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6・25 討論集会

19880625

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last update:20100525

6・25 討論集会
精神衛生法体制解体に向けて

6月25日(土)午後6時?9時
セントラルプラザビル・
中央労政会館12階集会室(飯田橋下車2分)
提起 精神保健法批判/精神医学の差別性について/
今後の闘いにむけてー共生共闘を訴える
精神衛生法摘発全国連絡会議
東京都港区新橋2-8-16石田ビル救援連絡センター気付 電話番号(03)591-1301
集会基調
 昨年の臨時国会において、精神衛生法が精神保健法に「改正」されました。精神衛生法は、「精神障害者」を「危険な存在」とみなす保安処分の考えにつらぬかれていました。その保安処分としての純化が、精神保健法にほかなりません。
 もともと、宇都宮病院問題があかるみになって以降、日本の精神衛生行政が内外から避難を浴びたのをきっかけに、厚生省は精神衛生法の「改正」作業をすすめてきたのですが、その過程で、当事者である「精神障害者」の声を聞けというICJの勧告も無視してきました。国会審議の過程でも、与野党が一致して「精神障害者」に敵対し、この「改正」を成立させたのです。
 精神保健法が精神衛生法の保安処分としての純化であることは、精神保健法の条文とあわせ、四月八日に発表された「精神保健法施行令」「精神保健法施行規則」、「厚生大臣告示」をみると、いっそうはっきりします。
 精神保健法は、優生思想を「国民の義務」として強制しようとするものです。また、「精神障害者」を、だれでも、いつでも、どこでもぶちこめる応急入院制度(戦前の保護検束にあたるものです)を新しくつくり、厚生省のいいなりにさせられる指定医が大きな権限をもつようになるなど、いくつも問題があります。
 さらに、政令や規則、告示によると、入院患者の基本的権利である通信・面会の自由も「原則として自由」であるのにすぎません。「医療または保護に欠くことのできない限度での制限」は認めるというのです。宇都宮病院でいま行われているような、公衆電話はあっても10円玉をもたせないといったやりかたを禁止する文言さえ見当たりません。「隔離以外の方法では危険を回避することが著しく困難であると判断される場合」には、保護室(独房)にぶちこむこともできるとされていますし、「代替方法が見出されるまでの間のやむを得ない処置」としてなら、しばりつけること(身体的拘束)もできるとされています。
 松山精神病院で最近起こった、面会者に対する看護士の暴行事件は、人権尊重をうたい文句にする精神保健法のもととなったはずの「通信・面会のガイドライン」も守ろうとしない、精神病院の実態を暴露しています。また、この事件に関連して、人権擁護委員会が緊急のときには全く無力であることも、明らかになっています。
 精神保健法が、厚生省がいうような「患者の人権に配意」したものではなく、精神衛生法の保安処分としての緻密化であり、純化であることを、この事件は、はっきりと示すものです。
 精神保健法は精神衛生法の保安処分としての純化であると同時に、刑法に保安処分を導きやすくするものでもあります。すでに、法務省が刑法「改正」を策していたときに、精神衛生法「改正」を保安処分制度新設の一つの代替方策と見ていたところですが、いまも、マスコミの「精神障害者」差別キャンペーンや火災学会の保安処分推進の提言など、保安処分制度新設への動きは衰えていないことに注目しておかなければなりません。
 一方、この「改正」によって、宇都宮病院に象徴される精神医療のありさまは、なに一つ変わるものではありません。厚生省の小林精神保健課長は、「今回の法改正で日本の精神医療が良くなると考えてはいない」と、自分で述べています。
 わたしたちは、このような精神保健法に対し、もう一度、大きな反対の運動をつくりあげていかなければなりません。
 また、精神保健法に反対する運動は、法律や政令、省令に反対するだけでは不十分です。「精神障害者」が差別され、抑圧されている日常のことにも目を向け、その差別、抑圧をなくしていく闘いも、あわせてすすめていくことが必要です。そこでは、いま精神病院でおこなわれている精神医療のうしろにある精神医学そのもの、ロボトミーや電気ショックに端的にしめされるその差別性も問題にしなければなりません。
 そうした意味で、わたしたちは、精神保健法の七月一日施行を目前にした今日ここに、精神保健法を許さない闘いを、すべての「精神障害者」と共に生き、共に闘うなかで、おしすすめていきたいと思います。
 今日のこの討論を踏まえ、精神衛生法の撤廃を勝ち取るまで闘い抜くことを、確認したいと思います。
スローガン
差別立法・精神保健法弾劾!精神衛生法体制解体!
精神保健法七月施行糾弾!
厚生省の精神衛生行政糾弾!
火災学会の保安処分推進提言糾弾!
刑法改悪・保安処分新設粉砕!
「精神障害者」への差別、排外攻撃を許さないぞ!
電バチ・精神外科手術を撤廃せよ!
差別・欠格条項を撤廃せよ!
宇都宮病院を糾弾し、解体するぞ!
優生保護法、母子保健法、一・五才児健診粉砕!
脳死立法策動粉砕!
無実の赤堀さんを生きて奪い返そう!
鈴木国男君虐殺弾劾!
監獄法改悪阻止!監獄四法粉砕!
「病者」・「障害者」との共生共闘を実現するぞ!

