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「人を用いる――アメリカのNPOはどうしているか」

島田 誠

last update: 20151222


第3章

人を用いる
アメリカのNPOはどうしているか
                              Shimada, Makoto
                 島田 誠

 『NPOが変える!?――非営利組織の社会学(1994年度社会調査実習報告書)』第3章

 公益的な活動を継続させ発展させていくためには資金もいる。だがそれよりなにより,実際に活動する人が必要であり,活動領域のことをよく知り,活動の戦略を立て,実行していく人が必要である。また,組織として活動する以上,組織を運営していくための技術をもった人が必要である。そして,それらの人をどのように配置した組織を作っていくか,能力をもった人をどうやって養成していくかが,目的の遂行にとって重要な課題になる。
 本章では,米国のNPO,特に,潤沢な資金をもち多数のスタッフを抱えている大規模な組織でもなく,全てがボランティアによって運営されている組織でもない,中規模のNPOが,どのような組織構成を持ち,人を調達し,養成し,配置しているのかをみる。
 こうした主題について,米国と日本で活動しているNPO,「日本太平洋資料ネットワーク= Japan Pacific Resource Network」(JPRN)が発行している『GAIN』 が貴重な情報を提供している。また,この組織のスタッフやこの雑誌の編集にも加わっている何人かの人(柏木宏氏,岡部一明氏ら)の著書・文章がある。そして,私達はJPRNオークランド・オフィスのエグゼクティブ・ディレクター(事務局長)である今田克司氏に直接お話をうかがう機会を得た。以上の雑誌・著書・インタヴューを主な情報源とする。
 まず,TでJPRNについて簡単に紹介し,U以降,本題に移っていく。終わりに日本の状況に触れ,今後の方向を探る。

T 日本太平洋資料ネットワーク

「日本太平洋資料ネットワーク(JPRN)は,アメリカ合衆国のカリフォルニア州政府に公認された非営利団体(Non-Profit Organization)です。1985年に設立されて以来,1)公民権や企業の社会的責任,日米関係に関する調査や研究,日英両語の出版物の発行やセミナー,2)日米の市民団体間の交流プログラムや企業・自治体・メディア関係者の訪米視察や取材のコーディネート,3)在米日本企業やアメリカの地域社会の人々への啓発活動,4)日本で非営利セクターを形成していくための情報やテクニカルなアシスタントの提供,などを行ってきました。これらの事業は,東京とサンフランシスコ近郊にあるオフィスを中心に,スタッフ,インターン,ボランティア,理事によって実施されています。事業の結果,日米両国で,公民権や企業の社会的責任に関する企業や人々の意識が高まるとともに,市民レベルにおける日米交流が促進され,より良い日米関係が築かれていくと確信しています。また,日本とアメリカを行政と企業を中心とした社会から市民主体の社会へと変化させていく上で,独自の役割を果たしていると自負しています。なお,JPRNは,アメリカ連邦財務省内国歳入局の認可を受けた非課税団体(501c-3 Agency)ですので,会費や寄付は米国内では租税控除の対象になります。」★01
 「日本資料センター」として1985年に設立され,1986年にJPRNに改称,東京オフィス開設は1992年。
 キャンペーン,セミナー開催などを通した対社会的活動として

 1988年 「公民権と日本企業社会」プロジェクトを開始。雇用平等関係のセミナー開催。 1989年 在米日本企業とマイノリティ問題に関して,ワシントンと日本でキャンペーン。 1990年 反セクハラ訪日キャンペーン実施。サンフランシスコの日系社会と黒人社会の     対話促進を狙ったラウンドテーブルの定例化に尽力。反差別国際運動と共催で     ニューヨークなどで「日米マイノリティ会議」開催。
 1991年 企業の社会的責任に関する訪日キャンペーン実施。
 1992年 カリフォルニア州のAFL−CIOの大会で日本たたきに反対する決議案の採     択に尽力。
 1993年 反差別国際運動と共催で「第2回日米マイノリティ会議」開催。
 1994年 連邦雇用平等委員会元コミッショナーによる「雇用差別撤廃キャンペーン」を     東京他で開催。「NPOと企業・行政のパートナーシップ推進のための連続セ     ミナー」開催。(パンフレット中の「JPRNのあゆみ」より抜粋)

