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「提案委員会報告」

提案委員会報告 19810626


提案委員会報告
昭和56年6月26日

委員  粟屋登( 大阪 ) 大野和男( 神奈川 ) 小出保広( 大阪 ) 寺谷隆子( 東京 )
    西沢利朗( 事務局・神奈川 ) 吉岡隆( 埼玉 ) 渡辺朝子( 三重 )

<はじめに>
 日本精神医学ソーシャル・ワーカー協会は,名古屋で開催された第16回総会(昭和55年度)において,「提案委員会」を設置し本協会の機能回復にむけて取り組むことを正式に決定しました。本協会の機能回復のための作業とは,第12回大会総会の中止以降「棚上げ」にしてきた課題に着手することであり、その内容は具体的に以下のものです。
1.第12回大会総会中止の事態に対する総括を行うこと,そして,その後「棚上げ」の状態で論議されてきた第13回大会総会以降の論議内容を整理し、本協会としての今後の取り組むべき課題を見出す作業。
2.Y問題に関すること,ここでは以下のことが棚上げにされている。
1)「Y問題の継承に関する理事長見解の提出」の件に関すること。
2)「関東甲信越ブロック研究会報告に関する10項目の質問に対する見解を出すこと」に関する件。
3)Y問題によって提起された問題を実践の指針として,どのように具体化してゆくか。
3.上記1・2を通して得られる今後の実践課題は何かを提示する作業。
4.組織運営上の問題に関すること。
省みると、本協会は第12回大会総会が中止に到った際,組織としての非常事態をむかえました。この事態を克服すべく当時の常任理事会が作成した「第12回PSW大会総会中止を省みての反省と課題」と標題のある「総括案」が全国理事会(S 51. 11. 26〜27 ,東京)に提出されています。――PSW通信No.37掲載――,結果的には、この総括案は否決されました。しかし,その後これに代わる総括案の提出がされていません。そのため本協会はそれ以後の事業・活動方針については当然のこととして討議のされようもなく,常任理事会の機能停止,更には当時の事務局長と理事長が実質的に引責辞任を行うという人事上の問題を生み,本協会は組織発足以来の危機に陥りました。数回にわたるその後の全国理事会で前小松理事長より現谷中理事長へと移行しましたが、谷中理事長は否定された「総括案」の文章作成に関与した常任理事であったことを思う時,この全国理事会における谷中現理事長就任の決定は,組織の存続だけを目的とした人事となってしまいました。 ( PSW通信 No. 38 ・ 1977. 8. 31発行 )以来,大阪における第13回大会総会から今日に到るまで,「Y問題」に関する組織的課題を棚上げにしつつ,組織維持だけを第一義的目的とした変則的運営を行ってきたと言えます。しかし, 「棚上げ」後の第13回大会総会から,埼玉県での第14回大会総会,再度大阪での第15回大会総会と経過する中で,本協会の機能回復にむけて取り組む機能が生じ,それを目的とした「提案委員会」の設置となったものです。
ふりかえりますと, 「Y問題」は,昭和48年に横浜で開催された第9回大会総会で提起されました。Y氏本人はもちろん,その家族と「多摩川保養院を告発し地域精神医療を考える会」の代表者がその場に参加しています。「Y問題」は,現行精神衛生法に則って行ったPSWの行為自体が,対象者の人権や生活を侵す行為にそのまま重なってくるという厳しい現実を提起したものでした。本協会はそれ以来討論を重ね,組織的対応としては,「Y問題調査委員会」を設置し,その報告書もかなりの長文にわたって出されています。しかし,本協会での討論内容は,「Y問題」の提起したPSW自身のかかわりの視点や,現行精神医療状況の問題性など,中味そのものの整理には到達し得ず,どちらかというと「Y裁判」を支援するかしないかの討論に終結しがちでありました。
隔離・収容から医療へ,単なる疾病と見る立場から病む者の人間性を見る立場へ,という精神医療の思潮の流れを背景に,我々PSW自身もクライエントの立場を理解し尊重するという「クライエントの立場に立つこと」の共有化のとりくみは,暫く第13回大阪大会(昭和52年)以降から着手しはじめています。しかしながら,前述したように「Y問題」に関する三点課題を棚上げとし,常任理事会の総括案を否決したまま,また,常任理事会の機能を停止したまま,大会開催のみに終始した運営を行ってきています。そのありようが,現精神医療状況の問題性とか,その中でのPSWの立場性といった課題など,まさにPSWの役割の明確化に不可欠な作業へのとりくみを,各会員個々の討議に附すという形をとることしかできなくさせており,当然に,協会総体としての基本姿勢の確立をはかることを極めて困難にさせています。このような,まさに協会組織の脆弱さを露呈したままに,身分資格制度の問題に安易に流れてしまう論議が浮上して来たりしていることを考えると,本協会を機能回復させることは急がねばならないと言えましょう。