☆5読売
精神医療充実、地域から
精神障害者による通り魔事件が三日、都心で起こった。このような事件を繰り返さないためにはどうすればよいのか。
            解説部 南 砂
通り魔事件防止へ人材と資金投入を
 今回の事件を起こしたのは都内在住の四十三歳の男性。
 二十年に及ぶ治療歴を待ち、昨年六月退院後は通院しながら家族と暮らしていた。このような社会復帰過程にある精神障害者が事件を起こした例としては、昨年夏、川崎で退院後間もない障害者が教会でサマーキャンプ中だった子供たちを襲った事件などが記憶に新しい。法務省の資料では、精神障害者とその疑いのある者による犯罪は、刑法犯全体での比率としては特に多くはない。しかし殺人、放火、特に理由のない通り魔的犯行に限ると比率が高くなるのは事実だ。通り魔事件では何のかかわりも罪のない人が犠牲者となるだけに社会不安は高まり、やり場のない怒りが残る。
 被害者が加害者とは何の関係もない第三者であるから「通り魔」とするのだが、精神障害者による暴行や傷害の被害者は実は身内である場合の方がはるかに多い。にもかかわらず障害者を持つ家族は、周囲に迷惑をかけないように、気がねしつつ、社会の強い差別の目に耐えていることが多い。
 一方、さる五十九年の宇都宮病院事件をきっかけに、入院中心の日本の精神科医療における障害者の人権侵害は国際的に強い批判を浴びた。これを受けて厚生省は昨年、精神保健法(旧衛生法)の改正を決定した。これは患者の人権を尊重し、入退院の際の本人の意思確認や障害者の社会復帰を強く打ち出しており、七月一日に施行される。
 しかし新しい法が目指す社会復帰型の精神医療を成功させるためには、その受け皿となる地域精神医療の充実が不可欠の条件だ。退院後の患者や通院患者の社会復帰を促進するためのいわゆる「中間施設」、つまり生活訓練施設や授産施設の充実、保健所の職員による訪問指導などである。
 ところが改正法では、これらの施設は地方自治体の義務規定とはならなかった。社会福祉法人や地方自治体は、これらの施設を設置「できる」とするにとどまっている。
 六十三年度の予算には施設設置に対する補助金も計上された。しかし過去の経験から言って、地域住民の根強い反対があるなど、この種の施設の新設はそう簡単ではない。
 一方の訪問指導にしても、現状での保健所の人員規模や保健婦のあり方では無理がある。しかも当の患者や、その家族の側にも訪問を必ずしも歓迎しない風潮もある。
 こうした地域精神医療の充実に諸外国ではどんな努力をしているのだろうか。たとえば進んでいるといわれる英国の場合、国家の補助で運営される「中間施設」は大都会ロンドンの住宅街にさえ置かれている。ここでも設置に際しての根強い住民の反対は「あった」と関係者は証言する。
 このような中間施設を支えるのは精神科医ではなく、その指示を仰ぎながら独立して働くソシアルワーカーたちだ。彼らは施設に住み込んでリハビリに励む障害者と寝食を共にして、一人一人の社会復帰を真剣に助けている。状況に応じて医師に相談したり、再入院させたりするという精神科医との密接な協力体制が確立されている。こうした地道な活動が時間とともに周辺住民の信用を得、やがては協力も勝ち得たのだという。機関ごとの差はあるが、こうした「中間施設」を経て、半数以上が何とか社会復帰に成功している。
 このソシアルワーカーは、精神科医療に限らず英国の地域医療全般を支える職業で、所定の教育機関で社会福祉を学んだ有資格者である。サッチャー政権の医療費削減策で看護婦のストライキなどが問題化しているが、このソシアルワーカーの場合は十分とは言えないまでも、かなりの収入が保障されている。
 障害者の復帰に無償で協力するボランティアの多いことも、福祉王国といわれる英国らしい。日本でも昨年、社会福祉士(ソシアルワーカー)の資格制度が出来たが、役割や活躍の場が明確にされるには時間がかかりそうである。
 無論、英国といえども、きれいごとばかりではない。これだけの努力をしても社会復帰に成功しない例も半分弱はあるのだ。従って、こうしたシステムをそのまま日本へ導入することには無理がある。
 しかし、今回のような事件を繰り返さないためには、地域精神医療の充実が急務であり、そのためには、それを担う人的資金的裏付けが不可欠であることは間違いない。
 また行政レベルでの努力も必要だが、それ以上に、英国の中間施設が長年の努力で勝ち得たという「一般の理解」が必須(ひっす)条件だろう。
 いつまでも「精神障害者は危険なもの」といった認識で、障害者を社会から遠ざけてしまう「予防拘禁」を叫び続けているだけでは、この種の事件は減るとは思えない。

1988.3.30毎日(夕)
放火防止
「保安処分」促す提言
日本火災学会、東京消防庁に
「監視社会生む」日弁連批判
 「いかにして放火事件を少なくするか」をテーマに東京消防庁から調査・研究を委託されていた社団法人「日本火災学会」(堀内三郎会長=京大名誉教授)は三十日、二回目の報告書をまとめた。精神障害など放火の危険性が高いとされる人に対し、消防機関は「保護ないしは危険性の除去を求め関係各機関に働きかける」と、従来の消防行政から一歩踏み出すよう求めた。
 同庁はこの報告書を参考に放火抑止に努めるが、「保安処分の必要性」を是認した形の提言だけに、議論を呼びそうだ。
 同学会は昨年三月、「都市計画、社会心理、法制、自主防災の四つの観点から放火抑止に努めるべき」と報告した。今回は自主防災についてさらに詳細な検討を加えた。
この中で、精神障害者の放火事例をとりあげ「わが国には保安処分制度がなく、再犯危険性の極めて強い患者が他の一般の患者と同様に遇され、犯罪を繰り返す不幸な事態が生じうる」などと分析。
 消防機関の役割のひとつは「精神障害などにより、放火の危険性が高まっている者を見いだした場合には、その者の保護ないし危険性の除去を求め関係各機関に働きかけるなど、積極的に行動すべき」とした。自殺未遂の経験者については、救急隊の出動記録から情報を得て「未遂者や家族に対する指導、その後の経過について情報の収集も適宣行うことが望ましい」と提言。放火癖のある者に対しても、専門的治療制度の確立に向け積極的に協力すべき、と求めている。
 同学会放火火災予防対策委員会の味岡健二委員長(元消防総監)は「提言であり、行政がそのまま受け入れるかどうかは別問題。委員会としても保安処分に賛成というのではなく、こんな意見もあることを伝えたかっただけ」という。
 日弁連・刑法改正対策委員会の栄盛敦朗事務局長は「消防行政がこんな方向に進むと、監視社会を生み出してしまう。保安処分は不当な人権侵害を招くという認識が世界中で根づきつつある中で提言は危険な兆候と言わざるを得ない」と強く批判している。
 同庁の調べでは今年に入って二十八日現在、都内の総火災件数は二千二百六件。原因別で放火、または放火の疑いが六百十三件で全体の二七・八%を占め一位。

7 昭和63年4月8日 金曜日  官 報  (号外第43号)
附 則

1 この省令は、精神衛生法等の一部を改正する法律の施行の日(昭和六十三年七月一日)から施行する。
2 この省令の施行の際現に交付されているこの省令による改正前の様式による精神衛生鑑定医の身分を示す証票は、この省令による改正後の様式による精神保健指定医の身分を示す証票とみなす。
 ・通商産業省令第二十一号
中小企業信用保険法(昭和二十五年法律第二百六十四号)第三条の四第一項、
第三条の五第一項及び第三条の六第一項並びに中小企業事業団法施行令(昭和五十五年政令第二百四十一号)第三条第一項第一号の二の規定に基づき、中小企業信用保険法施行規則及び中小企業事業団法施行規則の一部を改正する省令を次のように制定する。
 昭和六十三年四月八日
         通商産業大臣 田村   元
