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『文部省の通達並びに指導を無視する事なく,障碍を持つ教師が働き続ける事の出来る第一条件(持ち時間を減らす事)の実現と身分的不利益の回復を求めて,教育長への直訴に参ります(京都市教育委員会教育長宛 1997年11月3日)』

大葉 利夫 1997

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last update: 20200320


大葉利夫,1997e,『辻範子教諭所属組合に猶予無き要望書(きょうと教組 野崎委員長宛 1997年11月25日)』.

1997年11月25日

きょうと教組委員長 野崎 殿
              「差無生」運動推進協議会会長
              「障碍」を持つ教師と共に・連絡協議会代表
                大葉利夫(都立小金井北高等学校教諭)

辻範子教諭所属組合に猶予無き要望書

 私達の活動は、本来ならば組合の中で順調な機能が成されているならば、ほとんど障持者(障碍を持つ者)である教職員の全国的な単なる親睦交流会で済むはずです。残念ながら、1981年国際障持者年を軸とする世界的な流れの中で日本では、障持者である教職員の働く権利を保障する制度確立及び確立までの暫定的施策を引き出す具体的で明確な取り組みが、日教組担当者自身が認めるように、日本の組合においては十分出来ないまま今日に至ってしまいました。その結果、少数であり、なおかつ全国に個々の職場に分散して、塵のような存在となって排除・差別されてしまう弱い立場の私達自らが、組合活動とは別の会を結成し、運動を進めざるを得なくなりました。勿論、既存の組合が全く何もしていなかったとは言っていません。東京の組合での人工透析者の勤務継続の取り組みが実績を上げてきた事も把握しております。しかし、あまりにも不確実なため、東京の人工透析者さえ「夏休みは研修だから、透析には年級を使え」と、生命に関わる者への攻撃が成され、私達の会に支援を求めに飛び込んで来るような事実が実際に起きています。
 私達は通常の労働運動と特別に本来は異なる運動をしている訳ではありません。しかし、通常の労働運動から取り残された「少数で弱い障持者の基本的人権の確立と具体的には共生共労の実現」を活動の柱とし、取り残され、排除・差別されている立場から、とにかく通常の労働運動の中に、我々の「正当な主張と訴え」を組み込む事が、取り敢えずの大きな運動の目標とならざるを得ません。
 さて、京都において。本年4月1日に小林あきろう市議会議員を介して貴組合の今井哲氏と私達と当該の京都市立松原中学校・辻範子教諭は出会い、貴組合に正式に入会する事と相成りました。当該休職中に不幸にして、組合の分裂が過去に起きており、その経過の中で当該が所属する組合、また当該を支援する組合が不明のままになっておりました。94年8月復職以後、ようやく貴組合に自らの心臓に障碍を持つ教師としての立場の支援を第一に優先して、取り組んでくれる組合として、小林あきろう先生や私達の推奨もあり、当該も納得の上加入致しました。4月1日以降の当該にとっては、3月の復職の際の「持ち時間や校務分掌において軽減を要する」や「4月の診断書においておおむね半減程度」が4月1日にお会いした今井哲氏への依頼と私達との連携の中で近日中に当該はその事が実現されると望み、疑いもしていなかった。しかし、学校長に言わせれば、本人が希望もしていない「校務分掌等で半減出来ている」との話も出ていると小林あきろう先生を通じて間接的な情報が入ってはいるが、「持ち時間を半減する」は、なぜ実現出来ないのか。それは、持ち時間が教師にとって、いかに負担の大きいものであり、その負担の転嫁は出来ないのが、今の教育現場である事は明白であり、校長の言い分は不当であり、当該の持ち時間による負担は、ほとんど減る事なく、その後続く事になる。同僚への校務分掌の負担転嫁が学校長が言うように、本当に持ち時間を半減するだけの負担転嫁であったとしても、なかったとしても、私達のような障持者にとって、同僚への負担転嫁は「職場に気兼ねし、居づらくなる」だけでなく、「同僚の労働強化」を引き起こし、決して調和の取れた職場とならず、障持者が職場にいる事が居たたまれなくなる悪しき前例を持ったやり方である。
 従って、貴組合には、4月1日に小林あきろう市議を介して、今井氏に当該の「持ち時間を減らす」の実現への動きを、当該も私達も期待しているだけでなく、京都の教育委員会に、その実現に向けて働きを続けて参りました。貴組合としては、当該との直接の話が出来ない事情を問題化されている節があるようですが、この同僚への負担転嫁の構造の中で、しかも長いブランクや複雑な経過を経験した当該にとって、慣れない職場で有給休暇(年休、生休)を駆使して毎日を乗り切るのが、精いっぱいであったと私達は考えています。職場でのストレスの解消としては、東京の同じ立場の者と会う事が大切でした。それは主治医も認めている所です。細かい話を貴組合に当該が伝えるより、当該としては診断書に基づき「持ち時間が半減する」の実現を望むばかりであったはずです。
 細かくはこれ以上振れません。他の資料でご判断下さい。現に当該は職場放棄と決めつけられ、服務違反と言われ、市教委によりこの8月から今に到るまで給与を止められております。更には服務違反を盾に取り、一方的に懲戒免職に追い込まれ、障持者としては典型的なやり方によって、職場での身分が剥奪されようとしています。本来ならば、学校長が所属の教職員の安否を気遣い、それに対して、最大限の好転への積極的な動きを取るはずにも拘らず、今の学校長は、その人間としての暖かい心すら、私達や当該に感じられない存在となっています。思えば4月1日に校長室で当該、私達、市教委、校長、教頭の四者で今後について重大な話し合いをしている際、当該が寒くて心臓の発作不安を訴えた際、学校長がその時言った言葉「ストーブはない」と言ったきり、何とか暖を採る方法を自ら行なおうとしない行動に、言葉にこそ私達は出しませんでしたが、「心臓に障碍を持つ障持者に対して、何をしなければならないのかを、このような場においてわからず、平然としている者ほど恐ろしいものはない」と感じ、「今後この無意識な障持者に対する不理解が当該にとって、結局命取りになるのではないか」と実感した不安がそのまま不幸にも的中したと断言出来る今日の有様へ結局つながってしまったと私達は考えても間違いはないと思うようになりました。なぜならば、その他にも、東京にリフレッシュに来ている当該に対しての校長からの当該への一見暖かい表現で綴られた文書が大葉の所に、通常は送信状が付いているものであるが、生のままで送信状もなく、ダイレクトなままで、faxで送られて来るやり方やその後の言動・行動は、それを裏付けていたと改めて思い起こしているのですが。
 今、学校長を糾弾しても始まりません。とにかく当該の組合の退会届けは、先日文書でお知らせした通り、本人に対して慰留させております。今の当該の困難解決のために委員長自らの行動が、障持者である当該の組合への正式復帰を生み出し、また当該の今の危険を回避する事につながると私達は期待しています。とにかく無給にされ、免職にされようとしている事実は、当該から自らに置き換えれば、誰もが居たたまれず、悲しみと怒りに、また、自らのために力になるものを求めるはずであります。私達は文部省の出来る事例も引っ提げてまいりました。「それすら京都だけはやらないのか!!」と私達の怒りも極地に達してしまいました。ただ、私達の運動の目標を考えるならば、今は冷静に当該の所属組合が組合として、労働者の立場に立って、当該や私達に朗報をもたらすために行動される事を、ここに本当にお願いするものであります。猶予はありません。




*作成:安田 智博
UP: 20200320 REV:
障害学 全文掲載
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