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「水俣・東京展」


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last update: 20151218


◆ (1)「水俣・東京展」開催概要

【開催目的】
 環境問題が人類的課題となっている現代において、「公害の原点」と言われる水
俣病はその公式確認から今年40周年を迎えますが、これを機に水俣病事件の事実
と問いかけを、文字・写真・映像・演劇・美術・書物・物産等により、できる限り
多くの人々に伝えることを目的とします。南九州の水俣は首都圏から遠く、人々が
水俣病の実態に触れる機会はこれまで極めて限られていましたが、この東京展によ
って、多くの人々が水俣病の何たるかを知ることができ、環境問題への意識の向上
に大いに役立つものと確信しております。

【名称】
 水俣・東京展

【主催者】
 水俣・東京展実行委員会

【後援】
 環境庁、東京都、熊本県、水俣市、港区、品川区、神奈川県教育委員会、千葉県
教育委員会、埼玉県教育委員会、茨城県教育委員会、群馬県教育委員会、山梨県教
育委員会、日本放送協会、朝日新聞、毎日新聞、読売新聞、日本経済新聞、産経新
聞、東京新聞、熊本日日新聞、共同通信

【開催期間】
1996年9月28日より同年10月13日までの16日間

【会場】
品川駅前特設会場

住所 東京都港区港南2丁目1番
交通 JR品川駅港南口より徒歩3分
用地 所有者:国鉄清算事業団 管理者:レールシティ汐留企画(株)
形態 7

【開場時間】
午前11時より午後9時まで(平日・休日・祭日とも1日10時間)

【入場料】

一般・大学生 高・中・小学生小4以下
当 日1,500 700 無料
前売り1,300 600 無料

 各種優遇処置
 1.高・中・小学校の団体予約の場合、生徒1人500円の当日支払いで入場でき、
  引率者は無料とする。
2.複数回来場者への優遇処置を設ける。

【想定動員】
5〜7万人(平日2,000人以上、土・日・祭日5,000人以上)

【前売開始】
1996年4月17日

【主な日程】
4月17日 制作発表(記者会見)於:学士会館
4月29日 水俣病公式発見40周年記念講演会 於:朝日マリオン
7月〜9月 集中的な宣伝広報活動
9月27日 プレビュー(内覧会)
12月末 決算及び事業報告の後、「水俣・東京展」実行委員会解散

【総事業費】
1億5,000万円

【行事内容】
メイン展示  実物・映像・模型・パネルを用いて空間を演出した印象に残る水俣
       病事件の包括的表現
美術展示   丸木夫妻「水俣の図」をはじめ、水俣・水俣病を題材とした質の高
       い絵画作品を展示
遺影展示   1年間水俣に滞在して収集した患者達の遺影数百点を壁一面展示し
       た「 記憶と祈りの場」
写真展  世界的評価を得た報道写真家ユージン・スミスをはじめとして数多
       くの撮 影者たちの記録を展示
映像     水俣病を通して現代社会を考えるための新作短編ビデオ約10本を
       Q&A方式で視聴
映画会  土本典昭監督の水俣に関する作品はもとより、厳選したテレビ作品
       も含めて、すべて解説・講演付きで上映
講演会    患者本人をはじめ水俣病事件に造詣の深い作家や研究者の話を全会
       期中開催
コンサート  フォーク、ジャズ、合唱曲など水俣を題材に曲を作ったミュージシ
       ャンの コンサート
演劇     「現代の水俣」を題材にして新たに書き下ろした脚本をもとに中学
       生・高 校生たちが演ずる朗読劇
書店     文学書・写真集・資料集・文庫・新書・絵本・マンガなど、多岐に
       わたる関連書の販売と貴重図書の展示閲覧
物産展    「海と土と技と」水俣周辺の人々のメッセージを伝えるような産品
       の販売
レストラン  ゆったりとした半野外の空間で水俣周辺地域の素材も用いた飲食物
       の提供