「提案委員会」は正式発足以来検討を重ねてきましたが,その作業は極めて困難に満ちており,十分なものとはなりませんでした。中でも,作業課題の1,第12回大会総会中止の事態の総括の作業は力量及ばず不可能に近く断念せざるを得ませんでした。
また,「Y問題」が提起されてから本協会として討議してきた内容について,各大会総会毎に整理し評価を加え,その後に今後の課題を抽出し提示するのが望ましいと考えつつも,結果的には包括的に「反省点」としてくくって提案する内容となってしまいました。ただ,経過における具体的事象については,年譜としてまとめることといたしました。
なお,作業課題2−2 )関東甲信越ブロック研究報告に関する10項目の質問に対する見解を出すこと,については,今日的には「Y問題の継承」の課題にくくられてゆくものなので,提案委員会としては役割を超えるものと判断,同研究会が流会にいたった経過についてのみ触れることといたしました。
ともあれ,提案委員会としては,この間検討を重ねてきた結果の内容について,前述したことも含め,以下のことを現在の本協会の抱える課題として提案し,そのとりくみを求めると共に,提案委員会としての任を終えることとします。


<経過の中で考えられる反省点>
 ここでは,本協会活動の流れと,その中で我々PSW自身がどのように動いてきたのかといった経過をたどって反省点を考えてみたい。Y問題が提起された後の協会活動の流れについては付記した年譜の通りである。第12回静岡大会総会中止後,常任理事会から出された総括案が,全国理事会で否決される事態をむかえ,対案も示されず,方針もない中で本協会は機能停止に陥っても当然であった。それはY問題から提起された内容――現行精神衛生法に則って行ったPSWの行為自体が,対象者の人権や生活を侵す行為にそのまま重なってくるという――すなわちワーカーの加害者性をめぐる論議を深化することができなかったことに由来する。
 本協会の正常化とは,その加害者性を止揚するワーカーの立場性と関係性を模索するところから再出発を始めるということである。再出発するにあたって,新たなソーシャル・ワーカー論と新たな当PSW協会論を統合化すると考えられる反省点として,およそ以下の四点に集約できるのではと思う。

1.立場と視点
本委員会としては,我々PSWが,対象者( クライエント )に対する関わりの視点とか,また,PSWがどういう立場に立った上で対象者と関わろうとしてきたのかについて,本協会内で充分なコンセンサスを得ていなかったことが,本協会の今日の状況をもたらせた要因の1つとなっているのではないかと考えた。例えば,「患者の立場に立つ」といった表現を我々はよく用いているが,それがどういう内容であるかについての認識に甘さがあったということである。Y氏より「あなた方の仕事は,私を無理やり精神病院に入院させる結果になりました」という意のワーカーの加害的要素を告発されたにも拘らず,充分それに応えられなかったことがそれを物語る。
「Y問題調査委員会報告書」( 昭和49年,第10回神戸大会総会 )を基に作成された「Y問題調査報告により提起された課題の一般化について( 資料 )」( 昭和50年8月30日,常任理事会発行 )では,「『本人の立場に立つ』ということは,ワーカーがそのままクライエントの立場に直接的・同意的に入れ代わるということではなく,クライエントの立場を理解しその主張を尊重することを意味している。」と規定している。
「患者の立場に立つ」ということをその様に考えるのであれば,我々は同様に,まずY氏の主張を尊重し,我々とY氏の立場の違いや業務の視点を観,深めてこなければならなかったのではなかろうかと考える。こうした我々の“たてまえ”と“本音”の使い分けが対象者との距離を遠くさせ,立場性や視点を欠落させる結果となったと思えるのである。こうした対象者への視点や立場性の欠落していたことが,「Y問題」が本協会に提起された際,本協会としての最初の対応としてとった「Y問題調査委員会」という表現に象徴されるように,対象者・PSW各々の主張を「調査する」といった裁判官的立場に身を置かざるを得なかったのである。
今思うと,この当協会のとった対応は,当時としては止むをえなかったとは言え,対象者・PSW各々に対して失礼なことであった。しかし,「Y問題調査委員会」は,その困難な作業の中で,「本人の立場に立った義務の基本姿勢の確立を目指すこと」という指針を,その「報告書」の中で結論的に提案したことは,当時としては画期的なものであったと評価してよいのではあるまいか。我々は,同報告書とそれを基に作成された,常任理事会による「一般化(資料)」を風化させることなく,これを本協会の貴重な財産として再評価し,我々の立場と視点の真の確立にむけて内容を深めてゆく出会いを保持しつづけてゆくことを提案したい。“たてまえ”と“本音”の使い分けをせねばならなくなる自らの弱さを克服するためにも。

