HOME > 全文掲載 >

「どのようにお金の流れをつくるか」

黒永 英樹
『NPOが変える!?――非営利組織の社会学(1994年度社会調査実習報告書)』第4章

last update: 20151221


第4章

どのようにお金の流れをつくるか

                             Kuronaga, Hideki
                               黒永 英樹

 『NPOが変える!?――非営利組織の社会学(1994年度社会調査実習報告書)』第4章

 NPOの活動を支えるお金はどのくらいで,どこから入ってくるのか。まったく様々であり,今回私達が調査した範囲でも,千葉市社会福祉協議会のように年間予算9億円といったところもあれば,各地域の不登校児や障害児の親の会のように年間10万円程度でやっているところと様々である。資金源も様々である。千葉市社会福祉協議会の場合には,行政からの依託・補助金が多い。規模も小さく,予算額も少ないところでは大抵が会費,個人カンパ,主催者の持出しなどでやっている★01。
 本章では,Tでどういう収入源があるかを整理し,アメリカと日本のNPOについてそれぞれの割合をみる。U以下では,その中の民間からの資金提供のあり方について,いくつかを紹介し,考察する。

T 分類・実態

 1 収入源の分類

 NPOの収入源としては,まず会費や事業収入がある。(ただし会費にも賛助会費等,寄付金的な要素の強いものがある。これらは寄付金の範疇に含めてよいかもしれない。)
 これ以外に,国及び地方の政府からの支出があり,民間からの寄付・助成がある。そして民間からの寄付・助成という場合,個人に由来するものと企業からのものがある。これで3通りになる。
 次に各々について,直接寄付として支出される場合と,財団等を作り,そこから(その運用益等から)支出される場合とがある。個人が財団を作る場合もあるし,企業が財団を作る場合もあるし,国・自治体が出資して作る場合もある。以上,3×2=6通りになる。
会費や事業収入を含め,計7つになる。この他に,借りるという手段がある。★02
 ただ,財団となった場合,直接の出資者によるコントロールからの独立性が,直接の寄付・出資より(その程度は様々だが)高まるということがある。またデータの上でも,財団からの支出として一括されて扱われる場合がある。けれども,国・自治体が全額出資してできた財団法人などの場合,その組織自体はいわゆる非営利民間の公益法人となるわけだが,資金的には政府からの支出ということになるから,資金源を正確に分けようとすれば,こうしたことに注意しなければならないことになる。

 2 収入の内訳:日本とアメリカ

 まず,アメリカと日本のNPO収入源のうちわけをみる(表1・表2)。
表1 アメリカのNPOの収入源(1989年) 表2 日本のNPOの収入源(1989年)
会費・サービス料金  51% 独自収入 71.1%
政府  31% 政府補助金 17.3%
民間の寄付  18% 民間寄付金  1.3%
    総額=3430億ドル           総額=19兆5085億円
  (Salamon[1992=1994:63])★03     (跡田[1993:46])

 アメリカで民間非営利の活動が盛んだと聞くとすぐに寄付を思い浮かべるが,そして実際,後で見るように,アメリカでの寄付活動は大変さかんなのだがそれでも,会費・サービス料金(とくに料金の占める割合が高いだろう)の占める割合,そして政府からの支出の割合がかなり高いことがわかる。このことを理解するにはまず,第1章でも述べられたことだが,アメリカのNPOがいわゆる草の根の組織だけでなく,大規模な病院や大学等を含むものであることを確認しておく必要がある。そして会費・料金収入については,非営利組織といっても有料の事業を行っている場合が多いこと,大学の授業料や病院での支払い(のうちの自己負担分・私的保険による部分)が含まれていること,政府からの収入については,メディケア(高齢者向け連邦健康保険プログラム)の民間非営利の病院への支出や民間非営利の大学への研究助成金等々が含まれていることを知っていないとこの数字の意味はつかめない。資金供給は政府が行い,実際のサービスの提供はNPOが行うという場合が多いのである(Salamon[1992=1994:61-62,102-103])。
 次に日本のNPOの収入をアメリカのNPOの収入と比較してみると,実は,その総額においては,アメリカにおとるということはない。これは意外な感じがする。だが,教育・研究関係(私立学校,等)が約7.6兆円,医療・保健関係(医療法人,等)が約4.3兆円,社会サービス関係(社会福祉法人,等)が約3.0兆円,経済・労働関係(会員以外にもサービスを提供する経済団体・労働団体)が約2.8兆円,以上4つのグループで全体の90%を占めていると聞くと,納得できる。アメリカと同様,草の根の民間組織というのとは違う団体が収入の上では大きな割合を占めている。それで出ているのがこの数字なのである。アメリカについても同じことが言えるのだが,このような数字が,特に草の根レベルの活動の実態を示すことにはならない。
 また,内訳についてアメリカと比較すると,独自収入の割合が高いこと,政府からの支出が,実は,日本の方が少ないこと,そして寄付金がずっと少ないことがわかる。そこで以下では,寄付のあり方――もちろん寄付の全てがNPOに流れるわけではない――について,その現状のいくつかを取り出し,考える。