   中小企業信用保険法施行規則及び中小企業
   事業団法施行規則の一部を改正する省令
(中小企業信用保険法施行規則の一部改正)
第一条 中小企業信用保険法施行規則(昭和三十七年通商産業省令第十四号)の一部を次のように改正する。
 第四条中「及び中小企業技術開発促進臨時措置法(昭和六十年法律第五十五号)第八条第一項に規定する技術開発関係保証」を「、中小企業技術開発促進臨時措置法(昭和六十年法律第五十五号)第八条第一項に規定する技術開発関係保証及び異分野中小企業者の知識の融合による新分野の開拓の促進に関する臨時措置法(昭和六十三年法律第十七号)第七条第一項に規定する知識融合開発関係保証」に改める。
 第五条及び第六条中「及び中小企業技術開発促進臨時措置法第八条第一項に規定する技術開発関係保証及び異分野中小企業者の知識の融合による新分野の開拓の促進に関する臨時措置法第七条第一項に規定する知識融合開発関係保証」に改める。
(中小企業事業団法施行規則の一部改正)
第二条 中小企業事業団法施行規則(昭和五十五年通商産業省令第三十六号)の一部を次のように改正する。
 第二条中「第七号から第九号まで」を「第七号、第九号」に、「第十九号」を「第二十号」に改める。
 第五条第一項第一号中「及び次条」を「から第六条まで」に改め、同項第二号中「店鋪等集団化計画のうち御売業に係るものにあつては製造業」の下に「、小売商業」を加え、同項第五号中「都市計画の見地」を「都市計画(都市計画法第四条第一号に規定する都市計画をいう。以下同じ。)の見地」に改め、同項第六号中「次条」の下に「及び第六条」を加え、同条の次に次の一条を加える。
(施設集団化計画の内容の基準)
第五条のニ 施行令第三条第一項第一号のニの通商産業省令で定める施設集団化計画の内容の基準は、次のとおりとする。
一 当該事業協同組合の組合員たる特定中小事業者叉は企業組合若しくは協業組合の数が五人以上であること。
ニ 当該事業協同組合のすべての組合員が当該施設集団化計画に基づいて一の団地に集団して特定施設(製造業叉は情報サービス業を行う者にあつては工場叉は事業場、商業を行う者にあつては店鋪叉は倉庫、貨物自動車運送業を行う者にあつては貨物自動車ターミナル叉は車庫、倉庫業を行う者にあつては倉庫、その他の事業を行う者にあつては工場、事業場叉は店鋪をいう。)を設置するものであること。
三 当該施設集団化計画に係る団地は、都市計画その他の見地から適当であると認められる地域内にあること。
四 当該事業協同組合が当該団地内においてその組合員の経営の合理化を図るために適切な共同施設事業を行うものであること。
五 団地内における道路の幅員、建物の建築面積の敷地面積に対する割合並びに建物及び構築物、共同施設、住宅、道路その他の施設の配置が当該事業協同組合の組合員の経営の合理化を図るために適切なものであること。
六 団地内における建物の構造は、その用途に応じ十分な安全性及び耐久性を有し、かつ、作業能率の改善に資するものであること。
2 施設集団化計画の作成後に当該事業協同組合の組合員たる特定中小事業者叉は企業組合若しくは協業組合が組合員たる他の特定中小事業者若しくは企業組合若しくは協業組合と合併し、叉は組合員たる他の特定中小事業者若しくは企業組合若しくは協業組合に対して出費し若しくは組合員たる他の特定中小事業者若しくは企業組合とともに出費して組合員たる法人を設立しかつその事業を廃止した場合についての前項第一号の規定の適用に関しては、当該合併、法人の設立叉は事業の廃止がなかつたものとみなす。
 附 則
この省令は、公布の日から施行する。
  告   示
○厚生省告示第百二十四号
精神保健法(昭和二十五年法律第百二十三号)第十八条第一項第三号の規定に基づき、厚生大臣が定める精神障害及び厚生大臣が定める程度を次のように定め、昭和六十三年七月一日から適用する。
昭和六十三年四月八日             厚生大臣 藤本 孝雄
厚生大臣の定める精神障害 厚生大臣の定める程度
精神分裂病圏 精神保健法(昭和二十五年法律第百二十三号)第二十九条第一項の規定により入院した者(以下「措置入院者」という。)叉は同法第三十三条第一項の規定により入院した者(以下「医療保護入院者」という。)につき三例(措置入院者につき一例以上を含む。)以上
繰うつ病圏 措置入院者叉は医療保護入院者につき一例以上
中毒性精神障害 措置入院者叉は医療保護入院者につき一例以上
児童・思春期精神障害 措置入院者叉は医療保護入院者につき一例以上
症状性叉は器質性精神障害(老年期痴呆を除く) 措置入院者叉は医療保護入院者につき一例以上
老年期痴呆 措置入院者叉は医療保護入院者につき一例以上
(注) この表において「児童・思春期精神障害」とは、十八歳未満の者の精神障害をいう。
○厚生省告示第百二十五号
 精神保健法(昭和二十五年法律第百二十三号)第二十八条の二第一項(第二十九条の二第四項において準用する場合を含む。)の規定に基づき、厚生大臣の定める基準を次のように定め、昭和六十三年七月一日から適用する。
 昭和六十三年四月八日
第一
 一 精神保健法(昭和二十五年法律第百二十三号。以下「法」という。)第二十九条第一項の規定に基づく入院に係る精神障害者であり、かつ、医療及び保護のために入院させなければその精神障害のために自身を傷つけ叉は他人に害を及ぼすおそれがある旨の法第十八条第一項の規定により指定された精神保健指定医による判定は、診察を実施した者について、入院させなければその精神障害のために、次の表に示した病状叉は状態像により、自殺企図等、自己の生命、身体を害する行為(以下「自傷行為」という。)叉は殺人、傷害、暴行、性的問題行動、悔辱、器物破損、強盗、恐喝、窃盗、詐欺、放火、弄火等他の者の生命、身体、貞操、名誉、財産等叉は社会的法益等に害を及ぼす行為(以下「他害行為」といい、原則として刑罰法令に触れる程度の行為をいう。)を引き起こすおそれがあると認めた場合に行うものとすること。
二 自傷行為叉は他害行為のおそれの認定に当たつては、当該者の既往歴、現病歴及びこれらに関連する事実行為等を考慮するものとすること。
第二
 法第二十九条の二第一項の規定に基づく入院に係る精神障害者であり、かつ、直ちに入院させなければその精神障害のために自身を傷つけ叉は他人を害するおそれが著しい旨の法第十八条第一項の規定により指定された精神保健指定医による判定は、診察を実施した者について、第一の表に示した病状叉は状態像により、自傷行為叉は他害行為を引き起こすおそれが著しいと認めた場合に行うものとすること。
○厚生省告示第百二十六号
 精神保健法(昭和二十五年法律第百二十三号)
第二十九条の六第二項の規定に基づき、精神衛生法第二十九条の六第二項の規定による診療方針及び医療に要する費用の額の算定方法(昭和五十八年一月厚生省告示第三十二号)の一部を次のように改正し、昭和六十三年七月一日から適用する。
 昭和六十三年四月八日
           厚生大臣 藤本 孝雄
「精神衛生法」を「精神保健法」に改める。
○厚生省告示第百二十七号
精神保健法(昭和二十五年法律第百二十三号)
第三十三条の四第一項の規定に基づき、厚生大臣の定める基準を次のように定め、昭和六十三年七月一日から適用する。
 昭和六十三年四月八日
           厚生大臣 藤本 孝雄
一 精神保健法(昭和二十五年法律第百二十三号)第十八条第一項の規定により指定された精神保健指定医一名以上及び看護婦叉は看護士三名以上が、常時、同法第三十三条の四第一項により入院する者(以下「応急入院者」という。)に対して診療応需の態勢を整えていること。
