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11月27日 対厚生省・精神保健課交渉まとめ(案)

「処遇困難者専門病棟」新設阻止共闘会議 1996/11/27


11月27日 対厚生省・精神保健課交渉まとめ(案)
「処遇困難者専門病棟」新設阻止共闘会議 事務局

この日の交渉は、厚生省側から、岩崎課長補佐以下4名、こちら側は、20数名でおこなわれた。要求項目をあらかじめ提出せよといわれ、若干躊躇したが、「その他関連する事項」を最後の項目としていれつつ、交渉要求それ自体を呑ませることを重視して要求項目提出をした。
 だいたいの流れは、
 集英社発行の「イミダス」のなかに、「処遇困難者」の記載があり、これについて、全精連と厚生省との話し合いの際、「削除するよう申し入れる」との厚生省側回答にも関わらず、今年度版のもその記載が残ったが、これについて、削除するよう強く申し入れるように、われわれとしても要求する。を、うけて、来年度版には、確かに「処遇困難者病棟」の記事はなくなったが、申し入れに対して、削らせるよう努力する、といっておいて放置したとしたら重大なので、この点を追及した。
 岩崎は、前任者(千村)が、そういうことを言ったという、まさにその場にいた「病」者のはっきり確認していることすら否定して、「言論の自由だから、厚生省は介入できない」などという形で追及をそらそうとしたため粉砕した。
結局、「厚生省がそんなことを言うわけがない」と、逃げに終始したりで、(しかも、当該自身が怒らなかったが、千村以下3名がはっきり約束した、というその場(全精連の話し合い)にいた「病」者当該の言明に対して、事実上うそつき呼ばわりしているわけで、この点も全く許しがたいが)前任者との確認をすることを念書に書かせた。
 実は、この話題は、厚生省が頭を下げて、ものの10〜15分もあれば済むと判断して、冒頭にもっていったが、相当な時間を浪費することになったため、話の流れ(「処遇困難者病棟」を造るといったときは、記者会見をし、撤回するときは『イミダス』を含む関係各方面に状況を伝え、当事者には謝罪するという責任の取り方ができていないということが明らかになった)からも、謝罪要求に移った。
 道下研究に端を発する、「処遇困難者専門病棟」計画の過程で、様々な形で「精神病」者の人権を侵害し、その他、種々の被害を「病」者に与えたことを謝罪せよ、と追及した。道下研究(医者に「あなたのところに処遇困難者はいますか。」というアンケートをとった)は明らかに人権侵害である、といったことに対して、「疾病調査などで、本人同意を取らずに調査することはある」などと答えたので、「本人の同意抜きに『処遇困難者』というレッテルを貼られ(不利益調査)、しかも、個票にはイニシャルまであった」と全然質の異なる問題であることを指摘し、さらに、本人の知らないうちにやられたということは、「自分も報告されたのかも知れない」という不安を「病」者に与えたのではないか、という追及もなされたが、「人権侵害とは思わない」と単に繰り返すのみで、医療従事者・疫学研究者が通常備えているべき人権感覚すら、持ち合わせていないことが暴露されたが、謝罪要求に関しては平行線であった。
ちなみに、いっこうにまともに答えない岩崎に業を煮やした仲間が、「ならんでいる他の人はどうなのか」と、精神保健課の他のメンバーに問いかけたところ、あろう事か岩崎は「答える必要ないから」と言って、公然と自分の部下達の発言を封じて、われわれに答えさせないという、文字どおり官僚的対応をおこない激しく糾弾された。
 さて、本来もっとも機軸となる、精神保健福祉課として、「処遇困難者」概念をどう扱うのか、この概念に基づいての施策をやる気があるのかないのか、という問に対しては、前回確認「処遇困難者概念に基づく施策は現在のところ考えていない」の線からは、はずれようとはせず、追及に対して、「考えていなのだからいいではないか」と繰り返すので、「考えていないなら『現在のところ』は、外せるではないか」と追及した。「私はやるつもりはない」と言い張るので「在任中にはおこなわない」と書けと要求したが、言を翻して応じようとはしなかった。
 福岡県立 太宰府病院の建て替え計画については、関与していない、と返答。
 「処遇困難者病棟」が造られないのかどうか、については、造られるとは聞いていないなどと答えたので、では、厚生省も建てさせない、と念書を書けといったところ、「処遇困難者病棟は建てない」と言っているのだからいいではないか、同じことを二重に言う必要はない、といったん拒絶し、長時間にわたって紛糾したが、岩崎の横にいた職員が「自治体が主体のものへの厚生省の対応如何、という問題だから、厚生省は建てない、とはやや違う話だ」と、助け船を岩崎に出し、結局この線で、当日は結論が出、自治体立病院の「処遇困難者病棟」にも国として予算補助しない、ことを書かせるに至った。
 この日の交渉は、いままでとは違った新しい仲間の結集もあり、それなりの充実はあったが、ふえて言うならば、自治体立病院の件で「同じことなんだから書いてもいいだろう」「信頼関係がないから書け」という論点で追及したため、「同じことなら書かなくてもいいはず」「信頼関係がないなら書いても意味がないはず」などという言い抜けを許したので、今後の追及のやり方についての反省材料にしたい。言うまでもなく、「些末」「技術的」問題だが、司会自身このような厚生省の言い抜けにうまく対応できなかったことを自己批判するとともに、「病」者、障害者が自ら追及する主体となるためには、こういったことも考えていきたいと思い、あえて提案する。


*再録:桐原 尚之
UP: 20120527 REV:
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