86・11・27 公開要求書
精神衛生法撤廃全国連絡会議準備会 1986/11/27
われわれ精神衛生法撤廃全国連絡会議準備会は、八六年三月より厚生省に対する十数回の交渉要求のすえ、五月十六日、七月二日、九月二日、十月九日と四回の交渉をとりくんできた。
しかしながら、厚生省は、われわれの要求に全く答えず、質問・追及にも一言も回答できないまま、四回の交渉は終っている。
それにもかかわらず、厚生省は、来春国会上程という政治日程に合わせ、改正作業を強行している。
九月に第五回をもって「精神保健の基本問題に関する懇談会」を終了させ、十月十七日・秘密裡に公衆衛生審議会精神衛生部会開催を強行し、続いて十月二八日・十一月十二日・十一月十九日と超スピードで審議を進め、「精神障害者」の声を無視したままで、改正を強行しようとしている。
われわれは、四回の交渉の中で、一切明らかになっていない以下の項目に対する回答を要求するものである。
一、これまでの精神医療行政の誤まりを認め、自己批判しろ。
・宇都宮病院にあらわれた事態は、精神病院のもつ構造的な人権侵害の一環である。事態が明るみになってから以降も、現状は本質的に変わっていない。
・「精神障害者」を危険視し、精神医療を治安に奉仕させる収容至上主義の従来の姿勢を改めるべきである。
・精神衛生法は国際人権規約B規約第ニ部条にも反するものであるという認識すらないことが問題である。
ニ、まず「精神障害者」の声をきけ。
・「精神障害者」は人権侵害の被害者であり、精神医療の体験者である。まず「精神障害者」から実態をきくべきである。
・医療の実態を知らないで、精神衛生法改正を云々すること自体が問題である。
三、「医療中断者への訪問指導について」(5・15通知)を白紙撤回せよ。
・患者の医師・医療の選択権・拒否権を否定するな。
・精神保健課長小林が各都道府県あてに出した文書によれば、「精神障害」と犯罪とを結びつけて、上記通知を出している。このこと自体が差別を煽っている。厚生省は差別・偏見を除去すると宣言しながら、まったく逆のことをやっているではないか。
・「精神障害者」への地域監視をさらに強めることになり、許せない。
四、社会復帰についての理念を示せ。
・「精神障害者」の社会復帰を困難にしているのは、当事者の責任ではなく、社会の側の責任である。偏見除去に努力するというからには、法的な差別・欠格条項について撤廃するなど、その具体的政策を示せ。
・人間の自発性・社会的能力を奪う医療を改め、病院の社会化に努力すべきである。
五、治療指針からロボトミー等の精神外科手術・電気ショック療法をはずせ。
六、保安処分「新設」に反対しろ。
七、精神衛生法改正作業を中止し、精神衛生法を撤廃しろ。
・これまでの改正作業は「精神障害者」不在のままで進められてきた。
公衆衛生審議会の日程すら教えないなど「精神障害者」を排除してきたことは許せない。
以上、七点の要求に対して、本年十二月五日までに書面で回答することを求める。
なお、回答については公衆衛生審議会に対しても示すことを要求する。
一九八六年十一月二七日<
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精神衛生法撤廃全国連絡会議準備会
厚生省厚生大臣 殿
厚生省精神保健課殿
*再録:桐原 尚之