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「抗議・要望書(守山東病院問題関連) 全国「精神病」者集団愛知分会・0の会」

全国「精神病」者集団愛知分会・0の会 19780928
 

last update:20110530


抗議・要望書 全国「精神病」者集団愛知分会・0の会

  私たち0の会は、我が国の精神医療の拘禁性と問題性を持ち、開放化への促進をうながすともに、治療内容の劣悪さに問題意義を持ちながら、それへの改善を運動基軸の一つにすえながら、会の形成がなされています。
  9月1日より、朝日新聞紙上で報道されてきた守山東病院の恐るべき実態は、0の会の会員諸氏からの訴えで、すでに内部的に確認されていることです。これまで改善策を求める強い声があり、討論素材として提案されてきたものです。従って今回の告発は、遅すぎた感をまぬがれません。
  守山東病院の治療条件(拘禁性・医師不足)治療内容(暴力)は劣悪きわまりなく、経営者である医師が、医の倫理や治療理念を放棄し、すでに医療という医▲から脱し収容所化しています。
  その機能は、患者の社会的抹殺を企てる以外の何ものでもないと思われます。
患者を『物』としてのみ取り扱う『医療姿勢』に人権思想の一告を恥じられず、営利中心的色彩が濃厚な守山東病院に、私たちは、強いいきどうりを感じ、断じて許すことはできません。
  かかる状況は、単に守山東病院にとどまらず、各精神病院内においても同じレベルのことは、日常化した現象であり、うれいべき事態を呈しているが県内の実情です。
私たちは、上記のような精神医療の荒廃をまねいた県行政の指導性の怠慢は、決して許されるべきではないと考えています。
  従って、県行政は、以下の設問に対し、守山東病院を軍盟に県内各病院に今後どのような指導姿勢を持たれるのか、0の会に照合願います。
イ、守山東病院の恐るべき事態について今後の抜本的解決策を示されたい。
ロ、我が国の精神医療実態の中でとりわけ問題視されるのは開放率です。その実態は諸外国に比し低く、開放率は、全ベッド中20%前後です。(外国では80%が開放化されている。)
  現在、各精神医学会に於いても開放化が叫ばれ、それへの解決策が思考をされているが、当県に於いて、守山東病院を筆頭に県行政としていかなる見解を持ち指導されておられるのか
ハ 昭和50年、第52回、日本精神神経学会で決議された『通信・面会の自由』の保障に対してどんな調査を行ない、かつ、実践的指導をされたか
ニ 私たち、患者は、市民社会にまんえんしている不当な偏見に日夜悩み続けています。それ故に、治癒した患者も、再発・悪化をたどるケースも多く、自立へのさまたげと困難さを強いられているものです。従って偏見を除去し、共生への志向は切実な課題です。県行政はいかなる方法論を持って対処されるのか
ホ 今後とも0の会との対話を続行し当事者ニードの精神医者へと改革する姿勢を保持されるのか
  昭和53年9月28日
<添付資料>

病院長・医長 殿
前略 第72回日本精神々経学会総会において別紙の通り、「通信及び面会の自由」に関する決議がなされ、それを保障するための具体的活動が必要な段階となりました。
つきましては、同封しました「ステッカー」を病院玄関ならびに各病棟内に掲示され患者ならびに保護者、その他の関係者に周知徹底されますよう御協力の程お願い申し上げます。
昭和50年9月26日
日本精神神経学会理事会