 ファンドレイズ(資金調達)をかねたサービス事業として

 <リサーチ>
 ▽新聞,雑誌,機関誌などの記事の収集。
 ▽特定の問題に関する調査や報告書の作成。
 ▽企業やメディア,団体が調査を行うための予備調査。
 <セミナー研修>
 ▽公開のセミナーやフォーラムの実施。
 ▽会社や団体内部の人々向けのセミナーや研修への講師の派遣。
 <企画・コンサルティング>
 ▽研修旅行や交換プログラムの企画,実施。
 ▽取材や研究の訪問先の選定と予約取り。
 ▽市民団体と企業の間で生じた問題を解決するためのコンサルティング
 <日英両語の通訳・翻訳>
 ▽取材や会議等に必要な通訳。
 ▽書類や記事,その他の出版物の翻訳。
 ▽日英両語の手話通訳

 日本語の刊行物として,『アメリカのNPOシステム』(柏木[1992]),『米国の雇用平等法と在米日本企業の対応』,『日系企業の為の障害者差別禁止法ハンドブック』,『アファーマティブ・アクションの概要と実態』,『アメリカにおける企業の社会的責任』『セクシュアル・ハラスメント』等を刊行・販売している他,月刊の新聞切り抜きブックレット(日本語要約・解説付き)『米国の人権とマイノリティ問題』を1989年から,そして隔月刊の『GAIN』(Grassroots America Information Network)を1993年から刊行している。『GAIN』各号の特集は次のとおり。

 創刊号 クリントン政権とグラスルーツ
 第2号 グラスルーツのボイコット運動
 第3号 非営利組織と社会変革
 第4号 障害者のグラスルーツ運動
 第5号 職場と教育におけるダイバーシティ
 第6号 ボランティアとNPO
 第7号 NPOと行政の関係
 第8号 雇用平等政策とグラスルーツ
 第9号 リーガル・アドボカシー
 第10号 地域のニーズと金融機関

U NPOの組織と人・1・・理事とスタッフ

 1 理事

 米国の,特に比較的規模の大きいNPOでは,運営と活動面が分離しているのが一般的である。NPOの最終的決定権は理事会にある。例えばカリフォルニア州法では,非営利団体は,理事(directors)の過半数が「経営と利害関係を持たない人」で構成されることが規定されている。これは過半数が無給の理事であることを意味する。有給職員と血縁関係や婚姻関係にある人は「利害関係を持つ」とみなされる(柏木[1993d:4])★02
 「合同ミーティングっていうのは多くて月に1回,2か月に1回とか3か月に1回というパターンもありますけど,そこでいろんな案件を処理してNPO内部での意志決定をする。そこでいろんな案件を提出する責任者がエグゼクティブ・ディレクター(後出)です。
それ以外に,その理事のレベルでいろんなコミッティ(委員会)を作る場合があります。例えば,もっと会員を集めるコミッティとか,もっと資金を集めるコミッティとか。そこでもうちょっと2週間に1回くらいミーティングに出て。それから,いろんな知っている人に声をかけてもらうとか,そういった仕事をしてもらうこともあります。」(今田氏)
 NPOでは,大学の教員や弁護士,NPOの経験者や企業の実務経験者など,必要に応じて多様な社会経験や技能を持つ理事が参加している。NPOにとっては,多様な領域,特に多様な人脈を持つ人々の参加をえられることによって活動の幅が広がる。またその活動が社会から認知されることにつながる。「その分野で,ある程度の蓄積があって,人とのつながりがあって,その団体に貢献できる人を引っ張ってこようというんですね。その人に直接働いてもらう必要はない。弁護士は1人ほしい,それで弁護士,それからそういう分野で活躍している大学の先生とか,あるいはNPOで活躍しているスタッフだとか。やはり,人づくりにつながる,人とのつながりをもっていることによるサポートが,NPOとしては一番使いいいんです。… コネのある人がほしい。」(今田氏)
 理事として活動する人は,自分の仕事に関わりのある部分で地域社会に貢献できることにやりがいを見出すことができる。ただ,そうした個人的な動機によるだけでなく,米国には,NPOの理事になることに対する社会的評価がある。「私は何々という団体の理事ですっていうのはけっこう社会的に意味のあることなんです。」(今田氏)
 そして無給の理事の参加を促進するシステムがある。
 第一に企業において。米国企業のボランティア支援活動の一つに,日本でいうボランティア休暇に類似するもので重役貸出制度(ローンド・エクゼクィブ)がある(実際には,重役だけでなく一般の従業員も貸し出しの対象になる)。1993年に発表された企業ボランティアに関する調査結果によれば,ローンド・エグゼクティブの実施率は68%,また企業の役員や管理職をNPOの理事に就任するよう奨励している企業が86%ある。(柏木[1994b:14-16])。
 第二に大学において。いったん雇用された大学の教員が終身雇用か退職か大学側から審査される制度として,「テニア・システム」と呼ばれる制度が米国にはある。そこで大学への貢献として評価されるのは,学術研究や研究論文の本数といった学内外での研究上の功績はもちろんだが,どのくらいコミュニティに対して貢献しているかというのが一つの審査の基準になる場合が多い。(今田氏)
 ただ,理事になってほしい人が理事としての職務を予め知ってない場合もある。その場合には「NPOのマネジメントのサポートをするNPOもあるんです。例えば我々のような団体で,我々の理事になってほしい人がいたとしますね。そうすると,その人に頼むと同時に,その人が,「私,経験もないし,理事会のメンバーになることがどういうことかわからない」ってなことを言われたら,そのマネジメント・センターの,夜間の2週間くらいのコース,もっと短いのもあるんですけど,に行ってもらって,理事になるというのはどういうことか,どれだけの責任で何が要求されるのか,知ってもらう。」(今田氏)
 このように,米国のNPOは,経済的利害関係を持たない多様な層からの理事を登用しており,それを支える企業や大学のシステム,また理事のための研修システム(研修コースを提供するNPO)がある。

