声明
日本弁護士連合会が8月31日に示した「精神医療の抜本的改善」といわれる要綱案は「精神障害者」に向けられた新治安構想ともいうべき内容であり、私たちはこれを到底容認することが出来ない。
この要綱案は保安処分の対案として、現行の精神医療政策を手直しし、違法行為をする「精神障害者」とそうでない「精神障害者」を分断し、あたかも治安と福祉が両立するがごとく描かれている。
そもそも、保安処分は「精神障害者」=「犯罪素因者」と決めつける誤った前提の上に立つが、私たちはそのような、差別と偏見を根本的に否定する。
ところが、今回の要綱案はその誤った前提に立脚し、精神衛生法をより厳密に活用することによって、「精神障害者」の治安政策の拡大と強化を計ろうとする差別的構想に他ならない。
私たちは保安処分という治安政策に対案など決してないと断言し得る。同要綱案は抑圧と隷属を拒絶し自由と人権の復権を心からの願いとする私たちを踏みにじり、「精神障害者」に徹底的管理をもたらすものである。
同要綱案は、贖い切れない深い傷を私たちに負わせ、窒息するがごとき危機意識を与えた。
人権の擁護を社会的使命とする弁護士が、その使命を自らで放棄し、同要綱案を保安処分の対案とする日本弁護士連合会を私たちは決して許すことは出来ない。私たちはこの要綱案を心からの怒りを持って弾劾することを声明する。
1981年9月7日
全国「精神病」者集団
◇日本弁護士連合会刑法「改正」阻止実行委員会 19810831 「精神医療の抜本的改善について(要綱案)」
◇日本弁護士連合会 19811019 「精神医療の改善方策について(骨子)」
*作成:桐原 尚之