3 寄付の実態:アメリカと日本

 『社会貢献白書 1992年版』(経済団体連合会編[1992])に掲載されている数値を用い,日米の寄付の状況を比較したデータをみる(表3)。
 ただしこの数値にはいくつか注釈が必要である。まず日本の個人寄付の数値は,国税庁の「税務統計からみた申告所得税の実態」で推計されている値であり,所得税の寄付金控除の対象となった金額であって,寄付金控除の対象とならない寄付や,対象となりえても申告していない寄付等は含まれていない。だから実態とは大きな乖離がある(経済団体連合会編[1992:302-303])。

       表3 個人・企業による寄付の日米比較(1990年)

個人 財団 遺贈 計 比 企業 企業財団 計 比 総計 比
日   342   54   396 1 5491   196 5687 1  6083 1
米 132340 9490  10140 151970 209 7670 1820 9490 0.91 161460 14.5
      (経済団体連合会編[1992:287-288,313-316]の数値を利用)

  単位:億円(個人1,018,000億ドル,企業59億ドルを1ドル=130円で換算)
比は左の項目をGNP(日本3兆ドル,アメリカ5.5兆ドル)で割った数値を出した  時の比率(日本の値を1とする)。出典については本文を参照 ★04

 別の推計がある。「全国消費実態調査」(総理府統計局)では,1989年の1世帯当り年間寄付金支出は4692円であり(調査対象の9月〜11月の1ケ月平均支出額を単純に12倍したもの)に世帯数(89年で4056世帯)をかけて全国全世帯の寄付金支出を求めると,1900億円強と推計される(山内[1993:62])。1人 1500円強といったところか。実感としても,だいたいそんなものではないかと思う。この値でアメリカと比較してみると,GNP比で,日本1に対してアメリカ38となる。アメリカの 211分の1(個人財団の分を除く)といったはなはだしい違いではなくなる。
 次に個人財団について。これは,助成財団の助成事業額から企業財団の助成額を差し引いてみた数字(249億−196億=54億)だが,両者は各々異なった調査から得られた数字であり,およそ正確な額とは言えない。前者は,(財)助成財団資料センターが1991年7月に行った調査に回答をよせた 394の助成財団(個人財団が112・企業財団229)についての1990年度の事業費の総額であり,これが249億5000万円(290財団)となっている(経済団体連合会編[1992:313])。後者は(財)公益法人協会が行った調査(後述)によるもので,393の企業財団についての数字である。
 次に企業による寄付。先の表を見る限り,企業の寄付について,アメリカと日本の間に大きな違いはない。直接寄付だけについてGNP比でみると,むしろ日本の企業の寄付の方が上回っている。
 ただし,これにも留保がつく。先の日本企業の寄付金の数値は,国税庁の「税務統計から見た法人企業の実態」による(1990年について国税庁企画課編[1992],今田[1993a:136ー137]に紹介)ものだが,これは政党への献金などを含む寄付の全てであり,公益活動への寄付に限られていない。個別の企業についても,その寄付金の金額や対象分野はほとんど公表されていない(今田[1993a:136])。
 ただ以上を考慮に入れた上でも,個人による寄付(遺贈も含む)の差は大きい。また,財団★05による助成・寄付が日本では少ない。特に日本企業の場合,直接寄付の方がはるかに多い。日本の社団法人と財団法人,いわゆる民法法人の数は,1990年度末で社団法人が11602,財団法人が12439(経済団体連合会編[1992:312]),この中で個人財団,企業財団(及び募金財団)の数の内訳を示す統計はないが,(財)公益法人協会の調査は,1991年7月現在の日本の企業財団数を約460と推計しており,403財団(助成事業のみを行っている財団は241)の事業について報告しているが,このうち393財団の助成事業費が 196億円(自事業費334億円)(経済団体連合会編[1992:313],今田[1993a:138])となっている。特徴的なのは,助成型財団の多くは研究助成を主目的としたもので,しかも理科系(理・工・医学)を対象とした科学技術や自然科学を振興する財団が非常に多いことである。福祉,芸術,文化,国際交流を目的とした財団も現われだし,多様な分野への寄付が行われてはきているが,産業振興に直接関連した部分への寄付が中心となっていることは否めない。★06

U 寄付のあり方について

 それにしても寄付金の規模の違いは大きい。ここには税制の違いもあるだろう。日本の税制では,個人による寄付行為が税控除の面で優遇されているとはいえないし,控除の対象になる寄付も限定されている(→第1章)。国民性の違いもあるだろう。また,日本人は税金をたくさん払っているのだからという言い方もできなくはない。ただ,以下で見たいのはシステムである。寄付する側から見れば,有意義にお金が使われてほしい。そういう寄付なら,出す気にもなるだろう。また,お金を出しやすい形があった方がよい。寄付を求める側では,有意義な活動に寄付が集まってほしい。寄付には,直接の寄付と,いったんどこかが集約して配分する場合とがある。後者のいくつかについてその実情をみる。