二 都道府県知事の承認を得て、看護、給食及び寝具設備の基準(昭和三十三年六月厚生省告示第百七十八号)による看護(二類看護及び三類看護を除く。)を行つていること。ただし、地域における応急入院者に係る医療及び保護を提供する体制の確保を図る上でやむを得ない事情がある場合にはこの限りでない。
三 応急入院者のための病床として、常時、一床以上確保していること。
四 応急入院者の医療及び保護を行うにつき必要な設備を有していること。
○厚生省告示第百二十八号
精神保健法(昭和二十五年法律第百二十三号)
第三十六条第二項の規定に基づき、厚生大臣が定める行動の制限を次のように定め、昭和六十三年七月一日から適用する。
 昭和六十三年四月八日
           厚生大臣 藤本 孝雄
一 信書の発受の制限(刃物、薬物等の異物が同封されていると判断される受信信書について、患者によりこれを開封させ、異物を取り出した上患者に当該受信信書を渡すことは、含まれない。)
二 都道府県及び地方法務局その他の人権擁護に関する行政機関の職員並びに患者の代理人である弁護士との電話の制限
三 都道府県及び地方法務局その他の人権擁護に関する行政機関の職員並びに患者の代理人である弁護士及び患者叉は保護義務者の依頼により患者の代理人となろうとする弁護士との面会の制限
○厚生省告示第百二十九号
精神保健法(昭和二十五年法律第百二十三号)
第三十六条第三項の規定に基づき、厚生大臣が定める行動の制限を次のように定め、昭和六十三年七月一日から適用する。
 昭和六十三年四月八日
           厚生大臣 藤本 孝雄
一 患者の隔離(内側から患者本人の意思によつては出ることができない部屋の中へ一人だけ入室させることにより当該患者を他の患者から遮断する行動の制限をいい、十二時間を超えるものに限る。)
二 身体的拘束(衣類叉は綿入り帯等を使用して、一時的に当該患者の身体を拘束し、その運動を抑制する行動の制限をいう。)
○厚生省告示第百三十号
精神保健法(昭和二十五年法律第百二十三号)
第三十七条第一項の規定に基づき、厚生大臣が定める処遇の基準を次のように定め、昭和六十三年七月一日から適用する。
 昭和六十三年四月八日
           厚生大臣 藤本 孝雄
第一 基本理念
  入院患者の処遇は、患者の個人としての尊厳を尊重し、その人権に配慮しつつ、適切な精神医療の確保及び社会復帰の促進に資するものでなければならないものとする。また、処遇に当たつて、患者の自由の制限が必要とされる場合においても、その旨を患者にできる限り説明して制限を行うよう努めるとともに、その制限は患者の症状に応じて最も制限の少ない方法により行われなければならないものとする。
第二 通信・面会について
一 基本的な考え方                                  
(一) 精神病院入院患者の院外にある者との通信及び来院者との面会(以下「通信・面会」という。)は、患者と家族、地域社会等との接触を保ち、医療上も重要な意義を有するとともに、患者の人権の観点からも重要な意義を有す るものであり、原則として自由に行われることが必要である。
 ☆通信・面会は基本的に自由であることを、文書叉は口頭により、患者及び保護義務者に伝えることが必要である。
 ☆電話及び面会に関しては患者の医療叉は保護に欠くことのできない限度での制限が行われる場合があるが、これは、病状の悪化を招き、あるいは治療効果を防げる等、医療叉は保護の上で合理的な理由がある場合であつて、かつ、合理的な方法及び範囲における制限に限られるものであり、個々の患者の医療叉は保護の上での必要性を慎重に判断して決定すべきものである。
二 信書に関する事項
(一) 患者の病状から判断して、家族等からの信書が患者の治療効果を防げることが考えられる場合には、あらかじめ家族等と十分連絡を保つて信書を差し控えさせ、あるいは主治医あてに発信させ患者の病状をみて当該主治医から患者に連絡させる等の方法に努めるものとする。
 ・刃物、薬物等の異物が同封されていると判断される受信信書について、患者によりこれを開封させ、異物を取り出した上、患者に当該受信信書を渡した場合においては、当該措置を採つた旨を診療録に記載するものとする。
三 電話に関する事項
(一) 制限を行つた場合は、その理由を診療録に記載し、かつ、適切な時点において制限をした旨及びその理由を患者及び保護義務者に知らせるものとする。
(二) 電話機は、患者が自由に利用できるような場所に設置される必要があり、閉鎖病棟内にも公衆電話等を設置するものとする。
また、都道府県精神保健主管部局、地方法務局人権擁護主管部局等の電話番号を、見やすいところに掲げる等の措置を講ずるものとする。
四 面会に関する事項
(一) 制限を行つた場合は、その理由を診療録に記載し、かつ、適切な時点において制限をした旨及びその理由を患者及び保護義務者に知らせるものとする。
(二) 入院後は患者の病状に応じできる限り早期に患者に面会の機会を与えるべきであり、入院直後一定期間一律に面会を禁止する措置は採らないものとする。
(三) 面会する場合、患者が立会いなく面会できるようにするものとする。ただし、患者若しくは面会者の希望のある場合叉は医療若しくは保護のため特に必要がある場合には病院の職員が立ち会うことができるものとする。
第三 患者の隔離について
一 基本的な考え方
(一) 患者の隔離(以下「隔離」という。)は、患者の症状からみて、本人叉は周囲の者に危険が及ぶ可能性が著しく高く、隔離以外の方法ではその危険を回避することが著しく困難であると判断される場合に、その危険を最小限に減らし、患者本人の医療叉は保護を図ることを目的として行われるものとする。
(二) 隔離は、当該患者の症状からみて、その医療叉は保護を図る上でやむを得ずなされるものであつて、制裁や懲罰あるいは見せしめのために行われるようなことは厳にあつてはならないものとする。
(三) 十二時間を超えない隔離については精神保健指定医の判断を要するものではないが、この場合にあつてもその要否の判断は医師によつて行われなければならないものとする。
(四) なお、本人の意思により閉鎖的環境の部屋に入室させることもあり得るが、この場合には隔離には当たらないものとする。この場合においては、本人の意思による入室である旨の書面を得なければならないものとする。
二 対象となる患者に関する事項
隔離の対象となる患者は、主として次のような場合に該当すると認められる患者であり、隔離以外によい代替方法がない場合において行われるものとする。
 ア 他の患者との人間関係を著しく損なうおそれがある等、その言動が患者の病状の経過や予後に著しく悪く影響する場合
 イ 自殺企図叉は自傷行為が切迫している場合
 ウ 他の患者に対する暴力行為や著しい迷惑行為、器物破損行為が認められ、他の方法ではこれを防ぎきれない場合
 エ 急性精神運動興奮等のため、不穏、多動、爆発性などが目立ち、一般の精神病室では医療叉は保護を図ることが著しく困難な場合
 オ 身体的合併症を有する患者について、検査及び処置等のため、隔離が必要な場合
三 遵守事項
(一) 隔離に行つている閉鎖的環境の部屋に更に患者を入室させることはあつてはならないものとする。また、既に患者が入室している部屋に隔離のため他の患者を入室させることはあつてはならないものとする。
(二) 隔離を行うに当たつては、当該患者に対して隔離を行う理由を知らせるよう努めるとともに、隔離を行つた旨及びその理由並びに隔離を始めた日時を診療録に記載するものとする。
(三) 隔離を行つている間においては、定期的な会話等による注意深い臨床的観察と適切な医療及び保護が確保されなければならないものとする。
(四) 隔離を行つている間においては、洗面、入浴、掃除等患者及び部屋の衛生の確保に配慮するものとする。
