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「強制不妊手術に関する参考資料」


last update: 20151221


強制不妊手術に関する参考資料  1997年9月16日

優生保護法(1948〜96年)の,該当する条文

「優生保護法」には第2章に,優生上の理由で行う不妊手術「優生手術」の規定が
あった。本人の同意を要しない=強制優生手術の規定は,第2章の第4条と第12
条にある。

(審査を要件とする優生手術の申請)
第4条 医師は、診断の結果、別表に掲げる疾患に罹っていることを確認した場合
 において、その者に対し、その疾患の遺伝を防止するため優生手術を行うことが
 公益上必要であると認めるときは、都道府県優生保護審査会に優生手術を行うこ
 との適否に関する審査を申請しなければならない。
(精神病者等に対する優生手術)
第12条 医師は、別表第1号又は第2号に掲げる遺伝性のもの以外の精神病又は精
 神薄弱に罹つている者について、精神保健法(昭和25年法律第 123号)第20条
 (後見人、配偶者、親権を行う者又は扶養義務者が保護義務者となる場合)又は
 同法第21条(市町村長が保護義務者となる場合)に規定する保護義務者の同意が
 あつた場合には、都道府県優生保護審査会に優生手術を行うことの適否に関する
 審査を申請することができる。

2 統計に現われている,本人の要請によらない優生手術件数(1949〜94年)

     第4条   第12条    計
 女性  9,755 1,601 11,358
 男性  4,856   308  5,164
 計  14,611 1,909 16,520

 (「医制八〇年史」および「優生保護統計報告」より)

・日本で初めて優生手術について規定した法律は「国民優生法」で,1940年
(昭和15年)に成立し41年実施,48年に「優生保護法」の成立によって廃止
になった。「国民優生法」によって41〜47年の7年間に行なわれた優生手術は、
計538件であるとの資料が残っている。(太田典礼「堕胎の禁止と優生保護法」
158p)

・「国民優生法」の第6条には,本人の同意を得ることができない場合に病院長,
保健所長,医師らが優生手術の申請をすることができる旨の規定があった。しかし
この条文は実施されず,538件は,実状はともかく少なくとも形の上では本人の
同意があったことになっている。

・優生手術の件数は,「国民優生法」の時代よりも戦後の「優生保護法」成立後の
ほうが圧倒的に多く,1955年がピークである。本人の同意を要しない優生手術
の規定が明確化し,実施された点でも、「優生保護法」は”優生思想の強化”であ
った。このことは,厚生省もみずから認めている。(「優生保護法について」1995
年厚生省資料2頁)

3 優生手術の実施に関する厚生省通知(1953年)

昭和28年6月12日厚生省事務次官通知は[第一 優生手術について]の[三 
資格を要件とする優生手術]の4項で、審査を要件とする優生手術は、審査の手続
きを経て優生手術を行うことが適当である旨の決定が確定した場合、本人の意見に
反してもこれを行うことができるものであるとしている。さらに,次のように述べ
ている。
 「この場合に許される強制の方法は、手術に当たって必要な最小限のものでなけ
 ればならないので、なるべく有形力の行使はつつしまなければならないが、それ
 ぞれの具体的な場合に応じては、真にやむを得ない限度において身体の拘束、麻
 酔薬施用又は欺□等の手段を用いることも許される場合があるとしても差し支え
 ないこと。」(平成8年版保健医療六法)

 ※次の資料は、パンフレット「もういらない!堕胎罪と優生保護法 わたしのか
 らだわたしがきめる」の各ページにあります。
  ・「優生保護法」条文    →82〜84ページ
  ・新聞による子宮摘出の報道 →100ページ
  ・関連する年表       →113ページ

                             (まとめ・米津)

 ※1997年9月16日の記者会見の資料として作ったもの



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