公開質問状
「処遇困難者専門病棟」新設阻止共闘会議 1996/09/06
公開質問状
全国精神障害者団体連合会 御中
「処遇困難者専門病棟」新設阻止共闘会議
私たち「『処遇困難者専門病棟』新設阻止共闘会議は、新たな保安処分施設である「処遇困難者専門病棟」の新設を阻止することを目的として「精神障害者」、障害者、刑法闘争を闘う団体、労働組合などが集って一九九三年十二月に結成された団体です。
以来、たび重なる厚生省・精神保健課等に対する抗議、交渉、東京都衛生局、都立松沢病院に対する抗議行動をくり返し行ってきました。そして、「処遇困難者専門病棟」新設計画の当面の撤回と関連予算の返上をかち取ってきたところです。しかし、厚生省は「処遇困難者」という考え方そのものを撤回したわけではありません。それどころか、名前や形態を変えて、なんとしても「処遇困難者専門病棟」新設の目的を達成しようとさまざまな策動をめぐらしているというのが現状です。
このような中で、全精連が「処遇困難者専門病棟」についての「専門委員会」の設置を厚生省に提案していることを知り、これが厚生省のすすめようとする「処遇困難者専門病棟」づくりに道を開き、推進することになるという危惧があるため、以下のような内容で、いくつかの点について質問します。
全精連は、その機関紙「THEぜんせいれん」の七号、九号において、この「処遇困難者専門病棟」問題について、「精神病を体験した払たちと、処遇困難者病棟を専門的に研究してきた厚生省の関係者とが主体となった専門委員会を早急に設置することを提案する」として、厚生省との協議路線を打ち出しています。不幸中の幸いにも、厚生省が応じなかったことによって実現しなかったとはいえ、このような行為は、政府・厚生省の「精神障害者」に対する差別・分断、隔離政策に「当事者団体」を標榜する貴連合会が手を貸すものではないでしょうか。
事実厚生省は、「精神障害者の合意なしに強硬に病棟建設はしない」という形で文書を書いており、この段階で「当事者団体」との合意があるとされれば、病棟建設が強行されたのではないかという、危機感を持っています。
「THEぜんせいれん」七号の「処遇困難者専門病棟新設についての意見書」(一九九四年三月二十九日)の中で「(略)このように、マンパワーの面でさえ不十分な状況での治療を基準にした今回の処遇困難者病棟の新設は私たちにはとうてい理解できるものではありません」と一見「反対」しているかのようにみえます。しかし、この主張自体「処遇困難者専門病棟」新設に道を開くものであると指摘せざるを得ません。この主張は裏を返せば「充分な医療」が実現すれば「処遇困難者専門病棟」を容認すると言っているにすぎないのではないでしょうか。このような解釈が曲解ではないことは次の文章を引用することで明らかです。
すなわち前記「意見書」では、先の文章につづけて「あらゆる手段をつくしても病棟内で他の患者と一緒に治療することが困難であるならば、そのときにこそ、精神病を体験した当事者と医療従事者、行政官による専門委員会を設置し、充分な話し合いを行うべきだと考えます」と厚生省との協議を要求しています。もし全精連が「処遇困難者専門病棟」を容認する立場でないのなら、なにゆえに「専門委員会」を設置することなどを要求する必要があるのか。われわれの「絶対反対・絶対阻止」をかかげる立場からはとうてい理解できないものです。
「処遇困難者」概念とは保安処分思想に他なりません。「精神障害者」の中には「危険な者、問題行動をする者がいる」として「危険な者は厳重に隔離する」「危険な精神障害者から社会を守れ」という差別イデオロギーであり「病棟」の新設はもとより「処遇困難者」という差別的概念そのものと徹底的に闘わなければなりません。「専門委員会」設置要求路線は、このような立場とは全く相容れないものです。
われわれ「阻止共闘」は、以上のような立場を踏まえて、以下の質問項目に回答するよう要求します。
@「処遇困難者専門病棟」について反対なのか否かの立場を明らかにされたい
Aなぜ「専門委員会」設置の要求をしているのか、その理由について明らかにされたい
B「処遇困難者専門病棟」に反対なのであれば大会決議などで公式の態度表明をする用意があるのかどうか、明らかにされたい
以上、一九九六年九月末日までに返答されるよう要求します。
一九九六年八月三十日
〈追加〉公開質問状
八月三十日付公開質問状の最後にさらに次の質問をつけ加えます。
C「処遇困難者」概念について、貴団体はどのようにとらえているか、明らかにされたい。
なお、回答期限を十一月末日までに変更します。
一九九六年九月六日
「処遇困難者専門病棟」新設阻止共闘会議
全国精神障害者団体連合会 御中
*作成:桐原 尚之