「通信及び面会の自由」に関する決議
現在の精神医療の実態は、第72回日本精神神経学会委員長報告にもみられる如く、さまざまな矛盾をはらんでいる。とりわけ、全国各地で問題となっている精神病院における不祥事件は、医療以前の、基本的人権の問題としてあり、かつその要因は単に個別精神病院だけのものではなく、現在の精神衛生法体制下での精神医療そのものの中にあることを銘記する必要がある。
この種の事件は、まさに氷山の一角にすぎず、全国各地に滞在するものと考えられる。このような状況を放置することは、私たちみずから精神医療の低下を容認することとなり、いつかは、その破局をもたらすことになるのであろう。
私たちは、早急に精神医療の矛盾、特に精神衛生法の問題と取り組まなければならないが、その前提として、自らの病院をガラス張り≠ニし、精神障害者の人権を保障すると同時に、医療水準を高めるべく努力をしておかなければならない。少なくとも「通信及び面会の自由」を保障することは、精神障害者の人権を保障するための必須条件である。
私たちは、精神障害者に対する差別偏見をなくし、精神障害者の人権を守り、精神医療の向上のため以下決議する。
「精神病院および施設において、精神障害者は検閲なく通信を行ない、かつ通信をうける権利及び立会人なしに面会をする権利を有する」ことを確認し、この権利を保障するため、当学会は具体的活動を開始する。
昭和50年5月13日
(出席者数475、賛成436、反対0、棄権39) 第72回日本精神神経学会総会

「通信及び面会の自由」について
精神衛生法小委員会
a) 通信の自由について
信書の秘密を守らなければならないことは、憲法に保障された基本的人権である。
ところが、特殊な事例については通信をさしとめておく方が、患者の将来にとって、不利益にならないであろうと想像されることもあり得よう。しかしその場合でもチェックすることは、基本的人権の侵害であるし、実際問題としては、将来的不利益を医者が一方的に判断したことによる人権侵害がむしろ問題であったということが長時間の討論、しかも具体的事例についての検討を通して明らかにされた。
次に信書の自由を保障した際に生じる問題点について検討した事例を若干列記しておくと
1) 躁状態の患者が次から次へと手紙を出し、本人が良くなった時、後悔されると予想されるような場合、それをさしとめることは、患者のために必要ではないか?
―そのような場合でも、治療者にとって、出さないように説得する必要はあるがさしとめることは出来ないし、さしとめることが、治療上、絶対に必要な条件ではないという意見が強かった。
2) 品物を次々と注文する場合は?
―その場合は家族に連絡し、受注者に対し事情を説明し適切な処理をするようにすべきである。(衛精第二号厚生省回答)
3) 職場の人、あるいは、婚約者などに「妙な」手紙を出したりする場合は?
―封書の場合、開封しなければ分らないことであるし、このような場合を想定して開封するならば、信書の秘密は全然守れないことになる。従って、問題となれば、その段階で十分説明し、以後できるだけそのようなことのないよう説得するしかない。
4) 保護義務者から「他に手紙を出さないように」と要請のあった場合は?
―保護義務者が必ずしも患者の立場に立ちうるとは限らないことを考えると、そのような要請を受けつけるわけにはゆかない。勿論保護義務者の理由は患者にも十分説明する必要はあるであろう。それでも投函するならば、それをさしとめることはできない。
その他、いろいろな具体例について検討したが、最終的には、精神医療の現状を踏えて少なくとも通信の自由については、無条件に保障されなければならないということで全員の一致をみた。

『通信及び面会の自由』について
第72回日本精神神経学会総会において、裏面の通り、「通信及び面会の自由」に関する決議がなされました。
つきましては、この主旨が関係諸氏に充分理解され、実効があがりますよう、下記補足説明を検討の上、御協力の程お願い申し上げます。
なお、参考資料として精神衛生法小委員会における討論内容を添えておきます。

◆「通信及び面会の自由」に関する補足説明
1) 通信の自由について
信書の秘密を守らなければならないことは明白のことでありますが、特殊な事例については検討を要する場合もあると考え、委員会においても具体的に討議を重ねてきました。その結果、治療上、特に検閲を加える必要はないという結論に達しました。
但し、病状によっては、患者の将来にとって不利益が予想される場合もありうると思います。その場合は、あらかじめ患者にその旨指導する場合はあると思いますが、検閲することは信書の秘密を犯すことになり許されません。
2) 面会の自由について
面会は患者が拒否しなければ許されなければなりません。また、患者が拒否する場合あるいは患者が意思表示できない場合は、不許可になる場合もありますが、その際には面会者にその理由を告げると同時にカルテにもその理由を記載しておかなければなりません。
昭和50年9月26日
日本精神神経学会理事会