 1 共同募金

 共同募金運動に対する北海道民の意識調査によると,配分が生活保護費,行政の福祉予算,難民救済に使われていると答えた率が,社会福祉協議会を上回っていて,理解度に難点がある。実施団体を地方自治体と答えたのが43.2%で,民間団体の23.8%,わからないの28.8%を上回っていることからも,理解されていない実態がうかがわれる。また共同募金へ協力したか否かの問いに,協力しなかったと答えた人(12.9%)にその理由を聞いたところ「使途が不明・使途が疑問」という理由が上位に位置する(その他に「強制的」,「国の責任」,「街頭でしつこい」,「マンネリ」など)。協力するにせよしないにせよ,どの機関・団体が取り扱い,どの分野どの団体に配分されるかはほとんどといってよいほど知られていない。共同募金配分金は地域福祉やその活動を支える主要な民間財源であるが,今後の共同募金活動については56.3%が盛んにすべきと考え,そのためには使途の明示や募金方法の工夫,広報活動などが挙げられている。(木村[1994:22-27])。
 募金とは,恵まれない人達へのお金の流れであり,そこには悪意や背徳など入る余地はないと考えているのではないだろうか。だから,何も言わなくても誠実に実行されるはずだ,これで困っている人が少しは楽になるだろう,と思うことになるのだろう。そのことが使途の不明確性,目的意識の稀薄化(募金の年中行事化)を引き起こすことになる。1992年の共同募金の実績額は約 170億円(一般募金のみ,歳末たすけあいを加えると 250億円超)である。たしかに大きな額であるが,かけられている手間を考えるとどうだろうか。国民の広い層に関心を喚起するという意味があるにもせよ,効率的であるとは言えないように思う。これを増やしていくには,有効に,有意義に使われていることを示し,共同募金にお金を入れることに魅力を感じるようにアピールしていく姿勢が必要だろう。ただ,募金箱にお金を入れるという時,普通どれほどの額を考えるか。また,一戸一戸寄付金袋が回り,大抵の場合,横並びに寄付の「相場」がなんとなく決まり,皆がそれに合わせるといったことが一般的だ。そして,寄付者が寄付先を指定できないことや,薄く広く配分されるという配分のあり方を考えると,現状のシステムを基本的に踏襲していった場合,どこまで伸びが期待できるか,また民間団体の資金源としてどこまで頼れるものになるか。

 2 国際ボランティア貯金

 国際ボランティア貯金は,NGO援助のために郵政省が1991年1月から始めた。申し込み者を募り,それに応じた人の通常預金の利子の20%が,毎年3月,自動的に「ボランティア口座」に贈られるというものである。加入者は1777万人(1995年6月末)→約1828万人(1995年8月末)(『国際ボランティア貯金通信』19:4)。

     表5 国際ボランティア貯金の配分実績

年度 配分額 受益NGO 額/NGO
1991 11億 905万円 104団体  1066万円
1992 27億1580万円 189団体  1437万円
1993 24億1849万円 190団体  1273万円
1994 25億1905万円 197団体  1278万円
1995 28億1075万円 235団体  1196万円
 (『朝日新聞』1994-8-3:4,『国際ボランティア貯金通信』)

 例えば「アジア医師連絡協議会」(AMDA)は年間約2200万円,「日本国際ボランティアセンター」(JVC)は年間約9800万円の配分を受けている(1995年度)。
 新聞記事(『朝日新聞』1994-8-3:4「元気いっぱい日本のNGO」中の「活動支える「国際ボランティア貯金」」)は,JVCの総務担当のスタッフ柴田直史さんの話を次のようにまとめている。

「ソマリアなどの救援プロジェクトが決まると,スタッフはとりあえず自費で飛び出した。その後,日本に残ったスタッフが寄付金集めに奔走する。プロジェクトが失敗すれば寄付は集まらず,スタッフが自腹を切ることもあった。
 寄付金集めに人手を取られることも痛かった。現地活動に回すエネルギーを削られることになるからだ。
 「ボランティア貯金ができてから,募金の人手を活動に使えるようになったのは大助かりでした。」
 さらに,専従スタッフに給料が払えるようになった。郵政省は人件費を認めていないが,事業に回せる資金ができたため,… 給料支払いができるようになったのだ。
 「私の場合,大卒34歳,3人家族で,手取り22万円。多くはないが,生活の心配はなくなった。生活と生きがいの両立が可能になったのです。」と柴田さんは話す。」

 NGOの側としては,募金活動を代行してもらうことによって,資金集めの手間が省ける。また,1団体に渡る額が比較的多く,実質的な活動に使うことができる。また募金を集める側としては,比較的手間のかからない方法である。そして,募金する側としては,目的が比較的明確なので,募金しようという気になりやすいということも言えそうだ。

 3 ユナイテッド・ウェイ

 さらに大規模に寄付を集め配分する組織がアメリカにはある。資金供給の仲介機関として「連合資金供給機関(Federated Founder)」と呼ばれるものがあり,サービス提供機関のために民間から献金を集めているのである。中でも大きなのは「ユナイテッド・ウェイ」である。これは,約2300の地方「共同募金会」によって作られたネットワークで,地域の社会サービス機関にかかわって,個人を対象にした募金活動を行う。ここで採用されているのが「職場勧誘」と名づけられた方法である。職場で働く人々に直接寄付を訴え,寄付を約束した金額は,雇用者が給料日ごとに自動的に給料小切手から控除するシステムである。1990年に,アメリカ全土にある地方ユナイテッド・ウェイは総額31億ドルの寄付を集めた。
 従来配分先はユナイテッド・ウェイ公認の「会員機関」に限られていたが,それに対する非難が高まり,その結果,地方ユナイテッド・ウェイの多くが,寄付者が寄付先を指定できるという「寄付者による選択」方式をとるようになった。(Salamon[1992=1994:50-51])
 また,アメリカではNPOに代わり募金活動に専門的に関わる個人や会社がある。大きなNPOは常勤のスタッフとして募金活動専門家を雇っている。これらの募金活動専門家は職業組合を作り,ネットワークを組んで研究集会や訓練を行っている。また,営利募金活動会社は,非営利団体から募金キャンペーン運営の委託を受け広報活動を行っている。(Salamon[1992=1994:52-53])