 2 スタッフ

 多くのNPOでは,理事会の決定のもと,理事会から得た意見やアドバイスを参考に,常勤及び非常勤のスタッフで構成される事務局が組織の実質的な運営に携わっている。例えば,JPRN(年間予算30万ドル)の事務局には常勤の有給のスタッフが4名いる。他に,インターン,ボランティア,ワーク・スタディ(後述)というかたちで関わっている人を含め,年間で常時15〜20人の人が活動に参加している(今田氏)。
 スタッフは「普通給料もらってそこで働いている人」「フルタイムあるいはパートタイムでNPOに雇われ,これがメインの仕事になってる人」をさす。「一回やったらやめられないって言われてて」,他の企業等に勤めた後スタッフとして勤める人もいるが,「はえぬきというか,大学を出て,NPOに2,3年勤めて,その分野でプラクティカル(実践的)な学問を研究する大学院に行き直して,修士くらいをとって,ディレクターとかマネジメントをやるスタッフとして入るという人が多い。」(今田氏)★03
 エグゼクティブ・ディレクター(事務局長)が活動の企画,運営面の実務責任者である。スタッフの採用や解雇の実務上の権限をもつ。他方理事会はエグゼクティブ・ディレクターの選任や解任の権限をもっている(今田氏)。「むこうでノンプロフィット(NPO)のエグゼクティブ・ディレクターみたいに自己紹介すると,ああっていうふうに認めてくれる部分っていうのはあるんですね。ただ,それを日本でやろうとしたらできないわけで…」(今田氏,法人化と社会的認知に関する議論の中で)
 スタッフの賃金は組織の規模が大きくなれば高くなるという相関はあるが,米国のNPOの3/4を占める組織全体の年間支出が50万ドルまでの組織の場合,エグゼクティブ・ディレイクターの賃金は時給15〜20ドル,年収にすると3万から4万ドル程度,5万ドルはいい方,3万ドル程度が一番多い。他のスタッフで年収2万から2万5千ドル程度。物価水準を考えると,1ドル=150円くらいだから,3万ドルもらっているとしたら日本では400〜500万円位の感覚だという(今田氏)★04。
 それでも「民間企業に比べたら給料が低いですから,それで一家を養っていくのは難しい。それで女性が多いというのがあると思うんですけども。女性の場合,特に子供を産んだりして一回第一線から離れるといった場合がありますよね。何年かして戻りたい時に,NPOもマネジメントができる人がほしいと。アメリカの場合,NPOに限らず欲しいのはどこでも即戦力ですから,そういう人達をもう一回引き入れたり,そういう形でやる場合が多いです。」(今田氏)
 他に,人件費を押さえるための工夫として「年金生活者を職員に採用するというのも,しばしば用いられる方法である。これは,一定額以上の収入をえると年金の受給額を減らされる,または受給を止められるということを利用したものだ。高齢者や障害者がしばしばその対象になる。例えば,障害者年金を毎月 500ドル受給し,年金受給額の限度額の1200ドルを超えないために, 700ドルでフルタイムにつくというようなケースだ。」(柏木[1992:34])★05
 全てのNPOでというわけではないにせよ,ひとまず暮らすことができるだけの収入を得て,活動に専念することのできるスタッフがいること,またそのための(NPOでの一定の活動を経た後の)教育のルートがあること,そしてNPOのスタッフとして働くことに対する社会的な価値付与があること,これらが専門分野の知識と管理能力をもったスタッフを支え,NPOを支えている。

