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2・14精神衛生法撤廃全国連絡会議結成集会基調・資料

精神衛生法撤廃全国連絡会議 19870214

last update:20100525

2.14
精神衛生法撤廃
全国連絡会議結成集会
     基調・資料
精神衛生法撤廃全国連絡会議  電話番号03-591-1301
連絡先:東京都港区新橋2-8-16石田ビル救援連絡センター気付
基調
精神衛生法「改正」を阻止し撤廃にむけて闘おう!

 厚生省は、いまの通常国会に精神衛生法「改正」案を上程しようとしています。
厚生省は「精神障害者」の人権を保障するために「改正」するといっていますが、事実はまったくちがいます。
 いま国会上程がもくろまれている精神衛生法「改正」は、精神衛生法を近代化し、治安法として、より強化しようとするものにほかなりません。そのことは「改正」案づくりの過程からも、公衆衛生審議会の「中間メモ」のなかみなどからも、はっきりいえます。精神衛生法「改正」は、きわめて大きな問題です。しかも、目の前に国会上程がせまっています。それなのに、反対の闘いのひろがりは、まだまだです。それどころか、保安処分反対をいいながら、厚生省に同調する一部の動きさえあります。
 わたしたちは、「精神障害者」と共に生き、共に闘うことをとおして、精神衛生法「改正」案国会上程阻止・精神衛生法撤廃の闘いを、おしすすめていかなければなりません。
「精神障害者」排除を許さない!
 八四年三月に発覚した宇都宮病院の患者虐殺事件は、日本の国内だけでなく、国外からもつよく非難されました。厚生省の精神衛生行政は、国連人権小委員会でも問題にされましたが、厚生省は、反省するどころか宇都宮病院は例外であると開き直りました。そして国連でとりあげられたことを口実に、精神衛生法「改正」をうちだしてきたのです。
 厚生省は、まず治安法としての精神衛生法を「改正」して近代化する方針をきめ、それから二十四団体に「精神衛生法改正について意見があれば求める」と、意見書を出すように求めました。つぎに、十一人の「有職者」からなる「精神保健の基本問題に関する懇談会」を開き、そこでの討論をもとにして、公衆衛生審議会精神衛生部会にかけました。すべて、厚生省のもくろむ「改正」案づくりのためのアリバイです。この過程で、「精神障害者」の意見は、一度だって聞いていません。
 精神衛生法は、「精神障害者」に対し「犯罪素因者」ときめつけて、社会から排除し、強制医療をおしつける治安法です。いわば、いまおこなわれている保安処分そのものです。精神衛生法「改正」は、いまの精神衛生法の基本性格をそのままに、その近代化をはかろうというものです。「精神障害者」の人権を尊重する方向で「改正」しようというのに、人権を奪われている当事者である「精神障害者」の声を、一度も聞こうとしないのは、どういうことでしょうか。ICJ(国際法律家委員会)も、全国「精神病」者集団の意見を聞けといっているのです。厚生省の姿勢は、そのまま「改正」のなかみを示しています。
 二十四団体(あとで三十七団体にまでふえています)には、日本医師会、精神神経学会、日精協(日本精神病院協会)、日弁連(日本弁護士連合会)、全家連(全国精神障害者家族会連合会)などが入っていますが、日精協は、宇都宮病院の石川文之進もそのメンバーだった営利団体で、日弁連は「精神障害者」差別そのものの「精神医療の抜本的改善について(要綱案)」を出したところです。また、十一人懇談会の座長島園安雄は、生物学的精神医学会のメンバーですが、この学会は、「精神障害者」に対して胎児人体実験をやったところです。十一人懇談会には、日精協名誉会長の斉藤茂太も入っています。かれは、園遊会で天皇から保安処分推進の発言をうけ、それを認めてしまっています。公衆衛生審議会精神衛生部会の部会長も島園ですが、メンバーには、保安処分推進論者として有名な平野竜一まで入っています。
 わたしたちは、十一人懇談会に対しても、公衆衛生審議会に対しても、「精神障害者」の声を聞けと要求しましたが、いっさい返事はありませんでした。厚生省は、これらの討論のなかみも公開しないといっています。公衆衛生審議会については、日どりさえ秘密にしました。
 わたしたちが、公衆衛生審議会のメンバーに返事を求めるため厚生省にいくと、ガードマンや警察の力で、わたしたちを阻止したのです。
 精神衛生法「改正」のねらいは、「訪問指導」の問題からも、みてとることができます。昨年五月、警察庁は、都道府県警察本部に対し、「脱院者に迅速、的確な手配を」とする「精神障害者」差別むきだしの通達「精神障害者等の保護の強化」を出しました。このとき、警察庁は、厚生省にも、「精神障害者の退院、許可外出時における診察を的確にすること」など、要請しています。その要請に応じた形で、厚生省は都道府県に通知「治療中断者への訪問指導」を出したのです。「訪問指導」とは、「精神障害者」への地域の監視・管理体制をつよめるものにほかなりません。
 このことからしても、厚生省の考えかたははっきりわかります。「精神障害者」は治安の対象でしかないのです。だから、「精神障害者」の人権を尊重する方向で精神衛生法を「改正」するなんていいながら、「精神障害者」の声は聞こうとしてこなかったのです。
 国連人権小委員会で問題にされたとき、厚生省は、通信・面会、保護室使用、作業療法についてガイドラインをつくること、精神衛生法を「改正」することを約束しました。「病者」にとって、ガイドラインは不要です。
 通信・面会は自由、保護室や作業療法はやめる、だけでよろしい。じっさいには、日精協に足をひっぱられ、保護室と作業療法についてはガイドラインはつくれず、通信・面会についてだけガイドラインをつくりましたが、それは、宇都宮病院のありさまを変えるものではありませんでした。ここでも、「精神障害者」の声は排除されていました。厚生省は、「精神障害者」の人権の尊重を、まじめに考えたことはなかったのです。
 わたしたちは、なんども厚生省にいって、「精神障害者」の声を聞けと要求しました。しかし、厚生省がわたしたちとの交渉に応じたのは、わずかに四回だけです。
 しかも、たとえば「訪問指導」が「病者」から医師、医療法をえらぶ権利を奪い、「病者」を地域でも追いまわし、監視・管理の網をつよめようとするものだ。治療中断の責任は医師のほうにあるのだと、すじみちをとおして白紙撤回をせまっても、その場ではぜんぜん反論もできないでいて、あとになってから白紙撤回はしないと開き直るのです。
厚生省の、この「精神障害者」排除の姿勢を、わたしたちは許すことができません。かれらがもくろんでいる精神衛生法「改正」を、わたしたちは認めることができません。
厚生省糾弾!
公衆衛生審議会弾劾!