 4 今後

 1995年1月17日阪神地方を襲った大地震による被災者へ全国からおおくの義援金が寄せられた(その総額は1900億円と言われる)。テレビの映像を通じてその惨状がつぶさに伝えられたことが大きく影響したのだろうか,そのお金の流れは短期間に集中的にではあるが勢いがあった。使途がはっきりとしていること,テレビや新聞など連日情報を流し続けたこと,銀行や郵便局,電話やコンビニなどいろいろに募金窓口があったことなどが理由と思われる。
 募金は我々の意志が直接につながっているものである。しかし実際には使い道などがよくわからなかったり,なんとなく募金している感がある。それではたくさん寄付が集まることも期待しにくい。これを改善する方法はある。また寄付をしやすい,集めやすいものにする方法もある。それをうまく使っていけば,個人の寄付も今より増えるのではないか。また共同募金や国際ボランティア貯金などでは配分金を人件費に充てることを自由にすべきである。活動の推進のためには専門的に働ける人の確保が重要である。その際に人件費充当への規制は阻害要因となりうる。

V 公益信託とコミュニティ財団

 その時々の寄付ではなく,もっと多額のお金を継続的に目的を特定して公益活動に使ってもよいと考えたとする。個人あるいは企業がお金を出して財団法人を作るという方法もある。けれども,財団法人では運営する場所を確保し,理事や役員を選定し,専門スタッフを配置し業務を実行する必要があり,そのためには,かなりまとまった額のお金が必要になる。用意できるお金が何億という額であれば,財団法人を作れるかもしれないが,そこまではないという場合の方がずっと多いはずだ。より少ない額で,自分で財団を作るのに近い機能を果たす方法がある。

 1 公益信託★07

 1922年に信託法が制定されているから,公益信託という制度自体は古くからあると言えるのだが,実際には半世紀以上にわたってこの制度が使われない状況が続き,ようやく1977年に2件誕生し,以後,増えてきている。
 公益信託は,信託銀行などの受託者に一定の財産を信託設定し,主務官庁から許可を得れば原則的には成立する。その運用益や元本で公益活動を行う。信託銀行等(受託者)がその管理・運用および日常運営等に当たる。人を雇用したり事務所を確保したりする必要はない。助成財団と同様の機能を持つが,システムとしては財団より単純で,設立にともなうコストは財団設立より少なくてすむ。
 (社)信託協会『公益信託要覧 平成3年版』によると,日本の公益信託は,91年3月末で344件,信託財産残高は268.6億円となっている(1年で,40件,57億円増加)。財団と異なり資金量は比較的小さく,当初信託財産(91年3月末の総額 207.9億円)の規模は全体の4分の3が5000万円未満,約40%が2000万円未満であり,5億円以上は 1.7%(6件)である。目的別では,奨学金給付29.1%,医学研究・医学教育振興11.9%,学術研究助成 8.4%と,教育関係の助成が多い。(経済団体連合会編[1992:324-325])
 依託者は「個人が過半数を占めており,信託財産が5億円以上で単一企業が設定した公益信託となると,富士フィルム・グリーンファンドなど極めて限られてくる。」(電通総研編[1991:219]。経済団体連合会編[1992:320]には企業が主体となった公益信託として,「世界愛鳥基金」(1991年3月末で2億円,目標は10億円),「文化基金」(5億円)
の事例が紹介されている。)「しかし,管理運営コストが財団ほどかからないにもかかわらず,助成財団とほぼ同じ機能を果たせることから企業のフィランソロピー活動の対象として注目に値するシステムであろう」(電通総研編[1991:219])といった,企業による公益活動との関わりについての指摘がある。