守山東病院問題
53・9・20
診療実態を調査
草川代議士「強い疑問」
草川昭三代議士(愛知二区、公明党・国民会議)は十九日、医師不足など診療体制が問題になっている守山東病院(名古屋市守山区、重富克美院長)の実態について愛知県衛生部や民生部を回り、実情を調べた。同病院も訪れたが、病院側は、院長と連絡がとれないと述べ、院内視察など一切を拒否したという。
同代議士はこの日、県庁で衛生部次長や医務課長らから、同病院の規模、医師の勤務状況、過去の医療監視、実態などについて聴いた。また、民生部保険課では同病院の保険診療実態について調べた。
草川代議士はこのあと「県の説明と病院周辺住民から聞いただけでも、この病院には強い疑問を持たざるを得ない。とくに医師不足がひどく、それが看護人の暴力につながる背景になっているのではないか。臨時国会では守山東病院の問題を中心に、公立精神病院の充実など、精神医療全般について取り上げたい」と述べた。
県と名古屋市が近く再び事情聴取
守山東病院(重富克美院長)の診療体制について、愛知県衛生部は名古屋市衛生局とともに、近く再び病院関係者から事情聴取する。
医師や看護人の数など、現在の診療体制を確認するとともに、医療医師≠フ有無など事実関係を確認するためで、不備な点があれば、その後も引き続き事情聴取を続けたい、としている。

53・9・21
「精神医療の荒廃正せ」
守山東病院問題 患者らが県に要求
精神病の病歴を持つ人たちで組織している全国精神病者集団愛知分会の「0(ゼロ)の会」(大野萠子代表)のメンバーが二十日、愛知県衛生部を訪ね、守山東病院(重富克美院長)の医療態勢について抜本的な解決策を示してもらいたい―など、精神医療の現状への抗議と要望を文書で提出した。
「0の会」は、愛知県を中心にして患者、病歴者、家族、精神科専門医らで組織されており、患者中心の医療、患者の人権の保障などを要求して、活動を続けている。
一連の同病院の問題で患者自身が自分たちの問題≠ニして動き出したもので、この日の申し入れは守山東病院に入院させられていた同会のメンバーの体験や、他の精神病院に入院した会員の経験がもとになっている。
要望書では守山東病院のような精神医療の荒廃を招いた医療行政の怠慢を指摘する一方、@守山東病院の実態についての根本的解決策を示せA五十年の第七二回日本精神神経学会で決議された「通院・面会の自由」の保障に対してどんな調査を行い、指導をしているのかーなどと要望している。

53・9・22
社党も追及へ動く
守山東病院 愛知県議団が視察
名古屋市守山区の守山東病院(重富克美院長)の診療態勢の問題で、社会党愛知県議団は二十一日、同病院を訪れ、実情を調べた。その結果、同県議団によると、病院側は医師不足については認めたが、同県議団が指定した保護室を見せることは断った。同県議団は開会中の県議会で、同病院の問題を県議にただして行くことにしている。
この日、同病院を訪れたのは社会党の横山利秋代議士と、同党県議団の網岡雄団長、阪野守夫幹事長、水野みつる政審会長ら、病院側は重富院長らが応対した。
同県議団は診療態勢をはかるポイントである医師数などを重点に重富院長に聞いた。
それによると、同病院が示した医師数は常勤八人、非常勤十二人、県衛生部に未届けの医師十五人。それらはちょうど常勤医二十人分に相当する、と病院側は答えた。一方で、病院にとって必要な常勤医師数は二十七人とした。
「病院側の示した数字でみても常勤医師は七人不足している助定で、病院側も、その点の医師不足は認めた」と同県議団はいっている。
また、同県議団は西病棟の保護室を見せてほしい、と申し入れたところ、病院側は弁護士と相談した結果、一般の人に病室は見せられないと断った、という。


*作成:桐原 尚之
UP:2010528 REV:
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