2.状況と認識について
「Y問題」はまた,ワーカー・クライエント関係という個別の関係を越え,その関係を取り囲み規制している状況の認識が必要であることを我々に提起している。この側面に焦点を絞って考えてみると,そのような社会的視点を最も必要とされるソーシャル・ワーカーの集団の本協会としては,今なおそうした状況分析の甘さがあることは残念ながら否めない。
Y問題が起こりうる素地は既に精神衛生法体制の中にあったとみてよいだろう。一部には改法の声もあがっているが,いわゆる同意入院の条項に本人の申し立て制度がないこと,入院させたら入れっぱなしになる恐れがあることなどの批判がそれである。「保健所の対人サービスの充実」が横行する中で,また一方,法の不備がある中で,ややもするとワーカー・クライエント関係が一方的に政策主体の思いのままになってしまう危険があるのは否めないことである。つまり,我々は対象者を保安処分的に処理してしまって管理してしまうという加害性を担わされるような状況に身を置いているということである。
Y氏と彼を支援する人たちの本協会に対する糾弾にも近い厳しい問題提起と,粘り強い本協会とのかかわりの保持は,Y氏が,現行の精神衛生法体制下における被害者であり,Y氏のとりくみはまさしく,ごく当たり前の人間としての回復を求める取り組みであったことを思う時,理解可能となる。
我々は,ひょっとすると,第2・第3のY氏を知らないうちに生み出しているかも知れない。ただ相手が黙っていてくれているから我々が気づかないでいるだけかも知れない訳である。Y氏はそれを我々に厳しい表現ではあるが率直にあらわしてくれた。我々の気づきの乏しさを厳しく指摘してくれたのである。そういう意味では,当時の厳しい提起は我々にとって苦しいものであったが,冷静になって今思う時,感謝すべきことではあるまいか。
今,我々は精神医療の問題点を分析し,PSWは何をする集団なのか充分認識して再出発したいものである。

3.実践とワーカー・クライエント関係
この項は、提案委員会のメンバーが反省点としての課題意識は共有していても,伝達可能な適切な表現をどうするかで苦慮したところである。それは我々PSWがクライエントと出会っている際のPSWの側にある意識されない内容にかかわってくるものだからである。しかしながら,この項で述べる反省点と課題は,Y問題が我々に提起した内容をPSWなりにうけとめる際に底流として横たわっている問題であり,本協会としても今までその内容において困難なために取り組みづらいものである。当委員会としては会員諸士の多くから抵抗をうけることを予想しつつ,あえて大胆に表現することにした。言辞にとまどわされずに意味するところを汲んでいただきたいと願う。
この項を設けてあえて反省点として取りあげたかった内容は,ワーカー・クライエント関係が,世話をする・される関係性であったのではないかということである。そして我々の中に「我々は良い事をしているのだ」「我々は善人なのだ」といった独りよがり的な意識が存在してはいまいかということである。
本来,ワーカー・クライエント関係は,世話をする・される関係ではない。両者が信頼関係を築くプロセスを大切にしつつ,相互に独立した人間として付き合う中で問題の解決にむかって学び合う関係である。そこでは,お互いの存在を認めた上で相互批判も自由に行なわれてもいい筈である。しかし我々の日常実践がクライエントのかかえている問題の解決へと向うのではなく,クライエント自身の問題ばかりが見え,クライエントへの“指導”や“説得”をするという指導的立場性へとすりかわっていることが多々あったのではないか。
我々がY問題を実践のレベルで反省するとすれば,こういったワーカー側の一方的な指導的立場性,前述した独りよがりな内容が無意識のうちに現存しているが故に,Y氏の訴えに対して適切な対応を欠いてしまったということである。
また,Y氏側より糾弾された会員に対し,彼がY氏に対し正しい対応を可能にすべく,我々が彼と共に歩むことについては組織としては出来得なかったことも同じこととして考えられよう。
上記のことから,今PSWにとって最も重要なことは,クライエントのかかえる問題や課題を共に解決してゆける全体的力量を向上させるためのとりくみであり,それにとりくむ積極的態度(情熱)であり,そして「クライエントから学ぶ」という初心にも似た謙虚な姿勢を持ち続けることではないだろうか。

