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末期医療の特別措置法案

日本安楽死協会 197811



第一条(目的)
  全ての人は、自己の生命を維持するための措置を受容すべきか否かにつき、自ら決定する権利を有する。この権利に基づきこの法律は、不治かつ末期の状態にあって過剰な延命措置を望まない者の意思に基づき、その延命措置を停止する手続きなどを定めることを目的とする。

第二条(定義)
  この法律で「不治かつ末期の状態」とは、合理的な医学上の判断で不治と認められ、延命措置の施用が単に死期を延長するに過ぎない状態をいう。
  この法律で「過剰な延命措置」とは、その措置によって患者が治癒現象を呈せず単に死期を延長するに過ぎない措置をいい、苦痛緩和のための措置は含まない。

第三条(本人の過剰な延命措置を拒否する意思の表示)
  一五歳以上の意思能力ある者は、不治かつ末期の状態になった場合には、過剰な延命措置を拒否する旨を予め次のいずれかの方法で文書により表示することができる。
  1 本人が不治かつ末期の状態となったときは、過剰な延命措置を拒否する旨を、正常な意識をもって予め文書により表示し、その文書に日付、住所、氏名を自署し捺印すること。
  2 疾病その他の事由によって本人が自筆署名をなし得ない場合は、本人が前項の意思を表示したこと及びその日付を記録する文書に、その意思の表示に立ち会い、かつその意思の表示が正常な意識をもってなされたことを証明する医師二名以上が署名捺印すること。

第四条(本人の意思の撤回)
  前条第一項の場合において、本人がその意思を撤回するには、本人がその文書を破棄するかまたはその文書にこれを撤回する旨及び日付、氏名を自署しなければならない。

第五条(意思能力のない者についての措置)
  第一条に定める個人の意思決定権は他の者が代行できない。但し意思能力のない者については家庭裁判所の審判を受けることができる。

第六条(本人が不治かつ末期の状態にあることの証明)
  本人が不治かつ末期の状態にあることは、延命措置を差し控え、または停止する医師以外の医師二名以上の診断によって、確認されることが必要であり、確認した医師は、不治かつ末期の状態であることを確認したことを証明する文書に署名捺印しなければならない。

第七条(医師の行為の免責)
  この法律の規定にしたがってなした延命措置の差し控えまたは停止の措置について、医師は民事上、刑事上の責任を問われることはない。

第八条(文書保管の義務)
  第三条、第四条及び第六条の文書は延命措置の差し控えまたは停止した医師が五年間保管をしなければならない。

第九条(生命保険契約との関係)
  本人が延命措置を拒否する意思を表示したことによって、保険契約上自殺とみなされてはならない。

第一〇条(罰則)
  第三条、第四条、第六条の文書を破棄し、または隠匿した者、文書に虚偽の事実を記載た者、虚偽を知りつつ証人として署名した者、及び文書を偽造しまたは変造した者は〇〇年以下の懲役または〇〇円以下の罰金に処する。


   ※日本尊厳死協会編『尊厳死』(1990、講談社)p.193
   ※立山龍彦『自己決定権と死ぬ権利』(1998、東海大学出版会)p.41-42



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