「Ｙ問題調査報告により提起された課題の一般化について」への抗議文
多摩川保養院を告発し地域精神医療を考える会 19750331
昭和５０年３月３１日
ＰＳＷ（理事会）殿
多摩川保養院を告発し地域精神医療を考える会
代表 阿部 信真
「Ｙ問題調査報告により提起された課題の一般化について」の文中に、私たちは１～１２に述べるような疑問をもちましたので、これらについて理事会の見解を求めます。回答は文書にてお願いします。
質問事項
１．Ⅰ 日常業務にかかわる問題ー１ インテークについて（１）「市センターのワーカーは・・・・・・このような場合どういう状況のもとで、こうした状態になったのかについて、その家族とともにいろいろな要因を明らかにしていこうと努力すべきではないだろうか」とありますが、「こうした状態」が本当にあったのでしょうか。何によって、どこで確認されましたか。本人から確認されましたか。もし、そうでなければ「本人不在」の誤りを犯したことになりはしませんか。
２．Ⅰー１ー（３）（４）において、個人のワーカーが反省する必要がある、注意する必要があると総括されていますが、ワーカー個人の不注意や配慮の欠如というのが、Ｙ事件の発端となる１０月４日の重要なインテーク場面の本質であったでしょうか。
問題は、ワーカーや保健婦が地域精神医療体制に組み込まれている現実を捉え返し、それと闘う視点なくしては、同じ事件を繰り返さざるをえないということが、第１０回大会決議の主旨であったと考えます。そのような大会決議の本質的部分を抜き去り、問題を個人の技術の「未熟」さに矮小化する理事会の体質を問わざるをえないと考えます。
３．Ⅰー２ 家庭訪問について 「１０月６日、保健所・・・・・・・しかし市センターワーカーは、いずれ問題になるケースだろうから訪問しておいてはどうかと保健所ワーカーに伝えた」とありますが、傍線部の事実は何によって確認されましたか。また、その出所を明らかにしてください。
４．Ⅰー３ 「入院当日における保健所の働きかけについて」 以下について何の文書記録、資料に基づいているのか明らかにしてください。また、見解を出すにあたって、その材料として当該資料を選んだ理由について知りたいのでよろしくお願いします。
５．Ⅰー３ー（２） 「乱暴が激しくなったから入院手続きをしてほしいという母親からの電話だけで」とありますが、評価、分析にあたって引用した資料に書かれている内容を事実として評価している。そのような評価の仕方は、Ｙ問題の評価として正しいやり方でしょうか。
６．Ⅰー３ー（５） 「保健所は・・・・・・家族とともに警察に・・・・・・」とありますが、傍線部は何によって確認されましたか。その出所を明らかにしてください。
７．Ⅰー３ー（５） 「保健所は行政サービスを越えた権限の行使・・・・・」として保護依頼をあげていますが、むしろ、これは現行精神衛生体制上要求されてくる行政サービスの内容としてとらえるのが正しいのではないでしょうか。保健所と警察が結びついて行政がなされているという実態を確認したうえで、そこから問題を立て直していくべきではないかと考えますが、いかがでしょうか。
８．Ⅰー３ー（６） 「・・・・・説得は、あまりにも形式的にすぎる・・・・・」とありますが、むしろ、入院させるための口実として肩腰のことがいわれたのであり、説得行為の形式性を指摘して把握するやり方は誤りではないでしょうか。行政側の権限として強制入院体制をとってきたということこそ指摘されるべきであったと考えますがいかがでしょうか。
９．Ⅰー４ー（２） 「当日、・・・・・・とは考えられない」とありますが、仮定の話は何をもとにして成立するのか明らかにしてください。また、ここで、こういう仮定を出すことがなぜ必要なのか明らかにしてください。
１０．Ⅰー５ 退院相談について 「入院後、２５日目の・・・・・・『本人が退院したいと訴えているがどうしたらよいか相談したい』という電話があった」の部分は、退院相談に至るまでの経過が欠落しているけれども、そうすることによって母親の保健所訪問上の意図がゆがめられてしまう。保健所に行く経過をみると、母親の意図は退院相談ではないことが容易に判断されるのであるが、このことについてどう考えるのか明らかにしてください。
むしろ、母親は保健所から病院に渡された記録が違うので抗議しに行ったというのが事実ではなかったでしょうか。
１１．Ⅰー５ー（１） 「・・・・・・・母親が安定さを取り戻すことを前提として対応しているが・・・・・・・」とありますが、ここでは、母親の本当の訴えを聞くべき努力がなかったことを指摘すべきであると考えますが、いかがでしょうか。
１２．Ⅱ 以下を出した意図について理解できないが、大会決議のどのような根拠に基づいて出したのか明らかにしてください。
＊作成：桐原 尚之