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「精神障害者地域生活支援事業実施要綱」

厚生省 19960510 健医発第573号

萩原 浩史 20191210  『詳論 相談支援――その基本構造と形成過程・精神障害を中心に』,生活書院,資料

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last update:20200719


「精神障害者地域生活支援事業実施要綱」
健医発第573号
平成8年5月10日

1.目的
 精神障害者地域生活支援事業は、地域で生活する精神障害者の日常生活支援、日常的な相談への対応や地域交流活動などを行うことにより、精神障害者の社会復帰と自立と社会参加の促進を図ることを目的とする。

2.実施主体
 実施主体は、地方公共団体及び社会復帰施設を運営する非営利法人とする。
ただし、地方公共団体が実施する場合にあっては、その運営を都道府県知事又は指定都市の市長が適当と認める団体に対し、委託して実施することができる。

3.実施場所
 この事業は、保健所・医療機関・社会復帰施設等の保健・福祉・医療サービスの実施機関と機能的に連携した運営を確保しつつ、かつ、夜間・休日における支援・相談等に対応する必要があることから、精神障害者生活訓練施設、精神障害者授産施設、精神障害者福祉ホームに附置して実施することを原則とする。
 ただし、地方公共団体が委託して実施する場合は、近隣の精神障害者生活訓練施設等との密接な連携の確保された施設で実施することができる。

4.対象者
 地域で生活している精神障害者を対象とする。

5.事業内容
 この事業の実施主体は、地域の実態等の把握及び各種の啓発普及を行うとともに、地域に積極的に出向くなどの方法により、以下の事業を行うものとする。
 (1)日常生活の支援
 生活の基本である住居、就労、食事等、日常生活に即した課題に対して、個別・具体的な援助を行うとともに、生活機能や対人関係に関する指導・訓練等を行う。
 (2)相談等
 電話・面接及び訪問により服薬、金銭管理、対人関係、公的手続等日常的な問題、夜間・休日における個々人の悩み、不安、孤独感の解消を図るための助言、指導を行うとともに、必要に応じて関係機関等へ連絡を行う。
 (3)地域交流等
 ア.場の提供
 レクリエーション等障害者の自主的な活動、地域住民との交流等を図るための場を提供する。
 イ.生活情報の提供
 住宅、就職、アルバイト、公共サービス等の情報提供を行う。
 (4)その他
 地域の実情に応じた創意工夫に基づく事業を行う。

6.事業の実施及び留意事項
(1)実施主体は、年間及び月間の事業計画を定め、本要綱に定めた事業を計画的に実施するものとする。
(2)実施主体は、休日・夜間の緊急の対応に備え、あらかじめ関係機関等と協議し、連絡方法等について定めておくものとする。
(3)実施主体は、支援等を行った精神障害者に関する基礎的事項、支援・サービス計画の内容、実施状況及び課題等を記録するとともに、継続的支援の適正な実施を図るものとする。
(4)本事業の主旨を踏まえ、毎日実施することを原則とし、職員の勤務時間を調整する等により、夕方、夜間、休日等利用度の高いと考えられる時間帯に対応できる運営体制を採るものとする。
(5)宿泊の制限
  施設内に宿泊することは、真にやむを得ない一時的な不安回避等の場合のみとすること。
(6)自主的活p  $ @仲間作り、リーダー育成の観点から、自主的な活動を援助する。
  ピアカウンセリングなど、当事者の経験等を生かした運営方策を試みる。
(7)ボランティアの育成
   地域におけるボランティアの育成、導入を図る。
(8)利用メンバーの登録制
  継続的な相談指導の観点から、利用者については登録制とする。
  ただし、登録外利用者を制限するものではない。
(9)都道府県及び指定都市は、本事業の適正、かつ、積極的な運営を確保するため、支援相談等の内容}  $ ト、年1回以上定期的な事業実施状況の報告を求めるとともに、必要に応じ事業実施状況の調査・指導等を行うものとする。
(10)関係機関等との連携
   事業の実施に当たっては、地域生活支援のための概ねの対象地域を定め、精神保健福祉センター、保健所、市町村、福祉事務所、医療機関、社会復帰施設、小規模作業所、グループホーム等の関係機関や家族会、障害者団体などとの連携を図る。

7.職員の配置等
(1)この事業を行うため、あらかじめ管理責任者を定めるとともに、次の職員を配置するものとする。
 なお、職員は、精神障害者に関して理解のある者で、必要な経験を有していること。また、ア及びイの職員は、専従する職員であること。
  ア 精神科ソーシャルワーカー  1名
  イ 専任職員            1名
  ウ 非常勤職員           2名
(2)職員は、利用者のプライバシーの尊重に万全を期するものとし、正当な理由なくその業務を通じて知り得た個人の秘密を漏らしてはならない。

8.利用者の負担
 利用者は、飲食物費、光熱水料など個人に係る費用を負担する。

9.管理者規定等の整備
(1)管理責任者は、利用者の守るべき規則等を明示した管理規定を定め、利用者に周知しておかなければならない。
(2)管理責任者は、設備・会計に関する帳簿及び利用者に関する記録を整備しておかなければならない。
(3)管理責任者は、この事業に係る経理と他の事業に係る経理とを明確に区分しておかなければならない。
(4)管理責任者は、その他この事業を実施するうえに必要な規定等を定めるものとする。

10.構造及び設備
 (1)本事業を実施するに当たっては、次の設備を設けなければならない。
 ただし、事業を実施する社会復帰施設の運営に支障を生じない限りにおいて、社会復帰施設の設備との兼用ができる。
 @相談室兼静養室
 A談話室兼食堂(調理コーナーを含む)
 B地域交流活動室兼訓練室
 C便所、洗面所(洗濯が可能なものとする)
 D事務室
 E消火設備、その他非常災害に備えるために必要な設備
 Fその他、地域生活支援事業に必要な設備

11.国庫補助
 国は、地方公共団体又は非営利法人が実施する精神障害者地域生活支援事業に要する施設の整備及び運営に関する経費について、別に定める国庫補助交付基準により補助するものとする。



*作成:坂本 唯
UP:20191129 REV:20200719
萩原 浩史  ◇『詳論 相談支援』  ◇精神障害/精神医療  ◇「社会復帰」  ◇全文掲載

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