 厚生省精神保健課長小林秀資が、国連人権小委員会で精神衛生法「改正」にとりくむと発言したのは、八五年八月のことでしたが、十一月には、もう八七年春に「改正」案を国会上程すると、厚生大臣があきらかにしています。参議院予算委員会での大臣答弁では、八六年早々「改正」にむけて懇談会をもうけて関係者の意見を聞き、そのあと公衆衛生審議会や社会保障制度審議会にはかってから成案をつくり、八七年春の通常国会に「改正」案を上程する、「改正」のなかみは、「精神障害者」の定義、同意入院制度のとりあつかい、社会復帰対策の推進、地域精神保健対策などの問題だ、といっています。二十四団体に意見書を求め、十一人懇談会を開き、公衆衛生審議会にはかった流れは、ほぼ、大臣答弁がしいたレールの上を走っています。
 「改正」のなかみがどういう考えによっているのかは、八六年三月の参議院予算委員会の答弁で、はっきりします。
 中曽根は、「人権確立、擁護は憲法の重大な基本原則でございますから、一般的にまさにそのとおりであると思います。精神病者の扱いという問題については医療の問題も絡んでまいりまして、非常に複雑な難しい問題が起きつつあります」と述べ、安倍は「我が国の精神衛生法は、精神障害者等の医療及び保護のために一定の場合強制入院させる措置等を規定しておるわけでございますが、こうした措置等にかかる手続が国際人権規約に違反しているのではないかというお話でもあろうと思いますが、我が国としては、政府としては違反をしているとは考えておりません」といっています。これらの答弁は、あきらかな開き直りであり、つまり、こうした考えかたで「改正」作業がもくろまれているのです。そのことは、公衆衛生審議会精神衛生部会が昨年十二月に出した「精神衛生法改正の基本的な方向(中間メモ)」に、はっきりあらわれています。
 「中間メモ」そのものについては、あとで、くわしく検討しますが、ここでは、中曽根や安倍のような考えかた、「精神障害者」に対しては「一般的」な人権問題とは別だ、日本の強制入院制度は国際人権規約に違反していないとする考えかたが、もとになっていることを、まずもっておさえておきたいと思います。
 また、「中間メモ」は、かって日弁連が出した「精神医療の改善方策について(意見書)」に、すごく似かよつています。
 この「意見書」の前に日弁連は「要網案」を出していますが、そこには「措置通院」など提案され、「精神障害者」差別につらぬかれていました。「意見書」は、それを手直ししたもので、「精神障害者」差別のところは、まったく変わっていません。「『精神障害者』自身のための医療であると同時に時としておこる不幸な出来事を防止する結果ともなる」精神医療をやれ、といっているのです。つまり、「精神障害者」に対し、社会から排除し、強制医療をおしつけるのが、法務省でなくて厚生省ならかまわないというのです。「中間メモ」が日弁連の「意見書」に似かよっているというのは、「中間メモ」が貴本的に保安処分の考えかたにもとづいていることを示しているものです。
 「中間メモ」は、あとでとりあげるように大きな問題があるのに、それで精神衛生法が変われば人権侵害がなくなるかのような幻想を、一部に与えています。保安処分に反対し、日弁連の「意見書」には反対していたはずの「人権派」弁護士も、「中間メモ」をたかく評価しています。全家連は「一の丸攻略(精神衛生法改定)はどうにか成功した」といっています。「中間メモ」は、これまでの精神医療、精神衛生行政のありさまを問題にしてきた部分のなかに、分断をもちこむものです。
 保安処分との関連で精神衛生法「改正」を考えるとき、みておかなければならないのは、自民党「刑法改正に関する調査会」が出した「刑法全面改正に関する中間報告(案)」です。そこには、刑法「改正」でもっとも重要なものは保安処分制度の新設だとしたうえで、「保安処分制度については、・・・、精神衛生の分野においても入院手続等の整備を図る法改正の動きもあることにかんがえみると、今後さらに厚生省等関係省庁との間で、所要の意見調整を行い、精神衛生法改正の動向も見守りながら、同制度の新設を図ることが適当であろう」と述べられています。
 さらに、小林精神保健課長は、全国自治体病院協会の会議の席で、「措置入院・保安処分を医者が認めてくれないと、精神衛生法改正の政府内合意はなかなか得られない」と、くりかえしたとのことです。
 精神衛生法「改正」は、保安処分制度の新設とつながつています。わたしたちは、このようなレールをしいた厚生省を糾弾し、そのレールのうえで「中間メモ」を出した公衆衛生審議会を弾劾しなければなりません。
共闘・共生の輪をひろげ精神衛生法を撤廃させよう
 宇都宮病院の患者虐殺事件は、いまの精神衛生法のもとでなにがおこなわれているのかを示す氷山の一角でした。それで内外から精神衛生法が問題にされたとき、政府、厚生省は、「改正」をうちだしました。しかし、あとで「中間メモ」について述べるように、厚生省がもくろんでいるのは、精神衛生法の治安法としての基本性格をそのままにして、人権尊重のポーズをとった「改正」です。治安法はどんなに手直ししても、治安法でしかありません。
 精神衛生法には、「精神障害者」を「犯罪素因者」として社会から排除し、強制医療をおしつけることがきめられています。それは「精神障害者」のための法律ではありません。「精神障害者」をいけにえにして、そのことをとおして社会を守ろうという治安法の性格をもっているのです。「精神障害者」が罪をおかしてもいないうちから、警察が「迅速・的確な手配を」してもアタリマエと思わせるものです。異端をつくりだし、その異端を排除することをとおして社会防衛しようという、ひとびとの意識を支配するための法律です。その意味で、精神衛生法は、ふつうの治安弾圧のための法律よりも、もっと本質的な面をもっています。その意味ではまた、いまの国会に出されようとしている監獄二法、スパイ防止法(国家秘密法)、外国人登録法「改正」のねらいとも、つながっています。
 精神衛生法「改正」でも、その本質は変わっていません。「中間メモ」は、そのことをはっきりと示しています。それと同時に、精神衛生法「改正」には、もうひとつのねらいがふくまれていることも、みておかなければなりません。「訪問指導」や、昨年七月の公衆衛生審議会の「精神障害者の社会復帰に関する意見」は、「精神障害者」を病院だけでなく、地域でも監視・管理の網のなかにおこうとするものですが、そこには、行政改革合理化、福祉切り捨てのねらいも、ふくまれています。いま、政府は、行革合理化、福祉切り捨てをおしすすめています。そのなかで、「障害者」、「精神障害者」は、生きることさえむずかしい情況に、ますます追いこまれてきています。
 こうした情況のなかで、いま必要なことは、すべての「精神障害者」と共に生き、共に闘うことです。
 すべての「精神障害者」の生活を守り、休息の場を確保することです。宇都宮病院に代表される病院のなかで、「訪問指導」など地域の監視・管理体制の強化のなかでおこなわれている人権侵害をやめさせることです。「精神障害者」に対する偏見をなくさせ、法令の差別・欠落条項を撤廃させることです。
 すべてのみなさん!「精神障害者」と共に生き、共に闘うなかで、政府、厚生省のもくろんでいる精神衛生法「改正」案の国会上程を阻止し、精神衛生法を撤廃させていこうではありませんか。

