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精神衛生法改正にからめた保安処分制度新設に反対する(声明)
全国「精神病」者集団
19861101
last update: 20131130
昨年十一月二十一日、自由民主党「刑法改正に関する調査会」は刑法全面改正に関する中間報告(案)を発表した、その中では保安処分(治療処分)制度の新設が最も重要な改正点の一つとされ、「保安処分制度の新設を省いた刑法全面改正は、その意義を大きく減殺することになるものと考える」と述べられている。そして、各種関係諸団体などから反対意見が表明されていることを認めている一方で、「厚生省等との間で意見調整を行い、精神衛生法改正の動向を見守りながら、保安処分制度の新設を図ることが適当であろう」として、精神衛生法改正の動きとからめて、保安処分制度の新設を改めて図ろうとしていると思われる。
ひるがえって最近の法務省の動向を見ると、犯罪白書の昭和五十九年版および六十年版は直接保安処分に言及してはいないが、殺人、放火について精神障害者による事件の比率が高いとのべ、精神病院退院後間もなく事件をおこす例が多いとしている。このことは精神障害者の治療や生活の援助についての我が国の施策の貧しさを示唆するものであって、保安処分制度新設の根拠となり得るものではない。また一九八三年三月発行の法務総合研究所紀要二六第二分冊は、「精神障害犯罪者に関する研究」と題して、法務省刑事局案の治療処分制度の骨子で処分の要件の一つとしてあげられている放火、殺人、傷害、強姦、強制わいせつ及び強盗の罪に当る場合について、精神障害者における犯罪予測の可能性を論じている。しかしこの研究はすべて遡行的な方法によるもので、今日では予測研究として学問的な検討・批判に耐えないものとして否定されるべきである。
一九八四年に明らかになった栃木県報徳会宇都宮病院の問題をきっかけに、日本における精神衛生行政、とりわけ精神衛生法のあり方が国際的にも非難を受け、厚生省は精神衛生法を精神障害者の人権を尊重する方向で改正することになったはずである。この立場は、精神障害者に限って予防拘禁を導入する保安処分制度を否定するものであると考える。精神衛生法改正にからめて保安処分制度を新設しようとする動向が推測されるが、これは精神障害者の人権保障に逆行するものであり、私たちはあくまでも反対の寮志を表明する。
一九八六年十一月一日
保安処分に反対する精神医療従事者協議会
精神科作業療法士会
東京都地域精神医療業務研究会
日本児童青年精神医学会
日本精神医学ソーシャル・ワーカー協会
日本精神科看護技術協会
日本精神神経学会
日本臨床心理学会
病院・地域精神医学会
*作成:
桐原 尚之
UP: 20120921 REV: 20131130
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