4.福祉労働者としての二重拘束性
ここでは,PSWを労働者としての視点から若干触れることにしたい。今後本協会が機能回復に向って進んでゆく中で,専門性と専門職制度の問題が重要な課題として当然取り組まなくてはならなくなってくるからである。その際「考えねばならぬ1つの側面」として当委員会で論議した内容をまとめたものを紹介したい。そして今後本協会が討論する際に参考になればと願う。

我々は,日常実践の中では「患者の立場に立つ」と言う関係性と共に,一方ではクライエントの要望に充分対応出来得ない雇用者との関係を有している。我々はそのような相矛盾する「二重拘束性」を背負っている。このことを正直にクライエントに伝えつつ,課題解決に向って共同作業を進めることの重要性については,ほとんど本協会の中では取り上げられて来なかった。むしろ,この我々の不自由さの解決を身分資格制度の獲得に求める等の意見が出されたりもした。しかし,身分資格制度はこの問題の解決の有効な手だてにはならない。
今なお未解決なヒエラルキーの問題や,「患者」ぬきの医療チーム論と言った医療構造の状況すら手つかずの状態のままで,そうした意見は更に「患者」の立場を厳しい状況に追い込むことになってしまうのではないか。
確かに,本協会自体が解雇問題をとりあげバックアップできるほどの社会的力も持っていない訳だが,我々は前述した二つの関係性の中で,我々の実践をどう実現できるかを考えるべきであろう。そして更には,そういう中にあっても我々が専門性を求めねばならない状況そのものへの検討を進める必要もあるであろう。




日本精神医学ソーシャル・ワーカー協会 年譜

1973(昭48)
 第9回 神奈川大会・総会  Y問題アピール(Y氏・母親・支援する人達)
理事会・大会運営委員会とも事態を収拾できず,問題のある解決方法であるが,「Y問題調査委員会」を発足させる。
 
1974(昭49)
5/16       全国理事会(神戸)
 第10回 神戸大会・総会   「Y問題調査委員会報告」
5/17・5/18     ・Y問題の特記すべき事柄は本人不在・入院先行にある。
・Y問題の検討は単なる行政行為のみに注目してはならない。
精神衛生法上の手続の整合性を言う限りでは問題を明確化できないし解決できない。
                 ・措置入院や同意入院制度の問題に深く立ち入らねばならない。
                三提案
(1)現行精神衛生法における措置入院・同意入院の点検をおこなうこと。
(2)「本人の立場」に立った業務の基本姿勢の確立を目指すこと。
(3)そのような業務が保障される身分の確立を目指すこと。
                決議文
・保安処分反対決議
・Y問題を2度と起さない(PSWの基本姿勢)
                Y裁支援,I氏除名要請があったが,双方ともとり得なかった。
11/16・11/17   全国理事会(東京市ヶ谷)地区組織化・Y問題調査報告の検討について etc
          拡大常任理事会(東京・精神衛生センター)
1975(昭50)
3 日本PSW協会設立10周年記念特集号(機関紙)
6/2          全国理事会(新潟)
 第11回 新潟大会・総会   「精神医療の現状と私の実践」 夜間集会<民間病院で働くワーカーの集い>
     6/3・6/4       Y裁からの決議文→成立せず。
     8/30         Y問題一般化資料配布<常任理事会発行>
    11/22         全国理事会(東京オリンピック記念青少年センター)関東甲信越ブロック研究会への申し入れ Y問題の継承

1976(昭51)
     1/31         関東甲信越ブロック研究会(東京オリンピック記念青少年総合センター)
                 Y裁支援する会より大会粉砕宣言 流会→自主集会
                 (Y事件を教訓化すると言いながら当事者に話がなかった)
                                ―10項目質問―
     4/10         常任理事会へY裁支援する会(「多摩川保養院を告発し地域精神医療を考える会」)より申し入れ書
 第12回 静岡大会・総会
     6/3・6/4       中止      常任理事会機能停止