「中間メモ」の問題点
 公衆衛生審議会精神衛生部会は、昨年十二月、「精神衛生法改正の基本的な方向(中間メモ)」を発表しました。この「中間メモ」には、いま、厚生省や公衆衛生審議会が、どのような精神衛生法「改正」をもくろんでいるかが示されています。その方向には、きわめて大きな問題がふくまれています。
 ひとくちにいって、「中間メモ」の示している方向とは、医療や社会復帰の名のもとの、「精神障害者」に対する強制医療体制や地域ぐるみの監視・管理体制の強化です。それは、精神衛生法の治安法としての性格を、近代化して強化しようとするものです。わたしたちは、このような方向でもくろまれている精神衛生法「改正」の国会上程を阻止し、精神衛生撤廃の闘いをすすめていかなければなりません。
 「中間メモ」は、「第一 はじめに」「第二 貴本的な考え方」「第三 当面改正すべき事項」と、三部からなっています。
 「第一 はじめに」は、「中間メモ」が、入院中心の体制から地域中心の体制への転換と「精神障害者」の社会復帰の促進、「精神障害者」の人権という観点から、精神衛生法「改正」案を国会上程するためにおこなってきた公衆衛生審議会の審議の、中間的なとりまとめであるとしています。
 「第二 基本的な考え方」には、「改正」にあたっては、地域精神保健対策の充実、適切な医療の体制、強制入院については患者の人権が尊重される制度とすることが必要であるとし、「精神障害者」の社会復帰・社会参加については、昨年七月に公衆衛生審議会が出した「精神障害者の社会復帰に関する意見」の考えかたにそってすすめよと述べられています。
 「第三 当面改正すべき事項」は、地域精神保健対策の推進、入院制度等、「精神障害者」の社会復帰、社会参加の促進、その他からなっています。
 かいつまんでいうと、「第一 はじめに」「第二 基本的な考え方」の考えは、まず、いまおこなれている保安処分である精神衛生法の基本的な性格をそのままにして、手直ししようというものであり、刑法の保安処分制度新設にもつながるものです。また、行政改革合理化、福祉切り捨てをおしすすめ、あわせて地域ぐるみの「精神障害者」に対する監視・管理体制をつよめようとしているものです。さらに、人権の尊重といいながら、反対の方向が示されています。
 たとえば、「改正」にあたっては、「患者の個人としての尊厳を尊重し、その人権を擁護しつつ、適切な精神医療の確保及び社会復帰の推進を図ることを基本的な方向とすべきである」としていますが、だれにとって「適切」なのか、どのような社会へのどのような「復帰」なのか問題です。「第三 当面改正すべき事項」をみても、「中間メモ」は、全体としては、むしろ、優生思想の全面化を中心にし、「精神障害者」に対する社会排外、強制医療をいっそうおしすすめようとするものであることが明らかです。
 「精神障害者」の社会復帰について、公衆衛生審議会が昨年出した「意見書」の考えにそってすすめよといっていますが、「意見書」そのものが問題なのです。精神外科手術をふくむ病院の医療が、社会復帰をさまたげていることを問題とせず、「精神障害者」に対する分断と監視・管理をめざすものにほかなりません。
     二
 「第三 当面改正すべき事項」では、措置入院、同意入院の強制入院制度をのこしていますが、「措置入院の適性化」として「措置の解除にあたっても指定医の診察を要件とする」とし、「同意入院の見直し」として「人権上も特段の配慮を要する」としながら、「指定医」に強制入院の権限を与え、同意入院を措置入院なみにしようとしています。
 また、「自由入院の法定化」が述べられていますが、「病状によっては他の入院形態」にうつしたり、「退院制限」や「行動制限」ができるようにするといいうのです。
 これでは自由入院とはいえません。さすがに気がひけたのか、「自由入院」という名まえを変える必要があるといっています。
 さらに問題なのは、「精神科救急への対応」として七二時間の「精神科救急入院」制度を提案していることです。この制度が新設されると、「精神障害者」は、「指定医」の判断だけで、逮捕状もなしに、七二時間の拘束をうけることになります。これは、憲法にも違反する人権侵害の危険があるもので、とうてい認めることはできません。
 「指定医」についての提案のなかみからすると、たとえば、もし、主治医が「指定医」でなかったら、主治医の判断よりも「指定医」の判断が優先させられることになります。そうすれば、主治医との信頼関係は破壊されてしまいます。また、「指定医」は、自分の判断の結果で事故でもおこったらと思って、できるだけ強制入院をさせ、できるだけ退院をさせないようにするでしょう。
 「入院患者にかかる審査機関の設置」にしても、「中間メモ」ぜんたいからすると、人権保障の手続きというたてまえで、「審査機関」に医療と無関係な司法関係者が入ってきて、入院や退院について「審査」したりするおそれもあります。そうなると、「審査機関」をおいたから人権保障になったのだというアリバイだというより、もっと保安処分に近いものだといわなければならないでしょう。
 人権を問題にしながら、強制入院を強化し、自由入院もいつでも強制入院にうつせるようにし、また、「行動制限規定の明確化」として、入院の形によらず、行動制限できるとする「中間メモ」の提案は、まさに、精神衛生法の治安法としての近代化にほかならないものです。