 2 コミュニティ財団★08

 「コミュニティ財団」は普通の企業財団や個人財団とは異なり,それぞれ独立した多数の基金が一つの理事会・事務局を共有する財団で,小口の寄付でも基金を作れることや,独自に財団を設立するような面倒な手続きがいらないことから,基金を設置するだけで自分の財団を設置した場合と同様に社会貢献を実現できる。
 マンション型財団と呼ばれることもある。その構造があたかも一棟の高層住宅にいろいろなタイプの家庭がおのおのの助成分野を表示した表札を掲げて居住しているようだからである。構造面からいうとマンション型財団,機能面からいうとコミュニティ財団となる。地域社会の社会的ニーズのために資金を提供するからである(出口[1994:39])。財団法人を作るには一般に3億円ほど必要だ(と言われている――明文化された基準があるわけではない)が,この形をとると1000万円の規模で基金を設けることができる。
 たとえ単独の財団はつくれなくても,この財団では(中小)企業や個人の寄付金で基金が設置でき自分の財団を持てることになる。どういった分野・対象に支援・助成するかは基金設置者で考えることが可能である。内部的な手続きは,現金・株式・土地等の財産の寄付により基金が設置され,それを財団が管理運用し,収益を助成活動に充てる,ということになる。
 日本では1991年11月に初めて財団法人「大阪コミュニティ財団」が設立された。1993年9月末現在で,基金数は28,基金合計額は4億3千万円余,助成事業が13基金分計2千万円余である。基金となっているものには「大阪商工会議所基金」,「大阪府基金」,「老人医療基金」,「NTT自然環境保護基金」などがある。1993年度の助成対象は,自然環境保全や学資の支給(奨学金),科学技術の振興・福祉の増進,障害者対策,教育への助成や青少年の健全育成などとなっている(藤井[1994:21],三島[1994:38])。
 この方法によって,より簡単に社会貢献ができるようになる。考えられるプログラムとして,出口氏(サントリー文化財団事務局長)は,「銀婚式を迎える老夫婦は記念に田中太郎夫妻という基金をつくって,地域の高齢のお年寄りにプレゼントを」したり,「平成高校一期生は資金を出して平成高校から海外へ留学する人に留学資金を支給」したり,あるいは「中小企業は環境保護のために毎年従業員の給与の端数をためて,基金を積み増し」したりといった例をあげている(出口[1994:40])。
 この形態の問題点として,まず当初資金の準備がある。財団法人の設立許可を受けるには最初の段階で数億円の基本財産が必要とされる。大阪コミュニティ財団の場合は大阪商工会議所が当初資金を提供したというが,そのような組織のないまったくの普通の人々であったならどうであろうか。この点について,「アメリカのチャールズ・モット財団は全米でも常に資金規模5位に入る超大型財団であるが,この財団は世界のコミュニティ財団設立を支援するプログラムをもっている。したがって,コミュニティ財団のさまざまなノウハウばかりではなく,当初の資金も助成金として提供してくれる」と,出口氏はひとつの解決策を提示している(出口[1994:42])。
 また基金の内容が充実したものになるかどうか。大阪コミュニティ財団の場合は企業や人の志に期待した。結果として「基金の内容は実に多種多様である」と出口氏は述べている。ただ,従来から温めていた計画とか,NPOの現実などに関心がないと,「お金をだして設置したのはいいが何をやっていいかわからない。しかたなくふだん目にするような助成にした」ということになってしまうこともあると思う。行政や助成団体の手の回らない,ユニークな部分に支援できるのがコミュニティ財団の本旨であるのならば,基金内容の充実にはじっくり取り組んでしかるべきである。そういった相談に応じられるようなところがあるとよいと思う。

W お金の流れ方

 1 無難・紐つき

 金銭的な貢献の概要はTで見たが,金額の多少とは別に,その支援・貢献の内容上の問題点がある。特に企業の寄付について,無難なところにお金が流れる,あるいは寄付のポリシーがはっきりしないといったことがしばしば指摘される。日本企業の場合,どこにどれだけ寄付しているのか公開されない場合が多い。類似の別の団体から寄付の要請がきて断るのに困るからだという話も聞く。そういうこともあるかもしれないが,それもポリシーがはっきりしていないからだとも言える。また企業の利害に左右され,「紐つき」の寄付になってしまうといったことも言われる。無難な支援と紐つきの支援,両者は反対のもののようにも見えるが,同じ利害から出てくる。企業としては安全な,あるいは(なおかつ)自らの利益になるところにお金を流そうとする。
 これは企業が企業である以上,ある程度は仕方のないこととも言えよう。しかし,そうとばかりは言えない部分もある。情報の不足などのために企業が消極的になってしまうこともあるだろう。また,露骨な利益誘導は(それが露見するなら)かえって消費者の反感を買い,企業に不利益をもたらすこともあるかもしれない。さらに,こうした企業行動の性格を前提しつつ,お金の流れ方を変えていくこともできるかもしれない。そしてお金の流れ方の問題は企業からのお金だけについてだけあるわけではないし,企業など提供サイドの問題だけでもない。NPO内部での使い方の問題もあるし,NPOがどのようにお金を得るべきなのかという問題でもある。最後に,これらのことについて検討してみよう。