                                拡大事務局会議
     7/17         「大会・総会中止に至る経過概況の送付について」理事長名で全会員に送付
Y裁申し入れ書,関ブロ研究会の経過,理事長見解,中止に至る経過の総括,Y問題継承
     8/20・8/21     全国理事会(静岡県職員会館)
大会・総会中止に至る経過について討議(上記資料をもとに)
事務局長辞表正式受理・新事務局長承認
総括案を作成する方向を決定
    11/26・11/27      全国理事会(東京みやこ荘)→常任理事会総括案を否決
1977(昭52)
     3/26         全国理事会(東京精神衛生センター)
 第12回 東京総会
 (日本社会事業大学)      全国理事会で運営 常任理事会案(第12回大会・総会中止を省みての反省と課題)をめぐって etc
6/25・ 6/26      全国理事会(愛知・城山HP)
9/3 ・ 9/4      全国理事会(新潟・悠久荘HP)
11/19 ・11/20      全国理事会(埼玉・やどかりの里)
12/25 ・12/26      全国理事会(大阪・万千寄旅館)

1978(昭53)
    3/18          全国理事会(大阪・府立労館)谷中理事長,Y裁アピール申し入れ
 第13回 大阪大会・総会    「PSWの当面する課題」
 (府立教育青年センター)   
    3/19          Y裁アピール=裁判報告,証言批判
    5/20・5/21      全国理事会(東京・世田リハ)
    7/15・7/16      全国理事会(松本・みやま荘)
    10/7          全国理事会(埼玉・やどかりの里)
    11/10          全国理事会(浦和武蔵野会館)
 第14回 埼玉大会・総会   
  (浦和労音会館)       「PSWの当面する課題その2」―入院を軸としてクライエントとのかかわりを考える―
     11/11・11/12      Y裁発言の機会を,との申し入れ

1979(昭54)
     1/20・ 1/21      全国理事会(東京・世田リハ)
     5/26・ 5/27      全国理事会(大阪・浅香山HP)
     9/22・ 9/23      全国理事会(大阪・浅香山HP)
     12/1 ・12/2       全国理事会(名古屋サンプラザ)

1980(昭55)
     1/19          全国理事会(大阪・浅香山HP)
第15回 大阪大会・総会     
(大阪教育青年センター)   「かわりゆく精神医療の中で」―対象者への関わりの視点と期待される役割―
    1/20・1/21       Y裁の和解報告を文章(参加拒否)
    3/22・3/23       全国理事会(名古屋サンプラザ)提案委員会準備委員をつのる
    6/7 ・6/8       全国理事会(名古屋サンプラザ)提案委員会準備委員報告
    9/5           全国理事会(名古屋サンプラザ)提案委員会設置を決める
第16回名古屋大会・総会     
(名古屋サンプラザ)      「かわりゆく精神医療の中で」―日常実践を通して社会復帰を考          える―
                 全国理事会で大枠を確認し地域の特性を活かし名古屋が運営
    11/14・11/15      全国理事会(東京・世田リハ)提案委員会の正式発足

1981(昭56)
      3/7・3/8       全国理事会(東京・労音会館)




