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「3-3-3 匿名性の定義と4つのレベル [インフォームドコンセントと保存標本の利用]より」

玉井 真理子・中澤 英之・阿部 史子 19970901 『遺伝医療と倫理』(バイオエシックス資料集 第1集)
信州大学医療技術短期大学部心理学研究室

last update: 20131127

◆3-3-3

匿名性の定義と4つのレベル  [インフォームドコンセントと保存標本の利用]より

M. Z. Pelias 1996 Informed Consent and the Use of Archived Tissue Samples, Sallie B. Freeman, Cynthia F. Hintom, Louis J. Elsas, II, Council of Regional Networks for Gnetic Services eds. 1996 Genetic Services : Developing Guidelines for the Public' Health (Proceedinge of a conference held in Washington, D. C. February 16-17, 1996), The Council of Regional Networks for Genetic Services, Emory University of Medicine, Pediatrics / Medical Genetics, pp.152-157

上記論文中の「匿名性の定義と4つのレベル」(Definition of Anonymity,pp.154- 155)の訳者による要約

 保存標本は「匿名」で利用するべきだというのが研究者間でのコンセンサスとな っている。ここで、「匿名」での利用に関するガイドラインを作成するにあたって、 保存標本に関してまず2つの区別をしておく必要がある。まず1つは、すでに集め られた標本を利用する場合と、新しく標本を集めて研究利用する場合との区別。2 つ目は、標本の提供者が特定できる情報が存在しない匿名標本と、個人情報と標本 を分けて保存してある「匿名化」標本との区別である。匿名性の問題でいちばん厄 介なのは、標本本体から、個人情報をどのように分離するかであるのに、「匿名」 と「匿名化」は、よく混同され、問題をわかりにくくしている。ここで「匿名」で 利用すると言ったときには、下記の4つのレベルが考えられる。

(1)匿名性のレベル1:コード化された標本が個人情報から切り離され、単一の研 究所内で利用される場合。標本の提供者個人を特定できる情報へのアクセスは制限 されている。

(2)匿名性のレベル2:個人情報が単一の研究所、または州の公文書館に保管さ れ、コード化された標本はその他の複数の施設で利用される場合。

(3)匿名性のレベル3:標本が、コードも個人情報も持たない形で複数の施設で 利用される場合。

(4)匿名性のレベル4:保管する標本の利用に先立って、あらかじめ個人情報を 抹消する場合。

 レベル1、レベル2では、個人を特定できるので、標本の提供者にとって有用な新 たな遺伝情報を本人に提供することができる。他方、レベル3、レベル4では、個人 情報と標本とは不可溯的に分離されているので、標本提供者が新たな遺伝情報を自 分のライフプランに役立てたいと願っても、それはできないことになる。この保存 標本の提供後の利用法には、新生児スクリーニングにおけるインフォームドコンセ ントの内容とのかかわりが指摘できる。その親を最大限に尊重するために今回のス クリー

      [資料集p.84]

ニングの目的以外に、提供された標本が今後利用されうることを説明しなければな らない。親は、標本のコード化利用に同意する場合もあれば、完全な匿名性による 利用にのみ同意する場合もありうる。前者の場合、いつの日か新たな知見による情 報を受けることを選択できるが、後者の場合、それができないことを験者は説明し ておかなければならない。いずれにせよ、標本利用の全面的同意を親から得ること は困難である。それでも、遺伝について、あるいは今後の研究方向についての説明 が明確に注意深くなされれば、さらに、標本の提供後の利用について十分な情報を 伝えれば、親は、理性的に理解した上での決定を行うことができる。

      [資料集p.85]



*作成:小川 浩史
REV: 20131127
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