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声明 精神保健法粉砕―精神衛生法撤廃へ!

赤堀中央闘争委員会 1978/05/10


 すべての皆さん。厚生省は、3月16日「精神障害者」をはじめとする多くの反対の声を一切無視し、精神保健法案の国会上程を強行しました。
 この法案は「人権擁護」「社会復帰」といった耳ざわりのよいうたい文句とはうらはらに、現行精神衛生法体制すなわち、治安管理とかく離、抹殺、精神医療の国家統制と、「社会防衛」政策への精神科医の動員を飛躍的に強化しようとする恐るべき改悪案に他なりません。
 今回、任意入院が新設されていますが、患者の自由意志がふみにじられる以外のなにものでもありません。これには、指定医による72時間の退院制限がつけられ、入院するのは「自由(これ自体ペテンだ)だが退院は指定医が判断する」というものです。さらに、指定医の判断で「精神障害者」をいつでも72時間拘束することができる応急入院制度を新設し、措置入院、医療保護入院(現行同意入院)に加え強制入院が強化されています。
 そして、指定医制度の導入。これは重大な問題です。患者の入退院や行動制限についての大きな権限をもつ指定医を厚生大臣が指定することを通して、精神医療への国家権力の介入と統制をいっきに強めるものとなることは明らかです。
指定医は治安管理の尖兵、「社会防衛」政策の担い手とされることは火を見るよりも明らかではないでしょうか。
 また、「社会復帰」の推進を叫びたてることで精神保健法案が「改正」であることの根拠としていますが、老人医療費の削減、精神科病棟10万床削減と合わせて見るとき、「社会復帰の名のもとの福祉切り捨てに他なりません。実際、精神保健関係予算は、防衛費の大幅増のもとで他の福祉、医療関係予算とともに大幅に削減されています。今日、日米貿易摩擦、円高不況のもとで「300万失業時代」が叫ばれる中で、しかも「精神障害者」に対する差別欠格条項は大すじでそのままで、なにが「社会復帰」「地域社会で生きる」なのでしょうか。
 さらに、患者からの訴えを公正に判断する専門の機関として「精神医療審査会」が新設されていますが、これも患者による下からの告発機関としてでなく、厚生省の手先として、上から医師を反動的にしめつけ、患者の訴えを抹殺する統制の機関として機能するものとなることは容易に推察することができます。
 どこを取りあげても、どこから見ても「改正」とは程遠い。いやまったく逆の恐るべき改悪案に他なりません。しかも刑法改悪・保安処分新設の先取りであり、一大突破口となるものであることを忘れてはなりません。精神衛生法は撤廃あるのみです。
 とりわけ、第2条の2に新設される「国民の義務」の主柱にある思想は、健康は「善」、病い・障害は「悪」とする優生思想です。優生思想は、ナチスの行った「障害者」のガス室送り、日本における天皇制イデオロギーの中にある「民族の花園をあらす雑草は根だやしにせよ」という「精神障害者」「障害者」抹殺の根幹となった思想です。
 私たち、赤堀中央闘争委員会はこのような精神保健法案の成立を断固阻止するとともに、精神衛生法撤廃のたたかいの先頭に起つことを宣言します。すべての皆さんが、赤堀中闘委と共にこのたたかいに起ち上がられることを訴えます。
 精神医療従事者の皆さん! 今、精神刑法刑事法案を認め「精神障害者」に対して治安管理の手先、「社会防衛」政策の尖兵となって抹殺の側に立つのか。「精神障害者」の苦闘と怒りの側に立って体を張ってたち向うのかが問われています。多くの精神科医・精神医療労仂者が赤堀中闘委と共にたたかうことを心から呼びかけます。

1987年5月10日  赤堀中央闘争委員会
            静岡中央郵便局私書箱321号


*再録:桐原 尚之
UP: 20120527 REV:
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