V NPOの組織と人・2・・ボランティア,インターン,ワーク・スタディ

 1 ボランティア・マネジメント

 NPOの活動は,以上に記した有給職員だけによって行われるのではない。理事の多くがボランティアであることは既に述べたかが,他にも活動に参加したい人を受け入れる。またそれは,人件費の節約のための工夫でもある。そうした人々をひきつけ,適切に配分することもNPOの活動,運営にとって重要な課題になる。まずNPOがボランティアにどのように対するのか(「ボランティア・マネジメント」)についてみる。これは,後に述べるインターンの受け入れ等にも共通するものである。
 NPOの側では,ミッション・ステートメント(Mission Statement) と呼ばれる活動目的や内容を示した文書を作成し提供する(柏木[1992:32][1993f:8])。団体の理念(Mission) は,「「利害関係をもたない人」を中心にした理事会が決定を行う際に用いられる基準」であり,「社会に存在するさまざまなニーズや意見がMission という形で表現され,NPOという場を通じて具現化されることになる」(柏木[1993d:4])のだが,それが文書化・・「絶対に文書化されていなければならないというわけではないが,口頭で伝えることに限界がある以上,必要性は極めて高い」・・されたものがミッション・ステートメントである(柏木[1992:32-33])。
 「労働力や金銭の形で示される協力を受けるには,NPOは,人々の共感をえるようなMISSION STATEMENT を作成しておかなければならない。この文書が重要なゆえんである。
 MISSION STATEMENT は,団体そのもののとボランティアに対するものと分けて作成されることもある。だが,基本的な概念が同じであることはいうまでもない。いずれにせよ,このMISSION STATEMENT に基づいて,ボランティアに対するプログラムを作成することになる。」(柏木[1993f:8-9])
 ミッション・ステートメント自体は抽象的・全体的なものであり,具体的な仕事の内容についてはジョブ・ディスクリプション(JOB DESCRIPTION )が作成される。これは米国で人事採用の際に一般に用いられる仕事の内容を詳しく示した文書であり,これに基づいてリクルートが行われ,ボランティアに渡される。さらに,面接その他で採用を決定し,オリエンテーション,さらに必要であれば,団体の職員や先輩のボランティアによるトレーニングが行われる。採用後もボランティアの活動を管理し,評価し,補充・再配置等を行っていく。評価を金銭に反映させることはできないから,ボランティアに感謝する集いを催したり,賞状を送って功績を讃えるとともに,やる気を引き出すといったことも行う。さらに,こうしたプロセス全体を通じボランティア・マネジメントがうまく機能しているか評価し,必要ならプログラムの変更が行われる。(柏木[1993f:9])
 その際にはボランティアとの意志疎通が重要になってくる。また,ボランティアに何が提供できるか(ボランティアが何を得られるか)という視点も重要とされる。
 「その一つとして,まずいえるのが,ネットワーク作りや情報入手だ。ある特定の理念を持ったNPOの活動に関わる人々とのネットワーク作りは,ボランティア個人の人間関係を豊かにするだけでなく,その個人の知識も豊かにするし,将来の活動や仕事にも大きな影響を与える可能性がある。…
 これに関連して,ボランティアがNPOから得られるものとして,もう一つ考えられるものが,職業訓練や職業選択の情報,機会の提供だ。… NPOは比較的少人数でやっているところも多いことから,業務の全体像がつかみやすいこともあるし,責任のある仕事を任される場合も多い。ボランティアの仕事をやるうちに,次にやる職業のアイデアを得て,そのための訓練を積むことも可能だ。アメリカでは,ボランティア活動を履歴書に書くことが,就職の際にプラスに働く場合がほとんどだ。また,NPOでボランティアを長期的にやるうちに,そこでの就職が決まるということもよくある。…
 ただこれは,全てのボランティアが就職の機会を狙っていたり,情報収集に目の色を変えているということではない。ボランティアが,「人のために何かをやっている」という気持ちを率直に感じられることも,大事な「テイク」の一つだ。… 」(秋山[1994a:4-5])
 最後に,ボランティアに対する支援システムについて。次に記す学生のインターン制度もそのひとつと言えるだろうし,ボランティアの紹介や,NPOにおけるボランティア・マネジメント改善の手助けなどを専門に行うNPOもある(秋山[1994b])他,企業内の支援システムもある。先に「ローンド・エグゼクティブ」を紹介したが,「日本のように休暇制度を作るっていうのはほとんどないです。ボランティアは奨励するけれども,勤務時間外にやってもらうのが原則だっていう場合が多いですね。ただいろんな紹介サービスをやるんですね。企業の中にコミュニティ・リレイションズっていう部局があって,そういうところにリストがあってみせてもらう。ボランティアをすることによって,社内で表彰されたりとかそういったことはあります。また例えばサンフランシスコのリーバイスなんかは,企業の中でボランティア・チームみたいなのを作って,そのチームの中で植林をやろうとか,HIV感染者に食事の宅配サービスをするとか,そういったことをやって,そういうことが奨励されているみたいなところはあります。ですから,会社に行くのも,働くのはもちろん大事なんですけれども,でもそれだけじゃなくて,そういったネットワークの中に入っているから,この企業にする,みたいなところで,就職先を選ぶ人は少なくないと思います。」(今田氏)

