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「3-1-5 家族性腫瘍ポリープに対する商業ベースのAPC遺伝子検査の利用とその解釈」

玉井 真理子・中澤 英之・阿部 史子 19970901 『遺伝医療と倫理』(バイオエシックス資料集 第1集)
信州大学医療技術短期大学部心理学研究室

last update: 20131126

◆3-1-5

家族性腫瘍ポリープに対する商業ベースのAPC遺伝子検査の利用とその解釈

Francis M. Giardiello, Jill D. Brensinger, Gloria M. Peterson, Michael C. Luce, Linda M. Hylind, Judith A. Bacon, Susan V. Booker, Rodger D. Parker and Stanley R. Hamilton 1997 The Use and Interpretation of Commercial APC Gene Testing for Familial Adenomatous Polyposis, New England Journal of Medicine 336-12:823-7

Abstract(p.823)の全訳

 <背景> 家族性がん(familial cancer)に関係する遺伝子検査が商業ベースに 乗せられ利用されているが、これに伴って、これらの検査が患者にどのような影響 を与えるのかという問題も持ち上がってきている。家族性腫瘍ポリープ(familial adenomatous polyposis)は、APC遺伝子上の突然変異(germ-line mutation)によ って常染色体に傷がつき起こる(autosomal dominant disease)ものだが、予防的に 結腸切除術(prophylactic colectomy)を行わないと結腸直腸がん(colorectal cancer)に発展する。本稿では、商業ベースに乗せられたAPC遺伝子検査技術を 臨床の場で用いることについての評価を行った。
 <手段> まずサンプルとして、1995年の1年間にAPC遺伝子検査を受けたと いう125家族177人の患者を全国から選び出した。そして、検査前にインフォームド コンセントが得られていたかどうか、および事前に遺伝カウンセリングを受けたか 否か、という検査のindicationsについて調査した。さらに、担当の医師と遺伝カ ウンセラーに電話でインタビューを行い、検査結果の解釈について調査した。
 <結果> 検査を受けた177人のうち、家族性腫瘍ポリープを発症しているかあ るいはハイリスクであり、検査を受けるにあたって妥当な適応性あり(with valid indications)とみなされる患者は、83%であった。発症前検査を行った場合で、正 規の方法(appropriate strategy)で検査が行われたのは74%(63人中50人)であっ た。検査前に遺伝カウンセリングを受けたという患者はわずか18.6%(177人中33 人)で、書面でのインフォームドコンセントが得られていたのは16.9%(166人中28 人)だけであった。さらに、全体の31.6%において、医師が検査結果を誤って解釈 していた。また、「検査の適応性なし(with unconventional indications for testing)」とみなされた患者のうち、検査した結果陽性とでた割合は2.3%(44人 中1人)であった。
 <結論> 家族性腫瘍ポリープの遺伝子検査を受けた患者は、十分なカウンセリ ングを受けておらず、伝えられた検査結果も誤っていた可能性があることがわかっ た。遺伝子検査をさせる場合、医師は遺伝カウンセリングを行えるように前もって 準備をする必要がある。

      [資料集p.67]



*作成:小川 浩史
REV: 20131126
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