スローガン
 厚生省の精神衛生行政糾弾!
 精神衛生法「改正」案国会上程阻止!
 精神衛生法撤廃!
 公衆衛生審議会、中間メモ弾劾!
 刑法改悪、保安処分新設粉砕!
 「精神障害者」「障害者」との共生共闘を実現するぞ!
 医療中断者への訪問指導を白紙撤回せよ!
 宇都宮病院を糾弾し、解体するぞ!
 「精神障害者」への差別、排外攻撃と対決せよ!
 野宿者への差別、襲撃を許すな!
 差別、欠落条項を撤廃せよ!
 精神外科手術を撤廃せよ!
 優生保護法、母子保護法、一・五才児健診粉砕!
 無実の赤堀政夫さんを生きて奪い返そう!
 鈴木国男君虐殺一一ヵ年弾劾!
 監獄法改悪阻止!監獄二法粉砕!
 国家秘密法(スパイ防止法)粉砕!
 外国人登録法撤廃!

精神衛生法改正の基本的な方向(中間メモ)
厚生省・公衆衛生審
精神衛生部会の意見

第一・はじめに
 近年、我が国の精神医療・精神保健をめぐる状況には大きな変化がみられる。医学の進歩等に伴い入院中心の治療体制から地域中心の体制への転換と精神障害者の社会復帰の促進が強く求められている。他方、精神障害者の人権をめぐる議論が高まっており、現行の精神衛生法について精神病院入院患者の人権という観点からその見直しを行うべきであるとの意見が強く出されている。
 このような中で、厚生省においては次期通常国会に精神衛生法改正案を提出すべく、現在幅広く検討を行っている。
 当部会においては、去る十月以降、精神衛生法改正に関して精力的に審議を行ってきているが、今後の当部会での審議あるいは現在行われている精神衛生法改正のための検討にも資するものとするため、当部会として、これまでの審議を踏まえた精神衛生法改正に当たっての基本的な考え方並びに当面改正すべき事項についての中間的な意見を取りまとめた。なお、多くの検討すべき問題を残しているが、それについては今後引き続き検討を行っていくことにした。
第二 基本的な考え方
 精神衛生法の改正に当たっては、国民の精神的健康の保持及び向上を図るとともに、患者の個人としての尊厳を尊重し、その人権を擁護しつつ、適切な精神医療の確保及び社会復帰の推進を図ることを基本的な方向とすべきである。このため保健、医療、社会復帰及び社会福祉を包括する総合的施策の実態が必要である。
 今日、精神保健の問題は、多様化し、複雑化する現代社会において極めて重要な課題になっている。このため、国民が自らの精神的健康の保持増進に努めるとともに、地域においても、精神保健対策の充実が図られる必要がある。
 精神医療については、できる限り一般医療と同様、生活の場に密着したところで適切な医療が受けられる体制を整備する必要がある。医療形態については通院医療を推進し、入院を必要とする場合には、できるだけ本人の意思に基づく入院医療を進め、本人の意思によらない入院医療については、必要限度を超えることのないよう患者の人権が尊重される制度とすることが必要である。
 また、精神障害者の社会復帰・社会参加については、六十一年七月の本審議会の意見具中において述べられた考え方に沿って、その推進のための対策を更に強力に進めていくことが必要である。
 なお、精神保健・医療に関しては、研究とスタッフの養成・充実が重要であり、今後とも積極的に取り組んでいく必要がある。
第三 当面改正すべき事項
 以上のような基本的な考え方に基づいて、当面、以下に掲げる方向で精神衛生法改正が行われるべきである。
T、地域精神保健対策の推進
 国及び地方公共団体が広く国民一般の精神的健康の保持及び向上を図るための施策の実施に積極的に取り組むべきことにつき、法律に規定を設けることが必要であると考えられる。
U、入院制度等
1) 入院形態の見直し
1 自由入院の法定化
 ア 現行法において規定されている入院形態はいずれも本人の意思とは関係のないものであるが、患者の人権という観点からも本人の意思による入院を推進すべきであって、法律上も明確に位置付けることが必要であると考えられる。なお、他の入院形態で入院した者もできるだけ自由入院へ移行しやすいようにすべきである。
 イ 自由入院患者については本人の意思により退院できることが原則である。ただし、自由入院患者といえども病状によっては他の入院形態へ移したり、家族との連絡・調整等が必要な場合があるので、例えば七二時間程度の短時間の退院制限をできるようにする必要があると考えられる。
 ウ 自由入院患者については、原則として開放的処遇によるべきである。ただし、病状によっては、一時的にその医療叉は保護のため必要最小限の行動制限を行うことができるものとすることが適当であると考えられる。
 エ なお、「自由入院」という呼称については、他の適切なものとする必要がある。
2 同意入院の見直し
 ア 同意入院は本人の意思によらない入院であり、人権上も特段の配慮を要するものである。この入院形態は、入院医療が必要であるにもかかわらず本人が同意しない場合に限定し、精神衛生法に規定する指定医の診断を要件とするとともに、定期的にチェックする仕組みを制度化する等の措置を講じた上で、患者の医療を確保する観点から存続させることが適当であると考えられる。