(五) 隔離が漫然と行われることがないように、医師は原則として少なくとも毎日一回診察を行うものとする。
第四 身体的拘束について
一 基本的な考え方
(一) 身体的拘束は、制限の程度が強く、また、二次的な身体的障害を生ぜしめる可能性もあるため、代替方法が見出されるまでの間のやむを得ない処置として行われる行動の制限であり、できる限り早期に他の方法に切り替えるよう努めなければならないものとする。
(二) 身体的拘束は、当該患者の生命を保護すること及び重大な身体損傷を防ぐことに重点を置いた行動の制限であり、制裁や懲罰あるいは見せしめのために行われるようなことは厳にあつてはならないものとする。
(三) 身体的拘束を行う場合は、身体的拘束を行う目的のために特別に配慮して作られた衣類叉は綿入り帯等を使用するものとし、手錠等の刑具類や他の目的に使用される紐その他の物は使用してはならないものとする。
二 対象となる患者に関する事項
   身体的拘束の対象となる患者は、主として次のような場合に該当すると認められる患者であり、身体的拘束以外によい代替方法がない場合において行われるものとする。
 ア 自殺企図叉は自傷行為が著しく切迫している場合
 イ 多動叉は不穏が顕著である場合
 ウ ア叉はイのほか精神障害のために、そのまま放置すれば患者の生命にまで危険が及ぶおそれがある場合
三 遵守事項
(四) 身体的拘束に当たつては、当該患者に対して身体的拘束を行う理由を知らせるよう努めるとともに、身体的拘束を行つた旨及びその理由並びに身体的拘束を始めた日時を診療録に記載するものとする。
(五) 身体的拘束を行つている間においては、原則として常時の臨床的観察を行い、適切な医療及び保護を確保しなければならないものとする。
(六) 身体的拘束が漫然と行われることがないように、医師は頻回に診察を行うものとする。
  人事異動
  法 務 省
  (前橋地方検察庁検事正)検事 田村 達美
福岡地方検察庁検事正に配置換する
  (札幌地方検察庁検事正)同  亀山 継夫
前橋地方検察庁検事正に配置換する
  (盛岡地方検察庁検事正)同  金井  猛
札幌地方検察庁検事正に配置換する
  (最高検察庁検事)同     濱  邦久
盛岡地方検察庁検事正に配置換する
  (富山地方検察庁検事正)同  川崎 謙輔
最高検察庁検事に配置換する
  (最高検察庁検事)同     今岡 一容
富山地方検察庁検事正に配置換する
  (函館地方検察庁検事正)同  清水 安喜
長崎地方検察庁検事正に配置換する
  (横浜地方検察庁川崎支部長)
   同             須田 滋朗
函館地方検察庁検事正に配置換する
  (千葉地方検察庁次席検事)同 大川  敦
横浜地方検察庁検事に配置換する
横浜地方検察庁川崎支部勤務を命ずる
横浜地方検察庁川崎支部長を命ずる
  (岐阜地方検察庁検事正)同  河野  博
高松地方検察庁検事正に配置換する
  (徳島地方検察庁検事正)同  加藤 泰也
岐阜地方検察庁検事正に配置換する
  (仙台高等検察庁次席検事兼法
  務総合研究所仙台支所長)同  五味  朗
徳島地方検察庁検事正に配置換する
法務総合研究所仙台支所長の併任を解除する
  (名古屋高等検察庁刑事部長)
   同             倉崎 英逸
仙台高等検察庁検事に配置換する
仙台高等検察庁次席検事を命ずる
法務総合研究所仙台支所長に併任する
  (東京高等検察庁検事法務総合
   研究所研修第二部長)同   棚町 祥吉
最高検察庁検事に配置換する
地方更生保護委員会委員・関東地方更生保護委員会委員長に充てる
関東地方更生保護委員会第一部長を命ずる
  (東京地方検察庁検事法務省民
   事局参事官)同       細川  清
  (東京高等検察庁検事法務省訟
   務局総務課長)同      大藤  敏
法務大臣官房参事官に充てる(各通)
  (東京地方裁判所判事)判事  池田 耕平
検事一級(東京地方検察庁検事)に任命する
法務大臣官房司法法制調査部参事官に充てる
  (東京地方検察庁検事法務省民
   事局第二課長兼法務省民事局
   第五課長)検事       南  敏文
法務省民事局第五課長に充てることを解く
  (東京地方裁判所判事)判事  吉戒 修一
検事二級(東京地方検察庁検事)に任命する
法務省民事局第五課長に充てる
  (東京地方検察庁検事法務省民
   事局付)同         寺田 逸朗
法務省民事局参事官に充てる
  (東京地方検察庁検事兼法務省
   民事局付)検事兼法務事務官 須藤 純正
  (同)同           住田 裕子
法務省民事局付に充てる
法務事務官(法務省民事局付)の併任を解除する
(各通)
  (東京地方裁判所判事補兼東京
   簡易裁判所判事)判事補兼簡
   易裁判所判事        損斐  潔
  (東京地方裁判所判事補)判事
   補             相澤  哲
  (同)同           小野瀬 厚
検事二級(東京地方検察庁検事)に任命する
法務事務官(法務省民事局付)に併任する(各通)
  (東京地方裁判所判事補兼東京
   簡易裁判所判事)判事補兼簡
   易裁判所判事        角田 正紀
検事二級(東京地方検察庁検事)に任命する
法務省刑事局付に充てる
  (東京地方検察庁検事法務省訟
   務局行政訟務第二課長)検事 森脇  勝
法務省訟務局総務課長に充てる
  (東京地方検察庁検事法務省訟
   務局付兼東京法務局訴訟部付)
   同             星野 雅紀
法務省訟務局行政訟務第二課長に充てる
東京法務局訟務部付に充てることを解く
  (東京地方検察庁検事兼東京法
   務局訟務部付)検事兼法務事
   務官            河村 吉晃
法務省訟務局付に充てる
法務事務官(東京法務局訟務部付)の併任を解除
する
 (東京地方裁判所判事兼東京簡
  易裁判所判事)判事兼簡易裁
  判所判事           渡邊  等
検事一級(東京地方検察庁検事)に任命する
法務省訟務局付に充てる
かねて東京法務局訟務部付に充てる
  (同)同           合田 かつ子
検事二級(東京地方検察庁検事)に任命する
法務省訟務局付に充てる
かねて東京法務局訟務部付に充てる
  (東京地方裁判所判事補兼東京
   簡易裁判所判事)判事補兼簡
   易裁判所判事        市川 正巳
検事二級(東京地方検察庁検事)に任命する
法務事務官(法務省訟務局付)に併任する
  (東京高等検察庁検事)検事  三ツ木健益
法務総合研究所教官・法務総合研究所研修第二部
長に充てる
  (東京簡易裁判所判事兼東京地
   方裁判所判事)簡易裁判所判
   事兼判事          西村 則夫
検事二級(東京地方検察庁検事)に任命する
法務教官(法務総合研究所教官)に併任する
                 小野澤峰蔵
  (東京地方裁判所判事兼東京簡
   易裁判所判事)判事兼簡易裁
   判所判事          大和陽一郎
検事一級(東京地方検察庁検事)に任命する(各
通)
  (東京地方裁判所判事補)判事
   補             藤井 敏明
  (同)同           今崎 幸彦
  (同)同           小林 久起
  (東京地方裁判所判事補兼東京
   簡易裁判所判事)判事補兼簡
   易裁判所判事        白井 幸夫
検事二級(東京地方検察庁検事)に任命する(各
通)
  (浦和地方検察庁検事)検事  渡邊 繁年
浦和地方検察庁越谷支部勤務を命ずる

 ☆精神衛生法を撤廃したら「精神病」者はどうなるでしょうか?