 2 財団のスタッフ

 企業の利害からの独立性を高めるため,また方針を明確にするため(同時に,時々の収益の増減の影響をあまり受けないため)の一つの方法は,一つには財団(そうたくさんのお金がなければコミュニティ財団)にすることである。財団にすることによって,企業本体からはある程度独立した組織になり,それが独自の方針をもって助成活動を行なうことが可能になる。
 けれども第一に,日本の財団は法的に各官庁・地方自治体から認可を受けており,監査においても制約があり自立性が保てず,そこに日本の企業財団が助成において保守的にならざるをえない理由があるという指摘がある。(入山[1987:58])。
 次に,財団内部の問題として情報不足,情報処理能力不足が指摘される。たとえば環境保全活動に助成するにしても,どの環境NGOがどんな活動を行っているのか,今までの実績はどんなものかなどわからないし,申請書類だけでは正確に把握できず,また活動の成果を予測できない,ということになる。そういうことから財団の原則や指針の設定,遂行があやふやになってしまう。それを避ける方法として,より安全な助成を行うということにもなるのだ。結果として研究への助成などになる。研究助成の場合,ある程度業績のある研究者であれば研究成果も期待できるし,社会貢献をしているという実感も出てくる。(細田[1993:103-106])
 より積極的な助成活動を行なうためには,能力のあるスタッフが確保されることが必要だ。けれども,財団における専門スタッフの不足のため,情報収集能力や情報蓄積量に問題があることが指摘される。財団のスタッフについて,社会的にその必要性の認知がなされていない。助成型財団の場合,申請された書類に目をとおして,興味の有無だけで採用か否かを決定するのであればスタッフの必要性は薄いだろうが,実際にそういうわけにはいかない。スタッフの仕事量は多い。まして申請に対して「この部分は削除して,ここのところは力を入れよう」と注文をつけたくなったり,類似のテーマについて,申請を出してきた2つの機関が共同で行えばいいのにと予測されたりすれば,労力は質量ともに増える。財団が単にお金を出すだけでなく手を加えたくなった時に,専門のスタッフが必要になってくる。
 まずこの部分についての認識が不足しているうえ,スタッフを雇うにはお金がかかるものである。「1人を雇おうとすれば少なくとも数百万円,一定以上の知的素養と社会的経験を持って,専門家あるいはコーディネーターとして機能し得る人間となると,4,5百万円の出費は覚悟しなくてはならない」(入山[1992:52])。人件費が400万円,助成額が 400万円,諸雑費を入れて年間1000万円を必要とし,基金運用利回り5%という単純な仮定のもとでは,基本財産2億円未満の財団では雇えなくなる。助成型財団の中では基金規模2億円を越えるものは少なく,それだけ専門スタッフを雇えない財団が多いということになる。そしてそういう状況の中ではスタッフになる人がいないということが起こるのである。
 こうした状況を改善するためには,もちろん,財団の活動の重要性を認識し,もっとお金をかけることである。ただ,現実にはそれがなかなか難しい場合もある。独自のスタッフをかかえることができるところ(大企業と呼ばれるような企業であればそのくらいは可能だろう)はそうすればよいが,そこまではできない企業もあるだろう。とすると,NPOと企業との間に立って,互いの情報を流通させ,両者を媒介する組織,NPOがあるのもよいかもしれない。たとえば「(社)日本フィランソロピー協会」はそうした役割を果たそうとしている。

 3 社会変革のための財団

 「無難」な活動にお金が流れやすくなっている状況はアメリカでもあるようだ。運動性の強いアドボカシー(権利擁護)タイプのNPOや社会変革を目指す団体には,大手財団や企業,政府や自治体から資金助成が行われることは少ない。★09
 「不況にもかかわらず,在米の日本企業が出す額は非常に増えているんですね。で,いつも批判しているのは,いつも安全なところにしか出さない。安全なとこっていうのは企業に近いっていうことではないかもしれませんけど,社会変革を目指している団体,マイノリティの権利を考えている団体とか,そういうのには出さないんですよね。大学の大きな研究機関にポンと出すとか,いろんなところにお金を配布しているユーナイテッド・ウェイという団体にお金を出すとか,エスタブリッシュされた芸術活動とか,あ,安全だな,色がついてないなみたいなところにお金を出す。これは日本企業の話ですが,アメリカの企業でもそういうことやっているところ多いです。」(今田氏)
 例えば,環境などに取り組むNGOには支援があまりなされていない。自然環境保全を支援の対象としている助成財団はNGOではなく,教育・研究――それも重要なことではあろうが――のほうへ助成するのである(細田[1993:103-106])。
 もっと助成対象に柔軟な姿勢を持つ財団はないのだろうか。アメリカの例として「バンガード公共財団」を挙げる(岡部[1993:52-57])。
 この財団は,1972年に設立された社会変革(ソーシャル・チェンジ)のための助成財団で,サンフランシスコ周辺など北カリフォルニアに地域を限定し,他の財団にとってはラディカルでリスクが大きいと判断される運動とイッシューを助成対象とする。例えば外国人日雇い労働者が団体を組織した時に助成し,ひとりの主婦が電力・電話会社をコントロールする運動を始めた時に新規事業資金を提供した。また服役者の権利擁護という運動に援助を与え,レズビアン運動にいち早く出資し,中南米系やアジア系の法律相談所の発足資金を提供したのであった。個々の助成額は3000〜5000ドル台の小口が中心だが,他の助成を受けることの難しい団体にとっては貴重な資金源であるようだ。92年の助成総額は66万ドル(内28万ドルが一般助成,38万ドルが出資者助言助成)であり,助成対象は上記のような人権団体から環境,女性,文化運動まで57団体であった。
 財団としてのこのような姿勢が可能なのには次のような背景があるようだ。まず,出資者の主体が1960年代の社会運動に影響された人たちであるということ(そして突然多額の遺産を相続した人たちであること)。次に同じような趣旨を持つ財団とのネットワークということがある。1979年にバンガードを含む6つの「社会変革財団」が全米ネットワーク「助成交流」を組織し,各財団に運営上の技術サポートを行うなどしている。現在の加盟財団数は16,助成総額は年間 700万ドル以上である。またバンガード財団はコミュニティ財団であり,理事会に地域代表を参加させ,地域密着型の助成活動を行っている。他の財団と助成決定の方法に相違があるようで,15名の配分委員会には資金提供者とともに地域で活動に携わる人々が入る。地域で起こっていること,問題点,必要とされる活動などを知っている人が協力している。ちなみに助成基準としては,不正,貧困,無権利状態の背景となる原因を変えようとする団体,低所得層,働く人々の中でその自立を求めて活動している団体,人種差別,性差別,外国人差別,経済的搾取のない社会をめざし,あらゆる人々の権利を守るため活動する団体などとなっている。財団の関心分野は公民権や経済的公正,労働者や女性の権利,教育,障害者や医療などとなっており,それは実現されているといえよう。
 だからといって“外れた”道を行く財団ではない。バンガード財団は1992年11月の全米フィランソロピー・デーに財団関係者の全米協会・NSFEから「卓抜財団賞」を受賞している。財団界でも評価されているということだ。
 こういう財団もある。といっても,以上のような例は,そういう財団もあるというだけのことだとも言える。企業が企業の利益を考えて行動するのは当然でもある。無難なところに限って出そうとするのも理解できる。だからそういったものは一切お断りという選択もないわけではない。だがそういう選択をせず,企業・財団からの資金を調達しようとするなら,企業・財団からの資金提供のあり方を変えようとするなら,どうしたらよいか。