 2 インターン

 アメリカのNPOの重要な戦力として学生のインターンがある。夏季休暇または学期ごとに,大学生や大学院生がインターンとしてNPOの活動に参加している。
 「インターンとボランティア,いろんな区別の仕方があると思うんですけど,何か形になるものをギブ・アンド・テイクでもらうのがインターン。一番典型的なのは大学の単位。大学生でNPOで仕事をすることでワン・セメスターの単位はもらえる。夏の場合はサマー・インターン。学部によってはサマー・インターンを義務づけることも。夏の間6週間あるいは10週間,NPOにいって実践の仕事をしてこいってことで。これは学部で決まっている場合もあるし,教授の裁量っていう場合もあるでしょうけど。」(今田氏)
 「大学で一手に引き受けているっていうよりは,学部単位で,学部のなかにインターンをマネジする人が小さい場合で一人いたり,大きい場合ですとそういう部屋があって。そこにおたくの学生を使いたいんですけどって言って,募集を出す。特に夏はサマー・インターンというかたちで,それはNPOにとって非常に大きな戦力になりますから。学生の方も,オレはインターンやらなきゃいけないみたいにさがすと。それから修士課程のなかのいろんなプログラムでもインターンを義務づけているところがあります。私が向こうで行った大学(UCLA)もそうだったんですけど,2年間の課程の中で,その間の夏にはサマー・インターンをしないと卒業の要件をクリアしたことにならない。有償でも無償でもいいんですけど。」(今田氏)「学生インターンは,無給の場合が多い。卒業するにはインターンが必修になっている学生が専攻分野に関連したNPOなどで働くこともあれば,単に経験を積むためにインターンになる学生もいる。学生の関心とNPOが必要としている仕事が一致していれば,両者にとってメリットがあることだ。」(柏木[1994:34-35])
 私自身アメリカにいた時に見聞きしたことだが,アメリカの教育機関への入学や企業への就職の際には,成績の他に,推薦状や,履歴書の社会的活動の経歴を記した部分が評価される。インターン経験者は,進学や就職のための推薦状の作成をNPOに依頼することが多く,NPOの側でも推薦状の作成に対応している。この推薦状は大変影響があるため,NPOもインターンの採用,マネジメント,活動の評価には責任を持ってあたるのである。
 JPRNでは「インターン・マネジメントは,次のようなパターンをとっている。採用段階では,口コミや大学のキャンパスなどに貼ったチラシなどをみて応募してくるのを待つ。応募した学生には,履歴書と応募動機を書いた文書を提出させる。これは,簡単なようだが,学生にとっては負担だ。やる気がなければ,この段階で応募を取り消すだろう。
 履歴書や応募動機を示した文書は,スタッフの間で回し読みして,JPRNが必要とする作業ができる人材かどうか判断する。そのうえで,面接をして,本人の希望と一致するかどうか聞き,採用するかどうか決定する。こうして,何を,何のために,だれと,どうやるのかということが確認されることになる。
 働く曜日や時間は,スタッフとインターンの間できめる。採用期間は,学期単位で,毎週6時間以上ボランティアとして働くことになる。毎週月曜と水曜の午後2時から5時まで,という具合に。試験や病気などの理由で休むことは認めるが,事前に報告しなければならない。学期の初めにオリエンテーションを行い,学期末には感想を聞く。問題が起きた場合の処理の仕方などは,事前に文書で示し,合意をとっておく。
 このような多くのプロセスを負担に感じるインターンもいるかもしれない。だが,大半の学生にとっては,ボランティアとして時間を割いてやってくる意義を感じることにつながっているようだ。いずれにせよ,団体としては技術や経験を積む機会を与えており,学生は時間と労力を提供しているという,ギブ・アンド・テイクをはっきりさせておくことが必要である。インターンや元インターンのなかには,進学や就職のために推薦状の作成を求めてくる場合もある。これもインターンへのギブのひとつとして行っている。なお,JPRNは,毎学期5〜8人程度のインターンを採用している。」(柏木[1992:55])