 イ 患者の早期治療という観点から、家庭裁判所による保護義務者選任手続きの実態等を踏まえ、医療上必要な場合に入院させることができるよう例えば扶養義務者が同意した場合に一定期間に限り入院を認める措置が可能となるようにすることが適当である。
 ウ なお、「同意入院」という呼称については、他の適切なものとする必要がある。
3 措置入院の適正化
 措置入院制度の適正な運用という観点から、他の入院形態に移す場合を含め措置の解除に当たっても精神衛生法に規定する指定医の診察を要件とする必要があると考えられる。
4) 精神科救急への対応
 精神科医療においても意識障害の場合など救急的な対応が必要とされる場合があるので、実施する病院等について一定の要件を課した上で、精神衛生法に規定する指定医の判断によって例えば七二時間程度の短期間に限り入院が可能となるよう制度を設けることが適当であると考えられる。
2 入院手続きの整備
 入院に際しては患者叉はその保護義務者からの調査請求が保障されていること等患者の権利保護に必要な一定の事項について告知を行うよう制度化する必要がある。
3 入院患者の人権の確保
 ・定期的な病状報告の実施
 措置入院患者及び同意入院患者について、入院後の期間に応じて一定期間ごとに病状報告を徴し、入院継続の要否について定期的にチェックを行う必要がある。
2) 入院患者にかかる調査請求規定の整備
 入院継続の要否その他の処遇に関して都道府県知事に対して患者叉はその保護義務者から調査を請求することができるよう規定を整備する必要がある。
3) 入院患者にかかる審査機関の設置
 1)の病状報告による入院患者の入院継続の要否及び2)の調査請求に関して、公正かつ専門的な観点から判断を行うための審査機関を都道府県に新たに設けることが適当であると考えられる。
 措置入院患者及び同意入院患者について、入院後の期間に応じて一定期間ごとに病状報告を徴し、入院継続の要否について定期的にチェックを行う必要がある。
3) 入院患者にかかる審査機関の設置
 1)の病状報告による入院患者の入院継続の要否及び2)の調査請求に関して、公正かつ専門的な観点から判断を行うための審査機関を都道府県に新たに設けることが適当であると考えられる。
4) 行動制限規定の明確化
 入院患者の行動制限に関しては、患者の人権擁護の観点に立って、必要最小限にとどめる。
 特に、入院患者にかかる信書の発受信については制限を行うことができない旨を明確化すること、また、保護室の使用等少なくとも一定の行動制限については精神衛生法に規定する指定医の判断に基づくものとすること等の措置を検討することが必要であると考えられる。
4 精神衛生鑑定医制度の見直し
1) 指定要件の見直し
 患者の人権に十分配慮する必要があることにふみ、精神衛生鑑定医の指定の要件としての精神科実務経験について見直すとともに所定の研修を要件として加えるなどの見直しを行い、精神衛生法に規定する指定医として位置付けることが必要であると考えられる。
2) 指定医の業務
 1)の精神衛生法に規定する指定医は、従来の精神衛生鑑定医の業務を行うほか、一定の行動制限、退院制限や同意入院患者の入院等についての判断を行うものとする必要があると考えられる。
5 精神病院に対する指導・監督規定の整備
 精神病院における患者処遇の適正を一層確保する観点から、国及び都道府県は精神病院に対して患者処遇に関する報告徴収・調査等を行い、改善勧告等必要な措置を講ずることができるようにすることが適当であると考えられる。
V 精神障害者の社会復帰・社会参加の促進
1 精神障害者の社会復帰・社会参加の促進については、六十一年七月の本審議会の「社会復帰に関する意見」を踏まえ、社会復帰のための施設の設置等に関する規定や、社会復帰・社会参加の促進について、それぞれの役割分担を十分に検討した上で、国・地方公共団体並びに民間レベルの積極的な取組みに関し規定を設ける必要があると考えられる。
2 精神障害者の社会復帰の促進という観点から、精神病院において患者に対する相談・援助や家族等との調整・連絡等を行う職員を置く旨をうたうことが適当であると考えられる。
W その他
1 法律の名称について
 法律の名称については、例えば「精神保健法」というものに改めることが適当であると考えられる。
2 いわゆる大都市特例について
 精神保健行政においていわゆる大都市特例を設けることが望ましいと考えるが、他の行政分野における道府県と大都市との役割分担との整合性等に配慮しつつ、検討すべきであると考える。
3 精神障害者の定義規定
 現行法第四条の精神障害者の定義規定については、その全面的な改正を求める意見もあるほかその範囲及び規定の仕方など種々議論を要する点が多いことから、引き続き慎重に検討を行っていくことが必要である。
4 保護義務者について
 保護義務者に係る問題については、市町村長が保護義務者として入院の同意を行うことを含め、更に検討を行う必要がある。

