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精神医療の基本問題に関する懇談会出席者へのお願い(手紙)

赤堀中央闘争委員会・全国「精神病」者集団・監獄法改悪を許さない全国連絡会議・救援連絡センター・救援連絡会議 19860516


前略ごめんください

  前回四月一五日、第一回「精神医療の基本問題に関する懇談会」にご出席の皆様方に申しあげたいと思います。
  私たちは五月二十日には、第二回目の会合があることを知りました。この懇談会について、皆様方は、国際的に問題となっている「精神障害者」の人権問題について、熱心なご討論をなされることと拝察いたしましたが、基本墾自体に、以下のごとく、重大な疑義がありますので、ぜひ意見を述べさせていただきたいと存じます。
  第一に、精神衛生法に対し、厚生省は既定の方針を持っております。
  厚生省は、昨年の一一月の参議院における中村政府委員の答弁にもありますように、決められたレールを走らせようとしています。
  そのなかで、懇談会そのものが、各界の意見を聞いたという形のセレモニーとして、厚生官僚に政治利用されるにすぎない可能性は、きわめて強く懸念されます。
  第二に、厚生官僚の定めたレールは、当事者である私たち「精神障害者」の意見を当初から排除しています。さきに精神衛生法「改正」について厚生省が意見を求めた24の団体からも、いままた、基本墾からも、当事者である私たちは排除されています。
  密室下の人権侵害の事実は、体験者しかわかりません。当事者の声を排除したまま、人権問題について云々することは、基本的にありえないと思います。
  第三に、厚生省は、その方向を変えようとしていません。私たち「精神障害者」は、当事者の声を聞いてもらおうと、厚生省に話し合いを求めてきました。
  私たちの度重なる要請によって、ようやく五月一六日に話し合いを持ちましたが、厚生省は、当事者の声を聞くというのではなく、いくつかの意見のひとつとして扱うという態度に終始し、「精神障害者」の人権を真剣に考えるというものではありませんでした。
  第四に、厚生省は、五月一五日、通達「保健所における精神衛生業務中の訪問指導について」を出し、いまも私たちへの監視体制を強めています。私たちは、これに極めて強い圧迫感を受けています。これまでにも、たとえば七一年の天皇の伊勢神宮への行幸の際、監視体制の強化―強制入院によって「病」者が自殺に追いこまれた事実のような例は、枚挙にいとまがありません。
  今回の横浜の警視刺殺事件を契機とした地域管理網の強化は、おびただしい
  「病」者を自殺にまで追いこむことを予想させます。横浜の事件は、生活苦が
  原因なのであり、本来の解決としては福祉の強化こそ必要なのです。監視の強化は、「病」者を追いこみこそすれ、解決にはなりえません。
  以上の諸点を考慮すれば、厚生省の定めたレールに乗って、セレモニーに参加するということは、基本的に問題であるかと思われます。
  皆様方には、真に「精神障害者」の人権の問題をお考えいただく立場、セレモニーそのものを批判する立場に立ち、基本墾を拒否されるよう、心から要請したいと思います。
  私たちは、「精神障害者」の受けている差別の現況、精神衛生法、精神医療の問題の基本点について、別途、皆様方と、ぜひ話し合いたいと思っております。ご賛同いただければ幸甚と存じます。

1986・5・16

赤堀中央闘争委員会
全国「精神病」者集団
監獄法改悪を許さない全国連絡会議
救援連絡センター
救援連絡会議
(連絡先 東京都港区新橋2ー8ー16
石田ビル内 救援連絡センター)


*作成:桐原 尚之
UP: 20110815 REV:
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