 4 NPOによる監視

 アメリカで,生き残りに必死になっているたばこ産業が,嫌煙権を主張しそうなNPOに対して寄付をもちかけてくるといったことがあるという。「ただそういった戦略がうまくいっているかどうかといったら,必ずしもうまくいってないと思うんです。もう見え見えなわけですね。NPOの側でもそういったお金をはたしてもらっていいかということで,いろんな理事会で常に議論される。そういうお金の出所は問題じゃなくて,我々は使いたいように社会的に有益なものに使えばいいっていうふうに割り切ってお金をもらう場合もありますし,これはいかにもあからさまでこれで圧力をかけられるのは目に見えているってんでやめる場合もあります。それはケース・バイ・ケースだと思います。」(日本太平洋情報ネットワーク(JPRN)・今田氏)
 日本太平洋情報ネットワーク(JPRN)の雑誌『GAIN』には,「ネッスル社の寄付金をめぐる論争」(『GAIN』5(1993.12.15):24),「タバコ会社の寄付でACLUを批判」(『GAIN』4(1993.10.15):27)といった記事が掲載されている。このように,資金調達のあり方についてNPOの内部で議論する,またNPOの間で議論し合う,批判するといったことが行なわれているのである。そしてこれはNPO自身や,NPOに資金を提供する助成財団などにも向けられる。たとえば『GAIN』には次のような見出しの記事が掲載されている。
 「助成財団の理事の大半は白人男性」(『GAIN』2(1993.5.31):22)
 「高額所得者が多い大手NPOの事務局長」(『GAIN』2(1993.5.31):22)
また例えば,先に紹介した「ユナイテッド・ウェー」については
 「ユナイテッド・ウェー,寄付金集めの新戦略」(『GAIN』10(1994.11.15):21)
 「ユナイテッド・ウェー元会長,横領容疑で起訴」(『GAIN』10(1994.11.15):21)
といった記事がある。
 さらにこのような活動を専門に行うNPOもある。
 「1993年10月,ワシントンにあるコミュニティ財団の監視団体,National Committee
for Responsive Philanthrophy(NCRP)は,4つのコミニュティ財団の助成政策などに関する調査報告を発表した。これによると,4財団のうち,ボストン財団は,低所得層やマイノリティ,障害者などの「恵まれない人々」への助成割合が目標値である全体の66%で,同団体から及第点をもらったが,サンディエゴ・コミュニティ財団,メトロポリタン・アトランタ・コミュニティ財団,テキサス・コミュニティ財団は,その値が50%に達していないと批判された。
 NCRPは,91年度にも… 同様の調査を実行しており,今回の調査はそれに続くもの。同報告書は,… 助成方針に明確な焦点がないことや財団のスタッフや理事会の構成メンバーが人種等の多様性にかけていることなど,財団一般の抱える問題点も指摘した。」
(『GAIN』5(1993.12.15):22)
 「全米最大の共同募金機関,ユナイテッド・ウェーのトップが,ユナイテッド・ウェーの資金である10万ドル以上を,出張時のリムジンやコンコルド機の利用や私物にするゴルフ用品や宝石や,花束などに流用していた。この事実が2年前にスキャンダルとして報道されて以来,非営利団体の経営・管理に対する批判が高まっている。
 フィランソロピーの監視団体として17年の歴史を誇る非営利団体,…NCRPが,先頃発行した 「The New Age of Nonprofit Accountability」(非営利組織の社会的責任の新しい時代)は,この問題に焦点を当てた良書として評判を呼んでいる。… 」(『GAIN』9(1994.9.15):22)
 このように,企業やNPO(財団もNPOである)においてお金がどのように出され,入り,使われているのかを明らかし,問題点を指摘する,やはりNPOの,活動がある。非営利・社会貢献を掲げることが,そのまま,そこでお金が有効に,公正に使われることを保障しはしない。何が有効で,公正なのか,議論する必要もあるだろう。これを政府に委ねる前に,民間の活動がある。日本でも,市民公益活動が成熟していくために,こうした活動は参考になるだろう。現存する日本の非営利法人は会計書類を一般には公開していない。NPOの側でも,財務会計面の自主的な公表が望まれる(本間[1993])。★10