精神衛生法改正意見書
1986 12/24 毎日
「差別撤廃 明文化を」
評価の声高いが、注文も

 「人権侵害」と関連でも批判された日本の精神医療と精神衛生法。長い間注目されてきた法改正の方向が二十三日、初めて打ち出された。批判に応える内容と「評価」する意見が多いが、厚生省にはまだまだ注文がつく。
「精神医療人権基金」事務局長の戸塚税朗弁護士の話
 自由入院や通信の権利を初めて正式に法文化することを求め、開放処遇を原則とし、社会復帰や地域医療の推進を打ち出した点は大きな前進だ。
精神医療を強制から自由へ大転換するきっかけになりそうだ。しかし、強制入院の判断は病院外の医師の診察によるとすべきなのに「指定医」としただけで規定が明確でない。精神障害者への差別の撤廃を明文化したうえで法改正を実現させるべきだ。
民間の精神病院千百三十施設が加盟する日本精神病院協会の栗田正文会長(神奈川県・栗田病院長)の話
 自由入院の法定化にしても患者の人権の確保にしても時代の流れだし、改正はやむを得ないものと思う。ただし、信書については医療上、受信の制限が必要な場合もまれにあるし、社会復帰の施設も営利事業にするのではなく医療の延長と考えるべきだ。法改正を生かすためにも厚生省は精神科の診療報酬は安くていいとする政策を変える必要がある。
日本精神神経学会の森山公夫理事(東大病院医長)の話
 精神医療の惨状を救うには治安法の性格を持つ現行精神衛生法を廃止して、新たな人権法を制定するべきだ。提言は不十分ながら抜本的な改正をめざしていると考えられる点で評価できる。しかし、精神障害者への法的、制度的な様々な差別に全く触れないなど問題も多い。
精神障害者団体で組織する全国「精神病」者集団事務局の話
 精神衛生法の本質は「精神障害者」を「犯罪予備軍」ととらえ、社会を防衛するための予防拘禁法だ。私たちはその結果、社会から排除され、強制医療を強いられてきたが、公衆衛生審議会は当事者の声を無視してきた。私たちの生活を防衛する権利を奪い、他の一般心療科並みの治療自由契約権を否定する「改正」作業を中止し、精神衛生法を撤廃するべきだ。
全国精神障害者家族会連合会(八万七千人)の滝沢武久事務局長の話
 自由入院の法定化は本人の意思判断能力を認める第一歩として評価したい。入院患者の人権確保と社会復帰対策が改革の卑の両輪だが、社会復帰の部分にも力を入れるべきだ。同意入院手続きなどもっと細かい議論が必要な点も多い。