<日本PSW協会における組織問題,組織活動について>
1.本協会における組織問題・組織活動に関する検討は,かつて幾度かなされてきた。顧みてそれらの検討は,主要には支部結成をめざすうえでの常任理事会一支部一会員をめぐる相互連関の問題や,支部結成を考えるうえでの困難にまつわる問題が主だったものであったと言えよう。
 つけ加えて,将来的方向の関連から,MSW協会との統合を考えるうえでの諸点の検討をおこなった時期もある。
  しかし,職能団体としての活動から,社会的実践を展開するうえでの運動体にまつわる組織づくりを考える上での諸点,外部組織との連携等に関する諸点などについては,検討されはしたもののきわめて明確な方向を打ち出せないまま,その場その場の対応に終始してきたと言えよう。
  組織の具現化としての規約検討(理事定数・選挙区)に関しても,問題を認めつつも充分討議を深められないでいる。
  こうしたことがらを,組織のための組織いじりではなく,『だれのために,何をする』組織なのかを鮮明にするなかで,具体的に深化させなければならない。
2.本協会をとりまく周囲の動きは,いくつかの問題を含みながら進んでいると言わざるを得ない。
  精神医療分野に働くソーシャル・ワーカーの組織化の現況は,他方面にわたって進行している。たとえば,日本MSW協会や医療福祉学会,日精協PSW部会,全国精神衛生相談員会準備会,自治労,精神医療活動者交流集会,などがそれである。こうした他方面にわたる組織化は,本協会の独自性をするどく問うことになっているのではなかろうか。
  さらに,PSWの労働実践にかかわる動きが,日精協・公私病院連盟等によって,点数化の動きとして登場せしめており,同時に専門職制度化への動きとして結実しようとされてきている。
  つけ加えて,現行精神医療の改革を求める動きが多方面に生起する中で,とりわけ社会復帰活動・地域援助の担い手としてPSWそれぞれが期待されると共に,本協会に対する大きな期待のひとつとして,全家連の精神障害者福祉法の制定にむけた運動の中で,本協会の方向が問われるに至っている。
  こうした動きは実に本協会がひとつの組織として,組織的対応がせまられているとみてよいだろう。
3.以上の前提状況を考えながら,本協会の組織現状と抱えている具体的問題を考えてみたい。
a.会員数は約500名,大きな変動はない。
b.北海道,東北,新潟,静岡,東海に支部。
大阪,中国,四国にブロック
東京,埼玉,千葉,神奈川に研究会
  それらは一部を除いて低迷している。
c.現在,ようやく日常実践上の問題と組織運営に関する問題を分けて検討されはじめている。
d.会員と支部あるいは会員と全国理事会が相互の流れの中でいまひとつスムーズではない。
( 但し,支部を基軸にする方向は確立しつつある。)
e.各会員の問題意識の共有化は,地区の外に出れば必ずしも十分なされているとは言えない。
このことは,本協会の協会としての課題をつめる作業を開始する場合,すぐに顕在化する。
f.協会員個々の利益に結びつく(労働条件)活動がなされていない。
g.財政的問題が確立していない。(会費未納者)
h.社会的発言力の弱さ。一周囲からの問いかけにもそうであることと,内部から,対象(者)との関係を通した日常実践をより社会的実践に移行するうえでの発言力のなさ―
4.具体的に問われている問題を上記から考えてみると,次のように要約できるのではないかと考えられる。
まず,本協会は他組織と比べて独自の領域,方向が必要であろうということ。つぎに,組織結集の軸になるものなどが,現状の動きにあわせて提起されなければならない。
さらに,支部活動の再評価と位置づけを明確にしたうえで,社会的発言力の強化と社会的責任の明確化という観点から『法人化』を提起すべきであろうと考える。
さらに,問題意識の共有化をめざす,研修あるいはワークショップが必要ではないかということ。そして,それらを裏づける意味で,規約の『目的』の改定や,理事定数,常任理事会,入会資格,会費等々の検討が必要だろうと思われる。
5.しかし,現実に考えられうる諸点のすべてをただちに開始することは困難である。当面次のような方向が考えられよう。
a.支部の形成をより進める方向ですすみ,あくまで支部が協会の基礎である,という考えを明確にしながら,全国理事会の性格を支部長会議的運営に変更させてゆく。そして,これを年3〜4回の定例化にする。
同時に全国理事定数を減らす。(理事会の派遣は全額本協会が負担する。)
b.常任理事会を再開する。
その場合,常任理事の定数を3名程度とし,理事長・常任理事・事務局長で構成する。
常任理事はおのおの専門部を持つ(状況分析,研修,法人化etc.)
  会長―理事長―常任理事・事務局―理事
c.全国の会員を対象にした,ワークショップの開催
d.法人化にむけたとりくみをはじめる。
e.規約の改定に着手する―規約改定委員会―
規約は,目的,会員構成,会費など全般的に見直す。
f.機関誌の再評価を行なう。
以上が,本協会の正常化にむけて「組織問題」に関して提案委員会が論議した内容のまとめである。今後の本協会の活動に役に立つならば幸いである。


<関東甲信越ブロック研究会に関する10項目質問に対する見解を出すこと>について
 このことについては<はじめに>の項で述べているように,今日的には「Y問題の継承」の課題に収斂されてゆくものと判断。本委員会としては同研究会が流会にいたった経過についてのみ触れることにした。