 3 ワーク・スタディ

 「ワーク・スタディ」とは,「低所得の家庭の学生がNPOで働く場合,その給与をNPOと連邦政府の助成金を受けている大学がほぼ折半するというシステム」(柏木[1992:34])である。学校とNPOが払う割合は半々とは限らず,やり方によって変わる場合もあるが,半々の場合,時給10ドルとすれば,NPOは5ドル払うだけですむ。学校にとっては一種の奨学金システムで,NPOにとっては人件費の節約になる。また,純粋なアルバイトとして用いることができる。JPRNではコピーとりなどの仕事をワーク・スタディにやってもらっている(今田氏)。
 「これはNPOの側からしたら大変便利な制度で。というのは,インターンとかボランティアの人っていうのは,使いにくいっていう側面もあるんですね。つまり,そういう人達はお金以外のもの,経験であったり,ほかでは得られないろんな情報を求めてNPOにやってくる。ですから,お金の部分を要求しないかわり非常にこれがしたい,あれがしたいっていうのが多いわけです。だからそういった要求に合せるように動いてもらうっていうのは,スタッフが常に考えて使わなければならないという事情がありまして。それに対して,ワーク・スタディの方は,完全にアルバイトだというふうに割り切っている人達が多いですから。」(今田氏)
W 専任スタッフの必要性