公開要求書
 われわれ精神衛生法撤廃全国連絡会議準備会は、八六年三月より厚生省に対する十数回の交渉要求のすえ、五月十六日、七月二日、九月二日、十月九日と四回の交渉をとりくんできた。
 しかしながら、厚生省は、われわれの要求に全く答えず、質問・追及にも一言も回答できないまま、四回の交渉は終っている。
 それにもかかわらず、厚生省は、来春国会上程という政治日程に合わせ、改正作業を強行している。
 九月に第五回をもって「精神保健の基本問題に関する懇談会」を終了させ、十月十七日・秘密裡に公衆衛生審議会精神衛生部会開催を強行し、続いて十月二八日・十一月十二日・十一月十九日と超スピードで審議を進め、「精神障害者」の声を無視したままで、改正を強行しようとしている。
 われわれは、四回の交渉の中で、一切明らかになっていない以下の項目に対する回答を要求するものである。
一、これまでの精神医療行政の誤まりを認め、自己批判しろ。
 ・宇都宮病院にあらわれた事態は、精神病院のもつ構造的な人権侵害の一環である。事態が明るみになってから以降も、現状は本質的に変わっていない。
 ・「精神障害者」を危険視し、精神医療を治安に奉仕させる収容至上主義の従来の姿勢を改めるべきである。
 ・精神衛生法は国際人権規約B規約第ニ部条にも反するものであるという認識すらないことが問題である。
ニ、まず「精神障害者」の声をきけ。
 ・「精神障害者」は人権侵害の被害者であり、精神医療の体験者である。まず「精神障害者」から実態をきくべきである。
 ・医療の実態を知らないで、精神衛生法改正を云々すること自体が問題である。
三、「医療中断者への訪問指導について」(5・15通知)を白紙撤回せよ。
 ・患者の医師・医療の選択権・拒否権を否定するな。
 ・精神保健課長小林が各都道府県あてに出した文書によれば、「精神障害」と犯罪とを結びつけて、上記通知を出している。このこと自体が差別を煽っている。厚生省は差別・偏見を除去すると宣言しながら、まったく逆のことをやっているではないか。
 ・「精神障害者」への地域監視をさらに強めることになり、許せない。
四、社会復帰についての理念を示せ。
 ・「精神障害者」の社会復帰を困難にしているのは、当事者の責任ではなく、社会の側の責任である。偏見除去に努力するというからには、法的な差別・欠格条項について撤廃するなど、その具体的政策を示せ。
 ・人間の自発性・社会的能力を奪う医療を改め、病院の社会化に努力すべきである。
五、治療指針からロボトミー等の精神外科手術・電気ショック療法をはずせ。
六、保安処分「新設」に反対しろ。
七、精神衛生法改正作業を中止し、精神衛生法を撤廃しろ。
 ・これまでの改正作業は「精神障害者」不在のままで進められてきた。
 公衆衛生審議会の日程すら教えないなど「精神障害者」を排除してきたことは許せない。
 以上、七点の要求に対して、本年十二月五日までに書面で回答することを求める。
 なお、回答については公衆衛生審議会に対しても示すことを要求する。
   一九八六年十一月二七日
             精神衛生法撤廃全国連絡会議準備会
厚生省厚生大臣 殿
厚生省精神保健課殿

  十一月二十七日付公開質問状について(回答)
昭和六十一年十二月二十七日
厚 生 省 精 神 保 健 課
 十一月二十七日付公開質問状について、以下のように回答する。
一、 精神医学の進歩等に伴う入院中心の治療体制から地域中心の体制への転換、精神障害者の社会復帰の促進が強く求められていること等我が国の精神医療・精神保健をめぐる状況の大きな変化を踏まえるとともに、精神病院入院患者の人権の一層の確保を図るという観点から、精神衛生法の改正を含めた精神保健行政の促進が必要であると考えている。
ニ、 全国「精神病」者集団の方々とは、本年度においてもこれまで四回お合いし、種々御意見を伺う等いたしているところである。
三、 「精神科通院医療中断者保健サービス事業」(六十一年五月十五日通知)については、精神障害者の継続的な通院医療の重要性に鑑み、医療機関による訪問看護・指導が六十一年四月社会保険診療報酬改定により新設されたことにあわせて、医療機関と緊密な連携のもとに保健所による訪問指導を推進することとしたものであり、白紙撤回する考えはない。
   なお、この事業の実施については、「医療中断者」叉は家族等の了解のもとに訪問指導を行うものであり、本事業の実施に当たっては「医療中断者」の秘密保持に最大限の配慮を払うこととするよう併せて通知しているところである。
四、 精神障害者の社会復帰についての基本的な考え方については、公衆衛生審議会の意見具申(六十一年七月二十五日)において述べられており、厚生省としてもこのような考え方に沿って、その推進に努めて参る考えである。
五、 ロボトミー等については、関係部局と調整を図りながら、所要の検討を行って参りたい。
六、 保安処分については、刑事政策的な観点から法務省において検討されている問題と承知しており、厚生省としてコメントできない。
七、 精神衛生法は、精神障害者等の医療及び保護を行う等を内容とする法律であり、その撤廃は考えていない。
 また、精神衛生法の改正は、精神障害者の人権の一層の確保及び精神障害者の社会復帰の促進の観点等から行うものであり、種々の御意見を伺いながら改正作業を進め、六十二年通常国会に提出する予定である。
精神衛生法撤廃全国連絡会議準備会 殿

