「Y問題に関する理事長見解」
日本精神医学ソーシャル・ワーカー協会 19810626
Y問題に関する理事長見解
谷 中 輝 雄 (やどかりの里)
Y問題の継承に関する理事長見解は,時の小松理事長に向けて,「Y氏,多摩川保養院を告発し地域精神医療を考える会」より求められたものである。しかしながら,当協会は,Y問題の継承性をめぐって混乱し,第12回全国大会中止以降は機能停止に陥入り,組織的都合で今日までその約束を果し得なかった。この課題は,前小松理事長個人に向けられたものではなく,協会総体に向けられたものであり,全国理事会として引き継がれたものであった。したがって,理事長見解を示すにあたっては,会員の総意を得,「Y氏,多摩川保養院を告発し地域精神医療を考える会」に回答するものでなければならない。
「Yさんに対し,Yさんの提起された問題ならびに裁判支援に対応できなかったことは事実であり遺憾なことであります。更には,常任理事会案の代案のない否決により協会運営が今日まで混乱を招いたもとともなった。これら否決された事実経過は明確に示されず,代案のない否決は組織として弁明の余地のないことでもある。この混乱を終止するにあたって会員の当面の問題を出し合い,ワーカー・クライエント関係を討議し,PSWの置かれている状況と相手とかかわる視点と自らの立場性を明確にする作業を行なってまいりました。これこそは,専門性の追求として自らの専門制とは何かを再吟味することに他ならない作業でありました。このような討議の積み上げをはかって来たというものの,大会を継承することのみが中心的課題にならざるを得なかったことを反省しております。
しかしながら,これらの作業の継続は,Y問題継承性にかかわる重要な作業であると考えてまいりました。しかし「精神障害者をとりまく状況において精神障害者といわれる人達の真の解放」といった課題には充分答えられていないことを充分反省しております。
今後,我々の課題として,Y問題の継承の意味する提案委員会報告の「精神障害者の人権を守り,社会的復権と福祉」のためにより一層の努力をすることが,我々の社会的役割であると考える。
以上をふまえながら,協会活動としても,会員個々の実践活動にしても,今後より一層,Y問題で提起されたことを深化させていくことが重要であります。
最後に,当協会としては,YさんならびにYさんの提起した人権にかかわる問題に,充分な対応が出来ずにまいりましたが,終始Yさんを支え続けてきた協会員の存在を明記し,今後「精神障害者」といわれる方々に対して,自らの専門性を充二分に発揮すべく努力する決意です。」
先におこなわれた提案委員会の報告が,今後の協会活動を指し示すものであろう。これについて生産的,活動的意見を出して欲しい。
*作成:桐原 尚之