かつて1960年代にアメリカで当時の大統領のケネディが巨大州立精神病院の入院患者の悲惨な状況に注目し、「今日から彼らを人間として扱おう」というという高い理想を掲げ、精神病院から多くの「精神病」者を街へ出したことがありました。ところが街で「精神病」者が生きていくために必要な住むところ、食事のできるところ、仲間の集まれる場所など生きる手だてを用意せず、地域の「精神病」者差別に対する対策もないままであったために、多くの「精神病」者が餓死したり、アメリカの暴力団であるマフィアの手先として利用され「犯罪」に追い込まれて再び監獄や精神病院に拘禁されるという事態を引き起こしました。
 まさに「精神病」者は精神病院からは出たけれども「人権を抱いて餓死する」という事態だったのです。
 日本においても現在の「精神病」者に対する差別をそのままにしたままで、精神病院から入院患者をただ出しただけならば、同じような事態を引き起こすことは火を見るより明かです。現実にいまでも都会の片隅、駅や公園で、「浮浪者」といわれる「精神病」者が「いきだおれ」という形で殺されていくことが日常化しています。住む所働く場がないからです。
 また宇都宮病院告発以降、社会で暮らしていくめどもないままに、宇都宮病院から放り出された「精神病」者は、地域で孤立し食うに困って、あるいは地域で差別されたあげく福祉によって再び精神病院へとぶち込まれたり、生きるために「犯罪」に追い込まれて、監獄にぶち込まれたりしているのです。
 宇都宮病院に対していまだに「家族を一生閉じ込めてほしい」という問い合わせがあるそうです。人殺しのあった病院でも、「厄介者」と家族が考える「精神病」者はとにかく家から追い出して一生預かってくれるところがあれば、家族にとってはありがたい病院なのです。
 「精神病」者を「家庭の平和を乱す者」、「学校の秩序を乱し他人に迷惑をかける者」、「職場のじゃま者」として自分たちの目の前から消してしまおうという人々の考え方(=「精神病」者差別)こそが、「精神病」者を精神病院にぶち込むための法律である、精神衛生法を支えてきたのです。このような「精神病」者を自分たちの目の前から消してしまおうという「精神病」者差別を問わなければ、精神衛生法撤廃は「精神病」者の解放とつながりません。
 今問われているのは、「精神病」者が街中で生き生きと生きていける社会をどう作っていくかなのです。そのために何が必要なのかこれから一緒に考えてみましょう。
 ☆「精神病」者は一体どんな状況におかれているのでしょうか?
私たち「精神病」者は発病した途端に差別に出会います。「『五体満足』なの
にぶらぶらしている怠け者」「奇妙なことを言ったりしたりする者」ひいては「何をするか分からない恐い人」そんなイメージから、人々は私たち「精神病」者をなんとなく遠巻きにして動物のように観察したり扱ったり、好奇心のみで近付いてきたりします。そのあげくに彼らは社会の外にある精神病院へと私たち「精神病」者を追い込んでいきます。
 最初に出会う差別者は多くの場合家族ですが、職場や学園の友人、さらには近所の人たちもまた私たちを差別的な眼差しで眺めます。心を許した友人までもが私たちから去って行きます。そうして一切の人間関係を断ち切られてしまうのです。いったん「精神病」というらく印を押されれば、もはや私たち「精神病」者は社会に存在してはならないもの、あたかもあらかじめ存在しない員数外の者のように扱われるのです。たとえば親族の集まる冠婚葬祭の席に同席を許されない、あるいは職場で連絡網から外される、「気遣い出て行け」という匿名の投書をされる、などということもまれではありません。
 何年間も家族と医療関係者以外と口を聞いたことがないような状況におかれるのが「精神病」者なのです。私たち「精神病」者の「世界から拒否され見放されたような」「別世界におかれたような」孤立と孤独をお分かりになるでしょうか?
 このように「精神病」者を自分たちの目の前から消してしまおうとする差別と排除は、法律の中にもいろいろあります。おびただしい法的な差別欠格条項が私たちを取り巻いております。「精神病」という理由で離婚させられる民法。国家試験を必要とするような公的な職業上の資格(たとえば運転免許、理髪師美容師などの資格)も「精神病」者だという理由だけで取ることができません。また労働安全規則は「精神病」者の就業禁止をうたっており、実質的に解雇となってしまう「精神病」者は多いのです。そして私たち「精神病」者の生存権を否定した優生保護法の存在は、「障害」者が生まれ出ることを否定し、「障害」者が生むことを否定しています。
 私たち「精神病」者に対する、こうした存在否定をあなた方「健常」者は無自覚なままでおられるのではないでしょうか? 私たち「精神病」者の社会のなかで健康な人と同じように共に生きていきたいという必死の呼掛けを非常識な無理なものとお考えになりますか?
※「精神病」とはどんな病気なのですか?
「精神病の病い」とは何でしょうか? 心優しい人は「心の病い」などと言いますが、はたして「精神」やら「心」やらが病気になることなどありうるのでしょうか?