調理師になれない
美術館は御覧規制
お城も入場お断り

精神障害者もっと社会参加を
欠格条項見直し 厚生省が要請


「精神障害」のレッテルをいったん張られたら、理髪師や美容師になるのはダメ「公衆浴場、美術室にも入れないー法律や条例などに盛り込まれているこうした「欠格条項のせいで、精神障害者が社会参加しにくくなっている現状を是正するため、厚生省はこのこと、各省庁に対し、所管の法令の見直しを要請した。対象には、「精神病者」の入浴を禁止した公衆浴場法など、少なくとも四十以上の法律が含まれる見直し。地方レベルでも、議会の傍聴を拒む例などがあり、全国精神障害者家族会連合会(全家連 本間長吾理事長)や弁護士会が「市民権を浸し、差別偏見を助長している」と撤廃を訴えていた。
 「欠落条項」とは、精神障害者であることだけを理由に、権利や資格を制限する条項。職業資格に関する法律に多く、全家連などによると、その数は少なくとも四十五にのぼるという。
 この条項によって精神障害者は調理師、栄養士、理容師、美容師、通訳、ガードマン、風俗営業などの仕事に就くことが出来なくなっている。
 また、岡山市では市条例で市議会の傍聴や、岡山城への入場見学を禁止。東京の東京国立近代美術館も、観覧規制で「精神病者」を締め出している。プールでの遊泳は、昨年五月に厚生省通知が改正されるまで、禁止されていた。都内のプールの中には今も「精神病者は入場できない」と看板に書いている所もある。
 こうした条項については、@具体的にどんな病気が対象になるのかあいまいだA症状に関係なく、一律に不適格とするのは不合理Bだれが審査するのか不明Cいったん取り消された職業免許が治療回復も元に戻らない、など問題があり、「精神障害者を社会から隔離、排除する目的が明らか」(第ニ東京弁護士会・安田好弘弁護士)などとする強い批判が起きていた。
 精神医療は戦後、著しい効果を持つ向精神薬の登場などで、欧米を中心にそれまでの隔離収容型から、酸族リハビリ型へ大きく方向転換した。しかし、わが国では改革が遅れ、「根強い偏見が法律制度にも反映した」(全家連事務局)ためか、欠格条項がそのまま残っているとされる。全家連では昨年十月、創立二十周年記念全国大会で「即時撤廃」を求める決闘をあげ、関係者に呼びかけた。
 厚生省は、五十九年三月に患者リンチ死などが発覚した「宇都宮病院事件」をきっかけに、精神衛生法の改正に着手。今春、改正法案を国会に提出するため、最後の詰めの段階に入っている。国連など国際連合でわが国の精神衛生行政の立ち遅れが厳しく批判されたこともあり、「人権擁護と社会復帰の促進」がニ本柱だ。
 こうした中で、改めて「欠格条項」の問題が浮上。厚生省精神保健課は「昨今の精神医学のめざましい進歩を知らず、かつてのイメージで精神障害者を差別している例があれば、ぜひ改めるようお願いしたい」(小林秀嘉課長)として、今月中旬、精神医療への正しい理解と社会復帰への協力を各省庁担当者に文書で要請した。

結成宣言(案)
 本日、われわれは、全国からここに結集し、精神衛生法撤廃全国連絡会議の結成をかちとった。
 われわれは、本日の討論の結果、政府、厚生省が今春国会上程を策謀している精神衛生法「改正」が「精神障害者」に敵対するものであること、「精神障害者」と共に生き、共に闘う立場に立つならば精神衛生法撤廃しかありえないことを、全体の意志をもって確認した。
 厚生省は、「「精神障害者」の人権を保障するために精神衛生法を「改正」するというが、人権が侵害されている当事者である「精神障害者」の声を全く排除したまま、その過程をすすめてきた「改正」作業自体が、「精神障害者」の人権保障とは全く逆であることを立証している。
 精神衛生法は、もともと、「精神障害者」に対して社会排外と強制医療をおしつける治安法であり、いわば、先行的、実態的保安処分にほかならない。
 治安法は、どのように手直ししても治安法でしかありえない。しかも、公衆衛生審議会の発表した「精神衛生法改正の基本的な方向(中間メモ)」からもわかるように、精神衛生法「改正」としてもくろまれているものは、現行精神衛生法の治安法としての近代化であり、その強化である。
 「中間メモ」は、公衆衛生審議会が昨年七月発表した「精神障害者の社会復帰に関する意見」とあわせみると、その方向は明白である。それは、優生思想の全面化にたち、福祉切り捨てをおしすすめ、治安法としての面を強化しようとするものである。
 精神衛生法体制は、人民を分断し、「精神障害者」を差別と抑圧下に呻吟させてきた。加えて、行政改革合理化、福祉切り捨てのなかで、生きることさえ困難な情況にますます追いつめられている。
 われわれにとって、いま必要なことは、すべての「精神障害者」と共に生き、共に闘うことである。すべての「精神障害者」の生活を守り、休息の場を確保することである。病院のなかでの、地域での差別・虐殺を撃ち破ることである。「精神障害者」に対する差別と偏見をなくし、法令の差別・欠格条項を撤廃させることである。
 われわれは、すべての「精神障害者」と共に生き、共に闘う闘いとして、精神衛生法「改正」阻止、精神衛生法撤廃を闘いぬくことを、ここに宣言する。
一九八七年二月一四日        精神衛生法撤廃全国連絡会議結成集会


*作成:桐原 尚之
UP: 20100525 REV:
全文掲載  ◇反保安処分闘争 
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