 1993年版の『国民生活白書』(経済企画庁[1993])によると,物質面だけでなく心の豊かさを見直す動きが強まり,自然の交流やボランティア活動への関心が高まっているという。ボランティア・センターへの登録者数も増加している★06。もちろん公的機関に登録しないボランティアも多いはずある。
 では日本でボランティアを行うとき参加者はどんな活動を希望するのだろうか。総理府が行った「参加したいボランティア活動」の調査によると,第1位の「自然保護に関する活動」(73.6%),第2位の「募金活動・チャリティ・バザー」(55.5%)をはじめ,手軽にできるなじみのある活動に人気が集まっている(法学セミナー編集部[1992:64])。また「社会福祉(身の回りの世話,給食,介護,保育)に関する活動」(58.8%)や「自主防災活動や災害援助活動」(49.1%)をはじめとする身体を使う活動や身の回りの世話など家事労働の類いの労働にも積極的な姿勢が感じられる。ボランティア参加者は実際に奉仕活動を行うことを期待して,ボランティアに参加している。産業の知的集約化が進み,製造,建設業などモノを作る肉体労働の産業全体からの構成比が減少している。ボランティアでは逆に,身体を使う活動に関心を寄せる希望者が多いのではないだろうか。
 こうした直接的な援助,活動が,求められている活動の中の大きな割合を占めているのは疑いない。だが同時に,物的・人的資源を適切に調達し,配分する,組織を運営する管理能力,活動分野に関する専門的な知識が必要とされる場面も多くある。ボランティア参加者が活動を行う際,活動者の希望とボランティア活動を受ける受益者の側が求める内容にずれが生じることがある。ここで両者の仲介が必要になってくる。また,ボランティア参加者には意欲や能力が溢れているが,その時間の多くは他のセクターに奪われているので限定的な活動にならざるを得ない。とすると,活動をボランティアだけで担うことはできないし,ボランティアで行おうとすれば活動に支障をきたすことになる。
 関西大震災の時,個人・企業ボランティアや小規模な地域の市民団体そしてNGOが支援活動を行ったことが注目されているが,この中で特にNGOや市民団体が一般のボランティア参加者をまとめて活動を積極的に行ったことは記憶に新しい。ここでも,技術・知識の蓄積をもったNGOの活動が大きな役割を果たし,注目された。ボランティア活動が盛んになるのはよいとして,同時に,その活動に専念できるスタッフの必要性が大きいということである。
 アメリカではすでに,NPOは就業の場として一般化している。NPOに勤める有給職員は 865万人。これはアメリカの全労働人口の 6.3%にあたる。ただここには私立学校や病院,宗教団体で働く人も含まれる。日本でも,私立学校等の学校法人,私立保育園を含む社会福祉法人,医療法人等で働く人は数多く,その全てを集計すればかなりの割合になるだろう。比較的大規模な組織,経営・雇用が安定している組織の場合,働く側は,民間,非営利民間ということ自体,あまり意識することがないはずだ。生協のような大規模な組織の就業者の中には「流通業界で安定している大企業だから」という人もいる(高村[1993:131])。ここで注目したいのは,ここまで述べたきたような,いわゆる草の根の市民団体で働くスタッフである。ここを見た時,やはり違いは大きい。しかしそれに変化の兆しがないわけではない。
 日本では若く優秀な青年は大企業に流れるのが一般的だが,他の先進諸国では逆に,若く優秀な青年は大企業に行きたがらなくなっているという。かつてはアメリカでも大企業に行けば日本と同様に雇用は保障されていた。しかし現在は,そのようなことはなくなってしまった。大企業にも分割・縮小・ダウンサイジングの嵐が吹き荒れ,若者たちは,大企業に勤めたところで雇用が保障されるわけではないことを思い知らされたのである。そして,雇用の安定度が同じなら,10年経っても下の立場で言いつけられたことをやるだけの大企業より,ただちに責任ある立場につける中小企業を選ぶようになったのである。
 同じような状況になる可能性は日本にもある。現在日本の大企業にもリストラクチャリングの嵐が吹き荒れている。そしてNPOの活動の魅力,そしてそこで働くことの魅力がある。NPOの活動には専門的な知識・技能を要する部分も多くあり,優秀な人材を必要としている。また,比較的規模が小さいNPOでは,全体を見通した責任ある仕事をすることもできる。NGOに就職したある女子学生は「一生働き続けたいからこそ「自分の関心に沿った」環境保護の仕事がしたい」と考え,自分の希望に沿った「職場」としてこのNGOを選んだ(『朝日新聞』1995-1)。また,「日本国際ボランティアセンター」(JVC)の専従スタッフ2人の募集の広告を出したら 200人の応募があったという(『朝日新聞』1994-8-3:4)。★07
 もちろん,ここで問題になるのは,そのスタッフを「食わせられるか」である。こうして問題は,お金の問題に戻ってくる。ただ,お金の問題はお金の問題として大切なのは確かではあるが,それだけでなく,人材の配置の仕方や養成の仕方などについて,私達はアメリカのNPO,NPOを支えるシステムについて学びうることが様々にあると思う。このことをU〜Vで見てきた。
 私は,日本にアメリカのやり方をそのまま導入するのが最適の方法であるとは考えていない。両国には市民意識や民族性,文化の多様性,法的,社会的な権利意識など社会的,文化的な差異が存在する。ただ,人を養成し,受け入れ,適切に配置することは,どこの国の市民活動にとっても必要なことである。「人と人との集合で何かを開始するというのはむしろ日本が得意にするところである」,「アメリカのNPOが必ずしもうまい経営をやっているわけではない。… 日本の市民セクターも数年後には本場まさりの制度を持っているかもしれない。」(岡部[1993b:68])という指摘もある。 米国から取り入れられる部分を取り入れながら,日本のNPOでより効果的な「人的資源」の活用が行われていくことを期待したい。