 私たち「精神病」者は何よりもまず、身体の機能の調子が乱れている状態にあるのです。とことん疲れはててしまっているのですね。心身の疲れから心臓を悪くしたり。胃や肝臓を壊したりする人がいるように、極端な疲労から「精神病」と呼ばれる病気になる人がいるというだけのことなのです。「精神病」の原因についてはいろいろな議論がありますが、そんなことが重要なのではありません。
 私たちは一般の身体病の患者と同じように病人なのです。確かに身体病の病人と違って、私たち「精神病」者はその発病の一時的、世間の「常識」から外れた行為や、周囲に対する「反撃」をすることがあります。とても理解しがたい行動をとることもあります。しかしそれも身体病でいえば熱に浮かされたうわごとのようなものであり、むしろ助けを求める必死の叫びとしてとらえてほしいのです。私たちはいわゆる「妄想」といわれる周囲が理解できない世界に入り込むこともあります。その「妄想」に対していちいち論理的に反論否定するようなことはやめてください。そんなことをすればますます「妄想」はち密に体系化され拡大していきます。その苦しさを思いやろうとはしても、決してその内容には踏み込まずに、「私には体験がないから分かりません」という形で沈黙を守ってください。
 私たちはまず病人として扱われたいのです。私たちは決して「精神の腐った人間」であるのでも「性格の悪い人間」「怠け者」でも「思想に問題がある」のでもないのです。根性論や精神主義を私たちの前で振り回すのはやめて下さい。病人に必要なのは休養なのです。お説教ではありません。人は熱の出ている病人に説教などするのでしょうか? 周囲の人間は、安心して休養のとれる体制をいかに作るかに心を砕いてほしいのです。
 病人が横になっている時あなたはどうしますか? 身体病の病人なら布団を掛けてあげるのではないでしょうか? 食事に気を配るのではないでしょうか?
 安静にできるように配慮しませんか? 私たち「精神病」者にも同じことが必要なのです。
※周囲の者は「精神病」者に対して具体的に何ができるのでしょうか?
 まず第一に「精神病」者本人に聞いてみてください。「私で何かお力になれることがありますか? もちろんできることできないことがありますが」と。それが出発点です。私たちは孤立の中で砂漠で水を求めるように人を求めています。
 したがって声を掛けてくれた人への思いもまた強烈です。過剰とも思えるような期待を待つのです。ですからできることできないことをはっきりさせ、過剰な期待や夢を「精神病」者に持たせ、結果的に期待を裏切るようなことのないように心がけてください。
 「精神病」者が百人居れば百通りの要請がありますが、一応原則となることを述べてみたいと思います。
 ☆食べさせてください
 ・経済的に
  私たちは長い入院生活や療養生活で経済的能力を奪われ、社会的能力も低下している場合もあります。安心して療養するためには、経済の保障が大きな課題になっています。
  たとえば生活保護・障害年金の取得、医療費の保障などの具体的知識を学んだり取得するために私たち皆さんの協力を求めています。そのうえ福祉切り捨て政策のなかで、役所は行政指導により、いかに私たちの要求を切り捨てるかにきゅうきゅうとしており、私たち「精神病」者にとっては適切な介護と協力なしに要求を満たすことは難しいのです。食う心配をしていてよくなる病人はいません。ある精神科医は経済の保障によって、その病状の50%が解消するとまで断言しております。
 ・日常生活として
  家事能力を学ぶ機会を奪われた、一人暮らしの「精神病」者がきちんと三食を取るのは大変なことです。寝込んでしまえば何日も水だけで暮らすはめになることもまれではありません。まして栄養のバランスにまで気を付けて食事を作るなどという余裕などないのです。病人は何の病気であっても食事が基本です。せめて一食でも食べさせて下さい。
 ☆休養させてください
  先ほど述べたように私たち「精神病」者は疲れはてた状態にあります。まず安心して休養できる体制作りをしてください。
 ・学校職場の対策
  まず勉強や仕事を休むのが病人の原則です。学校や職場のことが気になっていては休養できません。「精神病」者差別を許さず「精神病」者と共に生きていこうとするあなたは、「精神病」者の退学や解雇という事態を招かないために私たちに協力してください。具体的には、本人の職場の就業規則、健康管理規定、その他の規則法律を学習し、私たちに協力してください。しかしこのことは、早く復学したり職場復帰したりすることを本人に強要するものであってはなりません。十分休養した上で復帰できる条件作りが重要なのです。本人はむしろすぐ退学したり退職してすっきりしたいという場合が多いのです。もちろん本人の状態や環境、職場や学校の条件次第で、復学や職場復帰だけが最善とは言えません。転校や転職、あるいは病状によっては一時的に働かずに食べて行けるようにする必要が出てきます。それでも本人が回復したときに選択できる条件の幅をできるだけ大きくしておくために、現状を確保しておくことは重要です。
 ・家族対策
  老人や子供を抱えた家庭の病人は、そうした心配事が解決されなければ安心して休養できません。どんな病人でも病人を出した家族は生活のリズムを整えるまでが大変です。本人を安心させるためには家族に対する援助も必要です。しかし本人と家族の間に割り込み、本人と家族を対立させるようなことはやめてください。しわ寄せは必ず「精神病」者本人にきます。
 ・安静に休める病室の確保
  私たち「精神病」者は安みたいときにひっそりと隠れられる空間が必要です。今の住宅事情では難しいことではありますが、プライバシーの守れる空間の確保が重要なのです。そして病室の条件は一般の病人と同じです。
  静かであること、日当たり風通しの良いこと清潔であることなどです。実際の精神病院でこの条件を満たしているところは残念ながら皆無と言ってよいのが現実ですが。
 ・炊事、洗濯、掃除、買物、育児など日常生活に必要な介護をしてください
  一般に「精神病」者に対する知識のない人は、「身体障害者」に介護が必要なことは理解できても、「『五体満足』な『精神病』者に何で介護が必要なのか?」という素朴な疑問を持つようです。しかし先ほどから何度も強調しているように私たち「精神病」者は病人なのです。「精神病はどんなに軽くても『危篤状態』の病人だと思え」という精神科医もいるぐらいです。このことは非常に慎重な介護が必要だということは指します。
  皆さんは「危篤状態」の病人に家事育児をさせますか? 病人なら当然の権利としてこれらを周囲の人にさせなければなりません。それなしに休養などできません。私たちの生活パターンを崩さないで周囲からそっとお手伝いいただきたいのです。
 ☆情報を与えてください
  私たち「精神病」者は「精神病」者であるがために病状によってではなく、そのおかれた孤立の状況や、長い入院生活の特殊な環境ゆえに、世間で普通に暮らしている人にとっては当り前の知識も奪われていることがあります。長い入院生活の中で行動制限によって、何年間もガスも使わせてもらえなかったり、電話もかけることも禁じられていたり、などということもまれではありません。
  在宅の「精神病」者でも家族が囲い込んでしまって何一つ一人でさせず、一人で電車に乗ったことがないとか、喫茶店に入ったことがないなどという人もいます。そういう「精神病」者にとっては生活技術は全く白紙の状態と言えるのです。若いときに発病するという「精神病」の特殊性を考えるならば、この問題はことのほか重要なのです。
