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刑法改悪保安処分の国会上程を許すな!

刑法改悪・保安処分「新設」阻止!意見交換会粉砕!3・17闘争実行委員会 19820317


 いま社会のなかではマスコミがとりあげているだけでも、毎日かなりの「事件」と「犯罪」がおきています。
 こうしたなかでも「凶悪事件」といわれるものが、どのようにマスコミに報道され、人々に考えられているでしょうか?
 マスコミは「精神障害」者が野放しにされているからおこった事件だと大々的にキャンペーンし、人々は、「精神障害」者は何をするかわからないのでこわい、早く「精神障害」者の「犯罪」から私たちを守ってくれと叫びます。
 しかし「精神障害」者が「犯罪」を犯しやすいということは、政府のだしている「犯罪白書」からも導きだすことはできません。「精神障害」者が社会から切りはなされて生活をしいられているなかで、「健常」者がまったく根拠のない差別と偏見によってつくりだしていった考えです。
 そしてこの許すべからざる差別によって、どれだけ多くの「精神障害」者が職を奪われ、生活を困難にされ、さらには生きていくことさえ否定されてきたことでしょう。
 一方、法務省は、このような社会の差別と偏見を背景にして、「精神障害」者の「犯罪」対策としての保安処分を今春国会で、新設しようとしています。
 私たちは、「精神病」者、「精神障害」者を社会からしめだしてしまおうとする保安処分を絶対に許すことはできません。

[保安処分と監獄法改悪の先どりを許すな!]
●「治療処分」とは何か
 政府・法務省は、12月26日の第五回意見交換会において「刑法改正作業の当面の方針」、「保安処分制度(刑事局案)の骨子」を発表し、刑法改「正」の中心が保安処分の新設であることを明らかにしました。
 この中で法務省は保安処分を「治療処分」といいかえていますが、「治療」とは、患者の要求により、患者の利益のために行なうものであり、権力が、その支配の為に行なう「処分」とは結びつかないものです。
 保安処分の考え方とは、「犯罪」を犯す危険性のある者を、社会からしめだしてしまおうというものです。保安処分の思想をきりひらいていった、ドイツの刑法学者リストはこうした人間を「改善不能犯」とし、「改善不能犯」には社会よりの隔離(死刑、不定期刑、または保安拘禁)を提唱しています。つまり「治療」とはまったくのデタラメで、本質は、政府・法務省がいう「潜在的に犯罪を犯しやすい存在」−「精神障害」者を刑事施設にとじこめ、社会の中における存在を一切否定してしまうものです。(刑事局案)のB「治療施設に継続して収容する期間」は裁判所の権限により、半永久的に施設へとじこめることができることを明らかにしています。
 この刑法改「正」案は2月3日の法務省首脳会議において、四月下旬を目標に国会上程していきたいということが明らかにされています。さらにこの刑法改「正」―保安処分新設の先どりともいうべき監獄法改「正」の国会上程が、正式に決定されています。
 また、忘れてはならないのが、昨年12月マスコミによって報道されていった、刑法改「正」における重罪化の削除というのは全くのデタラメで、その多くは「検討中」として残されているのです。

●法務省に屈服する日弁連
 この法務省による保安処分新設に対して日弁連は2月20日、その代案としての「精神医療の改善方策について」(意見書)を発表しました。これは「精神障害」者の犯罪対策として、保安処分を新設する代りに精神衛生法を強化改「正」せよというものです。
そしてこれは保安処分に貫かれている「精神障害」者観と何らかわるものではありません。
 「意見書」の中では〈精神障害と犯罪をめぐる問題に対して精神医療の改善〉と述べ、またこれにより〈時としておこる不幸な出来事を防止〉するといっています。すなわちこれは、「精神障害」者を犯罪素因者としてしか見れないことであり、社会防衛の考え方です。
 だからこそ、現行精神衛生法が治安政策として機能し、この精神衛生法体制の下での精神医療、精神病院の実態をとらえかえす視点がないのです。そしてこの体制の下での実態的保安処分として存在する措置入院・同意入院を否定するどころか、維持・強化を主張しているのです。
 また「精神障害」者の生活支援の不備を指摘しておきながら、その社会での生活を一番困難にしている、社会からの差別を問題にし、それをどう打ち破るのかという本質的観点を欠落させています。