★01 紹介パンフレット中の「JPRNとは?」
★02 「法人化されるNPOにとって最初に必要な人間は,創立者(INCORPORATOR)である。創立者の役割は,法人登録に署名をして州務省に提出することである。創立者は,ひとりでよい。つまり,NPOは,ひとりでつくれるということだ。
 …次に必要となる人間は,理事(DIRECTORS)である。…法的には,ひとりでもよい。理事は創立者を兼ねることができる。
 第3番目に必要なのは,役員(OFFICERS)である。カリフォルニア州の法律では,NPOは最低3つの役員のポストを設けなければならないと規定している。会長(PRESIDENT)と書記(SECRETARY),会計(TRESURER)である。このうち,書記と会計は,ひとりの人が兼任することが認められている。つまり,ここで必要なのは,最低ふたりである。
 役員は,理事や創立者から選んでもよい。ここから,NPOの創立と運営にあたって最低必要なのは,ふたりということになる。…NPOが租税控除の特典をとるまでに必要とする経費は 500ドル程度であるから,ふたりの人間がそれぞれ 250ドルずつだしあえば,NPOができるということだ。」(柏木[1992:30],ただし,本文にみた条件により,理事が2人だけの場合は,この2人は有給職員になることはできない。)
 他に会員(MEMBERS)がある。カリフォルニア州の法律では「会員とは,法人登録や内規のなかで理事の選出や団体の合併や解散などにあたって投票権をもつことを認められた人々のことである。… カリフォルニア州のNPOの大半は,非会員制の団体である。」(柏木[1992:30])
★03 市民運動を通した社会変革を教える大学 New College of Carifornia の紹介として青木[1993c]。
★04 「JPRN主催のセミナーで来日したWID(世界障害者問題研究所,カリフォルニア州公認のNPO)の副代表デボラ・カプラン氏に「日本人の参加者が,…WIDの常駐スタッフの平均給料をきいた。「そうですね。年収2万ドルから所長級は年収6万6千ドルですね。」日本の障害者団体の職員は,それをきいて,うらやましさのあまりポカンと口をあけてしまった。日本の感覚で 200万円といえば低いと思われるかもしれない。しかし,これは,こちらの給料としては決して悪くはない。一般企業社員と同等である。生活費の差を考慮に入れれば,アメリカの1万ドルは,日本国内の 200万円と同じぐらいの価値がある。」(秋山[1994e:12])
★05 昨年度調査した「自立生活センター」にも障害基礎年金を計算に入れた実質収入を考慮して有給スタッフの給与を算出しているところがあった。この点を含め石井[1994]。
★06 各地のボランティア・センターに登録されているボランティアの人数の推移は以下の通り。 1980年4月:1,160,452人→1985年4月:2,819,474人→1989年9月:3,901,940人→1991年4月:4,110,630人→1992年4月:4,275,623人
★07 NGO活動推進センター編[1995]によれば,NGOのスタッフの数は以下の通り。

           NGOの有給スタッフ数(括弧内は団体数)
       専従       非専従
 国内  海外  現地 計  国内  海外 現地 計 計
1990 486 (77) 231 (30) 367 (30) 1084 129 (44) 13 (10) 23 ( 7) 165 1249
1992 580 (79) 243 (31) 645 (38) 1468 211 (66) 4 ( 4) 62 (16) 277 1745

           NGOのボランティア数(括弧内は団体数)
       専従       非専従
 国内  海外  現地 計  国内  海外 現地 計 計
1990 296 (57) 68 (16) 19 ( 5) 383 3032(119) 138(29) - ( -) 3170 3553
1992 192 (57) 21 (11) 25 ( 9) 238 2695(129) 42(14) 113(20) 2850 3088


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