◆ (2)日本語版趣意書

趣意書

 公害の原点といわれる水俣病が南九州の片隅で発見されたのは、経済白書が「も
はや戦後ではない」と謳った1956年のことでした。以後、被害者の運動やさまざま
な裁判、調査、研究によって水俣病事件は少しずつ明らかにされてきました。それ
は、直接の被害者でも加害者でもない私たちにとって、この社会を考える上で、大
変、示唆に富むものでした。

 加害企業チッソの技術力は、世界の化学工業界の中でもトップクラスにありまし
た。その生産過程で副生された原因物質のメチル水銀は、自然界にはまず存在しな
いものであり、わずか耳かき半分ほどで人を死に至らしめる猛毒でした。水俣湾を
つつむ不知火海は、沿岸漁民の主食ともいうべき魚貝類の宝庫でしたが、ここに注
ぎ込まれたその総量が一億国民を二回殺してなお余りあるほどに至るまで、チッソ
の生産活動はつづけられました。

 原因をそれと知りながら隠蔽しつづけたのはひとりチッソに限りません。民主主
義近代国家を標榜するわが国行政は、同じ工程をもつ他企業への問題の波及、化学
工業界への打撃、ひいては工業化政策全体の遅延を恐れて加害企業を庇護しました
。新潟水俣病の発生は、いわば必然だったのです。その一方で、排水停止と謝罪を
求める被害民に対しては、警察力をもって応えたのでした。困窮の極みにあった被
害民に対して、市民もまた白眼をもって接し、革新勢力や宗教家さえ救いの手をさ
しのべようとはしなかったのです。

 その後も行政は、患者補償金支払いの継続確保という名目でチッソへの格別の融
資を続行する一方、医学界の権威を動員して病像を狭く限定することによって、万
を数える被害民の苦痛を否定しつづけているのです。

 地球環境保全が声高に叫ばれる現代においても、この構造に本質的な変わりはあ
りません。これらの事実から、企業、国家、科学、ひいては現代社会全般のありよ
うを再検討しなければならないことに気付きます。

 しかし、水俣病の発生原因それ自体であるチッソの生産活動およびこれに類する
経済活動・技術開発によって、現在の化学工業の成長と日本の経済的発展、「便利
で豊かな生活」がもたらされたのは否定しようもない事実です。そしてそれはこの
国だけのことではありません。世界中が、数えきれないほどの“水俣病”を生みだ
しながら近代工業化、産業の高度化を競っています。こと水俣病から目を転じても
、この「近代科学による工業生産を基盤とした民主主義国家システム」がもたらす
多くの矛盾や危機の具体例は、枚挙にいとまがありません。しかし、それを乗り越
えるための具体的な方法については、誰ひとり解答をもっていないという状況の下
、社会の病状は静かに悪化しています。最大多数の最大幸福の追求が、少数者への
苛烈な抑圧を生みだすのみならず、結果として多くの現代人の内に、人としての存
在の希薄化と関係性の腐蝕をもたらし始めています。

 1996年、日本。 いま私たちは、このような時代の中で生きているのです。

 思いおこせば、壮絶な病苦と疎外、それゆえの貧困の極みにありながら、果敢に
声を上げていった方々のやさしさと巨きさによって、私たちは支えられ援けられて
きたのではなかったでしょうか。そうした方々の言葉にあらためて耳を傾け水俣病
を問い直すことは、私たちがこれから先、どのように生きていくかを考える上で少
なからぬ果実をもたらすことでしょう。水俣病に関するすべての表現、研究、記録
を繙き、状況に照らしてこれらを再構築し、今を生きるすべての人々に伝えたいの
です。

 水俣病公式確認40周年に際して、「水俣展」というべきものの開催です。同展を
企画開催する実行委員会への、皆様のご参加、ご協力を心よりお待ちしております


水俣・東京展実行委員会
東京都渋谷区渋谷2丁目19番17号
グローリア渋谷初穂・足立ビル1001号室
Tel: 03-5485-6107
Fax: 03-5485-6639
URL: http://www.tama.or.jp/~sena/minamata/tokyoten/index.html


◆ (2)英語語版趣意書



環境/環境思想/環境倫理  ◇全文掲載
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