on Bioethics 1995 Human Tissue Ethical and Legal Issues, pp. 139-140

上記報告書中のAppendix 2(p.141-143)「資料. オランダ保健審議会の報告書:人 体組織の適切な使用」(The report of the Health Council of the Netherlands : Proper use of human tissue )の全訳

1. 人体組織の適切な使用に関するオランダ保健審議会の報告書は「人体組織の さらなる使用において遵守されるべきいくつかの原則を示した。

1)意図的な使用は、その目的が人の健康を促進することである限りにおいて、道徳 的に受容できるものであるべきである。

2)人体組織はつねに最大の配慮をもって使用されるべきである。

3)患者と医師の関係は、人体素材の使用によって害されるべきでない。患者は自分 自身に必要なものが最優先されるということを知らされ、安心していられなければ ならない。医師は人体組織の保存と使用について隠しごとをしてはならず、それに ついて十分に説明しなければならない。

4)たとえその理由がよいものであっても、人は自分からとられた素材の使用に協力 することを強要され得ない。

5)さらなる使用に体の一部が使われる人のプライバシーは、尊重され、保護されな ければならない。

6)審議会は、献体などの非商業目的の場合に適用される原則を支持し、この原則を 人体組織の収集一般にまで拡げた。このような素材は、(患者、提供者、医師、病 院の)誰によってであっても、利益を生むことを期待して第三者に手渡されたり、 移送されたりしてはならない」。

2. これらの原則は、おおよそわれわれの議論と結論に一致している。われわれ は周辺的な留保をしておくべきだろう。4番目の原則は解釈が難しい。もしそれが 処置の最中にとられた組織に適用されたら、一定の状況のもとではわれわれは賛成 しない(段落13.12と13.26)。5番目の原則は「プライバシー」という概念を提起 しているが、英国の法律とその施行においては定義が難しい。それにもかかわらず、 われわれの報告も守秘confidencialityについては同じ点を言い当てている、とわ れわれは考える(段落13.33)。 3. オランダ保健審議会の報告書が勧告する実施方針は以下のとおりである。この 報告の結論と勧告とは部分的に違いがあるが、その違いはわれわれの議論を明確に し、読者にその効力を判断する機会を与えることであろう。オランダ保健審議会の 「人体組織の入手、保存、および使用に関する勧告は、以下の点の保証を目的とし ている。

1)医療機関は患者に、人体組織の保存と使用に関する一般的な情報を提供すること

2)人体組織は、金銭的利益なしに第三者に提供、移送されること

3)当初に意図された目的に必要な以上に素材を入手しないこと

4)正当な理由なしに素材を保存しないこと

5)そうした素材は注意深く安全にとり扱われること

6)個人を特定できる素材は、もし保存されるなら、番号かコードを付されること

7)医療機関は人体組織の取り扱いを管理すること

8)規則が確実に遵守されることに責任を持つ管理者を置くこと

9)個人を特定できない素材は、それが可能であるならどんな場合でも、個人が特定 できるか、間接的に個人が特定できる素材に優先して使用されること

10)関係者は、個人を特定できない素材のさらなる使用に反対する機会を与えられ ること

11)当初意図された以外の理由で個人を特定できる素材を保存(し、後に使用)す るためには、関係者の同意が求められること

12)同意する責任能力のない人物から採取された素材を、当初意図された以外の理 由で保存(し、後に使用)するのは、見合わせること

13)第三者に提供される素材は、個人を特定できないか、単に間接的に個人が特定 できるものであること

14)必要とあれば、医療倫理委員会のアドバイスが得られること

人体組織のさらなる使用の管理に関する手続き

4. オランダ保健審議会の報告書は、患者の同意の役割を人体組織のさらなる使 用の管理に関する手続きと捉えている。我々は、治療の間に採取した人体組織のさ らなる使用に関する適切な管理ほどには、患者の同意に重きを置いたことはなかっ た。採取した組織の返却を患者に求められた場合生じるであろう問題を考えてみる とよい。実際、よい医療行為がなされるには、継続的な治療と医学的検査のために 組織を保管する必要がある。理論上であっても、適切な医療行為の上で否定される べき可能性を留保しておくのは、われわれには賢明でないように思える。第二に、 管理面でも、患者の同意には実際的な問題がある。患者はしばしば治療後わずか1 年で行方を突き止めるのが難しくなり、長期間には行方の知れない割合は増大する のである。

5. それにもかかわらずわれわれは、人体組織のさらなる使用を管理するある明 確な手続きがなくてはならないと考える点で、オランダ保健審議会の報告書と一致 している。われわれにはわかっているが、これが医療仲介者の役割なのである。組 織を保管する病理学者であれ、組織銀行を担当する医療専門家であれ、医療仲介者 は法律と専門的な行動規定の枠組みの中で働いている。イギリスのコモンローでは、 専門的な行動規定は伝統的に裁判所の支持する立場に一致してきた。われわれはこ のような仲介者を、組織が適切な尊厳をもってとり扱われるであろうという患者の 当然の期待と、守秘confidencialityに関する患者の権利との、双方の守護者と捉 えている。人体組織の調達と提供における利潤追求に対する障壁について述べた部 分でも、医療仲介者の役割に言及している(段落 6.38 - 6.40)。

6. イギリスでは、医療仲介者はすでに、人体組織のさらなる使用を管理する役 割を果たす存在として確立している。新技術に正しく迅速に適応した専門的な行動 規定の下で、彼らは機能している。もし受け入れられるならば、われわれの勧告は 管理手続きに不変性と厳格さをもたらすにちがいない。

公益と患者個人の希望とのバランス

7. オランダ保健審議会の報告書は、患者個人の希望に重きを置いている。われ われはこれまで、公益に資する可能性のあるものを比較対照しつつ考慮することに 注意を払ってきた。医学的検査だけでなく疫学的調査のためにも保管された組織が 使えれば、患者個人と公益の双方の利益になる。事実われわれから見れば、治療中 に採取された組織の使用を医学的検査とさらなる医学的・科学的使用に限定すると、 組織の保存を望まないかもしれない患者の希望に応える以上に、患者の真の権利を 代弁することになるのである。しかし実際上は、われわれと彼らの勧告にそれほど 大きな違いはないであろうと思う。なぜならわれわれの提言は、治療のために必要 な組織の使用を保証しつつ、患者の権利を守ることを目的としているからである。 ほんの小さな組織片も提供者の治療以外には使われないということを、われわれは 強調しておきたい。



*作成:小川 浩史
REV: 20131127
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