★01 主に小さな組織を対象に行われた調査としては,「エイボン女性文化センター」が,総額 200万円の助成金を提供するというエイボン・グループ・サポートに応募した 200余の女性グループを対象に実施したアンケート調査がある。それによると,グループの運営資金の調達手段は,「メンバーからの定期的な会費」が77.6%,「必要に応じてメンバーから徴収」が23.5%(以上各参加者からの出費),「行政の補助金,助成金」が26.2%,「企業からの寄付または助成金」が 6.0%,「基金または財団法人の助成金」が18.6%,そして「メンバー以外の特定個人の寄付」が12.0%となっている。これを見ると圧倒的に自分達で支払う場合が多い。手っ取り早いし,自分達で始めたのだから当然といえば当然である。実際にどれくらいの額を集めているかというと,一人当りの会費納入額として,月額1000円以下が62.8%,月額3000円以下が15.3%と8割近くが3000円以下の会費額となっている(横浜市女性協会編[1993:15])
★02 市民活動に資金を貸し出す「市民バンク」について,片岡[1989][1990:50-52]。
資金の調達の仕方について上記の横浜市女性協会編[1993]がすぐれたガイドブックになっている。
★03 データはHodgigkinson et al.[1992:147]より。
★04 山内[1993:58] には,日本について,1970年から1991年の数値が掲載されている。1991年の企業寄付は5634億円,個人寄付は367億円ほどである。
★05 財団について,林・山岡編[1984],入山[1992],経済団体連合会編[1992]。
★06 社会福祉事業への民間助成について,『月刊福祉』75-13(1992-11):16-57の特集がある(その歴史について山岡[1992],(財)助成財団資料センターの助成財団データベースを用いた助成の現状について宮林[1992],他にいくつかの財団の活動が紹介されている)。
★07 公益信託についての専門的な文献として,信託協会[1989][1991],田中[1980][1985],田中編[1991]。他に電通総研編[1991:218-219],経済団体連合会編[1992:320-330]。
★08 コミュニティ財団についての文献として大阪商工会議所による調査報告(大阪商工会議所[1992]),出口[1994]。他に,経済団体連合会編[1992:317-319],東京都企画審議室[1993:180-184],『労働と経営』1994.3月号で言及されている。「大阪コミュニティ財団」について大谷[1990](設立構想),堀川[1992],藤井[1994],三島[1994]。三島祥宏氏(大阪コミュニティ財団専務理事)は実際に財団の運営に携わっている立場から問題点を指摘している(三島[1994:39-40])。
★09 アメリカでも,小規模なNPOの多くは資金面で苦労している。権利擁護を行うNPOでは,裁判で勝訴した際の弁護費用を運用したり,本文に紹介するような独立的な財団から資金を得ている。また,協力関係にあるフィシカル・スポンサーという501(C)(3) 団体が先に資格を持たない団体の代わりに助成金を受け,助成先の銀行口座に資金を振り込むという方法もある。
 アメリカの小規模なNPOでは創設期に「創立会員」(チャーター・メンバー)を募り会員から初年度の資金集めを行う。創立会員は団体に最初に資金で参加したことを証明され,その組織が継続する間は設立を最初に支援したことが分かるよう配慮されている。創立会員は通常の一般会員より高額の助成資金を請求される。
 NPOが急に資金が必要になったときは,個人に一定の必要な金額を設定して,助成金を募る誓約(プレッジ)を行う。プレッジはNPOと個人の間の誓約で特定目的に利用される。例えば「毎月10ドルずつ30名の資金助成を受けます」というような約束をするのである。プレッジの資金は事務所の賃貸料や維持費など会費や通常の寄付では賄えないとき利用される。
 NPOが特定会員が出資した資金に依存している状態では少数の高額出資者に奉仕する団体に陥ることになる。NPOが銀行から借りることも検討されるが,銀行の多くは信用や担保が必要であり結局個人的な保証人が必要になる。特定の理事が資金集めに積極的に関わることは個人の信用に依存することになりNPOの活動の自立性を失う結果になる。
 NPOが当座の運営資金を財団に依頼するためシード・マネーを申請して資金集めを行う。NPOと(企業)財団の趣旨と合えば一般的に数千ドル単位の資金助成が行われる。
★10 そのためには会計処理の技術がある程度必要になる。日本では「NGO推進センター」が会計書類の記載に必要な簿記の最低限の基礎知識を有料で講習を行っている。また「末廣ハウス」でも会計の講座が開かれている(→第1章)。

REV: 20151221
この報告書の目次全文掲載
TOP HOME (http://www.arsvi.com)