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経済活力維持のために国民負担率の抑制を

今井 敬(経団連副会長) 199608


◆今井 敬(いまい・たかし 経団連副会長) 199608 「経済活力維持のために国民負担率の抑制を」
 http://www.keidanren.or.jp/japanese/journal/jou9608.html

  世界に類を見ない高齢社会を迎えるわが国では、国民負担率(国民所得に占める租税負担と社会保障負担合計の比率)の上昇が、国民一人ひとりにとっても企業にとっても大変な重荷となってくる。今後も現状の社会保障の給付水準を前提とすれば、今の若い世代が高齢者になる時には、国民負担率は50%を遥かに超えるものと推定されている。社会的コスト負担の増大によって、世代間の不公平が拡大して個々人が働く意欲をなくし、企業が国際競争力を喪失すると、経済の活力が失われる上に国の財政も破綻してしまう。労働力人口と貯蓄率の減少に伴う潜在成長率の低下が懸念される中で、これを克服していくためには、行政改革を行なうことは勿論であるが、医療をはじめとする国民への過剰なサービスを見直すことによって、財政全体の歳出を削減することが何よりもまず必要である。
  その際、国民の間で十分なコンセンサスを得ておかなければならない基本理念は「自己責任に基づく受益者負担の貫徹」である。この考えに立つと、受益をナショナル・ミニマムのレベルで享受できれば、これを超える内容をさらに望むか否かは個人の自由な選択に委ねられ、より高い水準を望む人は自助努力で負担を賄うということになる。
  また高齢者は全て弱者という考え方にとらわれることなく、資産や所得の豊かな高齢者は、後世代に極力迷惑をかけないよう費用を応分に負担することも必要だろう。現役の世代は自分たちにとって暮らし易い未来を作るためにも、また子や孫の世代に必要以上に重い負担をかけないためにも、創造性を大いに発揮して新たな産業の創出と経済規模の拡大に努力すべきである。
 政府も国民も、現状の痛みを恐れて問題を将来に先送りするのではなく、21世紀を見据えて効率的で、世代間でも公平な税制・社会保障制度の改革を推し進めることこそ、安定的な経済成長と、活力ある高齢社会の実現を両立させる方途であると確信する。


UP:20090202 REV:
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