●すでにはじまっている保安処分体制
 「精神障害」者の差別されている現状はどうでしょうか。労働安全衛生規則第61条では「精神障害」者の就業禁止が定められ、最低賃金法においてもその適用の権利さえみとめられていません。又「精神障害」者は、薬剤士、調理士を始めほとんどの職につくことが欠格条項によって禁止されています。
 さらに「意見書」の中で日弁連は、〈この提案を実行するかどうかは、精神医療と福祉の分野の課題であり、国と地方公共団体および精神医療専門家の責任はきわめて重大である〉とひらきなおり、「精神障害」者の解放をめざす主体的立場を喪失させています。
 私たちは法務省と同じく「精神障害」者を社会からしめだしてしまおうとする日弁連を弾劾すると共に、日弁連が批判しえない現行の実態的保安処分とも闘っていかなければなりません。この実態的保安処分と監獄法改「正」の先どり攻撃が同時におこなわれているものとして、無実の「精神障害」者赤堀政夫さんへの死刑判決―獄中弾圧があり、大阪拘置所においては鈴木国男君が虐殺されていったのです。

●弁護士の告発を許すな!
 日弁連はこのような差別性をむきだしにしたばかりか、この日弁連の差別性と、刑法改「正」に対しての法務省とのこの間の密室審議を糾弾していった、昨年12・5名古屋パネルデスカッション粉砕闘争に対し、2月16日、名古屋の弁護士40数名の連名でもって二度目の告発を行ってきました。
 私たちは「精神障害」者 差別・抹殺と闘う思想でもって日弁連を弾劾し、法務省の保安処分を粉砕しなければなりません。

〔私たちと共に闘おう!〕
 刑法改「正」―保安処分新設の四月国会上程をめざす政府・法務省と、「精神医療の改善方策について」(意見書)を発表し、「精神障害」者の犯罪対策として精神衛生法の強化改「正」をとなえる日弁連が、三月十七日、第六回目の意見交換会を予定しています。
 そして意見交換会とは、昨年深川における「通り魔殺人事件」がおこった後、時の法相奥野が、〈「精神障害」者の犯罪対策として早急に保安処分を実現させたい〉とし、〈その為には保安処分に反対している日弁連と話し合い、合意をとりつけていきたい〉として行なわれていったものです。すなわち法務省が刑法改「正」―保安処分新設を実現するために、日弁連をとり込んだものです。
 「精神障害」者を犯罪素因者としてしか見れない日弁連と法務省が話し合いをもてば、どういう結果になるかは明らかです。「精神障害」者の犯罪を防ぐための対策が必要という点において両者は合意しているのです。
 法務省は、日弁連の意向は理解したという形を装い、四月国会上程を決定するでしょう。
 私たちは、この刑法改「正」―保安処分新設の国会上程にむけた第六回意見交換会を絶対に許してはなりません。
 すべての皆さん! 三月十七日、第六回意見交換会粉砕闘争に決起し、ともに闘われんことを訴えます。

■3・17意見交換会粉砕闘争
 午前9時 日比谷小公園集合
■3・18刑法改悪阻止全国集会
 午後6時 日比谷公会堂
 主催 総評・憲法擁護国民連合・部落
    解放同盟中央本部・刑法改「正」
    保安処分に反対する百人委員会

刑法改悪・保安処分「新設」阻止!
        意見交換会粉砕! 3・17闘争実行委員会

≪呼びかけ団体≫ 救援連絡会議・救援連絡センター・赤堀中闘委・監獄法改悪を許さない
全国連絡会議・全国「精神病」者集団

連絡先●東京都港区新橋2−8−16石田ビル
            救援連絡センター内
        ?(〇三)五九一−一三〇一

*採録:桐原 尚之
UP: 20121105 REV:
反保安処分闘争  ◇全国「精神病」者集団全文掲載 
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