  このように生活技術を学ぶ機会を奪われた「精神病」者が地域で生きていくことは大変なことです。アパートを借りることでも様々な問題に直面します。
 保証人をどうするか、どういう条件でアパートを決めるべきなのか、まず生活に必要な品物はなんなのか、鍋釜から寝具の揃え方、日常の買物の仕方といったことで途方にくれてしまいます。大家や近所との付き合い、ごみのだしかたなどなど、誰も教えてくれないちょっとしたことで「精神病」者は悩みます。
  合理的な生活技術を身に付けていないがために消耗してしまったり、近所とトラブルを起こしたりすることになるのです。
  人は生きて行くために、またより豊かな生活をするために、より多くの情報を求めます。映画、芝居、美術室などの情報に始まり、限られた経済でやっていくためには、特売店、安い専門店、安くて美味しい店、飲み屋などの情報を教えてください。良い医師病院を教えてください。市役所、職安、社会保険などのことを教えてください。
 しかしこの「情報を与えてください」ということは、いわゆる「生活指導」とは全く違います。「こういう生活をすべきだとか」「これが正常な生活だ」というように上から押し付けるのが「生活指導」です。ここでいう「情報を与える」とは、たとえば外国からきた人に日本の事情やしきたりを情報として与えるようなものです。そうした場合、人は日本の文化のみが正常で立派なのだからそれに従えと上から押し付けはしないでしょう。ただより便利に暮らすための情報を与えるだけのはずです。私たちが言う「情報を与えてください」というのも同じことなのです。私たちは与えられた情報から自分なりに選択して自分なりの生活を徐々に作っていくのです。私たち「精神病」者はそれぞれ複雑な病状を抱えているのですから、百人居れば百人の暮し方があってよいはずです。だいたい健康な人はそれぞれ自分の好みにあった暮し方をしているではありませんか。自分流の暮しをする権利は「精神病」者にもあるはずです。
 ☆防衛して下さい
 ・権力から
  無実の赤堀さんの例を思い出すまでもなく、私たち「精神病」者は精神衛生法体制のもとで常に「何をするか分からない危険な者」として権力の監視下にあり、いつでっちあげ逮捕をされたり、強制入院させられるか分からない状況におかれています。放火事件や殺人事件などが起こったときに、私たち「精神病」者の家に警察が押し掛けてくるのはよくある例です。また皇族が来る地方では、「精神病」者は真っ先に弾圧の対象となり、入院中の外出外泊を禁止されたり、自宅を張り込まれたりします。そうでなくとも私たち「精神病」者の行動が発病の一時期、多少世間の「常識」から外れているというだけで、精神衛生法に基づいて警察や福祉から保健所に通報され、精神病院へぶち込まれることは日常茶飯事です。常に権力を監視し「精神病」者を防衛する視点を持つ必要があります。
  ・強制医療から
  私たち「精神病」者は病人ですから当然なんらかの医療を必要とします。
  医療を全否定することはできません。また在宅のままでは休養ができない場合や、病状の変化に即時に対応できるため、あるいは病院でしかできない治療を必要とするときなどは入院が必要となる場合もあります。精神病院への入院もまた全否定はできません。
  しかし、現実の精神医療や精神病院の実態は、精神衛生法によって本来の医療(=本人自身のための医療)から程遠いところにあります。私たちが求めている医療とは、本人の意思を尊重する自由契約の基づく医療です。本人の意思を無視した強制医療ではありません。強制医療は治癒に向けての闘病の流れを逆流させ、病状を悪化さえさせます。
  したがって常に本人の意思確認、要請に基づいて、周囲の者が精神科医や精神病院を監視していく必要があります。とくに精神病院に入院した場合には日常的に面会を行い常に監視の目を光らせなければなりません。法律上仮に通信面会の権利が確保されたとしても、周囲の者が入院患者を放置していれば実態は何も変わりません。ただここで重要なことは自分と本人の信頼関係を壊さないために、本人が秘密にしてほしいと言ったことを勝手に医療関係者に言わないこと、また基本的には医師と本人の信頼関係が重要なのですから、それを壊すような行動は厳に慎むべきです。憶測や思い込みでの行動はしないでください。慎重な配慮が必要なのです。
 ☆政治運動へのオルグをしないでください
  「情報を与えてください」ということと関連しますが、質問されたら私たち「精神病」者のおかれた政治状況、あるいは「精神病」者の運動についてなど「情報を与える」のは当然のことでしょう。しかしそれは「情報を与えること」にとどめてください。「生活指導」を批判したように、なんらかの「正しいこと」を上から押し付けるようなことはやめてほしいのです。
  「精神病」者はこれまでに述べたように病人として休養が必要なのです。
私たち「精神病」者が介護を要請するのは「精神病」者として政治闘争に決起できるためではありません、「生き延びるため」に介護を要請するのです。
また何より始めに必要な情報は「生き延びる」ための情報です。「精神病」者にとってはまず「生きること」が闘いなのです。集会やデモに行くことだけが闘いなのではありません。
  私たち「精神病」者が自らの人権を取り戻すために政治闘争も含めて闘うことは当然の権利ですが、その前提は生活と病状の安定です。そのために周囲の「健常」者はまずいままで述べてきたことを第一の任務とすべきなのです。共に闘うということは、集会やデモに同席することをいうのではありません。むしろ「精神病」者の生き延びる闘いに学ぶことこそが、共に闘うことではないでしょうか? そして「精神病」者とのそうした関係こそが「健常」者をも含めた人間の開放のイメージをより豊かにするのではないでしょうか?
 ☆性と生理機能を破壊しないでください
 ・精神外科手術を廃絶しよう
  精神外科手術の被害者である仲間は、性機能が後退してしまう体験を告発しています。精神外科手術は人格を破壊し生命までも奪う怖れのあるものですが、それだけでなく人間にとって最も基本的な機能の一つである性機能を低下するおそれのある精神外科手術は廃絶されねばなければなりません。
 ・生む権利を奪わないでください
  優生保護法のもとで、私たち「精神病」者は(「身体障害」者もそうですが)本人の了解なしに医師の判断や家族の同意だけで、なんの手術をされるのかの説明さえされずに、優生手術をされたり、中絶を強制されたりしています。こうした中絶や優生手術は、人間としての存在を否定され全てを奪われた私たち「精神病」者の、最後に残された人間的欲求である「生みたい」という願いまでも奪うことであり、私たちの病状を悪化させることでしかありません。
  岐阜大学病院において、「精神病」者である妊婦が、精神科医の研究のために本人の意思に反して中絶され、胎児を研究材料にされた事件が起こっています。
  かつてナチスはガス室で「障害」者を虐殺しましたが、現代では、国家権力の意思により、ナチスが虐殺した以上の多くの「障害」者の生命が「医療」によって闇から闇へと葬り去られているのです。このような優生手術、中絶手術を許さず優生保護法を撤廃させねばなりません。
全国「精神病」者集団会員Y



*作成:桐原 尚之
UP: 20100525 REV:
全文掲載  ◇反保安処分闘争
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