第10回神戸大会・総会で提出された「Y問題調査委員会報告書」を基に, 「Y問題調査報告により提出された課題の一般化について(資料)」が当時の(拡大)常任理事会によって作成・発行された。この作業の目的は,Y問題によって提起された内容を我々の共有の問題として認識し,それを教訓化すると共に,課題の克服にむかってとりくむことにあった。
その初期段階のとりくみとして,地区毎の「ブロック研修会」を設定し,各々の場で「一般化について(資料)」を取上げ,会員間における掘り下げた討議を行ない,Y問題を継承・深化してゆくことが組織として位置づけられていた(第11回新潟大会総会)。
しかしながら同研究会ではとりあげることをしなかった。それは以下の理由によるものであった。
1)Y氏ならびに「多摩川保養院を告発し地域精神医療を考える会」からの本協会に対する告発と問題提起の内容が,未だきちんと受けとめられるような会員の状況ではなく,むしろ抵抗と反発の感情がいり混じったとまどいの状況である。
2)その為,Y問題を中心に据えて同研究会を持とうとすれば参加者が限定されて,研究会をもつ意味が薄らいでしまう。
3)上記の理由の他に,未だ会員間にあっては「一般化について( 資料 )」をとりあげる以前の問題がある。それは本協会内において自己の日常実践の内容を未だ赤裸々に本音をもって語り合い点検し合うまでには致っていない。その為,まず本音を出し合える研究会にする必要がある。Y問題を中心に据えたテーマにすると,会員の身構えが強くなり,本音で語り合う場が持てなくなるであろう。
4)しかしながら,会員個々にはY問題から何らかの影響をうけているはずである。字句の上でY問題をとりあげることを表現しなくとも,研究会での報告内容や討議内容は,Y問題によって影響されたものが底流として共有されて反映されてゆくものと推測する。
5)よって,同研究会は,ともかくも会員間にあって自らの実践を本音をもって語り合い,出し合うことを主眼に開催することにしよう,というものであった。
そしてテーマについては
1.精神障害者の生活(権)問題にいかに関ってゆくか
@労働権を中心に
Aいわゆる人権問題を中心に
2.身分資格制度について
とし,同研究会は開催してゆくことになったのであろう。


このような事情から同研究会開催にあたっての通知文には,Y問題についての言及はなされず,当然のこととして,Y問題から提起された課題についての焦点化の作業はなされず,「一般化について(資料)」は同研究会では用いられないこととなった,というのが実態であった。


一方,同研究会の開催内容を知ることになったY氏ならびに「考える会」は,「一般化について(資料)」を用いないのは約束違反であるので,これを同研究会でとりあげ,Y問題を同研究会の中心テーマとするよう,同研究会の世話人を通して抗議と共に要求が出された。しかし,同研究会運営委員会では規定方針通り開催することを確認した。そしてそのことが,「考える会」と話し合いをしたり交渉する状態をつくることを閉ざす結果となってしまった。
「考える会」にとっては,本協会の対応と取り組みに不満をもちつつも―第11回新潟大会,総会での「Y裁支援決議」の不成立と,「一般化について( 資料 )」が,Y問題を単に素材化することに使われることになりはしまいかとの危惧―なおかつ,今後の本協会での取り組みを求め提起しつづけてきた。
ところが,Y問題を中心に据えず,「一般化について( 資料 )」を用いないことにした同研究会のありようが,Y氏や「考える会」をして本協会への不信を募らせることになってしまった。まして,同研究会は「Y問題」が生起した地元を含んだブロックであることを考えあわせるとなおさらであったのではあるまいか。
「考える会」より同研究会の場でその冒頭から「粉砕宣言」が出されたのは,そのような経過の中で生起したものであった。
結果として,事態を収拾するにはいたらず,衆知のように同研究会は流会となってしまったのである。
以上で同研究会流会までの経過をまとめとしたい。反省点については前起した<経過の中で考えられる反省点>に包括したい。

