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「JJネットニュ−ス VOL.29」


last update: 20151221


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JJネットニュ−ス VOL.29 1997.3.14
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「女性政策情報ネットワ−ク」 〒113 文京区本郷 5-29-13-1005  FAX:
03-3812-0881
JJネットニュ−ス VOL.27で、日母(日本母性保護産婦人科学会)が致死的
な重い障害の胎児の中絶を認める母体保護法の改正を求める見解をまとめつつあると
の、毎日新聞(1997年2月25日朝刊)の記事を紹介した。今回は、その後の動きを
フォロ−する。
【1】
 SOSHIREN 直ちに抗議「SOSHIREN 女(わたし)のからだから」
は、直ちに抗議。記事が出た翌2月26日、反対の意見書をまとめ、「胎児条項」に
関する意見書を小泉純一郎厚生大臣、厚生省母子保険課、松浦功法務大臣、ならびに
日母(日本母性保護産婦人科学会)坂元正一会長に意見書を提出した。
○母体保護法に胎児条項をいれる案に反対する意見書(要旨)
 私たちは、以下の理由から日母の改正案を強く反対します。1)昨年、優生保護法
が改正され、障害者を差別する優生思想の条文がやっと削除されました。胎児条項は
この改正に逆行します。2)胎児条項は、女性の自己決定と相反するものです。私た
ちは、女性のからだや性と、生殖に関する決定は、本人自身が行なうものと考え刑法
堕胎罪と母体保護法を廃止し、女性の自己決定に基づく法律をつくることを決めてき
ました。私たちが求めるのは、子どもを持つか否かの選択を保障する法律であって、
子どもを性別や障害のあるなしで選ぶものではありません。3)胎児条項は、国が法
律で差別を行なうことです。現行の母体保護法では、人工人妊娠中絶を許す条件に該
当するかどうかを医師が認定し、本人と配偶者の同意を得て行なうことになっていま
す。いってみれば、国が医師に認定を委ね、医師の主導で行なわれることなのです。
ここに胎児条項を加えるのであれば、それは国の思想の反映にほかなりません。
【2】
 日母と厚生省に事実を確認。日母の見解は以下の通りである。「(毎日新聞の記事
は)完全な誤報です。日母は母体保護法の改正について審議する諮問委員会を設置し
たが、まだ、結論が出せる段階ではありません。女性団体や法律家などとも十分に協
議を重ね、リブロダクティブ・ヘルス/ライツの考え方と合致させたいと考えていま
す。・・・あるシンポジウムの席上、日母が胎児条項に関して見解を述べたことや、
産婦人科学会のおいて、受精卵に障害があるか否かについての検診に関する学術発表
が行なわれることもあって、このような早とちりの記事になったのではないでしょう
か」
 厚生省の北井暁子母子保健課長によると、厚生省では、目下のところ、母体保護法
を改正する予定はないとのことだ。
 クロ−ンや遺伝子治療などの技術が急速に実用化されている事実から、生殖の分野
における倫理的な歯止めや規定があまりにも遅れて言わざるを得ない、医学技術が進
歩する一方で、人間の尊厳にかかわる問題でもあり、今後十分にリブロダクティブ・
ヘルス/ライツの視点、さらに女性の立場から議論を深める必要があるのではないだ
ろうか。



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