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公開質問状

精神衛生法撤廃全国連絡会議(準) 19860802

last update:201108015

  私たちは、全国精神「病」者集団のなかまを先頭に、「精神障害者」に加えられている差別と抑圧に反対し、「精神障害者」が「健常者」とともに生きていける社会を築きあげていくために闘っているものです。私たちは、現行精神衛生法が、医療法、医師法のほかにある第三の法律として、「病者」に対して予防拘禁と強制医療を強い、患者の利益のためにではなく、社会防衛のために機能していることに反対し、その撤廃に向けて闘っています。
  私たちは、「精神保健の基本問題に関する懇談会」に参加されている諸氏に、以下の諸点について明らかにされることを要請するものです。
  第一に、宇都宮病院は、北関東医療刑務所と称し、いわば、現行の保安処分施設ともいうべきところであるのは周知のことであり、同時に、石川文之進前院長が日本精神病院協会(斎藤茂太会長)のメンバーであったことも周く知れわたっています。この宇都宮病院問題について、どのように考えておられるのでしょうか。また、厚生省の精神衛生行政が、宇都宮病院問題をひき起こした一因であるという明確な事実、および六・二二通知などの対策が宇都宮病院の実態を何ら変えていないというこれまた明確な事実についてはどうでしょうか。
  厚生省は、これまでにも「病者」のプライバシーを踏みにじり、病状の悪化をもたらす「精神衛生実態調査」を強行しました。通信・面会のガイドラインを、宇都宮病院問題の自己反省としてではなく、ただ国際的非難をかわすために、病院経営者の側によった内容で作成しました。警察庁の要請に呼応した形で、医療中断者の訪問指導についての通知を各都道府県に送っています。これらに共通した重要な問題点は、厚生省は「病者」の意見を排除したままであるということです。それは、いま焦点の精神衛生法改正問題に対しても同じです。その点、どう考えておられるのでしょうか。「病者」の声を聴くこともしないで「病者」の人権を云々することが、橦着ではないと認められるのでしょうか。
  次に、厚生省は精神医療行政は患者の医療と保護のためのものであり、治安のためではないといっていますが、精神衛生法は一九五〇年に制定されてから現在にいたるまで一貫して社会防衛論に立つ治安法であることは明白であります。たとえば、訪問指導とは、「精神障害者」には医者や治療法を選ぶことさえ許さないとするものです。厚生省は、本人または家族の同意を前提とするから人権侵害にはならないといいますが、「家族の同意」とは同意入院の要件でもあり、そこには宇都宮病院問題の反省もありません。これに関連する警察庁の要請について、「日刊警察」は、「相次いだ精神障害者等の凶悪事件。通り魔的な事件も発生」「脱院者の犯行を許すな。病院と連絡し早期保護の徹底へ」「退院・許可外出時の管理を的確に。厚生省にも要請」と、その意図を露出にしています。ここには、社会的状況も全く無視した「精神障害者」に対する明らかな差別と偏見、それに基づいての治安政策の視点があります。しかも、厚生省は「相次ぐ精神障害者等の凶悪事件」といった視点は背景として認めるといっていますが、それ自体が差別であることは統計的にもすでに明らかになっていることですし、そこからは、必然的に警察と同じ発想が生まれざるを得ません。地域で息をひそめて生きることを強いられている「病者」が、徹底的に追跡され、治療ベースにのせられ、強制医療を加えられることになるのです。他科では考えられないことですがそれについては、どうお考えでしょうか。
  厚生省は、「病者」との交渉に応じようとはしていませんが、そり理由は、来年度の予算編成の時期で多忙だからとのことです。しかし、一方では公衆衛生審議会が先日発表した「意見書」のうち、可能なものは来年度からでも予算化するといっております。もし、そうしたことが可能ならば、ほかならぬ予算編成にあたって、当事者である「病者」の意見を聞くべきではないでしょうか。
  どのように各氏は考えておられるのでしょうか。ぜひ、お答えいただきたいと思う次第であります。

 一九八六年八月二日

精神衛生法撤廃全国連絡会議(準)
(連絡先 東京都港区新橋二−八−一六石田ビル4F)
      TEL 〇三−五九一−一三〇一
・赤堀中央闘争委員会
・全国「精神病」者集団
・監獄法改悪を許さない全国連絡会議
・救援連絡センター
・救援連絡会議


*作成:桐原 尚之
UP: 20110815 REV:
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