<今後の協会活動にむけて>
 ここでは,しめくくりとしてこれまで述べてきた経過と反省点をふまえ,本協会の今後の方向と,とりくむべき課題を提起することにしたい。なお,<組織問題と組織活動>に関する課題についてはすでにその項のところで提示してあるので,重複するところはここでは触れないことにした。
 まず本委員会では,<はじめに>,<経過の中で考えられる反省点>,<組織問題と組織活動>でまとめてきた内容をもとに,それを包括的に言いあらわしたもので,なおかつ今後の協会活動をすすめるにあたっての中心軸となるものを提示することが必要であると考え検討した結果,次のようなものとなった。
 それは,本協会をして
 「『精神障害者の社会的復権と福祉のための専門的,社会的活動』を中心に据えた組織とする」ということにしてはどうかということである。
 本協会の会員の個々の置かれている状況には様々な制約がある。しかし,そういう中にあってもいやそういう中にあるからこそ,我々の独自性である上記の中心軸を常に保持して日常実践―活動―を展開していこうということである。
 また,組織としての本協会は,そのような個々の実践の内容を集約し,それらを整理する作業を通して全体が共有すべき財産を見出すと共に,またそのような作業から生起してくる新たな課題については,個々の会員に具体的指針を指し示す組織となるよう成長することが求められよう。
 さらに,当協会は,他に存在する様々な社会的組織の中の1つの組織として,独自な社会的役割を果す責任をもっている。その際,組織としての社会的活動を行なうにあたっての独自性については,上記の軸を中心に据えていくことにしてはどうか。

 次に<経過の中で考えられる反省点>を中心に,そこから導き出されるとりくみ課題について提起したい。
1.「クライエントの立場を理解し,その主張を尊重する」という,「本人の立場に立った」我
々の日常実践の深化と確立のためのとりくみ。
 これは,上記の意味するところの再吟味による深化と,我々の日常実践の内容とこの視点からお互いに検討し合う作業を通して確立されていくことになるのではないかと考える。
2.精神障害者をとりまく状況分析と,それを通して我々の日常実践と協会活動をすすめるとり
くみ。
ここでは,医療上の問題,法制上の問題はもちろんのこと,社会的,経済的な側面も含め,多面的に検討し,それが,我々の日常実践の活動指針なり,協会が組織として行なう社会的活動指針を生み出すためのとりくみを見出していくことを意味する。
3.あるべきワーカー・クライエント関係の樹立,にむけた取り組み。
ここでは,上記の方向に沿った,専門的・技術的領域に関する取り組みということになるが,視点としては,クライエントと平等ないし対等の関係の確立にむけて,ということになる。PSWとしての「倫理綱領の確立」なり,PSWを規定するフレーム・ワークの確立ということもとりくみ課題と考える。
4.PSWの福祉労働論の構築を目指したとりくみ。
ここでは,( 福祉 )労働者としての自己の位置の確立と,自分たちの労働環境を自ら改善していくためのとりくみとなる。職場の民主化をすすめるとりくみも我々にとって重要な課題であり,具体的なレベルでは,福祉以外の労働者との連携が必要となってくる。どこから手をつけるかはともかく,今後の本協会のとりくみ課題の中に是非くみこんでもらうことを希望する。
5.最後になったが,今まで述べてきたことを通して,「そのような実践や活動の背景となる。
また,保証される。」我々の「専門性」の追求と,専門職制度の確立を,という表現にみられる「制度上の課題」に関する取り組みを進めることを求めたい。

上記した内容は,当然のこととして我々の中に急に確立されるものではなく,これからじっくりと年月かけて深化し,確立させてゆくものばかりであろう。それだけに今すぐにでもとりかからねばならないと思う。あるものは,研修会の場でじっくりと積み上げていってもよいだろうし,ある時は,大会・総会の統一テーマとして設定し,全体の場で討議することも出てくるだろうと予測している。様々な状況設定を考えつつ,とりくまれることを期待し,提案としたい。

<おわりに>
 以上が提案委員会がこの間検討してきた内容の全てでる。会員の皆様の期待に十分応えた内容ではない事は承知していますが,足りないところは,今後の討議の中で充めていってほしいと願っています。本協会の機能回復に向けて,この提案委員会のすすめた作業が,幾漠かの役に立ったとすれば,提案委員の7名としては幸いと思います。
 なお,お詫びせねばならないのですが,谷中氏が理事長になられてから開催されている,第13回大阪大会以降の大会で議論し獲得されてきたものは,本委員会でまとめる事になっていたのですが,時間の関係でその責を果たす事ができませんでした。
 本協会の新役員体制の元で,その作業をすすめ,今後の協会活動に反映させていただくしかありません。その点,ご了承いただきたく存じます。


*作成:桐原 尚之 長谷川 唯
UP:20121105
Y事件(Y問題)  ◇精神医学医療批判・改革  ◇精神障害/精神医療 
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